Ray Anderson, Han Bennink, Christy Doran / Cheer Up
Label: HAT HUT Records (hat ART)
Rec. Date: Mar. 1995
Personnel: Ray Anderson (tb, tuba), Christy Doran (g), Han Bennink (ds)
1. No Return [Doran]
2. My Children are the Reason Why I Need to Own My Publishing [Anderson]
3. Tabacco Cart [Anderson, Bennink, Doran]
4. Like Silver [Anderson]
5. Cheer Up [Doran]
6. Buckethead [Anderson, Bennink, Doran]
7. Melancholy Moods [Horace Silver]
8. New H. G. [Doran]
9. Hence the Reason (for G. H.) [Anderson]
前回記事「Steven Bernstein / Tattoos and Mushrooms」に続いて、今回も少し変わったトリオ編成のアルバムです。
メンバーはRay Anderson(1952年シカゴ産)のトロンボーン(一部チューバに持ち替え)、Christy Doran(1949年アイルランド産)のギター、Han Bennink(1942年オランダ産)のドラムの三人という、これまた他ではちょっとお目にかからない編成です。
なお本作と全く同じメンバーで本作の1年前に録音された「Azurety(1994年録音、HAT HUT Records)」というアルバムも出ています・・・私は聴いていませんが、ご参考まで。
Ray Andersonは並外れたテクニックの持ち主であることは間違いないのですが、彼の「斜に構えたスタンス」「真摯にフリージャズしてない」みたいなところが鼻につき、100%彼のプレイに入り込めないというのが正直なところで、このアルバムを目にした時も少々腰が引けたのですが、Christy DoranとHan Benninkとのトリオって一体どんな音が出てくるんだろうか、そう思って入手した次第です。
意表を突く16ビートのリズムが躍動する冒頭曲でアルバムはスタートします。この曲ではRayはチューバを吹いています。
基本的にいわゆる「フリージャズ」にカテゴライズされるサウンドでしょうが、決してゴニャゴニャしたフリージャズではなく、カラッとしていて聴き手に対してオープンなサウンドという印象を受けます。いつものようなRayのキャラクターなのでしょうが、他の二人のメンバーもいわゆるテクニシャンなので、技術的に難しいことをサラッとやってのけてしまう・・・これがカラッとドライな印象を与える要因にもなっているのではないかと思います。
10分超の3曲目やタイトルチューンの5曲目あたりでは、三者が組んず解れつのカオスに突入し、このようなシーンでのHan Benninkはさすがに「貫禄のフリージャズ」をしていますが、他は総じて曲のストラクチャーやリズムが明快で、Han Benninkもわりと素直にリズムを刻んでいますし、それなりに「わかりやすいメロディ」も出てきたりします。例えば4曲目なんかは、これもRayのキャラなんでしょうが、チューバとギターが絡み合う、少しとぼけた擬似オールドスタイル(?)の2ビートの曲ですし、7曲目は「Further Explorations」に入っていたHorace Silver曲"Melancholy Moods"をしっとりと演奏しています。
Ray Andersonのトロンボーン(チューバも)の上手さ、超絶技巧と言うかいわゆるバカテクぶりはこのアルバムでも健在で、いつもこの人のプレイを聴いて感心するのですが、このアルバムでは、Rayに合わせるかのようにこれでもかと技巧的なフレーズを繰り出す(或いは「茶目っ気」すら感じさせる)Christy Doranのギターとの絡み合い・コンビネーションが絶妙で、これがこのアルバムの最大の特徴になっています。Rayは気のせいかいつもよりも「本気度」がアップしているようにも聴こえます。それにChristy Doranというギタリストはこんなに面白かったっけ、という感じで、これは間違いなくRayとの組み合わせの妙によるものと思います。
上に書きましたように、このアルバムでもRay Andersonの斜に構えたスタンスが見え隠れすることは事実ですが、Christy DoranとHan Benninkとのコンビネーションがスリリングな局面を数多く創り出しており、(超)技巧派三人だからこそ成立する一風変わったフリージャズとして印象に残るアルバムになりました。
