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Jack DeJohnette / In Movement

Label: ECM Records
Rec. Date: Oct. 2015
Personnel: Ravi Coltrane (ts, ss, sopranino sax), Matthew Garrison (b, electronics), Jack DeJohnette (ds, p, electronic percussion)
DeJohnette Jack_201510_Movement
1. Alabama [John Coltrane]
2. In Movement [DeJohnette, Ravi, Garrison]
3. Two Jimmys [DeJohnette, Ravi, Garrison]
4. Blue in Green [Miles Davis, Bill Evans]
5. Serpentine Fire [Maurice White, Verdine White, Reginald Burke]
6. Lydia [DeJohnette]
7. Rashied [DeJohnette, Ravi]
8. Soulful Ballad [DeJohnette]

 前回記事のSteve Swallow(スティーブ・スワロウ)に続いて今回もベテラン・ミュージシャンで、ドラマーのJack DeJohnette(ジャック・ディジョネット)が2015年、73歳の時に録音したアルバムです。

 (言うまでもなく)ジョン・コルトレーンを父に持つRavi Coltrane(ラビ・コルトレーン)のサックスと、コルトレーン・カルテットのベーシストJimmy Garrison(ジミー・ギャリソン)の息子Matthew Garrison(マシュー・ギャリソン、『Wolfgang Reisinger / Refusion』で既出)のベースとの三人編成で、マシューの名付け親(だそうです)ディジョネットは「二人が子供のころからよく知っていて、自分の息子のような存在だ」というような趣旨のコメントを寄せています。
 余談ですが、本アルバムの二十年以上前に、やはり「父親繋がり」でコルトレーン晩年のドラマーRashied Ali(ラシード・アリ)の『No One in Particular』(1992年録音、Survival Records)というアルバムでこの二人(ラビとマシュー)は共演しています。ご参考まで。

 コルトレーンの1曲目、マイルスの4曲目、なんとアース・ウィンド・アンド・ファイアーの70年代ヒット曲の5曲目(邦題”太陽の戦士”、アルバム『太陽神』収録、トホホ)、その他はメンバーのオリジナルというラインアップです。

 ジョン・コルトレーンの愛すべきメロディを三人が噛み締めるようにしんみりと演奏される”Alabama”からアルバムがスタートします。ここでのラビのテナーを聴いて父親のプレイを思い出すなというのは(曲が曲だけに)無理な注文というものでしょう。ディジョネットのドラムだって、やっぱりエルビンがちらついてしまいます。もちろん二人ともジョン・コルトレーンやエルビンからは独立した個性の持ち主ですが。
 この”Alabama”は本アルバムの中では比較的「素直な」サックスフロントのピアノレストリオという感じですが、2曲目以降は、いつものディジョネットのアルバムのようにストレートで「普通な」音はなかなか出てきません。
 続く2曲目、3曲目は、ディジョネットとマシューが淡々と刻むリズムをベースに、ラビのソプラノ(2曲目)、テナー(3曲目)が「宙を舞う」という展開です。ディジョネットやマシューが操る様々な電子音も効果的に響き、あのマイルスの『In a Silent Way』をより抽象化したような何ともシュールな雰囲気です。
 4曲目”Blue in Green”はディジョネットのピアノとラビのソプラノのデュオで、原曲に束縛されない自由な演奏です。その原曲からの「離れ具合」がピリッと張り詰めた緊張感を生んでいると言ったらよいのでしょうか。
 アース・ウィンド・アンド・ファイアーの5曲目とそれに続く6曲目は、ゆったりとした8ビートに乗って、ラビのソプラノが力強くそして美しく響きます。なんでアースの曲を取り上げたのかわかりませんが、「原曲なんて全く関係なし」と言わんばかりで、前後の楽曲の流れの中でも全く違和感がないディジョネットのサウンドになっています。付け足しのようですが、ディジョネット・オリジナルの6曲目は美メロの佳曲で、この人は時々びっくりするくらい良い曲を書きます。
 7曲目はディジョネットがパルスを出し続け、それにRaviのソプラノ(これはソプラニーノかな?)が絡む激しいデュオで、まるでジョン・コルトレーン不動のカルテット後半期でのジョンとエルビンとの殴り合いのようなインタープレイをディジョネット流に再現したかのような演奏です。
 ラストの8曲目はディジョネットの懇ろなピアノのイントロから、ラビの今度は優しいソプラノが美しく響くまさに「ソウルフルなバラード」で、しっとりとアルバムを閉じます。この曲だけでなく、このアルバムでのラビのソプラノは、より力強く、より美しい表現力を手に入れたと思わせるような好演揃いです・・・テナーだって決して悪くはありませんが。

 曲ごとにダラダラと書いてしまいましたが、アルバム全体を通じて、ピリッと張り詰めた緊張感が持続する中で、多重録音も取り入れながらのサウンドづくりと極めて高いレベルでの三人のインタープレイが違和感なく調和しています。これはまさにディジョネットの手腕ということなのでしょう。


『Rashied Ali / No One in Patticuler』(1992年録音、Survival Records)
Ali Rashied_199206_Perticular

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Author:sin-sky
半世紀ジャズを聴いている新米高齢者♂です

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