今日の御題は007ですが、まもなく撮影開始の予定だった007シリーズ第23弾 「プロパティー・オブ・ア・レディ」が、な、なんと製作・配給元の大手映画会社 メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)が経営難に陥ったため、無期延期となったようです (゚ロ゚ノ)ノ!!
映画007シリーズの制作は第1作の『ドクター・ノオ』から一貫してイオンプロダクションが 行っており、現在は第二世代のマイケル・G・ウィルソン&バーバラ・ブロッコリの二人の プロデューサーが指揮を執っています。このシリーズ自体は成績も好調で、 次回作も公開されればヒット間違い無しなのに製作資金が調達できないのは困ったものです。 単に資金繰りの問題だけなら他の製作元を見つけてくればいいだけの話ですが、 実は007シリーズの映像化の権利は複雑怪奇な経過をたどった末、 イオンプロとMGMが半分ずつ持っているので、それはできないんですね。
というのも、007シリーズの映像化の権利はイアン・フレミングが売り急いだせいもあり、 けっこうバラけてしまっていたんですよ。 今日のメインのお話はその007の陰謀の歴史に鋭く迫る内容です(笑)。
まず『カジノ・ロワイヤル』(分権A)と『ムーンレイカー』(分権B)が別々の相手に売られ、 1953年には(A)を元にTV版の『カジノロワイヤル』(主演バリー・ネルソン)が作られます。
そして残りの全作品の映像化権をハリー・サルツマンが買い取ったんですが、 タッチの差で逃したアルバート・R・ブロッコリが共同制作を持ちかけ、 サルツマンも応じてイオンプロが設立されます(分権C&D)。 ところが、実はその中の『サンダーボール作戦』は元々は単発映画企画として フレミングがケビン・マクローリー等と暖めていたものを、流れたんで勝手に小説化して、 勝手に映像化権も売っ払ったというなんともヒドイ話で、当然裁判沙汰になって、 映像化権はマクローリーのものになり(分権E)が発生しました。 イオンプロは62年の『ドクターノオ』以後、順当に製作を続け、 65年には(E)を持つマクローリーと組んで『サンダーボール作戦』も映画化に成功。
ただ67年には(A)に基づく『007カジノ・ロワイヤル』をコロムビア映画に製作されてしまいます。
以降は多少の成績の上下はあれど概ね好調に見えたイオンプロ制作の007シリーズも、 芸術指向のサルツマンとエンタテイメント重視のブロッコリが次第に険悪となります。 ボンドシリーズの傾向として、シリアス作品とドンパチ作品が交代で来るのは、 実は作品毎に主導権を握ったプロデューサーの好みによって決まってたようですね(苦笑)。 そして『黄金銃を持つ男』(74年)でサルツマンが引退後、彼の権利(C)を ブロッコリでなく007映画の製作・出資元のユナイト映画に売り渡してしまったのです。 残りの権利(D)を持つブロッコリは、ユナイト映画からそのまま制作を託されたので、 独力で『私を愛したスパイ』を制作・成功させ勢いに乗って、買い戻した(B)を元に 『ムーンレイカー』を制作し、そのままシリーズを続けます。
ただ83年には、またしても(E)による『ネバーセイ・ネバーアゲイン』が マクローリーと組んだジャック・シュワルツマンによって制作されてしまいますが、 その他には大きなトラブルも無く、『消されたライセンス』(89年)まで制作を続行。 ところが80年代後半にユナイト映画が倒産し、そのゴタゴタで(C)がMGM (資金繰りに苦しいユナイト映画に共同出資していた)に売られてしまったからさあ大変! どうもユナイトの重役の一人が、自分を迎えることを条件に(C)をMGMに売ったらしく、 当然、自分で買い取るつもりだったブロッコリとMGMとの間で裁判が起こり、 以降5年間シリーズは中断されました……。
それでもやっと合意が成立し『ゴールデンアイ』(95年)が製作されますが、契約が残っていた ティモシー・ダルトンにMGMが難色を示しピアース・ブロスナンと交代させ、大ヒット。 当然そのままの布陣で『トゥモローネバーダイ』(97年)も制作されました。
ちょうどその頃、日本のソニーがコロムビア映画を買収しソニーピクチャーズに組織変更。 マクローリーを味方に付けたソニーピクチャーズは(A)(E)を保持することとなり、 イオンプロのシリーズも忠実な映画化ではなく原作の要素をツギハギした作品で、 原作に無いオリジナルタイトルまであることから、この2本分の権利から多数の映画が作れると、 98年にこれを元にしたボンド映画シリーズを制作すると発表し、またまた裁判沙汰に…。 結局、ソニーピクチャーズvsイオンプロ&MGMとの裁判は、 「ソニー保有の007の全権利をMGMに譲る」ことによって決着しますが、 一説によるとMGMが一部保有していた『スパイダーマン』映像化権をソニーに譲る代わりに 007の権利をMGMに譲るという驚異のバーター取引だったそうで、 事実、2002年にソニーピクチャーズ製『スパイダーマン』シリーズが始まっています。
ここにようやく007の全権利はイオンプロ(B・D)&MGM(A・C・E)に集結しました。 このまま不動の体制でシリーズ製作が続くかに思われたんですが、 裁判に負け007シリーズの製作は諦めたかのように見えたソニーピクチャーズは、 2005年にMGMを買収するというトンデモない荒技に出ます。
「作品買えないなら会社ごと買っちゃえ!」という、ジャパンマネーにものをいわせた この時のソニーのTOPだったのは出井伸之氏です。 「コロムビアに続いてMGMもか!」と、ハリウッド映画ファンを嘆かせた暴挙でしたが、 MGMに関しては完全子会社化はせず、大株主となって経営荷担するという買収の仕方で、 ブッチャケ、007が創りたかったんでしょう。ヽ(´ー`)ノ
この新体制で制作されたのが、『007/カジノ・ロワイヤル』(2005)で、 権利は保有したもののイオンプロでの映像化は無いと思われていたこの原作を使って シリーズ初のリセットが行われました。
ちょうど作品毎にギャラアップを要求するピアース・ブロスナンに辟易してたこともあり、 新しいボンド役を使ってのリセットに、シリーズ第一作の原作を使うのは極めて筋が通った話だし、 旧作の権利を有しどんな妨害をしてくるか解らないソニーピクチャーズとの提携も成ったので、 もともとタイトルに苦労している中、この有名なタイトルを使わない手は無いじゃないですか!
