東周列国 戦国編 第九集(2)
そして割り符は夫人たちから侯贏先生の手に渡り、さらに城門で待っていた朱亥が受け取る。そして趙に向かっている信陵君の元に届けられる手はずになっているのであった。だが、一緒に行きましょうという朱亥に対して、侯贏は今回の策の責任をとる為に残る、と答えるのであった。趙を救うためとはいえ、結果的に罪のない人の命を奪うことになるこの策を献上した者として、生命を投げ出すつもりでいたのだ。
こうして割り符を手に入れた信陵君は、魏の援軍の駐屯地に赴き、国王から魏を救うように命令が下ったと伝える。だが、侯贏の予想通り、魏軍の将軍・晋鄙は信陵君を疑い、本当に命令が下ったかどうか国王に確認しようとする。やむなく信陵君は朱亥に命じて晋鄙を殺し、改めて割り符を持って軍の指揮権を握り、趙の救援に赴く。
この知らせは安厘王の元にも届いた。激怒した王は、割り符を盗んだ犯人として信陵君を糾弾し、領地を取り上げて罰しようとする。だが、そのとき信陵夫人が自ら犯人として名乗り出た。そして罪をかぶって自害しようとした夫人をかばい、如姫までもが犯人としての名乗りを上げたことで、もうすっかり頭に来た安厘王は二人とも処刑するように命じる。
刑場に引き立てられ、二人が斬首されようというそのとき、こんどは侯贏が現れ、すべての責任はこの策をたてた自分にあると言って、自害する。そして、その姿を見た信陵夫人も跡に続いた。更に如姫も自害しようとするが、処刑を行おうとしていた辛垣衍に邪魔され、彼女だけは生き残り、牢につながれることになった。
一方、趙に入った信陵君は見事に秦を撃退し、趙国に大歓迎される。だが、そのときの慢心を朱亥に諫められていた。そのとき、魏からの使者が夫人の自害を知らせにやってきた。祖国に裏切られた、という思いから帰国の意志を無くした信陵君は趙にとどまり、ここで暮らそうとする。
信陵君が魏に戻らないことを知った秦は、今度は魏に攻撃をしかけてきた。軍の精鋭は信陵君と共に趙にとどまっているため、残りの兵では秦の攻勢をとても抗いきれない。困り果てた安厘王は、趙に使いを出し、信陵君に帰国するように要請する。だが、夫人を殺された恨みを持つ信陵君は使者に会おうともせず、ついには帰国を促す者は処刑する、という命令まで出してしまう。
打つ手の無くなった安厘王は最後の望みとして、如姫に説得してもらおうと、彼女を牢から出して信陵君の元に向かわせる。はじめは彼女に対してもかたくなな態度を変えなかった信陵君であったが、真摯な説得に心を動かし、最後には帰国することに同意する。そして、信陵君の帰国を知った秦は軍を引き、魏は救われた。
信陵君を出迎えた安厘王は、割り符を奪った件はすべて水に流すと寛大なところを見せる。だが、この機に六国で連合して秦を討とうという信陵君の提案には答えず、さらに辛垣衍を上将軍に任命して、信陵君から兵権を再び取り上げてしまう。せっかく帰国したものの、力を取り上げられてしまった信陵君は、ただ時代を眺めていることしかできなくなってしまった。
なんというか……あれだけ多く立派な人たちが我が身を捧げて成し遂げたことだというのに、この結末はちょっと寂しすぎるような。歴史というのは得てしてそういうものであるのかもしれないけれど。
ところで今回もやっぱり目を引いたのは侯贏先生だった。前編で信陵君に授けた策は、罪亡き人の生命を犠牲にしてしまうものであったわけで、そのために信陵君もはじめは躊躇していた。でも、その策を授けたことの責任をとって死ぬつもりでいた、なんてところまでは読めませんでした。たぶん、上策、つまり国王を殺して王位を奪う、という策をとった場合でも、兄弟殺しを唆したことの責任は取るつもりだったのでは?
>あれだけ多く立派な人たちが我が身を捧げて成し遂げたことだというのに、この結末
この章に限らず、戦国篇はやっぱり最終的にどうなるのかという、
一種の「天井」が存在してしまっているのがときどきネックに感じられちゃうんですよね。
ネックというか、時代的な行き詰まり感というか。
春秋篇には基本的にそれがないので、鬱話こそ時々あったとしても、
全体としての話の流れ自体はかなり自由というか、本当に先がどうなるのかわからない、先が広がっているような感覚がありました。
まあこの辺も、時代の違いということで、意図的に統一されて表現されているものではあるのかも知れませんが…
それはさておき、私としてはやっぱり信陵君ってこういう人ってイメージだったんですよ。
だから「アレ」に登場した時にもちょっと期待してしまったんですが…(^^;
まあ「頭の切り替えが必要」というやつですね(^^;
2008.09.03 (Wed) | Manbo #mQop/nM. | URL | Edit