内定切り:悪質「自己都合で辞退と書いて送れ」
途切れなくかかってくる内定取り消しの相談電話の対応に追われる連合のメンバー=東京千代田区の連合本部で2008年12月10日午前11時、東海林智写す 雇用状況の悪化に伴い、来春卒業予定の大学生の内定取り消しが相次いでいる問題で、連合は10日までの2日間、緊急電話相談を実施した。2日間に寄せられた相談は21件。内定した職種の変更を迫られたり、採用してもすぐ解雇することを明言された例があり、内定者が入社前から退職勧奨を受けているような状態にあることが浮かび上がった。【東海林智】
悪質なケースとしては、内定取り消しを通告された男子学生が理由を聞くと「内定だから、説明する必要はない」と言われた例があった。会社は「こちらの取り消しではなく、自己都合で辞退すると書いて書面で送れ」と言い、学生が拒否して働くことを希望すると「採用してもすぐに解雇する」と言われたという。内定は実質的な雇用契約で、取り消す場合は基本的に解雇と同じ扱いになる。やむなく取り消す場合も合理的な理由の説明などが求められる。
内定は設計などの職種で得たのに営業職でないと仕事がないと言われた例や、「大阪で仕事をするという内定を取り消し東京でならば可能性がある」などと伝えられた例もあった。「経営が厳しく採用を延期する」と言いながら、延期期間を明確にしないケースも。連合は、自ら内定を辞退させるための嫌がらせとみている。
連合は11、12日も午前10時~午後8時まで、非正規雇用労働者の解雇・雇い止め、内定取り消しの相談に応じる。相談電話は全国共通(0120・154・052)。
(出所:毎日新聞 2008年12月11日 2時30分(最終更新 12月11日 11時18分)
質問なるほドリ:内定取り消しって許されるの?=回答・小泉敬太
<NEWS NAVIGATOR>
◆内定取り消しって許されるの?
◇合理的理由ある時のみ 経営苦しいだけではダメ
なるほドリ 来春卒業予定の学生が企業から採用内定を取り消されるケースがまた増えたみたいだね。
記者 厚生労働省の調査によると、19日現在で769人(大学生632人、高校生137人)。11月の前回調査の2・3倍にも達しました。まだ年度途中なのに、97年度の1077人に次ぐ多さです。この時に内定を取り消した事業所は80で、廃業した山一証券が1社で490人も占めましたが、今回の事業所数は172と既に93年度の調査開始以来最多で、広範囲に及んでいることを示しています。
Q 許されるの?
A 基本的には許されません。内定を取り消された学生がその企業を訴えた裁判で79年の最高裁判決は「採用内定によって学生と企業との間で労働契約が成立したと認められる」とした上で「取り消しは客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合に限られる」と判断し、これが今も基準になっています。
Q 認められる場合って?
A 裁判所が個別に判断することになりますが、卒業が採用条件なのに卒業できなかったなど学生側に明白な落ち度がある場合が考えられます。内定後に企業が経営破綻(はたん)した場合も、やむを得ないと言えるでしょう。
Q 今のような景気悪化や経営悪化も認められる?
A 今回の555人は経営の悪化が理由です。経営上の理由で社員を整理解雇する場合、経営が苦しいというだけではだめで▽どうしても人員削減しなければならない必要性がある▽解雇回避にできる限りの努力をした▽本人に十分説明し、納得を得る努力をした--など厳格な要件が必要だという判例が確立し、内定取り消しも同様に考えるべきだとの司法判断が出ています。安易な取り消しは認められません。
Q 学生はどんな心構えをしたらいいの?
