
ロシアがウクライナに侵略したことで、軍人になる覚悟ができた――。陸軍士官候補生は、引き締まった表情でそう語った。
国連の世界幸福度ランキングで7年連続トップの北欧フィンランド。憧れる日本人も少なくないが、実は軍事色が濃い国でもある。ロシアと約1300キロもの長い国境を接し、ウクライナ後の「標的」にされるのではという懸念もくすぶる。現地で有事への備えを探ると、幸福感の裏にある市民らの緊迫感と、強固な国防意識がうかがえた。
侵攻の衝撃 「国のため」軍人に
首都ヘルシンキにあるサンタハミナ島。ロシアにつながるフィンランド湾に面し、陸軍の近衛猟兵連隊が駐留する。
「ウクライナと戦闘中のロシアがすぐに我が国へ攻めてくるとは思わない。けれども、私たちはロシアの戦略や戦術を学び、(防衛の)準備はできています」。11月末、島内にある国防大学で2年生のエリアス・バイニオさん(22)は、日本メディアの取材に胸を張った。欧州連合(EU)加盟国の安全保障を学ぶ記者研修での一コマだ。
人口約560万人のフィンランドは、戦時の兵力約28万人と予備役約87万人を擁し、欧州で最大規模の砲兵部隊も持つ。徴兵制があり、対象は18歳以上の男性で、女性は任意。毎年、約2万人が半年~1年程度の兵役に就く。
バイニオさんの場合は、兵役に就いた翌月の2022年2月、ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始した。「フィンランド軍も衝撃を受け、訓練のトーンが変わりました」と振り返る。自身も「国のためになる最善の道」を考え、国防大学に進んだ。26年8月に卒業し、陸軍中尉になる予定だ。
市街戦などの訓練で市民参加が急増
バイニオさんの例は特殊ではない。国防大学への応募者はウクライナ侵攻の開始以降、毎年増加し、24年は前年より114人多い730人だった。入学倍率は4倍程度だ。過去15年間の推移を見ると、ロシアがウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合した14年に迫る水準となっている。
応募増加の理由について、バイニオさんは「ウクライナ侵攻当初、フィンランドでは国民の間で恐怖心が広がりました。しかし、(戦争が長引く)その後の状況を踏まえて、今のうちに自分も戦えるよう強くなりたいという人が増えたのだと思います」とみる。
市街戦などに備える訓練に参加する市民も急増した。…
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