Steven Bernstein / Tattoos and Mushrooms
Label: ILK Music
Rec. Date: Nov. 2007
Personnel: Steven Bernstein (tp, slide-tp), Marcus Rojas (tuba), Kresten Osgood (ds)
1. Prince of Night [Charles Brackeen]
2. Hope for Denmark [Osgood]
3. Thelonious [Thelonious Monk]
4. Scaramanga [Bernstein, Rojas, Osgood]
5. Abington [Osgood]
6. East Coasting [Charles Mingus]
7. So Lonesome I Could Cry [Hank Williams]
8. Khumbu [Rojas, Bernstein, Osgood]
9. The Beat-Up Blues [Osgood]
だいぶ前にこのblogでSam Rivers参加の「Diaspora Blues」を取り上げたトランペッターSteven Bernsteinのリーダーアルバムで、トランペット・チューバ・ドラムという他ではちょっとお目にかからない変則トリオの編成です。
メンバーはリーダーのトランペット・スライドトランペット、Marcus Rojas(1963年NY産、他に手元CDでは「Dave Douglas / Spirit Moves」「Donny McCaslin / Declaration」にブラス・セクションの一員として参加しています)のチューバ、Kresten Osgood(1976年デンマーク産、このblogで取り上げた「Sam Rivers / Violet Violets」に参加)のドラムの三人編成です。
全体として静寂のムードに包まれたトリオのサウンドです。Steven Bernsteinは、このアルバムでは~或いは前出の「Diaspora Blues」でもそうでしたが~決して熱くはならず、かなり屈折したクールネス、ダークネスを感じさせるラッパ吹きという印象です。チューバのMarcus Rojasは、曲によって(Monkの3曲目、Mingusの6曲目あたり)ウッド・ベースのようにベースラインを吹きますが、基本的にラッパと絡み合いながら、これまた屈折したメロディを吹き、ドラムのKresten Osgoodは比較的淡々とリズムをキープする・・・聴く前はグシャグシャに乱れるのではと思っていたこのトリオのサウンドは、意外にオーソドックスに響いてきます。
それにしても、リーダーSteven Bernsteinの特にスライド・トランペットは非常に個性的です。例えばMonkの3曲目"Thelonious"では、チューバがベースラインを吹き、リーダーのラッパソロを支えているのですが、この人のスライド・トランペットは、ジャズの文法とかを全く感じさせず、それでいてMonkのムードに実にフィットしているという印象で、確かにこんなラッパは今まで誰も吹いたことがない、そういう極めて突出した個性を感じます。また、私は原曲を知りませんが、Hank Williams作の7曲目では、おそらくは原曲と遥か遠く離れたアブストラクトなサウンドから、徐々にストラクチャーが明快になってくるのですが、ここでのリーダーのミュートソロも曲が進むにつれて変態度がグッと上がってきて、チューバとの絡みもイヤらしく、このあたりがリーダーがこのトリオでやりたかった典型的なサウンドだと思います。
Steven Bernsteinというミュージシャンは、面白い(或いは「なんでもアリ」の)サウンドを聴かせるバンドのリーダーとして認知されているような気がしますし、もちろんこのアルバムだって変則トリオによる充分「面白い」サウンドではありますが、ここではひとりのラッパ吹きとしてのナチュラルな姿が率直に現れており、さらに意表を突くチューバも効いていて、不思議な魅力を感じさせるアルバムになっています。
Rec. Date: Nov. 2007
Personnel: Steven Bernstein (tp, slide-tp), Marcus Rojas (tuba), Kresten Osgood (ds)
1. Prince of Night [Charles Brackeen]
2. Hope for Denmark [Osgood]
3. Thelonious [Thelonious Monk]
4. Scaramanga [Bernstein, Rojas, Osgood]
5. Abington [Osgood]
6. East Coasting [Charles Mingus]
7. So Lonesome I Could Cry [Hank Williams]
8. Khumbu [Rojas, Bernstein, Osgood]
9. The Beat-Up Blues [Osgood]
だいぶ前にこのblogでSam Rivers参加の「Diaspora Blues」を取り上げたトランペッターSteven Bernsteinのリーダーアルバムで、トランペット・チューバ・ドラムという他ではちょっとお目にかからない変則トリオの編成です。
メンバーはリーダーのトランペット・スライドトランペット、Marcus Rojas(1963年NY産、他に手元CDでは「Dave Douglas / Spirit Moves」「Donny McCaslin / Declaration」にブラス・セクションの一員として参加しています)のチューバ、Kresten Osgood(1976年デンマーク産、このblogで取り上げた「Sam Rivers / Violet Violets」に参加)のドラムの三人編成です。
全体として静寂のムードに包まれたトリオのサウンドです。Steven Bernsteinは、このアルバムでは~或いは前出の「Diaspora Blues」でもそうでしたが~決して熱くはならず、かなり屈折したクールネス、ダークネスを感じさせるラッパ吹きという印象です。チューバのMarcus Rojasは、曲によって(Monkの3曲目、Mingusの6曲目あたり)ウッド・ベースのようにベースラインを吹きますが、基本的にラッパと絡み合いながら、これまた屈折したメロディを吹き、ドラムのKresten Osgoodは比較的淡々とリズムをキープする・・・聴く前はグシャグシャに乱れるのではと思っていたこのトリオのサウンドは、意外にオーソドックスに響いてきます。
それにしても、リーダーSteven Bernsteinの特にスライド・トランペットは非常に個性的です。例えばMonkの3曲目"Thelonious"では、チューバがベースラインを吹き、リーダーのラッパソロを支えているのですが、この人のスライド・トランペットは、ジャズの文法とかを全く感じさせず、それでいてMonkのムードに実にフィットしているという印象で、確かにこんなラッパは今まで誰も吹いたことがない、そういう極めて突出した個性を感じます。また、私は原曲を知りませんが、Hank Williams作の7曲目では、おそらくは原曲と遥か遠く離れたアブストラクトなサウンドから、徐々にストラクチャーが明快になってくるのですが、ここでのリーダーのミュートソロも曲が進むにつれて変態度がグッと上がってきて、チューバとの絡みもイヤらしく、このあたりがリーダーがこのトリオでやりたかった典型的なサウンドだと思います。
Steven Bernsteinというミュージシャンは、面白い(或いは「なんでもアリ」の)サウンドを聴かせるバンドのリーダーとして認知されているような気がしますし、もちろんこのアルバムだって変則トリオによる充分「面白い」サウンドではありますが、ここではひとりのラッパ吹きとしてのナチュラルな姿が率直に現れており、さらに意表を突くチューバも効いていて、不思議な魅力を感じさせるアルバムになっています。