南相馬市立総合病院副医院長(脳外科)の及川友好(ともよし)さん(52)と、南相馬市役所・建築住宅課・仮設住宅係・藤木海(かい)さん(39)は、共に震災後、妻子のみを(及川さんは福島市に、藤木さんは東京に)避難させて、原町で独り暮らしをしている「逆単身赴任」――、家族に逢えるのは、月に1度ぐらいだそうです。
(福島県の浜通り、中通りには「逆単身赴任」の男性が大勢います)
おふたりには、及川さんの次男の学(がく)くんと、藤木さんの長女の明日香さんが、小学校の同級生(現在は中学1年生)だった、という縁があります。
(藤木さんの専門は考古学で、その調査と整備のために東京から南相馬に転勤、及川さんも福島市からの転勤――、「よそもの」という共通点もあります)
及川さんと藤木さんは、ボランティアで、仮設住宅の集会所を訪ね、健康管理のカウンセリングと指導を行う、という活動を行っています。
さらに、KDDIと連携して、各仮設住宅の集会所に設置されている血圧計と体重計のデータを病院で管理し、血圧上昇と体重増加が危険水域に達したひとには、病院での診察をすすめる、というシステムの整備をすすめています。
「医学は人生の幸福を考える学問。病に対するだけではなく、病にならないような予防を広めることが大切」
この及川さんの言葉に感銘を受けて、藤木さんは市役所の中で孤軍奮闘しています。
そんな及川さんですが、昨年末には(年末年始も病院に残り、仮設住宅を回っていた)極度の疲労による鬱状態に陥り、毎年400枚書いていた年賀状を1枚も書けず、全てが無意味に感じられて身動きできなくなったそうです。
及川友好さんの言葉です。
「福島には三つの被曝がある。外部被曝、内部被曝、心の被曝だ」
「将来どうするか真剣に考えれば考えるほど鬱になる状況に置かれている」
「心があるうちは、この地で、この仕事をつづける」