こうして、全く原作通りの、時代だけを現代に置き換えた作品として2005年版は作られ、 ヴェスパーとの恋に悩む初々しいけれど非情なボンドの姿を、ダニエル・クレイグがシリアスに演じ、 興収も全世界で5億9420万ドルに達し、シリーズ最高記録を樹立するという大成功となります。
その出井氏がソニー退社後の2006年に設立したのがクオンタム・グループです。 このマイナーな作品名を名前にするところからも、彼は熱心なボンドマニアでしょうが、 2008年の007シリーズ第22弾に出てきた悪の秘密結社が「クオンタム」なのは、 当てつけなのかシャレなのかはビミョーなところで、邦題が原題の「クオンタム・オブ・ソラス」でなく 「慰めの報酬」となったのも、そのあたりが関係してるような気がします(笑)。 実際、出井氏のクオンタムも、あの吉本興業を乗っ取るという相変わらずの豪腕振りだし、 御尊顔も風格たっぷりで、いつボンド映画の悪役に登場してもおかしくない感じですw
さて、ここでミニカーですが、今回のはこの制作無期延期騒ぎのついでみたいなもんで(笑)、 それにふさわしい小物で『私を愛したスパイ』よりジョーズのテレフォンバンです。 このクルマに関しては覆面えるさんのこちらと勝手連で、細かい説明はオマカセします。m(_ _)m
ちゃんとしたミニカーはえるさんところで見ていただくとして(笑)、 こちらのこのいかにもやっつけな小スケールミニカーは、封切り当時に出された コーギージュニアのJames Bond The Spy Who Loved Me Gift Setに含まれていたモノです。 全長6.7cmで、ボディはダイキャスト、シャーシはプラスチック製で、 この時にはサブマリンエスプリ、ナオミヘリ、ジョーズバン、ボートを牽引したベンツが 大箱に入ってセットされていて、ベンツはフロントに泥水かぶったみたいなシールが貼ってあるんで、
たぶん、エスプリとチェイスした黒いフォードタウナスのつもりなんでしょう(笑)。 ジョーズバンもテキトーなバンにシール貼っただけのナンチャッテだし、 この頃のコーギージュニアは大らかでしたね~ヽ(´ー`)ノ でもなんでボートを牽引してるのかは、大らかを通り越して謎ですが(爆)
今回の「製作無期延期」は、破綻したMGMに買い手が現れないんじゃなくて、 名乗り出たワーナーとの間に値段の折り合いが付いてないだけなんで、 MGMが強気を止めればいいだけの話だし、 ソニーピクチャーズも完全に他人の手に渡るよりはもう少し投資して、 完全子会社化してしまった方が、現役の007シリーズだけでなく、 MGMの過去の遺産を含めた良質なコンテンツが手に入るチャンスではあるんだけど、 SONY自体が左前で、出井氏もその後失脚して退社済みだし、 これ以上積極的に映画ビジネスに乗り出す状態じゃないのかも知れないですねぇ…。 いっそクオンタムがMGMを買収すればいろんな意味で笑えるんだけど、 たぶんそこまでの財力は無いんでしょうねぇ……。
50年近くこのシリーズで儲けてきたイオンプロなんだから、G・ルーカスみたいに 自前で製作費も負担すればいいような気もするけど、最初にも書いたように ブロッコリ憎しのサルツマンが最後に仕掛けた罠がものをいって、契約上不可能です。 そのサルツマンが持っていた権利(C)とソニーとの裁判で手に入れた権利(A・E)の所有者が、 ライオンから誰に移るかは何とも言えず、もしかしたらまた権利がバラけて 長期間製作が停止する可能性すらある今回の007絶対の危機、もう何発目は解りませんが(笑)、 『消されたライセンス』からの5年間の中断のようなことにはならないことを切に祈ります。
さて、4月は今回が最後の更新になりまして、2007年の4月30日から始めた 「キャラクターミニカー秘密基地」なんで、ちょうど丸3年になろうとしています。 いつも御覧いただき、そしてコメント下さった方々には心から感謝いたします。m(_ _)m カウンターも22万3千hitを超え、同好の士がいなかった昔のことを考えると感無量です。 今後の予定としては、リフレッシュのためGWは更新は休ませていただきますので、 次回は5月10日頃にお目にかかりましょう!(・∀・)
テーマ:ホビー・おもちゃ - ジャンル:趣味・実用
|