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小澤俊夫氏講演会「日本昔話からみたグリム童話」

小澤俊夫先生といえば、グリム童話。そして昔話ですね。
先生が所長をしておられる小澤昔話研究所主催の「昔話大学」を受講された方もいらっしゃると思います。
FM FUKUOKAの「小澤俊夫 昔話へのご招待」という番組をお聞きになった方もあるかもしれません。アーカイブも含めネット上で聞けますのでお聞きになってみてください。

小澤俊夫 昔話へのご招待

今回の講演会は、こうべ子ども文庫連絡会の主催でした。2週間前には講演会をより楽しむための勉強会も開かれ、そちらにも参加してこの日を迎えました。

最初にグリム兄弟についてのお話がありました。グリム兄弟といえば昔話、というだけではなく、ドイツでは「東西ドイツ統合の象徴」とされる大きな存在なのだそうです。若き日の兄弟が恩師と出会い、その教授の家へと通った石の坂道がグリム童話の元になったというのは、若い人が自分の道を見つけることへの励ましとなるでしょう。

「おいしいおかゆ」のどんどんおかゆが出てくるお鍋をくれるおばあさんは、日本の昔話に出てくる山姥と同じで、山姥は山に住む神様であり、恐いと同時に幸運をもたらすこともある自然神であること。おかゆは「山姥のにしき」の錦と同様のとめどない幸運であること。またそれはポリネシアの神話にあるハイヌウェルという女神が元になっていることなど、昔話が持つ大きな広がりをお聞きすることができました。

ドイツではキリスト教が入ってきたとき、自然神は悪魔や妖精として追放されました。妖精は元来自然の神様で、良い神と悪い神がいたり、同じ妖精の中にもよい部分と悪い部分があるなど、日本の自然神とよく似ています。
しかし、日本の「天人女房」や「鶴の恩返し」とグリム童話の「かえるの王様」ような異類婚姻譚では全く違っています。ヨーロッパではかえるは呪いが解けて人間にもどってから王女と結婚するのですが、日本では人間の姿をした天女や鶴と結婚します。自然信仰とキリスト教信仰の違いです。

女性の神は豊穣の神です。日本では五穀豊穣の神ですが、牧畜社会のヨーロッパでは生殖の神とされます。これはキリスト教信仰では穢れとみなされます。
ここから、中世の魔女裁判の話になり、異類婚が日本とヨーロッパで決定的に違うということを理解できました。

そのほかにもグリムのお話と日本の昔話の比較を、具体的な例を挙げて説明してくださいました。
自然信仰の日本の学者ととキリスト教信仰のヨーロッパの学者では、昔話の分類をするときに注目する点が違うなど興味深いお話しを聞くこともできました。

個人的に中世ヨーロッパのキリスト教に関心があるので、先生のお話はその点からも勉強になりました。

文庫連から先生にお願いしてくださったとかで、先生のドイツ語での「おいしいおかゆ」を聞くことができました。ドイツ語はスペルを全部音にしてしまう(?)のと、独特の喉の奥に引っかかるような音で、私にとっては聞きにくい言語で、フランス語のような流麗さはないと思っていました。しかし、先生の「おいしいおかゆ」はなんと耳に優しいドイツ語だったことでしょう。何度も繰り返される単語は心地よいリズムを刻んでいます。グリム兄弟が再話するときに、語られている形を崩さずに文字化したからなのでしょう。
昔話が「耳で聞く文学」だということを実感したのでした。


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