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「失われた30年」と言われるニッポン。社会に横たわる難題はなぜ解決されないのか。毎日新聞の調査報道がその本質に深く迫ります。

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コモンエイジ・公共のかたち

お産どこで?「産科ゼロの自治体」拡大 通院困難 健診で前泊も

使われなくなった分娩(ぶんべん)室を掃除する看護師=鹿児島県枕崎市の森産婦人科で2024年3月26日午後5時14分、取違剛撮影
使われなくなった分娩(ぶんべん)室を掃除する看護師=鹿児島県枕崎市の森産婦人科で2024年3月26日午後5時14分、取違剛撮影

 「6月いっぱいで産めなくなります」。妊娠が分かってまもなく、女性は産婦人科医から告げられた。女性が住む自治体で、お産できる場所がなくなることを意味していた。女性は転院し、妊婦健診のために車で往復2時間以上かける日々を繰り返した。全国で広がる産科ゼロの自治体。少子化に伴う妊婦の数の減少で経営が成り立ちにくいうえ、緊急対応も必要な過酷な勤務のためになり手が少なくなっており、「里帰り出産」が死語になる日が、現実味を帯びている。

 人口減少を背景に担い手不足が進み、公共セクターを中心に社会が行き詰まりの危機に直面する日本。コモン(公共)のあり方を考える企画「コモンエイジ」第2弾は住まいや医療、子ども、補助金行政などの課題を掘り下げます。
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 薩摩半島の南端に位置する鹿児島県枕崎市。市内で暮らす女性(27)は2022年末、2人目の妊娠が分かった。自宅から10分ほどの距離にあり、お産が市内で唯一可能な産科医院「森産婦人科」で長男(2)と同様、出産を考えていた。

 そんな中、23年1月の妊婦健診時、森明人院長(67)から冒頭の言葉を告げられた。「ショックでした」。女性は当時を振り返る。

 出産予定日は同8月下旬。森産婦人科はお産の取り扱いをやめた後も、妊婦健診などは続ける方針だった。女性は出産する医療機関と同じ場所で検査などを受けたいという思いから、転院を決意した。

 当時、近くの自治体にもお産できる施設はなかった。「できるだけ近い場所」として選んだのは、鹿児島市内の産婦人科だった。

 自宅からはバス停や駅も遠く、妊婦健診のため片道1時間以上かけて自ら車を運転した。親や夫は仕事をしており、全ての健診に同行してもらうのは難しい。「この先どうなるんだろう」。妊娠後期で週1回の妊婦健診になっても、ハンドルを握った。最後は親や夫の支えを得て、無事に出産することができた。

 一方…

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