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きまぐれな日々

森田健作が勝利した千葉県知事選について書いた昨日のエントリには多くのアクセスをいただいたが、面白いと思ったのは、kechackさん「はてなブックマーク」につけたコメントだ。

この得票差を見ると小沢事件がなくても森田健作が勝っていた。自民党は有名人候補を担げば選挙で勝てる。ただ衆議院選挙で現職の処遇優先でその手は使えないから負けるでしょう。
(kechackさんの「はてなブックマーク」コメント)


kechackさんのブログ「Munchener Brucke」は、いつもクールで切り口がたいへん面白い。最新の3月30日付エントリ「社会は若者に期待しているのか? ―若者は消費してはいけない―」は、自己責任時代のサラリーマンは

将来のスキルアップを絶対視しない限りは、若いうちは給料の多くを、将来結婚し子どもが出来て生活コストが増大する時に備えて貯蓄なり理財をする必要が出てくる

と指摘し、

はたして自己責任狂人にその覚悟はあるのか?

と問いかけているのにはうならされた。確かにそうで、湯浅誠の言う「溜め」を持っていなければ生きていけないのが新自由主義の世の中だ。そもそも、新自由主義政策を保持したまま「景気回復」などあり得ないことがよくわかる。新自由主義政権(現在の自公政権)の打倒こそ最大の景気回復策なのである。

今月世間を騒がせた「西松事件」は、確実と思われた政権交代の可能性をゆるがせるものだったが、「衆議院選挙で現職の処遇優先でその手は使えないから負ける」というコメントには、思わず手を叩いた。前回の「郵政総選挙」で自民党が大勝した要因の一つは、コイズミの「刺客作戦」だった。地元・兵庫県では賞味期限切れに近かった小池百合子を甦らせ、川条しか(志嘉)だのゆかりタンだの文字通りの「スイーツ(笑)」だのの有象無象が大量に当選した。しかし、次の選挙では彼らの処遇を優先しなければならず、これが自民党にとって大きな重石になる。

コイズミは、麻生太郎首相が「郵政民営化には反対だった」と言った時、「誰のおかげで今の議席があるんだ」と言わんばかりに逆ギレしてみせたが、上記の事情を考えれば麻生のキモチもわからなくはない。本当は麻生とすれば、HANAの会(平沼赳夫、アベシンゾー、中川(酒)、麻生)のメンバーに近い極右思想を持った有名人を総選挙の候補者として立てたいのに、賞味期限切れの「スイーツ(笑)」どもがそれを邪魔していることは頭痛の種に違いない。

昔からいる石原慎太郎は別にしても、最近知事になった東国原英夫、橋下徹、それに今回の森田健作などはいずれも極右思想の持ち主であり、麻生太郎や安倍晋三好みといえるのだが(橋下徹はそれ以上にコイズミ風味も濃厚で、特に警戒すべき人物だが)、政治を麻生や安倍の思い描く方向に転換するには、やはり一度は自民党は大きく議席を減らしてコイズミチルドレンたちに落選してももらわなければならない。そして、仮に総選挙で自公が過半数をとったところで参院選の民主党第一党は変わらない。しかも衆議院の再可決も使えない。参議院民主党の分裂を期待するのかもしれないが、果たしてそんなことになるのだろうか。

なお、現在麻生内閣支持率が若干上がっているが、思い出されるのは一昨年の安倍内閣支持率である。発足当初からずっと下がり続けていた安倍内閣支持率は、4月の東京都知事選で石原慎太郎が圧勝した頃から回復へと転じ、以後5月中旬くらいまで比較的高い内閣支持率で推移した。このままいけば参院選は自民党が勝って、安倍内閣が長期政権になるのかと暗い気持ちになりかかっていたし、安倍晋三は自信満々で「改憲」を参院選の争点にする構えを見せたが、5月に「消えた年金」問題が浮上し、毎日新聞の世論調査が安倍内閣支持率の急落を伝えた5月28日に松岡利勝農水相が自殺すると、「改憲」はどっかに吹っ飛んでしまって7月の参院選は2004年同様の「年金選挙」になり、自民党は歴史的惨敗を喫して安倍晋三は退陣へと追い込まれた。まさに政治は「一瞬先は闇」である。

