東周列国 戦国編 第九集(1)
一方、安厘王の異母弟である信陵君は、趙がみすみす秦に下ることを座視するような現状を憂いていた。だが、家臣である辛恒衍によって信陵君の力が強大になりすぎていると吹き込まれた安厘王は、愛妾の如姫が信陵君に恩義を感じていることへの嫉妬も手伝って、彼のことを警戒し始める。そして主演に呼び出した席で、彼の持つ軍の割り符を献上させ、信陵君から軍の指揮権を奪ってしまう。
安厘王の信陵君に対する警戒心には根拠もあった。信陵君の元には彼を慕う食客が三千人もいたのだ。その中に信陵君が先生と呼んで尊敬している侯贏という老賢者がいた。侯贏は安厘王の策を評価しながらも、趙が滅ぼされれば、次は魏の番であるだろうと懸念する。そして、なぜかそのあと急に、会わせたいものが居るから翌日車を出してくれ、と頼み、市場に出かけてさんざん待たせた後に、肉屋を営む朱亥という男を信陵君に紹介する。
魏の使者による降伏勧告も受け付けず、秦への抵抗を続けていた趙であったが、やはり援軍なしでは対抗できない。そこで、魏王の妹である平原夫人が援軍を求めて魏にやってきた。なんとか趙を救いたいと考える信陵君も彼女に口添えして、安厘王に援軍を要請するのだが、信陵君への反感も手伝ってすっかり意固地になった安厘王は、ついに一兵卒たりとも援軍は出さない、と言い切ってしまう。
もはや自分だけで趙の救出に向かうしかない、と決意した信陵君に、彼の食客たちも賛同し、三千人の手勢を率いて趙に向かうことになった。そしてそのなかには、侯贏に紹介された朱亥の姿もあったのだが、肝心の侯贏の姿が見えない。
それをいぶかしく思いながらも出発の時が来た。そして見送る人混みの中に侯贏の姿を見つけた信陵君は挨拶しようとするのだが、無視されてしまう。しかも別れを言おうと慌てて後を追ってきた信陵君に対して、「死地に赴く人にかける言葉などない」ととりつく島もない。尊敬する侯贏先生の振る舞いに不審を覚えた信陵君は、進軍をいったん取りやめて侯贏の元に引き返す。と、侯贏はまるでそれを見越していたかのように待っているのであった。
そしてわけを聞く信陵君に対して、わずか三千人の手勢で立ち向かったところで、何の成果も得られず全滅するのは目に見えている、それで信陵君の名誉を高めることはできるだろうが、死んでいく三千人の生命はどうなるのだ? と諭される。
その指摘に襟を正した信陵君が、どうすればいいのかと教えを請うと、上策は国王を殺して王位を奪うこと、と答える。さすがにそれは出来ない、と即座に断る信陵君に、次善の策として、王の愛妾・如姫を通じて軍の割り符を盗み、援軍として国境に駐屯している正規軍を使う策を授ける。だが、それでは如姫や援軍の将である、晋鄙の生命が犠牲になる可能性がある。躊躇する信陵君に、侯贏は三千人の食客で秦軍に当たるのはもっとも下策だと言い残して去っていく。
そして、信陵君は割り符を奪って軍を動かすことを決断するのだった。
戦国時代というのは、基本的には衛鞅の改革によって強大になった秦にどう対抗するか、というのが各国の基本的な政策だったわけだが、もう戦国末期のこの時期になると、まともに対抗できる勢力も無くなってきてるんだよね。魏や趙も、単独で戦ったら勝てない、というのはもう当たり前みたいに考えていて、こうなると終わりも近くなってきた感じがする。
しかし、今回の話、なんといっても侯贏先生である。私が爺キャラに弱いということをさっ引いても、なかなかのステキ爺だと思うのだが。この人の魅力は、どんな些細な振る舞いでも、奥に深い洞察が隠れていると思わせるところである。市場のシーンもそうだし、見送りのシーンなんかもそうだけど、自分の行動が周りにどういう影響を及ぼすか見通している感じがするんだよね。さすがだ。
それじゃご飯つながりということで、次はこの方はどうでしょうか。
二文字目がかなりハードル高そうですが、その辺は気合と愛で乗り切っていただくということで(←他人事なので無責任)
>自分の行動が周りにどういう影響を及ぼすか見通している感じ
この人はたぶん、市場の場面では信陵君がちゃんと自分を待っていてくれるであろうこと、そして出征の場面では自分の態度を見た信陵君が思いとどまって自分を訪ねてくれるであろうことも、ちゃーんとわかった上で(ある意味、信陵君を信頼しているということですね)そう行動しているっぽいところがあるんですよね。信頼しつつ試しているというか。さすがです。
…なんか信陵君ばなしのはずなのに視線がだいぶ逸れている気がするのですが、
お互いいつものことですので気にしないことにします(いいのかそれで?)。
2008.09.01 (Mon) | Manbo #mQop/nM. | URL | Edit