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小野木明恵氏講演会「翻訳家が説く『索引~の歴史』ご報告

小野木明恵氏講演会
翻訳家が説く『索引 ~の歴史』

書影

2024年11月16日(土)に開催した後援会のご報告です。
小雨の降る中、お集まりいただきありがとうございました。

当方の不手際で小野木さんがご用意くださったPowerPointの資料が使えず、小野木さんにもご参加の皆様にもご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ありませんでした
あらかじめお送りいただいていたファイルを手元資料として印刷していたものと、数冊の実物の本をご覧いただきながらの講演となりました。

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資料に基づいての講師のお話は、本の内容はもとより、著者であるデニス・ダンカンの調査の方法や、翻訳する上でのご苦労など多岐にわたるものでした。

紀元前3世紀頃には文字学習のテキストとしてその萌芽が見えること
アレクサンドリア図書館で既に実際の利用に供するための目録が作成されていたこと
サン・ジャック修道院で一万語以上の用語索引、440個のトピックからなる主題索引が作成されたこと
13世紀とされる索引の誕生以前にも様々な歴史があることを学びました。

17~18世紀に政敵を揶揄する目的で索引が利用されたことなどは、本来の索引の目的を逸脱したエピソードとして面白くはありますが、現在の私たちもネット上の切り取られた情報を受け取る上で気をつけなければならないと考えさせられました。

1800年代後半からは多くの書物を横断的に検索するための分野別主題索引の作成が計画されたり、数百冊の学術誌のアルファベット順索引が作られたりと現代につながる動きが始まります。
インターネット検索を実現するためにはインデックスが不可欠です。まさに私たちの生活に欠かせないものとなっています。

索引の歴史は書物の歴史であり、情報の歴史だということを改めて認識しました。

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今回の本を翻訳するに当たって、図版一つ一つそれぞれの権利者と著作権の交渉をしたとのことです。予算のこともあるなか、光文社の担当者の方がご尽力くださったとのこと。
私自身も長年著作権の許諾を得る交渉をしてきました。翻訳本については日本の出版社が交渉を代行してくださることも多いのですが、海外の代理人と交渉しなければならないこともあり、苦労したことを思い出しました。
貴重な図版を目にできるのはそのおかげだと思いつつ、もう一度じっくり眺めた次第です。

質疑応答では、法律や社会背景が異なる中でのご苦労として、正面の文章以外に各分野の学習が不可欠で、一般的な知識を得た上で翻訳することや、正しくすっと読める日本語にするために多数の日本語の本を読むことなどを話してくださいました。

どのくらいの期間がかかるのかという質問には、小野木さんの場合は週に3日朝から18時位までお仕事をして、7~8ヶ月かかるとのことで、年に1冊のペースなのだそうです。

ご苦労の多い翻訳のお仕事をするモチベーションは、依頼されたからにはよいものにしたい、恥ずかしくないものにしたいとの思いだとお答えでした。

索引の重要性を知ると共に、翻訳に対する小野木さんの真摯な取り組み、また出版社の編集や校正をはじめとする各部署の皆さんのお仕事の大変さを垣間見た2時間でした。



参加者の皆さんから寄せられた感想です。
一部抜粋しました。全文掲載できなくて申し訳ありません。

・中世から今に至る、書物としての営々とした歴史に関しての壮大な1冊。
 小野木氏の講演はとても興味深くよい2時間を過ごせた。
 想像通りの手間ひまを要する仕事のよう。翻訳に費やす時間は楽しい、だろうが、経済的な応酬は十分とは言えないと察した。
 読者の我々は感謝しかない。

・翻訳する原著の分野が多岐にわたっており、それぞれの分野に対する知識を身につける・・・とても大変なお仕事だと思った。

・翻訳する際のご苦労、著者の思いを汲み取る労力がわかりました。 
 図画の著作料の予算の確保の話は裏側の話で、おもしろかったです。

・翻訳する時のご苦労がわかりました。読む側として受け取り方がかわると思いました。

・この手の本をどう訳されるのかと思いながら手に取りましたが、一気に読ませていただきました。

・索引の歴史が修道院でも行われていたこと、翻訳の方の勉強のご苦労などを知れて楽しかったです。

・"楽な文など一つもない"という言葉が大変印象的で翻訳というお仕事の奥深さを知ることができました。
 アレクサンドリア図書館のお話なども大変興味深かったです。

・翻訳してくださる方があって私は本を読めていることに深く感謝の念を持ちました。


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