そして、あのあまりにも無能な麻生太郎に首相を続けさせることは、一瞬先どころか10年、20年先まで日本を真っ暗闇に追い込む最悪の選択なのである。


[追記]
kechackさんから下記のコメントをいただきました。謝意を表します。

小泉チルドレンが重石になるというのもそうですが、郵政選挙では自民党と名が付けばだれでも当選できてしまったために、本来なら賞味期限切れの候補者まで生き残ってしまっているという問題も見逃せません。
 自民党は小泉時代に中央集権的になりましたが、そもそもは政治家の個人後援会の連合体です。麻生内閣のように求心力の弱い政権ですと、その性格に回帰しています。結局小泉チルドレンや賞味期限切れ議員を抱えた状態での選挙となるので勝てないのです。
 これは選挙区ごとの個別分析をやってゆくとわかります。麻生内閣の支持率云々以前に「もうこの候補者では勝てない」という状況になっている選挙区がヤマとあります。それでも候補者差し替えができないのが自民党の最大の弱点です。
 民主党は前回の選挙でボロ負けしましたが、その際に今まで比例復活で辛うじて勝ち上がっていたような弱い候補者の多くが支部長の座を追われてました。自民党は次期選挙で現職候補が大量落選するでしょうが、ここで新陳代謝ができるかが復活の鍵です。落選した候補者がみな次に雪辱をといって支部長の座に居座ったら、自民党の復活は厳しいでしょう。
 あとウルトラCとするば、東国原、橋下といった知事経験者を即戦力、当選1回目から閣僚の座を約束してスカウトする方法でしょうか。これなら有権者を騙せるでしょうね。

2009.03.31 09:07 URL | kechack


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先週報じられたマスコミの情勢調査から覚悟はしていたが、千葉県知事選は森田健作の圧勝だった。つい先日までは、まさかあんな男が知事になるとは想像だにしていなかったから、ショックは大きい。

マスコミの報道はわかっている。この知事選と西松事件を結びつけて、民主党代表の小沢一郎への批判を強めるに決まっている。だが、その見方は間違っている。

宮崎で東国原英夫が知事選に勝ったのは2007年1月だった。同年4月には、東京都知事選で石原慎太郎が圧勝した。そして、翌2008年1月の大阪府知事選では橋下徹が圧勝した。今回の森田の当選は、これら3つの選挙の延長線上にあると考えるべきである。

つまり、どんな人物だろうが、テレビなどで名を売った有名人が、「既存政党」の候補に飽き足らない有権者の心をとらえて当選するという図式である。この選挙は、仮に西松事件がなかったとしても、森田が勝っていたはずだ。

彼ら「タレント候補」の選挙の特徴として、選挙終盤に勢いを伸ばすことが挙げられる。東国原は、出馬表明時にはまさか当選するとは思われていなかったし、石原慎太郎は散々スキャンダルを書き立てられて苦戦が予想されていた。また、橋下の時は、前年の大阪市長選で民主党の推薦を受けた元毎日放送アナウンサーの平松氏が当選したこともあって、府知事選でも候補者選びの段階では自民党の苦戦が予想されていた。

しかし、いざ選挙戦がふたを開けてみると、有名人は圧倒的な強さを見せたのである。今回の森田健作も同じだ。昨年秋、民主党がテレビでもおなじみの過激な新自由主義者・白石真澄の推薦を内定したが、白石には自公も相乗りすると見られていた。しかし、民主党執行部は白石を嫌い、推薦を取り消させたいきさつがある。すると、自民党も白石には乗らず、自主投票にしてしまった。しかし、実際には自民党は表向き「無党派」を標榜していた森田健作とつながっていたのは、読者の皆さまもよくご存知の通りだ。森田は、わざわざ「無所属 森田健作」と書かれたタスキをかけて選挙運動をしていたが、森田の「自民党隠し」が功を奏した形だ。

そして、選挙を考察する際に欠かせないのは、得票数をよく見てみることだ。

2001年千葉県知事選 (2001.3.25)

491205 堂本 暁子
472325 岩瀬 良三 自民・公明
428153 若井 康彦 民主・社民
240271  河野 泉  共産
53865  門田 正則


この時は、新人の堂本氏が自公候補と民主・社民の候補を破って当選した。コイズミ内閣発足の1か月前で、自民党人気が不振のどん底に沈んでいた頃だ。4月15日に行われた秋田県知事選では、自民・保守両党が推す村岡兼幸氏(自民党の村岡兼造議員=当時=の長男)が現職の寺田典城知事にダブルスコアで惨敗していた。そんな中、政党の支援を受けた候補はすべて敗れた。

2005年千葉県知事選 (2005.3.13)