A 内定取り消しにすぐに同意せず、学校やハローワークに相談してください。企業に撤回を迫ったり、十分な補償を求めたりする権利があります。泣き寝入りすべきではありません。(論説室)
==============
◇あなたの質問をお寄せください
〒100-8051(住所不要)毎日新聞「質問なるほドリ」係([email protected])
(出所:毎日新聞 2008年12月28日 東京朝刊)
社説:内定取り消し 悪質企業の公表もっと早く
企業から採用内定を取り消される学生が後を絶たない。厚生労働省の調査では、3月卒業予定の大学生や高校生らの内定取り消しは1月23日現在、271事業所で1215人。1カ月前の調査より446人も増え、93年度の調査開始以来最多だった97年度の1077人を年度途中なのに軽く抜いてしまった。
急速な景気悪化が背景とはいえ、取り消された学生はたまらない。この時期の新たな就職活動は極めて厳しい。落ち度のない若者が企業の都合で理不尽な目に遭うことは許されない。
内定取り消しを防止する「切り札」として厚労省が打ち出した施策が、内定取り消しを行った企業名の公表だ。公表基準は▽2年度以上連続の取り消し▽同一年度で10人以上を取り消し、全員に他の雇用先を確保していない▽事業活動の縮小が明白に認められない▽取り消し理由の学生への説明が不十分▽他の就職先確保の支援をしていない--のいずれか一つでも該当する場合だ。倒産した企業は公表対象から除かれる。
厚労省は既に省令を改正し、施行した。施行前の内定取り消しでも、撤回や他の雇用先確保をせずにその後も公表基準に当てはまる企業は公表対象だ。バブル崩壊直後の92年度に一度だけ内定取り消し企業名が当時の労相の政治判断で公表されたことはあるが、制度化されたのは初めてだ。企業への抑止力になると、効果を期待する声は大きい。
ところが、厚労省の公表は今のところ、4月を予定しているという。そんなに遅くなるとは一体どうしたことか。公表の最大の目的は翌年度から就職活動をする学生への情報提供だから、と厚労省は説明する。厚労省が公表前に取り消し撤回などを企業に指導する時間も必要だという。
確かに名前を公表される企業にとってダメージは大きく、慎重さは欠かせないが、公表が遅くなるのでは内定取り消しの歯止めにはならないだろう。企業への指導も厳格でなければならない。10人の取り消しを1人減らせば公表を免れるなどと「抜け道」を伝授するのではないかと誤解されては元も子もない。
倒産したわけではないのに10人以上の内定を取り消した企業は複数に上るという。内定取り消しとみられないために学生が自ら辞退するよう強要する企業もある。厚労省は悪質な企業には厳しい姿勢で臨み、企業名はできるだけ早く公表すべきだ。
ここにきて、内定を取り消された学生を積極採用しようという企業も出てきた。留年して翌年度の就職活動を目指す大学生のために低額の納付金で卒業の1年間延期を認める大学や、取り消された高校生らのために入学金を半額にする大学も現れた。社会人として羽ばたく直前に企業に裏切られ、傷ついた学生には、さまざまな支援が必要だ。
(出所:毎日新聞 2009年2月3日 0時05分(最終更新 2月3日 0時11分)
途切れなくかかってくる内定取り消しの相談電話の対応に追われる連合のメンバー=東京千代田区の連合本部で2008年12月10日午前11時、東海林智写す 雇用状況の悪化に伴い、来春卒業予定の大学生の内定取り消しが相次いでいる問題で、連合は10日までの2日間、緊急電話相談を実施した。2日間に寄せられた相談は21件。内定した職種の変更を迫られたり、採用してもすぐ解雇することを明言された例があり、内定者が入社前から退職勧奨を受けているような状態にあることが浮かび上がった。【東海林智】
悪質なケースとしては、内定取り消しを通告された男子学生が理由を聞くと「内定だから、説明する必要はない」と言われた例があった。会社は「こちらの取り消しではなく、自己都合で辞退すると書いて書面で送れ」と言い、学生が拒否して働くことを希望すると「採用してもすぐに解雇する」と言われたという。内定は実質的な雇用契約で、取り消す場合は基本的に解雇と同じ扱いになる。やむなく取り消す場合も合理的な理由の説明などが求められる。
内定は設計などの職種で得たのに営業職でないと仕事がないと言われた例や、「大阪で仕事をするという内定を取り消し東京でならば可能性がある」などと伝えられた例もあった。「経営が厳しく採用を延期する」と言いながら、延期期間を明確にしないケースも。連合は、自ら内定を辞退させるための嫌がらせとみている。
連合は11、12日も午前10時~午後8時まで、非正規雇用労働者の解雇・雇い止め、内定取り消しの相談に応じる。相談電話は全国共通(0120・154・052)。
(出所:毎日新聞 2008年12月11日 2時30分(最終更新 12月11日 11時18分)
質問なるほドリ:内定取り消しって許されるの?=回答・小泉敬太
<NEWS NAVIGATOR>
◆内定取り消しって許されるの?
◇合理的理由ある時のみ 経営苦しいだけではダメ
なるほドリ 来春卒業予定の学生が企業から採用内定を取り消されるケースがまた増えたみたいだね。
記者 厚生労働省の調査によると、19日現在で769人(大学生632人、高校生137人)。11月の前回調査の2・3倍にも達しました。まだ年度途中なのに、97年度の1077人に次ぐ多さです。この時に内定を取り消した事業所は80で、廃業した山一証券が1社で490人も占めましたが、今回の事業所数は172と既に93年度の調査開始以来最多で、広範囲に及んでいることを示しています。
Q 許されるの?
