柳美里の今日のできごと

糖尿病の猫が異物摂取をするのか、医学的に解明されているのだろうか？

(いま、ネットで調べる時間は、わたしにはありません)

しかも、今日は廊下の床に水溜まりがあって、なに？と臭いをかいでみたら、猫のおしっこだった――。

これも、たぶん、ティグリさんだ。

う～ん、糖尿病の悪化で、視覚や臭覚が鈍っているのか……

珍念さんの仕事が休みの時に動物病院に連れて行ったほうがいいかもしれない。

ティグリさんは、糖尿病のせいなのか、通常ねこが食べないもの(白いごはん、りんご、もも、なし、チョコレイト、クッキー、おせんべい、大福餅、羊羮)まで低く唸りながら狙い、漁るので、我が家は大変なことになっています。

遂に、お茶っ葉まで……

犬と違って高いところに置いてもとられちゃうし、引き戸だったら簡単に開けられちゃうんですよね。

そして、我が家は築60年の日本家屋、ほとんど全部引き戸なのですよ。

いま左手ギプスなので、片手でお茶をいれるのは一苦労だし、こぼれたお茶を掃除するのも一苦労なんですわ、ティグリさん。

あぁ、もうすぐ日が落ちる。洗濯物を取り込まなくちゃ……

洗濯物取り込んだら、原稿書きます。

すみません。

(家の中に流れているのは、長渕剛の「HOLD YOUR LAST CHANCE」です)

急須にお茶っ葉を入れた時に玄関のチャイムか鳴って、宅配便の配達員から荷物を受け取り振り返ったら、急須が床に落ち、電気カーペットの上にお茶っ葉が散らばっていた――。

だれ？

誰のしわざ？

久しぶりに、15年前に癌で死んだ東由多加が夢に現れた。

東とふたりで、誰もいない列車の長椅子に並んで座っている。
どこを走っているのかは、わからない。
地下鉄ではないのに、外の景色が見えないのだ。
光はさんさんと射し込んでいるのに……

食堂車でサンドイッチを買う。
食パンの正方形のまま野菜やハムやチーズを挟んでいる大きなサンドイッチで、ひとり2つずつは食べ切れないな、とわたしは思う。
「飲み物ついてないね。パンが喉につかえちゃうね。飲み物、どこで買えるんだろう？　自動販売機はないのかな？」とわたしが言うと、東は黙って立ち上がり、右側の通路を歩いていく。

わたしはサンドイッチに手をつけないで、東の帰りを待つ。
いくら待っても、東は帰ってこない。
やっぱり、東は死んだんだな、とわたしは思う。
飲み物のことなど口にしなかったら、いなくならなかったかもしれないのに、と悔やんだところで目を覚ました。

８月24日、青森の八戸で現役最高齢(83歳)のイタコである中村タケさんに、東の口寄せをしてもらったとき、「あんたの身になにか危険が迫っているときは、元気な頃の姿で夢の中に現れるから、注意をしてほしい」と言われたけど、なにかあるのかな……