いじめ報告ネットワーク代表理事 井田裕之さん
溺れる人を救う浮輪のように、いじめられている人を今すぐに助けられるサイトを作りたい。いじめを匿名で報告できる「うきわネットワーク」を作った井田裕之さんを動かしたのは、いじめを受けた末に亡くなったある男の子の事件でした。悩みを抱える人には「思いをありのままに伝えてほしい」と井田さんは話します。【田嶋夏希】
いじめ報告サイト、うきわネットワークは、2015年9月にサービスを開始しました。毎月40~50件、1年でおよそ500件のいじめの報告が寄せられます。投稿は小学生と中学生が4割ずつ、高校生が2割です。毎年6月くらいから増え、8月に少し減り、9月に再び増えるという傾向があります。
いじめの被害を受けた人はサイトの地図から自分の通う学校を選びます。いじめのレベルを1(ことばによるからかい・無視など)から5(傷害、脅迫・恐喝など)で選び、いじめている人、詳しい状況などを書き込み送信します。書いた人の名前を書く必要はありません。スマホやパソコンから24時間、本人だけでなく、いじめを目撃した人も書き込めます。
書き込みはサイトを運営する「いじめ報告ネットワーク」の井田さんたちにすぐに届きます。内容を確認した井田さんは、報告があった学校のある自治体の教育委員会に、書き込まれた内容そのままを全て伝えます。教育委員会は学校に問題を解決するよう指示するという仕組みです。各教育委員会には、月に1度まとめて報告しますが、暴力など緊急に対応が必要なものは、すぐに連絡しているそうです。対応は教育委員会に委ねられますが、問題が解決した人もいます。
学校で問題解決も
関西地方に住む中学1年生の女の子は、同級生からばい菌扱いされ、「くさい」といった言葉を浴びせられて傷ついていることを書き込みました。うきわネットワークから教育委員会を通じて連絡を受けた先生は、全体集会で「この学校でいじめがある」と話をしました。先生は書き込みをした人が特定されないように配慮しながら聞き取りをし、どういうふうに解決したいのかを相談してくれました。学年主任の先生と話し、主にいじめを行っていた人とクラス替えで別のクラスにすることで距離を取り、いじめは解決しました。=2面につづく
「ゆううつな君へ」では3回にわたり、新学期で気が重い人へメッセージを届けます。