時に西暦1981年春、打ち切り短縮に終わった『ヤマトⅢ』の最終回を見ながら、 ああこれでヤマトも終わりなんだと悲しい思いに捕らわれていた私でしたが、 最後の最後に西崎プロデューサーからのメッセージが映し出され、 なんと「来年の夏に『完結編』を制作しヤマト10年の締めくくりにしたい」そうじゃないですか! その時はただ喜んだだけでしたが、今になって考えてみると、よく打ち切り作品の新作劇場版が 製作できたもんで、そのあたり剛腕プロデューサーである西崎義展氏の面目躍如でしょうか?
それからの日々は長かったような短かったような感じで、徐々に明らかになる情報に期待しながらも、 どっちかと言うとノンビリと待ってましたね。でもやはりいろいろと無理があったのか、 82年の夏には『完結編』は完成せずに、公開は結局は83年3月19日になってしまいましたが……。
アニメブームを切り開いた『宇宙戦艦ヤマト』シリーズでしたが、この時期にはアニメ作品は氾濫し、 ファンの目も肥えてきてました。『機動戦士ガンダム』や『超時空要塞マクロス』等の 次の世代を創った作品もすでに登場しており、ヤマトや松本零士作品自体がいささか飽きられ気味の この頃でしたが、『完結編』に関しては「ヤマト沈没」と「沖田復活」はけっこう早い時期に情報が リークされており、さすがに気にせざるを得ない状況でした(笑)。
作品の氾濫によりアニメ雑誌での扱いも相対的に小さくならざるを得ない訳ですが、 『さらば宇宙戦艦ヤマト』で創刊された『アニメージュ』はさすがにちゃんと扱ってくれて、 1983年4月号(Vol.58)では、つい先頃亡くなった金田伊功さんによる印象的な表紙イラストで 「グッドバイ・青春」と名付けられた特集が組まれましたが、このタイトルとイラストがいいんだなぁ…。 金田さんの訃報を聞いたとき、真っ先に思い出したのがコレだったくらいですもん…。 この号では当時売り出し中だったSFチックライトノベル作家の新井素子と岬兄悟による その春に公開される3本のSFアニメ映画の採点が載っていて、『クラッシャージョウ』が5点、 『幻魔大戦』が3点に対し、『完結編』はたったの2点という評価でした。 もっとも新井さんは『クラジョウ』の映画パンフに寄稿してるんで、御祝儀点の可能性も有るんですが、 同じように『完結編』のノベライズを担当した岬が2点しか付けてないのは許せんヽ(`Д´)ノ!! 『完結編』のノベライズは、お馴染み若桜木虔さん版と岬版とあと朝日ソノラマ版とが出ており、 ソノラマ版は近場で売ってなかったので、小粋な作風の岬版に魅力は感じつつも、 『さらば~』に始まりちゃんと全作品を小説化してくれた若桜木さん版を買いましたが、 やはりこの判断は間違ってなかったようです。 自分が小説化した作品に2点を付けるような奴に、ヤマトのロマンは語れませんよ、ねぇ!
とか書いておきながら、私もこの『完結編』が全肯定できるかと言うとそうではなく、 大きく2点、(1)沖田が生きていたこと(2)年代を2203年にしたこと は納得しきれていません。 (1)はそれ抜きではこの作品は成立しないのでムリヤリ納得するにしても、(2)はねぇ…。 たしか当時の西崎インタビューによると「古代と雪を未成年のままにしたかった」から この年代にしたそうですが、もう過去5回の大航海を経て充分に成長した古代が未成年なんて 却って不自然で、特に『ヤマト?』の堂々たる艦長ぶりは30代と考えても不自然は無い程で、 まぁ雪の年もあるから20代中盤ぐらいの、2006年くらいの設定の方が良かったんじゃないでしょうか? そうすれば『ヤマトⅢ』の準公式年代の2005年とも矛盾しなかったし、 デスラーがわずか放浪一年であのガルマン星を見つけ解放し、一年で帝国を作り上げ、 そしてまた一年で滅亡するというめまぐるしいことにならなくても済んだはずです。 (それによく考えたら2199年で18才だったんだから、2203年にはどうせ22才になってるじゃね~か! さすが西崎P、言ってることがぶっ飛んでるぜw)
この時間圧縮(笑)で、ヤマトの作品世界の時間軸は相当すごいことになっていて、 なんとあの世界の地球は2199~2200年にガミラスによる放射能汚染、 2201年に白色彗星による物理的攻撃、2202年に暗黒星団による地表完全制覇、 2203年にガルマン・ボラー戦争のとばっちりによる太陽暴発及び、 ディンギルからの侵略&アクエリアスによる大水害を受けるという驚天動地の連発で、 この全てが滅亡寸前まで逝ってる訳ですから、この世界に生まれた人は不幸ですよねぇ……。
『完結編』での地球防衛軍は艦船の頭数だけはそこそこ揃ってますが、人材の払底はいよいよ 酷い状態なようで、全艦マルチ隊形からの拡大波動砲の一斉放射をぶっ放したのはいいものの、 ワープでかわされて、エネルギーが底を突いた状態をフルボッコされるという、 全く過去の戦いの教訓を活かせないオソマツさでした…。
この時の地球防衛軍の戦艦は名前すら特にない投げやり状態ですが、デザインは悪くありません。 夕焼け空に出撃していくシーンは健闘を期待してワクワクしながら見ていたものでしたが(嘆
