5月15日のブログ「『nendo』と昭福丸」で、臼福本店の遠洋マグロはえ縄漁船「第1昭福丸」の内外装デザインなど、nendoの仕事を紹介させてもらいました。
その第1昭福丸が気仙沼市朝日町の「みらい造船」で進水式をおこなったのは、昨年11月22日のことでした。昨年11月29日のブログでも紹介しました。本日はその株式会社みらい造船についての話です。
2019年11月29日ブログ「第1昭福丸」進水
みらい造船は、簡単にいえば気仙沼の浪板地区にあった吉田造船鉄工所、木戸浦造船、小鯖造船鉄工所、澤田造船所4社が合併した会社です。その設立の経緯や同社新工場完成については、上記ブログで紹介しました。その記事を書いたときに、関連記事として原稿をまとめたのですが、ちょっと長いし、なんかしつこい感じもあってブログ掲載せずにおりましたが、少し加筆修正したうえで本日紹介することにしたしました。
◎みらい造船への補助金や助成金
昨年9月11日のブログで、みらい造船の新工場完成を紹介しました。
2019年9月11日ブログ「みらい造船新工場」
このブログで引用した河北新報の記事に、みらい造船の〈事業費は約106億円で、うち70億円は国土交通省の補助金を活用した〉との記述があったのですが、私はちょっとあっさりしているなと感じました。
9月6日の三陸新報はもう少し詳しく〈総事業費は105億5千万円。このうち約70億円は国道交通省の補助金を活用したほか、日本財団からの助成金や市の補助金、融資などを充てた〉と紹介していたからです。その紙面はこんな感じ。
三陸新報2019年9月6日記事の一部イメージ
◎市の記者発表資料
この三陸新報の記事にあった日本財団からの助成金や市の補助金については、気仙沼市の2019年9月3日付け記者発表資料に詳しく記されていました。その内容を整理してみます。
まず知っておきたいのは、朝日町造船施設整備事業は、①市がおこなう用地造成事業と②みらい造船がおこなう造船施設整備事業のふたつから構成されています。
①用地造成は、朝日町津波復興拠点用地造成事業として、今回の造船施設だけでなく今年9月から本格稼働した燃油タンク/気仙沼商会気仙沼油槽所の用地造成も含んでいます。この事業費が約26億7000万円です。財源は、東日本大震災復興交付金。油槽所も造船所も、その土地は気仙沼市が造成したもの。
②造船施設整備の事業費は105億5000万円。このうち約70億3000万円は国の補助金です。ここまでは三陸新報の記事にもありました。そしてここからが本日のテーマである助成金や補助金についてです。まず市の補助金は1億5000万円です。そして日本財団からの助成金はなんと8億円です。これだけ大きな助成金だったとは知りませんでした。
◎造船復興みらい基金
日本財団からの支援については、同財団/
2019年9月17日付けニュースリリースにつぎの主旨の記述がありました。
日本財団では、建設費114億円のうち、助成金8億円、災害支援無利子融資33億円の他、「造船復興みらい基金」から70億円の支援を行ないました。
「造船復興みらい基金」は、日本財団が、国(国土交通省)の補助金を得て、2013年度から実施していた被災造船業等復興支援事業。基金からは、これまでに石巻市、大船渡市などで7件の造船所復興事業への補助を行ない、8件目となる今回気仙沼市での補助対象施設完成により、予定していた補助事業は全て完了し、基金は2019年度中に閉鎖・清算予定。
以上がリリースからの内容。なるほど、市の発表資料で〈約70億3000万円は国の補助金〉とされていたのは、日本財団を通じての補助だったのですね。
◎災害支援無利子融資
日本財団のリリースにあった災害支援無利子融資33億円については、2016年の新造船所起工式の翌日10月22日の三陸新報記事に関連記述がありました。〈建設資金確保のために、8金融機関(みずほ銀行、七十七銀行、東北銀行、商工中金、岩手銀行、北日本銀行、仙台銀行、気仙沼信用金庫)による33億6000万円の協調融資が決まり契約を締結した〉と。日本財団は、この協調融資においても支援しているということだと思います。
◎日本船舶振興会
公益財団法人 日本財団の以前の名称は公益財団法人日本船舶振興会です。創立者で初代会長の笹川(ささかわ)良一さんについては皆さんよくご存じのことでしょう。同財団は、モーターボート競争/競艇(ボートレース)の収益金をもとに活動を展開しています。
笹川良一さんは、いわゆる〈右翼〉としての顔とともに〈社会奉仕活動家〉との面をもっていました。テレビCMでの「一日一善」「人類みな兄弟」のメッセージをなつかしく思い出す人も多いでしょう。その一方で、にがにがしい思いをあらたにする方もいらっしゃるかと。
◎新型コロナ対応施設
東京お台場の「船の科学館」は、その笹川良一さん/日本船舶振興会きもいりの施設といってよいでしょう。運営にあたってはいまも日本財団が助成しています。
その船の科学館周辺に、日本財団が新型コロナ感染の軽症者向け施設を建設するという報道があったのは4月初旬のことでした。このニュースを聞いたときに私はちょっと意外な感じを受けました。しかし、調べてみると笹川良一さんには、天然痘やハンセン病などとの深く長い関わりがありました。
日本財団の資料サイトによれば、天然痘根絶事業に関して、昭和50~54年度の5年間の協力援助金286万ドルは、当時の民間団体による協力援助としては世界最高を記録したといいます。また、1961年にWHOがハンセン病予防ワクチンの試薬を完成した際、笹川良一さんはその第一号接種者になるなど、後半生のかなりの時間をハンセン病とのかかわりに費やしたとのこと。
日本財団の会長は、初代笹川良一さんのあとを受けての2代会長が小説家の曽野綾子さん。そして現在の3代目会長が笹川良一さんの三男、笹川陽平さんです。陽平会長も父親の遺志を継ぎ、ハンセン病の制圧やこの病による差別の撤廃にとりくんでいます。
こうした経緯を知れば、今回の新型コロナウイルス感染問題に対応して日本財団が施設建設をおこなうということはとても自然な流れといってよいでしょう。
◎感謝と御礼
このブログ記事は、冒頭にも記したように、気仙沼の造船事業復興への日本財団さんの多大なるご支援をお伝えしようと昨年に書き始めたものですが、追記した後半の締めくくりが新型コロナの話になるとは思ってもみませんでした。
日本財団さんは、気仙沼の造船事業だけでなく、たとえば5月22日のブログ「海とみどりの大島」で紹介した大島未来チームをはじめ、気仙沼の震災復興に関わるさまざまな活動を支援くださっています。このブログで紹介したものでいえば、気仙沼鹿折加工協同組合に対するキリングループさんの支援も日本財団を通してのものでした。気仙沼メカジキブランド化推進プロジェクトについても同様です。
いろいろとありがとうございます。あらためて、日本財団さんのご支援に対して心から御礼を申し上げます。
テーマ : 気仙沼
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