「何も分からず10年」ひき逃げ死亡小学生の母無念 時効1カ月に迫る

通行人の女性に情報提供と時効撤廃の署名を呼びかける小関代里子さん(右)=埼玉県熊谷市仲町で2019年8月11日午後6時15分、中川友希撮影 拡大
通行人の女性に情報提供と時効撤廃の署名を呼びかける小関代里子さん(右)=埼玉県熊谷市仲町で2019年8月11日午後6時15分、中川友希撮影

 埼玉県熊谷市で2009年9月、小学4年の小関孝徳(こせき・たかのり)さん(当時10歳)がひき逃げされて死亡した事件が、時効成立まで1カ月に迫っている。解決を願う同級生や保護者、学校関係者はこの夏もチラシ配りなどで情報提供を呼びかけた。母代里子(よりこ)さんは「10年間変わらず行動してくださった方には感謝でいっぱい。一日一日を無駄にしないようにしたい」と話す。

時効撤廃求め署名活動

 「この近くで小学生が事故に遭ってしまい、もう少しで時効なんです」。今月11日、熊谷市の事故現場周辺。孝徳さんの同級生と保護者ら約20人が集まり、情報提供と、自動車運転処罰法違反(過失致死)と道路交通法違反(ひき逃げ)の時効撤廃を求める署名への協力を求めた。サッカーのチームメートだった高専5年、関根豊さん(19)は事故があった9月に毎年のように活動に参加。「自分の節目の度に、小関はどんな進路をたどっていたかと考える」と話す。

 事件は09年9月30日に発生。孝徳さんは書道教室から自転車で帰る途中だった。ひき逃げは16年9月に時効を迎え、自動車運転過失致死罪(当時)の時効も9月30日午前0時に迫る。

小関孝徳さん=代里子さん提供 拡大
小関孝徳さん=代里子さん提供

 代里子さんは孝徳さんが4歳の頃に夫と死別し、2人きりの家族。事件解決につながる情報を少しでも得ようと、代里子さんは事故後、事故現場付近を通行する車のナンバーの書き取りを続けた。群馬ナンバーの車も多いことが分かり、隣接する群馬県でもチラシを配った。書き取ったナンバーは10年間で約10万台分に上る。

ブログも開設

 今年1月には、新たに情報提供を求めるブログを開設。また事故時の状況を明らかにしようと、2月から民間の事故調査会社に相談し、県警から返却された自転車などの証拠品を鑑定。6月には「罪から逃げられなくなれば、ひき逃げはなくなるのでは」と時効撤廃を求める署名活動も始めた。

サッカーをする小関孝徳さん=代里子さん提供 拡大
サッカーをする小関孝徳さん=代里子さん提供

 孝徳さんが通った小学校の校長だった浅見信行さん(62)も解決を願う一人だ。事故直後には学校で自転車に乗る際のヘルメット着用を呼びかけ、今年7月は当時のPTA役員らとチラシ配りと署名活動を行った。「犯人は名乗り出てほしい」と願う。

 代里子さんは「事故状況について何も分からない10年間だった。一人でも多くの方からの情報を切実に求めています」と話す。【中川友希】

熊谷・小4男児死亡ひき逃げ事件

 09年9月30日午後6時50分ごろ、熊谷市本石1の市道で、自転車で帰宅途中だった市立石原小4年の小関孝徳さんが車にひかれ死亡した。有力な情報は無く捜査は難航。埼玉県警は今年1月、15人体制の専従班を設置し、7月からは27人に増員した。母代里子さんが鑑定を依頼した民間の交通事故調査会社は、孝徳さんの衣服についた痕跡などから「2台の車にひかれた可能性がある」と指摘している。

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