この世でいちばん面白い小説
筒井康隆が「ひとつだけ選ぶならコレ」とベタ誉めしてたので手を出す。ジュヴナイル向け「巌窟王」で読んだつもりになっていたが、今回、岩波赤版「モンテ・クリスト伯」でブッ飛んだ。
ストーリーを一言であらわすなら、究極のメロドラマ。展開のうねりがスゴい、物語の解像度がスゴい、古典はまわりくどいという方はいらっしゃるかもしれないが、伏線の張りがスゴい。てかどれもこれも強烈な前フリだ。伏線の濃淡で物語の転び方がミエミエになるかもしれないが、凡百のミステリを蹴散らすぐらいの効きに唸れ。読み手のハートはがっちりつかまれて振り回されることを請合う。
みなさん、スジはご存知だろうから省く。が、痛快な展開に喝采を送っているうちに、復讐の絶頂をまたぎ越えてしまったことに気づく。その向こう側に横たわる絶望の深淵を、主人公、モンテ・クリスト伯と一緒になって覗き込むの。そして、「生きるほうが辛い」というのは、どういう感情なのかを思い知るのだ。
読まずに、死んだら、もったいない。このblog読んでる全員にオススメ。読むときは、イッキ読みで。
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コメント
ご存知かもしれませんが、GONZO製作のアニメ「巌窟王」もすばらしいですよね。
投稿: biaslook | 2009.03.30 01:06
ああ~、紹介を見たらまた通し読みしたくなりました。
素晴らしいんですよねー!
初読の時は、
「なぜこの人が死んでこの人が生き延びるのだ!」
みたいに憤慨したものですが
何度も読み返している長い年月のうちになんとなく納得できるようになりました。
投稿: しろいまちこ | 2009.03.31 08:20
>>biaslookさん
情報ありがとうございます。GONZO版「巌窟王」はウェブサイトを見ただけです。
これを機に探してみてみようかと。
>>しろいまちこさん
死は一つの安息なのでしょう、狂気が救いになった人もいるように。
無駄な描写一切無し、ストーリーの妙味だけでここまでおもしろい小説があるとは、「生きててよかった」級です。
投稿: Dain | 2009.03.31 23:13
私はGONZO版「巌窟王」から入って、原作をどうしても読みたくなり、ほとんど徹夜で数日で読みきった記憶があります。
アニメ版は、原作の前半部がカットされており、モンテクリスト伯と、アルベール、フランツの青年二人が会うところから始まります。
もちろん現代の感覚でSFアニメとして演出されているので登場人物の境遇やラスト、伏線の省略など変わった部分はあるのですが、名場面などはかなり原作に忠実で良心的な作風になっています。
おかげでアニメで感動し、そのバックグラウンドにあった原作を読んで二度感動しました。
もう一度押入れから引っ張り出して読んでみようか、と紹介文を読んで思いました。
何度読んでもいい名作ですね。
投稿: よしぼう | 2009.04.02 21:30
>>よしぼうさん
GONZO版の紹介、ありがとうございます。SFアニメですかー
ぜひ探して観ます。あと、マンガもあるようですね、これも手にしてみたいです。
投稿: Dain | 2009.04.03 07:04
アニメネタがあったのコメントします。
GONZO版【巌窟王】ですが前田真宏監督は元々【虎よ、虎よ!】の原作アニメを進めていたようです。
ただ権利問題で諦め、オマージュ元の【モンテクリスト伯】をアニメ化したそうです。
ちなみに昨日【虎よ、虎よ!】を読了しました。
上記のネタを聞いた方から勧められていましたがここの紹介を見て読みました~
ラストは個人的に合いませんでしたが読んでる間すごく楽しかったですね。
【虎よ、虎よ】!と漫画【エリア88】は岩窟王繋がりで好きな作品になりましたね。
投稿: STしん | 2009.04.11 13:53
>>STしんさん
「エリア88」とは懐かしいですね、でも「巌窟王」と関係があるのかなぁ…と調べてビックリ。プロットを拝借していたのですね、言われてみれば確かにそうかも…
思わぬところで懐かしい発見がありました、ありがとうございます。
投稿: Dain | 2009.04.12 10:05
こんにちは。
35歳の男(ニート)です。
いつも読んでいます。
書き込みは2度目ですが(2007.07.27「松岡正剛の読書術」以来)
ブログはすべて読んで参考にさせていただいています。
とくに「東大、京大、北大、広大の教師が新入生にオススメする100冊」の労作ぶり、
ここまで調べ上げる情熱には感動しました!
すばらしいリストを作っていただき、とにかく ありがとうございます!
(お礼を言おう言おうと思っていたら、もう一年も経っていた…)
閑話休題。
いつ『モンテクリスト伯』が出てくるのか、ずっと待ってました。
やっと出てきたという感じです。
このブログではいつも教えられるばかりで、
「ああ、これはもう読んだな」と思えるのはめったにありません。
しかし、今回は既読というだけでなく、
自分でもお気に入りなのでとてもうれしいです。
『モンクリ』は、僕的には『カラ兄』と並ぶ永遠の2トップなのです。
うれしい、というだけで思わず書き込みをしてしまいました。
しかもこのタイトル!→「この世でいちばん面白い小説」
dainさんにこう言っていただければ、デュマもきっと喜んでいるに違いないでしょう。
なんだかとりとめのない書き込みになってしまいましたが、
これからも期待しています!
投稿: シマリス和尚 | 2009.04.18 09:31
>>シマリス和尚さん
「大学教師が新入生にオススメする100冊」シリーズは、実は、わたし自身のために作っています。毎年、この季節がくるたびに、「あと死ぬまでに何が読めるのだろう」→「死ぬまでに何を読んでおくべきだろう」と考えるので。しょうもない本を漫然と読んでいるうちに、自分の一生を使い果たしてしまうのが、恐ろしいです。そうならないための戒めが「100冊」なのです。
「この世でいちばん面白い小説」は、「モンクリ」の他にも、あります。それに出会うための場所が、このblogだと思っています。「これは!」というのがありましたら、ぜひ教えてくださいね。
投稿: Dain | 2009.04.20 00:31