ひきこもりが駄目な人間のはずがない
昔であれば、ひきこもりの人の意思を知る機会はなかなか無かったが、現在では、ブログやSNSその他があって、いくらかは分るようになってきた。
ひきこもりの人の考えを知る中で、最も残念に思うのが、彼ら(彼女ら)の多くが、自分を駄目な人間であると思っていることだ。これは、極めて重要な大問題である。
いったい、ひきこもりの何が駄目だというのだろう?
お金を稼いでいないからか?
なぜお金を稼がないと悪いのであろう?
自分がお金を稼がないと誰かに迷惑をかけるからだろうか?
それを言うなら、お金を沢山稼いでいる人の方がはるかに多くの人に迷惑をかけているのではないだろうか?
働いて社会に貢献していないからだろうか?
しかし、むしろ、働いて社会を害している人の方が多いのではないだろうか?
以前にも書いたが、コリン・ウィルソンの新しい本「超越意識の探求―自己実現のための意識獲得法」(学習研究社)で、あるひきこもりの男性が「俺はなんて駄目なやつなんだ」と言った時、彼の友人に「きみはちっとも駄目じゃない。自分でそう思っているだけさ」と言われたことが啓示となり、彼はたちまち(数日かかったが)偉大な賢者となった。
だが、コリン・ウィルソンは肝心なことを書いてくれなかったので、重要な点が分らず、具体的にどうすれば良いか分らないように思う。
そこで私が補足してみようと思う。
ひきこもりが、なぜ自分が駄目だと思っているのかをもっと真剣に追求しないといけないのである。
コリン・ウィルソンの本のこの男性と、我が国のひきこもりはほぼ同じことを考えているのだ。それが分れば、我々も賢者となり、堂々と生きることも可能になる。
さて、では、ひきこもりに限らず、なぜ我々は自分を駄目な人間だと思ってしまうのだろう?
逆に言えば、どうすれば、我々は自分を駄目ではない、価値ある人間と思えるのであろう?
一流大学に入れば?
オリンピックで金メダルを取れば?
医者や弁護士になれば?
ビジネスで成功すれば?
企業の中で有能と認められ、出世すれば?
売れる作家や画家になれば?
エステで磨き上げ、ナイスバディやイケメンになれば?
いずれもそうだと思えるような気がする。これらの1つもないから、自分は駄目だと思うのかもしれない。
だから、我々は努力して、これらのものの1つ、出来れば複数を成し遂げる必要があるのだろうか?
しかし、よく考えると分かるはずなのだ。
これらのものに価値があると思い込まされているだけではないのかと。
断言するが、上記のものに絶対的な価値なんて一切ない。
なぜこれらに価値があると感じるかというと、そう感じるよう教育(あるいは洗脳)されたからというだけの理由なのだ。
それが心底納得できたら、もはや自分が駄目な人間だと思うことはなくなる。
だが、我々が叩き込まれた教育や洗脳の強力さが半端でないことも確かなのである。
そう簡単に、一流大学や金メダルに価値がないなんて納得できないかもしれない。
では、どうすれば良いのだろうか?
それは、上記を含め、世間で価値あるとされること一切に無関心になることだ。
ひきこもりであれば、学校に行くことや、働くことが良いことなのに、それができない自分は駄目だと感じているかもしれない。では、学校に行くことや働くことが良いことだという価値観に無関心になるのだ。
私などは企業に所属しているが、会社や仕事など知ったことではないと思っている。無論、そんなことを露骨に言ったりはしない。あからさまな反抗はむしろ関心や愛着の裏返しである。ただ、距離を置き、笑いながら見ているのである。
仕事はなりゆきだけ眺めている。仕事に限らず、何事もなりゆきを静かに見ているのが一番良い。そうすれば、案外、熱意を持ってやるよりもうまくいくものだ。私自身、非常に優秀な社員で通っている。クール過ぎて敵は多いが(笑)。
ただ、熱意を込めてやらないとたちまちクビになるような仕事もある。そのような仕事に就いている場合、熱意を入れてやるのが面白ければやれば良いが、そうでないなら辞めれば良い。病気になるよりマシだし、会社にも自分にもお互いにその方が良いのである。私にも経験がある。営業職だった頃だ。相手にとって必要もないものを売りまくるのが優秀な営業社員だ。相手にニーズがなければ、無理矢理にそれを作って売るのだ。テレビCMで見る保険の宣伝なんて全部嘘八百であることは、元々セールスマンだった私には見え見えだ。会社に洗脳されれば、熱血営業マンになれるかもしれないし、それは必ずしも不幸なことではないかもしれない。私も会社の洗脳が効いていた頃は、セールスコンテストで優勝した。しかし、うまく醒めることができると、自分の販売は、誰も幸せにしないことが分った。そうなると、もはや仕事を続けるエネルギーはなくなる。やがてSFドラマの影響でITテクノロジに興味を持ち、コンピュータソフト開発者になったが、自分には営業職より幾分マシだった。
価値は自分で決めれば良い。
ただし、ほとんどの人間には、ちゃんとした価値付けはできない。学校で叩き込まれた教育や、マスコミを通してなされた洗脳の恐ろしさを甘くみてはならない。
そんな中で、勝手に価値判断をしてもいけない。ロクでもないものに価値を置き、馬鹿な人間になる。例えばカッコばかりに価値を置くようになる。せっかく高校をドロップアウトし、ひきこもりにもならなかったのに、ファッションやロックにばかり興味を持つ若者を見るのもまた悲しいものである。
難しいのだ(笑)。
イエスは真理を語ったかもしれないが、キリスト教という宗教が真理を教えてくれるかどうかは別問題だ。そもそも、聖書そのものにも、権力者による改ざんがあるかもしれない。
荘子やニーチェにはかなりの真理が書かれてあるが、理解するのには苦しい経験と時間が必要だ。読んでたちまち真理に到達できるなんてものがあるはずがない。
そこで必殺技になるのが少食である。
おそらく、世間に打ち勝つ唯一にして最強最後の武器が少食だ。
世間で必要と宣伝される食事の量の多くとも半分以下、世間で美味しいから食べろと宣伝される美食やお菓子の一切を食べない。これを貫けば、ウィルソンの本にあった男性のように、我々も賢者となれるのである。
特殊な心理操作の技術を使って、心の持ち方を変えることも可能かもしれない。しかし、ご存知かもしれないが、その方面は偽物が多く、どれが正しいかはあなたには判断できない。私には判断できると思うが、あなたに納得させることができない。
また、インドの聖者の教えに従い、真の自分に目覚めることも興味深いが、成功した人なんて万に1人もいるか?