960125 堂本 暁子 社民・公明・ネット
954039 森田 健作  
162684 山田 安太郎  共産


この時は、現職の堂本知事を、森田健作が猛烈に追い上げた。通常、現職知事の2期目は選挙にもっとも強いとされている。その現職知事を6千票差まで追い上げたのだから、「タレント候補」の威力が発揮された結果だ。

2009年千葉県知事選 (2009.3.29)

森田健作 1015978
吉田平  636991 民主・社民・国民・日本・ネット
白石真澄 346002
八田英之 136551 共産
西尾健一  95228


前回と比較すると、森田健作が上積みした票は6万票。これは、「現職とタレント候補の比較」なら現職をとるけれど、「現職の後継者とタレント候補」の比較ならタレント候補をとるという有権者がその程度いるというだけの話のように思える。森田健作の「政党隠し」の効果ももちろんあるが、前回2005年も自民党と民主党はどの候補者も推薦や支持はしていない。前回の選挙でも同じ効果があったのだ。極端な新自由主義者である白石真澄は、事実上公明党が支援していたが、森田健作の3分の1の得票しか得られない惨敗に終わった。

現状は、やはりどの政党も国民の支持を受けておらず、だから東国原英夫や橋下徹の知事進出を許したのだし、タレントとしてもうすっかり色褪せた森田健作程度の人間に易々と当選を許してしまうのである。それだけ。政党の不人気は、このところ党勢が急伸しているとされていた共産党にも当てはまり、共産党は党勢急伸どころか、2001年から2005年、2009年へと、毎回得票を減らしていることを深刻に受け止めるべきである。2001年と比較すると、今回は半分強にまで減っている。ここまでひどい経済・社会の崩落にあって困窮した人々の受け皿になれない左翼政党とはいったい何なのか。

民主党に関しては、今回最大の失敗は、当初極端な新自由主義者にしてコイズミ?安倍晋三系列の人物である白石真澄を担ごうとしたことで、これに自民党と公明党が相乗りする動きもあった。しかし、政策協議がうまくいかず、小沢執行部の意向もあって白石の推薦は取り消しになった。「西松事件」の影響は、ないとは言わないが、千葉県連の失策と比較すれば影響はまだしも小さいし、県連を方向転換させた小沢執行部は、それが遅きに失したことは批判されるべきだが、方向転換自体はむしろ評価されるべきだ。

白石真澄の過激なネオリベぶりは自民党にも敬遠され、結局「隠れ自民党」である森田健作に頼ることにしたが、こんな安易で時代遅れなやり方で森田が選挙に圧勝してしまうあたりが、なんとも情けないところである。公明党は、支持者層の傾向からすると絶対にあり得ない白石真澄を事実上推したが、これは森田健作が反創価学会・反公明党だが、自公連立を組んでいる手前、吉田平に乗るわけにもいかず、仕方なく消去法で白石真澄を支援したものだ。自らの利益に反するこんな候補にさえ投票する公明党支持者の辛抱強さには感心するが、党員や創価学会員の利益に反する行動を続ける公明党執行部の行き方は、遠からず破綻して方向転換を余儀なくされるのではなかろうか。

マスコミ報道では、たとえば朝日新聞

西松建設による違法献金事件で民主党・小沢代表の秘書が逮捕・起訴されたあとの初の大型選挙で、民主党への「逆風」をうかがわせた。

と書くなど、この選挙結果を「小沢降ろし」につなげたいようだ。同紙の世論調査でも、小沢辞任を求める意見が前回の57%から63%に増加し、政党支持率では自民が民主を逆転、「首相にふさわしい人」では麻生太郎が小沢一郎を逆転した。それは、あれだけ報道のシャワーを続ければそうもなるよなあ、とも思うし、最近では「大久保秘書が容疑事実を大筋で認めた」などといった虚報まで流すありさまだからどうしようもない。朝日新聞は、どうやら岡田克也を民主党の代表に据えたいようだが、選挙に勝つためだけだったら、テレビで大村秀章や片山さつきを論破した印象が視聴者に強い長妻昭を代表に据えるのが最善に決まっている。但し、私は昨年あたりから長妻昭の政治理念に若干疑問を持つようになっていて、まだ長妻を代表に据えるのは時期尚早だと思う。選挙の争点を「西松事件」から「国民の生活を守る」ことに早く戻し、なおかつ現体制との政策のブレを最小限に抑えるためには、リリーフに立てるなら菅直人しかいない。それも、「緊急避難」的には止むを得ないのではないかと思う今日この頃である。


