人気番組『レッドバロン』を製作体制の不備から、1974年3月で途中駆け足で 終了させてしまった日本テレビの上層部ですが、その頃フジテレビの『マジンガーZ』は 相変わらず絶好調で3月17日放送の第68話「地獄の用心棒ゴーゴン大公」が 30.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)という最高視聴率を記録した時期でした。 マジンガーが好きな子供なら当然レッドバロンも見てた訳で、せっかくマジンガーに 対抗できる番組を持っていたのに、終わらせてしまったことを上層部は反省したらしく、 今度は製作体制の不備が起こらぬよう『レッドバロン』の実際の企画者である 渡辺一彦(日本テレビ音楽)、斎藤汎司(日本テレビ)の2人に後継企画が依頼されました。 しかし今回はビジュアル面で支えた野口竜はなぜか不参加で、渡辺&斉藤による原案も、 途中参加のシナリオライターの上原正三により大幅に書き換えられ、渡辺&斉藤案は 結局は主役の「マッハバロン」というネーミングや敵側のララーシュタインの設定のみが 採用されたに過ぎなかったのです。しかし企画に続く実際の撮影に関しては、 少しは反省が活かされたのか簡略化を狙ったようで今回は宣弘社は絡まず、 日本テレビから直接、日本現代企画へと制作が発注されました。
 このようにストーリー的つながりは無いですが、『マッハバロン』は『レッドバロン』の 続編として制作が始まっています。『レッドバロン』は里子に出された先の宣弘社が 『月光仮面』や『隠密剣士』等の等身大ヒーロー番組が得意だったこともあってか、 等身大アクションシーンが大きな割合を占め、ストーリーもスパイアクション的要素が 強かったですが、『マッハバロン』では宣弘社が外れたのでその要素がほとんど無くなり、 代わりにメインのシナリオライターに就任した上正が得意とする主人公の成長ドラマが 描かれ「主人公が無鉄砲な性格ゆえにトラブルをおこし、周囲の忠告で反省する」的な ストーリー展開が多かったようです。そういうスポ根的要素は確かに当時の流行でしたが、 ロボットものを好んで見る層にそのテイストが好まれるかは疑問で、
 結局、主人公の青さだけが際だつ結果になった感じで、前作の主人公紅健が 落ち着いた物腰だったのと比較してもマイナスだったんじゃないでしょうか? 一方、新体制の前作以上に巨大ロボやメカの特撮に力を入れる方針は好評で、 わざわざ全身を水に浸して発進する出撃シーンや、身体を折り曲げたり振り回して 放たれるマッハバロンの数々の必殺技は、非常に印象に残るものとなりました。
日テレは『レッドバロン』の版権を直接管理し、多数の版権契約によりかなりの利益が 上がったので『マッハバロン』でも、独占契約は結ばず多くのメーカーに版権を降ろしました。 ソフビはブルマァクとマスダヤで、ブルマァクは「胸からミサイル発射」、マスダヤは 「トーキング機能」と、どっちもこの時期凝っていたギミック搭載なのが興味深いです。 結局、プラモはアオシマとイマイ、超合金はバンダイ(ポピー)、変身セットはタカラ等々、 『レッドバロン』に勝るとも劣らぬ商品群となりましたが、中でもアオシマの 「合体マシン」は大ヒット商品となり、当時の関西模型小売商組合連合会から 1975年度の最も売れた商品に贈られる賞「プロフィット賞」を贈られた程でした!
