本日も9月15日の「目黒のさんま祭」の話。11時近くに会場内のスペースで、気仙沼市立月立(つきだて)小学校児童の5年生と6年生計12名による「早稲谷鹿踊(わせやししおどり)」が披露されました。これもきのう紹介した「どや節」の動画と同じく途中で録画終了となってしまいましがご参考まで。
2017年のさんま祭でも、月立小の子供たちが踊ってくれました。そのときの動画を紹介しましょう。
この「早稲谷鹿踊」はNPO法人目黒ユネスコ協会さんのご招待によるものでした。同協会は2012年から毎年、地元民俗芸能の伝承に取り組んでいる気仙沼の小学校児童を招待してくださっています。これまでの記録をまとめるとつぎのとおり。
2012年:月立小/早稲谷鹿踊、2013年:水梨小/羽田神楽、2014年:新城小/廿一(二十一)田植踊り、2015年:月立小、2016年:馬篭小/馬篭(まごめ)ばやし、2017年:月立小、2018年:中井小/松圃(まつばたけ)虎舞、2019年:月立小。
17日のブログにも書きましたが、会場でお会いした目黒ユネスコ協会の宮下晶子会長に、ご支援に対する御礼を申し上げました。本当に毎年ありがとうございますと。
本来の「早稲谷鹿踊」は、旧暦6月24日の前後に甘酒地蔵尊祭典で奉納されます。そうした由来について、2016年8月26日のブログを再掲します。
2016年8月26日ブログ
◎早稲谷鹿踊の伝承
(2016年)8月2日の三陸新報に、気仙沼市早稲谷(わせや)の鹿踊(ししおどり)の記事が掲載されていました。
三陸新報8月2日記事の一部イメージ
記事の一部を引用します。
「気仙沼市早稲谷地区の甘酒地蔵尊祭典が(7月)31日、現地で行われた。県指定無形民俗文化財の早稲谷鹿踊が奉納され、地域の繁栄を願って厄災、疫病をはらうとともに、祖先の霊を供養した。地蔵尊は、飢饉や疫病などで亡くなった幼子を供養するために建立された。早稲谷鹿踊が伝わってからは毎年、旧暦6月24日の前後に奉納されている。」
(引用は以上)宮城県の
指定文化財のウェブサイトにはつぎの説明がありました。
「早稲谷地区に伝わる8頭の鹿踊りである。記録には文政10年(1827)、岩手県大原山口の喜左衛門より月立八瀬の林蔵に伝承されたものという。毎年旧暦6月24日に地区内にある「甘酒地蔵尊」の祭典に奉納し、災厄や疫病をはらう魔除けの踊りといわれるが、本来は祖先の霊を供養するものである。背中に竹を削って結束した3m以上のササラを立て、腰太鼓をさげ、唄いながら踊り跳ねる。政宗から「仰山なり」と賞詞されたといういい伝えにちなみ「仰山(ぎょうざん)流」と称する。」
また、甘酒地蔵尊は、天明の大飢饉(約230年前)で亡くなった乳児や幼児を供養するために建立されたそうです。甘酒は母乳に見立てたものといいます。源義経の一行が平泉に向かう途中、猿がお地蔵様に姿を変え、甘酒で迎えたとの言い伝えもあるようです。
私が驚いたのは、
気仙沼ニッティングさんのフェイスブック7月31日の記事でこの鹿踊りがつぎのように紹介されていたこと。代表の御手洗さんによるものでしょう。
〈昨日は、気仙沼の山の方の、早稲谷という集落で「鹿踊り」がありました。この1年にこの集落で亡くなった方々のために、お地蔵さまの前で鹿たちが祈りを捧げるのだそうです。気仙沼でもほとんど告知されないため、気仙沼在住でも見たことがある人は少ないかもしれません。この集落の人たちが、静かに行うお祭りです。空と山を背景にした舞台で、鹿たちが角に見立てた長い「ささら」を振り回して踊る様子は圧巻でした。この踊りのあとは、新しいお位牌の前で鹿たちがお祈りをします。亡くなったあと、こうして村のみんなに祈ってもらえるというのは、なんとあたたかな文化だろうと思います。続いていきますように。〉
17分間の動画も紹介されているのですが、これを見ると〈本物の奉納の踊り〉の雰囲気が伝わってきます。私は〈宮澤賢治〉や〈遠野物語〉を連想しました。早稲谷の鹿踊も岩手県一関を経由して伝えられたもののようですので、さほどずれた印象ではないと思います。
御手洗さんの〈圧巻〉の印象は、気仙沼の人があまり気づいていない地域文化の価値を外の人に教えてもらうという、よくあるパターンのひとつかもしれません。
2014年の目黒のさんま祭では、気仙沼市落合地区の廿一(二十一)田植踊りが披露されました。廿一の現場ではなく、あくまで東京のイベント会場での演舞ではあったものの、その素晴らしさに驚きました。気仙沼市で県の無形民俗文化財指定は3件あるのですが、早稲谷鹿踊とならんでこれもそのひとつ。残る一つは〈新城の田植踊〉です。
50年以上前の気仙沼みなとまつり。魚町坂口の実家前で鹿折(ししおり)方面から連なって進む祭の行列を見ていました。鹿踊りや田植踊り、そしていろんな地区の太鼓もあったように思います。それを〈いつものだしもの〉としか見ていませんでした。またかよ、と。それから半世紀。そのひとつが、地域の人によってしっかりとひっそりと伝承されていることを知り、うれしく思ったのです。また、長くなってしまいました。今週はこれにて。
気仙沼ニッティング/facebook映像(約17分)(再掲内容は以上)
早稲谷鹿踊は、今年3月17日にNHK Eテレで放送された第19回地域伝統芸能まつりにも出演しました。保存会の皆さんの練習の様子については3月14日のブログに記しております。甘酒地蔵尊での鹿踊の映像やNHK大ホールでの演技の様子を思い起こすと、さんま祭での子供たちが懸命に踊る姿と一本の線でつながるような気がします。
月立小学校は当初2018年度に新城小学校への統合が計画されていましたが、地元での反対などもありその実施が延期されています。今後、統合がおこなわれことになっても、地元の皆さんの協力によって続けられてきた小学生による早稲谷鹿踊の伝承は続けて欲しい。以前の新聞報道で見たおぼえがあるのですが、市教育委員会もそう考えているようです。是非に。
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