害のない、そしておそらくは効果も高いものとしては、有名な宗教団体、白光真宏会の「世界平和の祈り」があるので、参考にしても良いと思う(私は信者ではないが)。これは、断食療法で著名な甲田光雄さんも価値を認めていたと思う。彼はこの祈りを自己流に改変していたが、根本的には同じと思うので、オリジナルのままで良いと思う。
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Comments
僕が時々冗談っぽく思うのは、ひきこもりは誰よりもエコな存在のはずなんです。大ブームのエコ、世界からたたえられてもいい(笑)。
ひきこもりは大抵自分で買ったものはすべて大切に使いますし。
それで少食が達成できれば、さらなるエコですね。
Posted by: 小笠原毅 | 2008.11.17 10:40 PM
★小笠原毅さん
ひきこもりは、非常に大きな意味でエコだと思います。全く害のない存在ですね。
ただ、それとひきかえに、心に悪い思い込みを持つことになったひきこもりが多いのが良くないと思っているのですよ。
「ふしぎなナイフ」読みましたよ。
ありえないものに、臨場感を持たせる作品なのですが、これは子供と大人では、非常に異なった印象を持つと思います。
子供は、簡単にリアルな臨場感を持ちますので、面白いとか恐いとか、まるでジェットコースターのように感じるかもしれません。
ヘミングウェイの「兵士の故郷」ですが、翻訳者の中には「兵士の帰還」と訳す方もいるようです。
Posted by: Kay | 2008.11.18 06:03 PM
おひさしぶりです。
Yです。
最後にコメントを書いてから半年くらいたつと思います。
その後、コンピュータ関係の会社に就職して、4ヶ月がたちました。
今はUNIXのsolarisを扱う仕事をしております。
さて今回のブログの内容にコメントさせていただきます。
一流大学に入れば?
医者や弁護士になれば?
ビジネスで成功すれば?
企業の中で有能と認められ、出世すれば?
エステで磨き上げ、ナイスバディやイケメンになれば?
などの願望(欲望?)は、ひきこもりには似合わないような感じがするんです。意識すればするほどまわりと比較してしまい、自滅していくような感じ。
過去私はひきこもりで上のような気持ちに襲われました。でも今では、働いている。それはKayさんのブログで触れている「世間で価値あるとされることに無関心になる」というところが大きいのかなと思いました。コンピュータの仕事をしていると世間で価値あるとされることに無関心になりやすいのかもしれませんね。
Posted by: Y | 2008.11.18 11:08 PM
★Yさん
Yさん、本当にご無沙汰です。
そうですか、当時の希望通り、IT業界に入られたのですね。
素晴らしい!私も嬉しいですよ。
solarisですか?
私はMicrosoftで凝り固まってしまい、UNIX系にはやや疎いです^^;
しかし、最近はLinuxを扱うことが多くなってきました。
サンもLinux売ってますので、Yさんも関わることがあるかもしれませんね。
私はMS系のスペシャリストですが、今後はUNIX系が良いとマジで思っています。
無関心力というのは、本当に大切だと思います。
仕事は仕事でがんばるのですが、会社に完全に受身になってしまうと苦しいことが多いように思います。どこかで、会社より自分の都合を優先させる気力がないとやっていけないような気がします。
ITは、顧客あってのものと言っても、やはり技術がモノを言います。
昔、何かの本で読みましたが、技術があれば、ロリコンの変態でもきちんと一目置かれる、ある意味健全な業界です(笑)。
今はRubyやLispを勉強しています。
それに、今後はクラウドコンピュータです。
IT業界を楽々、スイスイ泳いでいきましょう!
あ、文字修正しておきました。
Posted by: Kay | 2008.11.18 11:35 PM