「タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース」 死亡時刻と誕生日って?
都心の古ぼけた団地で慎ましく生きる姉妹。
そんな風に書いたら、
貧しいながらも、
二人で助け合って生きている姉妹を想像するだろう。
確かにお互いを大切に思い、
姉は懸命に親代わりとなって妹を育て、
妹は姉を案じている。
喘息の薬を毎日飲まなければならないのに、
節約し姉の負担を減らしたいと考える妹。
生きるのは大変だ。
綺麗ごとでは食べていけない。
以前は時代の最先端だった団地も、
今や老朽化も進み、
住んでいる人も老人や訳ありな人ばかり。
貧困、ネグレクト、引きこもり、いじめ、
自殺、孤独死など現代の重い問題が多く描かれているのですが、
団地警備員を名乗るぜんじいの登場で、
助けてくれる人がいるかどうかで人生は変わると感じた。
福祉や社会保障の手続きって何が利用出来るのかわからないし、
いざ手続きしようとしても複雑で煩雑なことが多いと聞く。
本当に助けが必要な人に情報が届かず、
取り残されてしまう人も多い。
なぜぜんじいが、
「みかげ」の名前を知っているのか?
喘息の持病があることを知っているのか?
団地警備員に引き込んだのか?
その理由を知ると納得。
テーマも登場人物が抱えている問題も重い。
「死亡時刻と誕生日」という相反するタイトルが、
読み終わった時に腑に落ちた。
居場所がある。
助けてくれる人がいる。
問題は解決しなくても、
抱える重さはすこし軽くなるかもと思える作品でした。
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