 (参考画像、クリックで拡大)
ロボット人気の高騰を横目に、それこそマッハの早さで企画が練られた『マッハバロン』は、 渡辺&斉藤に企画依頼があったのは『レッドバロン』終了直後ではなく1974年6月で、 日テレ上層部が自分たちのしでかした大失敗に気づくのに2月もかかったわけで、 それで同年10月放送開始で依頼したんだから、当時の日テレ上層部がいかに TV番組の企画をないがしろにし、下請け(企画者)に無理を強いる体制だったかが 解りますが、この辺、今もそう変わってないかもですねぇ…('A`) 結局、放送開始まで半年ブランクが空いたのは大きく、その間にロボット人気は一段落し、 『マジンガーZ』後継番組の『グレートマジンガー』すら、前作程の人気は得られぬ状態でした。 『マッハバロン』は視聴率は前作より低いけれど一定のラインを維持したものの、 またしても日本テレビ側の事情、それも編成の都合という『マッハバロン』には 全く関係無い方面からの妨害が入ったのでした…。
それは1975年4月から日曜19:30~20:00に『すばらしい世界旅行』が移動するので、 それまで同枠放送のアニメ枠が月曜19:00~19:30に移動となり、そこで放送中の 『マッハバロン』への打ち切りの打診でした。実はこの枠は『マッハバロン』の前には 『柔道讃歌』を放映していたアニメ枠なので、アニメに戻せというのは無茶な要求では ないんですが、じゃなんで『マッハバロン』をその枠でやったのかというと、 『レッドバロン』を放映していた水曜19:00-19:30の枠がいかにも急ごしらえの 『スターむりむりショー』というバラエティに変わっていたためでした。('A`) 実はこの枠、『レッドバロン』の前はあの『白獅子仮面』で、私目線では特撮2連続で うれしい枠だったんですが、日テレ目線では「打ち切り2連発」となり、今さら手間が かかって数字が取れぬ子供番組には戻したくない思惑があったのではないでしょうか? 実はこの「むりやりショー」も9月末で打ち切られてるので、『マッハバロン』をそこで始めれば 最初から何の問題も無かったし、『マッハバロン』を潰して当てはめたアニメも 別枠からの移動ではなく1975年4月新番組の『ガンバの冒険』なので、 本当はその枠にこだわる理由は何も無かったんですよ…。 この異常事態に慌てた『マッハバロン』実制作の日本現代企画側が、別の放送枠を探すも 叶わず、全40話の予定は短縮され未完結のまま26話で打ち切られた事から考えても、 どうも日テレ上層部には特撮番組を毛嫌いする輩が巣くっていた気がしてなりません。
オモチャがバカ売れ、視聴率も好調な番組を今度はスポンサー側の都合も無いのに、 枠移動のウソまで付いて打ち切ったんだから、この陰謀はララーシュタインなみに悪質で、 まさに「(都合のいいように)チューニングされて黙っているか~?」ですヽ(`Д´)ノ
『マッハバロン』はエンディングテーマでは「悪の足音遠くへ去ったら」と歌っており、 「悪は遠ざけることはできても、滅ぼすことはできない」というかなり深い内容でしたが、 どっちも実はテレビ局内の事情を差していたのかと考えると、ホント、泣けるで(つД`)
かくしてレッドバロン、マッハバロンの二人の鋼鉄男爵は、その人気にも関わらず テレビ局内の勝手な都合で不本意な終わり方を余儀なくされました。 数年明けて制作されたこの2作品と薄いつながり(渡辺一彦が企画者の一人)を持つ 『ガンバロン』もまた、不本意な打ちきられ方をしてる事から考えると、 ニチテレンシュタインの陰謀は局内に相当深く根付いているようです…。
さてその不幸なマッハバロンのアイテムのうち、今回紹介するのは イマイの大サイズプラモデルです。
 放送当時の一番の売れ筋だったアオシマ合体プラモは全身揃えると2000円程かかる 高級品で、ビンボーな私は揃えてた友だちの家で見せてもらうのが精一杯でした。 あとこれは30cm弱で、マルイのレッドバロンとサイズが合わないのもネックでしたが、 マルイがマッハバロンには参入しなかったので仕方ないけど憂鬱です…。 イマイのは小サイズは近場で見かけて買ったけど、しょせん10cmで並べられるモノではなく、 当時500円だかの大サイズはついに見かけませんでした…。 ただコレはイマイ末期の再販ループ品の中に、幸いにして入り、ノーマル800円と 特殊メッキ品の2000円だかが出てくれました。でも800円と言えどもビンボーな私には 安くはありません。もし大きさが違ったら無意味なので箱の中を覗いて大きさを確かめる機会を 狙ってたんですが果たせず、気づいたらイマイは廃業でプレミア化してました…_| ̄|○
オクでもノーマル品が1000~2000円程度でいつも出ているので、いつかハンパに 予算が余った時に買おうと思っていたら、「組み欠けジャンク500円」というのが出て、 「部品は揃ってる」そうなので、コレサイワイと落として素組みしたのがこちらです。
 もともと素立ちの動力は仕込まれていないキットなのでプロポーションは良く、 ロケットパンチのギミックも定番とは言えうれしいですね。頭と両手は回せるので、 あとは上体反らしができればいろいろ遊べたんですが、ポリキャップ等が発達前の 太古キットにそれを望むのは酷だし、基本、ディスプレイ派なので(゚ε゚)キニシナイ!!
それよりもこのキット最大のウリは、全長約18cmというところにあり、
 このようにマルイのレッドバロンとツーショット撮影ができることにあるのです。
もし『マッハバロン』が当初の予定通りに制作されていたら、 戦いを終えていたレッドバロンが、終盤でマッハバロンのピンチを救いに 駆けつける夢の展開が観れたに違いないという、バロンファン誰もが抱いた妄想を 40年振りに実現でき、長年の憂鬱が晴れて感無量です!ヽ(´ー`)ノ
テーマ:ホビー・おもちゃ - ジャンル:趣味・実用
|