Rec. Date: Mar. 1995
Personnel: Ray Anderson (tb, tuba), Christy Doran (g), Han Bennink (ds)
1. No Return [Doran]
2. My Children are the Reason Why I Need to Own My Publishing [Anderson]
3. Tabacco Cart [Anderson, Bennink, Doran]
4. Like Silver [Anderson]
5. Cheer Up [Doran]
6. Buckethead [Anderson, Bennink, Doran]
7. Melancholy Moods [Horace Silver]
8. New H. G. [Doran]
9. Hence the Reason (for G. H.) [Anderson]
前回記事「Steven Bernstein / Tattoos and Mushrooms」に続いて、今回も少し変わったトリオ編成のアルバムです。
メンバーはRay Anderson(1952年シカゴ産)のトロンボーン(一部チューバに持ち替え)、Christy Doran(1949年アイルランド産)のギター、Han Bennink(1942年オランダ産)のドラムの三人という、これまた他ではちょっとお目にかからない編成です。
なお本作と全く同じメンバーで本作の1年前に録音された「Azurety(1994年録音、HAT HUT Records)」というアルバムも出ています・・・私は聴いていませんが、ご参考まで。
Ray Andersonは並外れたテクニックの持ち主であることは間違いないのですが、彼の「斜に構えたスタンス」「真摯にフリージャズしてない」みたいなところが鼻につき、100%彼のプレイに入り込めないというのが正直なところで、このアルバムを目にした時も少々腰が引けたのですが、Christy DoranとHan Benninkとのトリオって一体どんな音が出てくるんだろうか、そう思って入手した次第です。
意表を突く16ビートのリズムが躍動する冒頭曲でアルバムはスタートします。この曲ではRayはチューバを吹いています。
基本的にいわゆる「フリージャズ」にカテゴライズされるサウンドでしょうが、決してゴニャゴニャしたフリージャズではなく、カラッとしていて聴き手に対してオープンなサウンドという印象を受けます。いつものようなRayのキャラクターなのでしょうが、他の二人のメンバーもいわゆるテクニシャンなので、技術的に難しいことをサラッとやってのけてしまう・・・これがカラッとドライな印象を与える要因にもなっているのではないかと思います。
10分超の3曲目やタイトルチューンの5曲目あたりでは、三者が組んず解れつのカオスに突入し、このようなシーンでのHan Benninkはさすがに「貫禄のフリージャズ」をしていますが、他は総じて曲のストラクチャーやリズムが明快で、Han Benninkもわりと素直にリズムを刻んでいますし、それなりに「わかりやすいメロディ」も出てきたりします。例えば4曲目なんかは、これもRayのキャラなんでしょうが、チューバとギターが絡み合う、少しとぼけた擬似オールドスタイル(?)の2ビートの曲ですし、7曲目は「Further Explorations」に入っていたHorace Silver曲"Melancholy Moods"をしっとりと演奏しています。
Ray Andersonのトロンボーン(チューバも)の上手さ、超絶技巧と言うかいわゆるバカテクぶりはこのアルバムでも健在で、いつもこの人のプレイを聴いて感心するのですが、このアルバムでは、Rayに合わせるかのようにこれでもかと技巧的なフレーズを繰り出す(或いは「茶目っ気」すら感じさせる)Christy Doranのギターとの絡み合い・コンビネーションが絶妙で、これがこのアルバムの最大の特徴になっています。Rayは気のせいかいつもよりも「本気度」がアップしているようにも聴こえます。それにChristy Doranというギタリストはこんなに面白かったっけ、という感じで、これは間違いなくRayとの組み合わせの妙によるものと思います。
上に書きましたように、このアルバムでもRay Andersonの斜に構えたスタンスが見え隠れすることは事実ですが、Christy DoranとHan Benninkとのコンビネーションがスリリングな局面を数多く創り出しており、(超)技巧派三人だからこそ成立する一風変わったフリージャズとして印象に残るアルバムになりました。