ふつうの人にオススメできないジャック・ケッチャム「襲撃者の夜」
ふだんは気づきにくいが、カッターナイフを押し当てて(力を込めて)一気に引けば分かる、鋭い痛みを感じたところからが「自分」だ。あるいは、吐くまで呑んで酸っぱい息をしているのが「自分」、さらに臭いと感じているのが「自分」だ。
強い刺激を与えることで、無自覚に過ごしている身体感覚を取り戻すことができる。ジャック・ケッチャムの小説を読むことは、これに近い。恐怖であれ嘔吐感であれ、強い思いにココロがゆさぶられることで、そのカタチを自覚することができる。大切に慈しんでいるものが、容赦なくもぎとられるとき、「痛い」と感じたところから、わたしのココロがはじまっている。
だから、ふつうの人にはオススメできない。「ジャック・ケッチャムが好きだ」なんていうやつは頭がイカれてるを3年前に書いたが、その最新作「襲撃者の夜」を読んでも変わらない。これ愉しむような奴は頭がどうかしているね。
狙ってやっているのかもしれないが、宣伝文句はものすごく控えめ。「一見さんお断り」のつもりなんだろう。あるいは、知らない人がうっかり読まないための配慮かも。
北米東海岸メイン州、海岸沿いのリゾート地。ある夜、残忍な殺人事件が起こり、女性二人が殺され、赤ん坊が消えた。地元の警察は事件の捜査を始めるが、警察が捜索で出払っている最中にふたたび異常な殺人事件が! そしてその殺人者の正体は想像を絶するものだった。鬼才ケッチャムが放つ戦慄のホラー!
本書は「オフシーズン」の続編。前作が血みどろ小説の大傑作だったので期待しすぎた感もあった。未読の方は、「オフシーズン」から、どうぞ。
「オフシーズン」は、残虐描写のオンパレード。グロ極太ストーリーでラストまで一直線。刺す、抉る、裂く、捻る、切る、折る。悲鳴と血潮、肉塊と内臓、あと脳みそ。殺される何の理由もない犠牲者と、その肉体を破壊する人のカタチをした「人じゃない」食人族。意味なんてない。一緒に悲鳴をあげながら、ひたすら読め。一度閉じたら怖くて開けなくなるだろうから、一気に読め。ネットで「襲撃者」の評判は「(オフシーズンと比べて)食い足りなさ」が散見されるが、なに正気ぶってんだよ、「オフシーズン」読んだときのこと忘れたのか? このテのは良心をどけて「中に入って」読むんだよ、とヒトコトいっておく。
自分が慣れていく(狂っていく)感覚が分かる。ココロのリミッターが解除されるのは、かなりの快感。すげーおもしろいぞ(わらい)。ケッチャムの小説はすばらしいね、ああ。
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コメント
臭すぎワロタ
投稿: | 2014.07.30 15:33