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私は今までの人生でいろんな新聞を購読してきた。三大紙(読売、朝日、毎日)のほか日経や地方紙もとったが、朝日新聞をとっていた期間がもっとも長く、一昨年に一時購読を止めていたが、昨年からまた朝日新聞をとっている。なんだかんだいっていまだに「朝日離れ」ができないでいることは白状しなければなるまい(笑)。

しかし、このところの朝日新聞の紙面はますますひどくなってきた。特に経済政策に関して、日経新聞かと思うほど新自由主義に傾斜しているところは全くいただけない。また朝日は、民主党びいきで同党への影響力の強い新聞と思われているが、時に民主党の人事を動かそうとするかのような記事を掲載することがある。

今でも苦々しく思い出すのは、一昨年の東京都知事選で民主党が候補者選びに難航している時、菅直人代表代行の都知事選立候補を強く求める社説を掲載したことだ。民主党執行部から菅直人が抜けると、党の新自由主義色が強まる。私は菅氏の都知事選立候補には断固反対だった。

朝日新聞が、菅直人が小沢一郎代表に辞任を迫ったと報じたことは、昨日のエントリで紹介したが、わざとさらっと書き流した。記事の信憑性に疑問を感じたからだ。民主党の公式サイトにもこの件に言及した記事があり、

菅代行は、24日の小沢代表会見の前に行った小沢代表との会談について事実と違う内容が朝日新聞で報じられたことに言及。「辞任を促したのではなく、(結論を出すのに)もう少し時間を取って判断をされた方が良いのではないかと申し上げた」と事実を説明し、24日時点の状況に対して国民の受け止め方などを少し時間を持って判断すれば良いとの考えを提言したと語った。そのうえで菅代行は、今後は代表とともに信頼回復を含め、日本の置かれている課題に立ち向かうため全力を挙げていく考えを明らかにした。

と書かれている。菅直人が小沢一郎の辞任を視野に入れていることは間違いなく、それは選挙に勝たなければならない以上当然だが、朝日の記事の書き方は菅直人と小沢一郎の双方にダメージを与えるものであって、陰謀論的思考からいうと、民主党東京都連の反菅直人の人たちと気脈を通じているかに見える朝日新聞が針小棒大に書いた記事ではなかったかと勘繰ってしまうのである。

今回、小沢一郎批判の口火を切った民主党議員の中に、左派の小宮山洋子がいたことに注目する向きもあるが、小宮山洋子は左派でありながら菅直人より前原誠司に近く、菅にではなく前原に呼応して小沢批判の声をあげたと考えるのが自然だ。そもそも、「凌雲会=前原・枝野グループ=民主党内右派」というよくある見方は誤解であって、前原誠司は外交・安全保障面ではゴリゴリのタカ派であり、かつ構造改革論者ではあるものの、その他の政策は概ねリベラルであり、党内では中間派にあたる。党代表時代には「小さな政府論には与しない」と明言して自公政府と論戦を戦った。私は前原誠司を支持しないが、だからといって彼の全体像をことさらに歪めて見る、特にブログの世界で顕著に見られる傾向には賛成できない。「凌雲会」にしても右から左までいて、小宮山洋子のほか、香川県の小川淳也もリベラルな傾向の強い政治家である。

民主党内右派は、旧民社系が最右翼で、次いで旧自民党・旧自由党の人たちだ。前原誠司が台頭した時、これら「保守派」の人たちから警戒感を持たれたのである。そして、いうまでもなく小沢一郎は自由党の党首であり、自由党を解党して民主党に合流した当初には、新自由主義者たちから歓呼の声を持って迎えられ、「小さな政府研究会」なる小沢応援団までできたが(2004年1月)、小沢自身はそれには参加せず、旧社会党の人たちと接近した。この裏に、小沢一郎が建設業界の支援を失い、労組政治家に転向したいきさつがあったことは、当ブログへのコメントで教えられて最近知った。つまり、小沢一郎は民主党入りと同時に、大きく「転向」したのであって、ここを押さえておかないと議論を誤る。「イチローくんが反権力のわけないっしょ」というのは当然であって、小沢は49歳にして党の大先輩の宮沢喜一、渡辺美智雄、三塚博の3人を総理大臣への適性があるか「面接」した男である。反権力どころか権力の権化のような人物だった。安倍晋太郎も、がんで死去していなければ小沢の面接を受けたはずだ。時に1991年。もう18年にもなるが、ついこの間のことのような気がする。しかし、このことを覚えている人は少ないらしく、ちょっと小沢一郎を批判しただけで「隠れ自民党」呼ばわりされたのではたまったものではない。

