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講演会「伝えたい!神戸の図書館からのメッセージ」ご報告

阪神・淡路大震災20年にあたって企画した
今、公共図書館を考えるPart6
 「伝えたい!神戸の図書館からのメッセージ」
を無事開催しました。

講師は松永憲明氏(神戸市立中央図書館利用サービス課長)
2015年4月25日(土)神戸市立中央図書館にて開催

講師の松永さんはじめ、共催していただいた中央図書館の職員の皆さんには大変お世話になりました。
参加者は28名。一般の図書館利用者だけでなく、他の地域の図書館職員の方にもにも多くご参加いただきました。ありがとうございました。

題字


松永さんは震災当時、整理部に所属し、コンピューターの管理運営にも携わっておられました。また図書館情報ネットワークの稼働に向けての作業を重ねておられる中での被災でした。震災後は震災関連資料収集の中心的役割をされました。

兵庫県南部大地震当日
地震があった1月17日、中央図書館までたどり着いたのは中央図書館職員46名のうち14名だけだったそうです。松永さんはそのお一人でした。
講演に先立ってご挨拶いただいた石田担当課長は、東灘区のご自宅で被災し人命救助や避難所での職務にあたっていて図書館に出勤できたのは3日目のことだったと話してくださいました。
あの日、どこもかしこも破壊された中で、神戸市の職員はみな、自身も被災しながらできることを模索し、今自分にできることから始めるしかないという数日を過ごしたのです。図書館も例外ではありませんでした。

松永氏講演会1


神戸市立図書館の被災状況
図書館の被災状況の写真は、初めて見る方もあったのではないでしょうか。
神戸市内でも被害の大きさは異なり、建物被害のほかに水道管が破れて本が水浸しになったところもあったそうです。
当日は、その場の職員の判断で臨時休館となりました。電話も通じず、職員の安否確認もままならない中で、職員が自発的に被害状況の確認を始めたそうです。20日になって初めて管理職会議がもたれ、組織としての動きができるようになりました。

応援出務
図書館は休館状態が続き、職員は応援出務に明け暮れることになります。避難所運営の泊まり勤務や、救援物資の仕分け、遺体安置所での遺族への案内などの職務にあたられた方もあったということです。4月からは図書館の復旧に向けての作業と並行して、兵庫区の避難所運営に毎日11人を割かねばなりませんでした。応援出務は結局12月まで続きました。

松永氏講演会2

図書館の再開
図書館の再開は最も早いところで4月28日でした。ほとんどの図書館がその年のうちには再開しました。最も遅かったのは建替えを余儀なくされた中央図書館旧館で平成9年の6月3日です。
「神戸市図書館情報ネットワーク」の構築(平成7年9月システム稼働)や北神分館の開設(平成7年12月)兵庫図書館開設(平成8年5月)を同時に行った職員の方々の負担はいかばかりだったかと、当時の皆さんの様子を知っている私たちも改めて思いました。
ボランティアの申し出はあったそうですが、受け入れ態勢がなく断ったそうです。市内図書館で唯一避難所になっていた須磨図書館の再開にあたってのみ21名のボランティアを受け入れました。(この中には図書館ネットのメンバーが何人も含まれています)

震災関連資料の収集
資料の収集は自然発生的にそれぞれの職員が始めたそうです。避難所で貼り出された広報紙や配られたチラシなどは応援に行っていた職員が持って帰ってきたとのこと。1月25日発行「こうべ地震災害対策広報第1号」の紙媒体は神戸市広報課にも実物は残っておらず、中央図書館にのみあるのだとか。
販売期間が過ぎれば処分されてしまうことが多い雑誌は、海文堂に取り置きを依頼したそうです。その対応の速さのおかげで私たちが手に取ってみることができるのですね。
それらは現在「1.17文庫」「震災関連資料室」という形で利用者に提供されています。

1.17文庫(震災関連資料)
中央図書館震災関連資料室


震災20年継承・発信事業
神戸市で26年度、27年度に100を超える事業が展開されています。そのコンセプトは
・震災の経験、教訓の継承と発信
・「貢献する都市・神戸」の意識醸成と発信
図書館も震災で経験したことを継承し、発信していく努力を継続して行っています。
「書燈」(神戸市立図書館報)最新号№313号は阪神・淡路大震災20年特集号です。(松永さんも原稿を寄せられています)こうして経験したことを文章に残し、発信していくことは本当に重要です。どうぞ、お読みになってください。

「書燈」(神戸市立図書館報)


20140527_shinsai20logo.jpg

そして、課題
専門職採用であるがゆえに市職員としての感覚が薄かったが、市職員としてと図書館職員としての意識が必要
混乱の中ではマニュアルではなく職員自らが自分で考え判断することが重要である。
当時は閉館していてもできることには全く思いが至らず、開館することだけを考えていた。閉館中でも情報センターとしての役割は担えるはず。
救援物資はありがたいものの、負担でもある。救援図書も負担になった部分がある。ボランティアを受け入れるにも準備が必要でその体制ができていなかったため、結局須磨図書館の21名だけにななった。「受援」の仕組みを作っておくことが重要。


質疑応答ではフロアからの質問に丁寧にお答えくださいました。
利用者が図書館職員と話せるよい機会になったのではないかと思います。





参加者感想
たくさんの感想をいただきありがとうございました。全てを載せられないのが残念ですが、少し紹介します。
(抜粋しました。ご了承ください)

・震災時の図書館内部の写真は初めて見ました。開館中だったらと思うとぞっとしました。

・実際に震災と復興を体験された図書館員さんのお話に目からうろこが落ちる思いでした。(特に善意の支援がすべて救援になるとは限らないというお話に)

・混乱の中で各自の判断で資料の収集・保存に動き出していたことは直営・専門職員の大切さを痛感しました。

・図書館に求められる役割の変化の話が印象に残りました。

・ただ本を借り読むだけではなく情報発信の役割もあるのだと、今回の講演会で図書館を見る目が変わりました。

・今後の天災等に際して外部委託された地区館はどんな動きをするのか?できるのか?

・他の都市でもこの体験談を活かさないといけないのではないか。

・震災の直後から復興に励まれた職員の皆さまに敬意と感謝。

・神戸にこの図書館があることは誇りであり、救いでもあります。


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