この作品のメカデザイナーはお馴染み板橋克巳氏にベテランの辻忠直氏、 それからこの時点で売り出し中の出渕裕氏がクレジットされており、 作風から地球防衛軍の艦船は板橋メカだと思いますが、『ヤマトⅢ』のノッペリとしたラインに、 ほどよく以前のシリーズのスタジオぬえメカの精密さが加わった感じで、 これなら主力戦艦の後継機種として納得できるデザインラインです。 巡洋艦と駆逐艦も同じ流れで、特に駆逐艦はこの映画での見せ場が多いので、 これが魅力有るデザインに仕上がったのはうれしい限りでした…。
『完結編』の敵であるディンギルは太古に大洪水にあった地球上から救い出された民族で、 「ウルク」という都市名や「ルガール」という王の名から、大洪水伝説を持つシュメール人の末裔だと 思われますが、救ってくれた宇宙人の母星に連れていかれたあと、そこを占領した トンデモない連中で、この身勝手さはシュメールというよりまるでチャ○ニーズですね(苦笑)。 そういう自己中心的存在なんで、ウルクがアクエリアスによる洪水に再び襲われた際、 女子供を見捨てて自分たちだけ脱出して地球に戻ってきた訳ですが、ついでにアクエリアスを ワープさせて地球を水没させ滅ぼした後で自分たちが移り住む気だったという、 これまでの地球侵略勢力の中で間違いなく最悪の連中で、しかも最弱(爆 新型デスラー艦のデスラー砲一発で粉砕されたくらいなんで、ヤマトがアクエリアスからの水流を 断ち切るための自沈体制になかったら、間違いなく瞬殺していたでしょうね。
この『完結編』でのトラブルの元である水の惑星アクエリアス。とは言っても、 宇宙の法則に従って自然の営みを続けているだけで、それを宇宙の「愛」だと自ら語っているように、 罪の意識は全く無いというある意味やっかいな存在です。 話を司る女神が必ず出てくるのがヤマトのオヤクソクなんで、『完結編』では説明役としてのみ 実体の無い女王が出てきますが、まぁあれは人類というより『ヤマトⅢ』のファンタムのような 惑星生命体と捉えた方がいいのかもしれませんね…。
実は地球の水の起源ははっきりとは解っておらず、「宇宙を周回する水惑星」という考え方は それを説明する一つの仮説としてわりとポピュラーで、たしか『完結編』の製作の数年前にも、 それを扱った本が話題になっていたので、ここにその概念を持ってきたか~と、 西崎プロデューサーのアンテナの高さには感心しました。
それから、今でもポピュラーなコカコーラから出ているアイソトニック飲料のアクエリアスが 発売されたのが83年4月で、まさにこの『完結編』の公開直後なんで、 ひょっとしたらタイアップが組まれていたんじゃないでしょうかね~。 もしかして前年の夏公開予定がずれたのもそのためだったりして(笑)。
この完結編の模型はヤマト本体とコスモゼロしか当時はバンダイから出ませんでした。 上の写真は新規金型の1/1000モデルで、ウルクのイラストが大迫力です。 その後もワンフェス等で当日版権のガレージキットは出ましたが、一般販売品は無く、 ようやく近年、発売:ポピー、販売:ザッカピ-エイピーのメカニカルコレクションで、駆逐艦、巡洋艦、 戦艦が出てくれました。特に駆逐艦は6つの番号があって、劇中でヤマトの楯となったり、 最後に乗組員を収納したりした個々の艦を揃えることができるという凝り具合でした。
今回メインでお目にかけてるのは、その駆逐艦のうちの冬月です。これは現実の戦艦大和の 沖縄作戦の時に僚艦を務めた艦と同じ名前で、その故事を踏まえた命名ですね。 全長約10.4cmのPVC樹脂製で、透明の背の高いスタンドが付属します。
これだけじゃ、ちょっと寂しいので、ディンギル側の巨大戦艦を作りました。 この機体はちょうどつい先日行われたワンフェスでメカコレサイズのが発売されたんですが、 それ4000円もするんですよ…。もちろんその他に交通費、滞在費、入場費がかかりますから、 全部で約1万円の出費となるので、とてもそんな余裕はありません…。 だったら作ればいいやと思ったんですが、たぶん辻氏のデザインと思われるコレ、 馬蹄をハリネズミ的に武装させたような、やたら複雑な形をしてるんですよね~。 機銃の大半は3連ガトリング砲という作るのにメンドクサイ形状だし……。 まぁそれでも設定資料や本編映像と首っ引きで作ってみました。
敵メカだけでは寂しいので、例によって要塞もとばかり、都市帝国ウルクも作りました。 実際のウルクの縦寸をかなり縮めたイメージモデルですが、それでも19(縦)×7(横)×7(高)cmの 600円サイズのプラモくらいの大きさになっちゃいましたね~。ヽ(´ー`)ノ たぶんこれもこれまでに模型化されてないんじゃないかなぁ…。 どちらも材料は発泡スチロール、スチレンボード、粘土、プラ版、爪楊枝、割り箸等、 身の回りにあるモノを使ったんで、材料費はゼロです。 例によって簡単なジオラマ仕立ての画像を作ったので、クリックして御覧下さい!
