全国で公害化する太陽光発電 出現した黒い山、田んぼは埋まった
太陽光発電設備の設置が引き起こす景観や自然破壊などの問題が各地で深刻化している。毎日新聞が47都道府県を取材したところ、8割がトラブルを抱えていることが分かった。原子力発電に代わる主力電源として期待されながら、全国で公害化する太陽光発電。何が起きているのか。
ドーム17個分、巨大パネルに覆われた黒い山
「晴れの国」で知られる岡山県。5月下旬、日射条件が良く、白桃が名産の赤磐市に入ると、緩やかな山の斜面に墨を流し込んだように真っ黒な太陽光パネルが広がっていた。
4月、石油元売り大手の出光興産がこの地で大規模太陽光発電所(メガソーラー)の稼働を始めた。東京ドーム17個分に相当する82ヘクタールにパネル32万枚が並ぶ。年間発電量は6500万キロワット時に上り、約1万3000世帯分の電気を生み出す巨大発電所だ。
だが、周辺住民によると、2018年と20年にパネルを設置した斜面から土砂が崩落する事故が発生。農家の岩本淳さん(62)は「土砂で田んぼが埋まってしまった。昔はこんなことなかったのに」と嘆く。山の保水機能が損なわれたせいか、大雨時には水路の流水量が増えたといい、「雨がやんでも2、3日は水の音が聞こえる。気になって眠れない」と訴える。別の農家の50代男性は「土砂が流れて水が濁り、稲作への影響が心配だ」と困惑。すむ場所がなくなったのか「イノシシも下りてきた」という。
出光に説明を求めると、「(土砂崩落が起きた)18年当時は調整池などの防災設備が建設途中だったが、現在は想定外の豪雨にも耐えられるよう追加工事をしてパトロールも実施している」という。水質や農作物への2次被害については「第三者機関で水質の異常を随時調査しているが、稲の発育と濁水の因果関係は答えられない」としている。
同じようなトラブルは他にも起きていないか。
毎日新聞は6月、全47都道府県を対象にアンケ…
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