A 基本的には許されません。内定を取り消された学生がその企業を訴えた裁判で79年の最高裁判決は「採用内定によって学生と企業との間で労働契約が成立したと認められる」とした上で「取り消しは客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合に限られる」と判断し、これが今も基準になっています。
Q 認められる場合って?
A 裁判所が個別に判断することになりますが、卒業が採用条件なのに卒業できなかったなど学生側に明白な落ち度がある場合が考えられます。内定後に企業が経営破綻(はたん)した場合も、やむを得ないと言えるでしょう。
Q 今のような景気悪化や経営悪化も認められる?
A 今回の555人は経営の悪化が理由です。経営上の理由で社員を整理解雇する場合、経営が苦しいというだけではだめで▽どうしても人員削減しなければならない必要性がある▽解雇回避にできる限りの努力をした▽本人に十分説明し、納得を得る努力をした--など厳格な要件が必要だという判例が確立し、内定取り消しも同様に考えるべきだとの司法判断が出ています。安易な取り消しは認められません。
Q 学生はどんな心構えをしたらいいの?
A 内定取り消しにすぐに同意せず、学校やハローワークに相談してください。企業に撤回を迫ったり、十分な補償を求めたりする権利があります。泣き寝入りすべきではありません。(論説室)
==============
◇あなたの質問をお寄せください
〒100-8051(住所不要)毎日新聞「質問なるほドリ」係([email protected])
(出所:毎日新聞 2008年12月28日 東京朝刊)
社説:内定取り消し 悪質企業の公表もっと早く
企業から採用内定を取り消される学生が後を絶たない。厚生労働省の調査では、3月卒業予定の大学生や高校生らの内定取り消しは1月23日現在、271事業所で1215人。1カ月前の調査より446人も増え、93年度の調査開始以来最多だった97年度の1077人を年度途中なのに軽く抜いてしまった。
急速な景気悪化が背景とはいえ、取り消された学生はたまらない。この時期の新たな就職活動は極めて厳しい。落ち度のない若者が企業の都合で理不尽な目に遭うことは許されない。
内定取り消しを防止する「切り札」として厚労省が打ち出した施策が、内定取り消しを行った企業名の公表だ。公表基準は▽2年度以上連続の取り消し▽同一年度で10人以上を取り消し、全員に他の雇用先を確保していない▽事業活動の縮小が明白に認められない▽取り消し理由の学生への説明が不十分▽他の就職先確保の支援をしていない--のいずれか一つでも該当する場合だ。倒産した企業は公表対象から除かれる。
厚労省は既に省令を改正し、施行した。施行前の内定取り消しでも、撤回や他の雇用先確保をせずにその後も公表基準に当てはまる企業は公表対象だ。バブル崩壊直後の92年度に一度だけ内定取り消し企業名が当時の労相の政治判断で公表されたことはあるが、制度化されたのは初めてだ。企業への抑止力になると、効果を期待する声は大きい。
ところが、厚労省の公表は今のところ、4月を予定しているという。そんなに遅くなるとは一体どうしたことか。公表の最大の目的は翌年度から就職活動をする学生への情報提供だから、と厚労省は説明する。厚労省が公表前に取り消し撤回などを企業に指導する時間も必要だという。
確かに名前を公表される企業にとってダメージは大きく、慎重さは欠かせないが、公表が遅くなるのでは内定取り消しの歯止めにはならないだろう。企業への指導も厳格でなければならない。10人の取り消しを1人減らせば公表を免れるなどと「抜け道」を伝授するのではないかと誤解されては元も子もない。
倒産したわけではないのに10人以上の内定を取り消した企業は複数に上るという。内定取り消しとみられないために学生が自ら辞退するよう強要する企業もある。厚労省は悪質な企業には厳しい姿勢で臨み、企業名はできるだけ早く公表すべきだ。
ここにきて、内定を取り消された学生を積極採用しようという企業も出てきた。留年して翌年度の就職活動を目指す大学生のために低額の納付金で卒業の1年間延期を認める大学や、取り消された高校生らのために入学金を半額にする大学も現れた。社会人として羽ばたく直前に企業に裏切られ、傷ついた学生には、さまざまな支援が必要だ。
(出所:毎日新聞 2009年2月3日 0時05分(最終更新 2月3日 0時11分)