ウルクって白色彗星の都市衛星より大きいんですよね。強さはカラッキシだけど(笑)。 考えてみるとこのウルクも本体のディンギルからまず分離し発進し、 それから後部神殿下のプレノアだけがまた分離して最後の勝負を挑んでくるという、 構造だけは白色彗星帝国と同じでしたが、『完結編』を初めて劇場で観た時に、 全然絶望感を感じなかったのは、それだけ弱く感じていたせいなのか、 それとももう劇中世界に入り込めなくなっていたのか、さてどっち?(苦笑)。
せっかく、佐渡先生に「頭を丸めてお詫び」までさせて沖田艦長を生き返らせた『完結編』。 沖田は古代にとって父のような存在なので、ルガール親子との対比の意味でも必要だったんだろうし、 ヤマト自沈の際に艦と運命を共にさせるとしたら、やはり沖田しかいないというのも理解できます。 でもね、これまで「死んでいる」ことによってヤマトクルーの心の拠り所となっていた沖田艦長を、 死ぬためだけに甦らせたのは、やはり後味の悪さが残りますよ。 オートマチックではタイミングが合わないにしても、モニターカメラを設置しての遠隔操作なら 何も誰かが艦橋に残る必要は無い訳だし、損傷が無いように見える沖田の遺体を見ていると 水死したようにも見えるので、宇宙服を着ていれば良かったんじゃないかという気すらします…。 この『完結編』の公開時には、ヤマトの特攻に疑問を感じなかったそれなりに純粋だった 高校時代とは違って、安易な自己犠牲には懐疑しか感じなくなってましたから、 この結末には今に至るまで疑問しか感じません。
でもね、あのデスラーが登場してバラを胸に差しつつ古代にお礼を言うシーンに「カッコイイ!」と 感激しつつ、同じシーンを見ながら「ギャハハ、キザー」「バカじゃないの!」と笑ってた 前の席の女2人に内心怒るくらいの純粋さは持ってました、つうか今でも持ってますがなにか?(w
それでも、最後の海辺を全員で走るシーンには辟易したし、徹夜はしなかったけど初日に行ったので カットされる前の、延々と続けられる古代とユキのベッドシーンを見せつけられて、 ここまできたらこうなるしかないよな~と頭では納得しながらも、心は正直ドン引きしたのは、 今でも鮮明に憶えています……。まさにあの気持ちは「青春よさらば!」だったですな(嘆 (このシーンでは例の前の席の女二人は静かだったから、きっと真剣に見入ってたんだろうなぁ…。) だから後の70mm版とかの、二人の身体が重なるところで宇宙に切り替わる処置には安心したし、 海外版の海岸のシーン共々全カットで、真っ二つになったヤマトが宇宙の海に轟沈するシーンに 「宇宙戦艦ヤマト」の歌を被せて終わるという大胆なアレンジには感心しましたヽ(´ー`)ノ つうかそっちの方がヤマトの最後にはふさわしいですよねぇ…。
さて、4ヶ月後の『復活編』では、どうやってあの宇宙の海からヤマトを引き上げてくるのか? それから、 英雄の丘はまだみんなの心の拠り所でありつづけているのか? そのあたりにどうかうまく納得のいく説明をしてほしいと心から願わざるを得ません。 古株ヤマトファンが心配するのはその辺であって、キャラが松本顔でないとか、メカが格好悪いとか、 あるいは戦闘の演出が今風でないなんてのは、さほど重要でないことだと思うんですがねぇ…。
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