ただ、その小沢一郎の「政権交代」への執念だけは本物だと私も思う。しかし、その過程でなされた「政治改革」、特に選挙制度改革には私は大反対であり、小選挙区偏重の現行制度が政治の劣化というか政党中枢の独裁化を招いた。選挙制度改革に大反対していたコイズミが、改悪された選挙制度を最大限に利用して「郵政選挙」に圧勝し、日本の社会をめちゃくちゃに壊してしまったが、それを招いた最大の戦犯の一人が、「政治改革」の旗を振った小沢一郎だというのは、大いなる歴史の皮肉だ。そして、小沢一郎の最大の功績は、民主党を左旋回させて、「国民の生活が第一」というスローガンのもとで2007年の参院選に圧勝したことだった。こんな展開は誰にも予想できなかったことで、コイズミと小沢一郎という二匹の「一匹狼」が、90年代から2000年代の政治を引っかき回したのだなあ、と改めて思う。

だが、前にも書いたと思うが、いつかは民主党も小沢一郎離れをしなければならない(もちろん、今すぐに小沢一郎の辞任などは求めない。辞めるならもっと早い段階であるべきだった)。自民党も、いつかはコイズミ離れをしなければならないのに、コイズミが引退を表明した今でもコイズミ離れができず、誤った「構造カイカク」路線に束縛されていっこうに支持率が上がっていないが、だからこそ民主党が自民党との政策の違いを打ち出していくチャンスだろう。

ピンチをチャンスに変えるしたたかさがなければ、政権交代など夢のまた夢である。


[参考記事]

当エントリには政局のことしか書いていませんので、政策についての言及がある下記ブログ記事の併読をおすすめします。

『広島瀬戸内新聞ニュース』 より
「小沢進退に関わらず「社民主義的経済政策」「企業団体献金禁止」追求で政権交代へ」(下記URL)
http://hiroseto.exblog.jp/9921068


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先日、香川3区に当たる観音寺市と三豊市を歩いた。政治のことを書くブログなんかを書いているせいで、どうしても政治家のポスターに目がいくが、いやでも気づかされたのは、麻生太郎と小沢一郎のポスターがほとんど張られていなかったことだ。

0903_香川3区自民党香川3区から立候補予定の自民党現職・大野功統(よしのり)陣営は、舛添要一とのツーショットのポスターを張り出していた。また、故大平正芳首相の直系だった(秘書を務めたことがある)真鍋賢二・前参院議員の息子・真鍋健(たけし)は、嘆かわしいことに平沼一派に入り、平沼赳夫とのツーショットのポスターがあちこちに張られていて、目障りなことこのうえなかった。香川3区は、保守分裂の選挙区なのである。

真鍋賢二は、一昨年の参院選で落選したのだが、選挙演説の際憲法問題に触れ、憲法は時代に合わなくなった部分は改めるべきだが、憲法9条は現行の条文をそのまま維持するべきだと訴えていた。それなのに、その息子が「自主憲法制定」を主張し、経済危機の現在、大連立をして選挙を10年停止すべきだ(日本国憲法の停止を意味する)という、驚くべきファッショ的主張をする平沼赳夫の軍門に下り、平沼とのツーショットのポスターが町にあふれ返っているとは、世も末だと思う。もっとも、真鍋健が当選する可能性はほとんどないと見られているのだが。

野党は、社民党から米田(まいだ)晴彦氏、共産党から近石美智子氏が立候補予定だ。0903_香川3区社民党米田氏と社民党党首・福島瑞穂氏のツーショットのポスターは、結構目立つ。民主党は香川3区では米田氏支持に回り、党公認の候補は立てない。共産党の近石氏のポスターは、残念ながらあまり張られておらず、たまに張ってあっても昨年2月の演説会の日程が記載されていて、色あせたポスターだったりした。だが、近石氏は香川県唯一の共産党公認予定の候補だ。県の3選挙区すべてに小選挙区の候補を立てないなら、党勢が伸びない。せっかく保守分裂の選挙区なのに野党も複数立っていて残念なのだが、だからといって共産党に候補者を立てるなという主張は間違っている。

それにしても、いくら民主党が候補者を立てないからといって、民主党代表の小沢一郎のポスターがほとんど目に入らないのは異常だし、それ以上に、候補者を立てている自民党の総裁にして内閣総理大臣である麻生太郎のポスターがほとんど目に入らないのは、本当に異常だ。

小沢一郎の続投の件だが、保守系の新聞はもちろん、リベラル・左派系と見られている朝日・毎日・中日の、ナベツネに言わせれば「三大左翼新聞」が、揃って社説で小沢一郎を批判した。特により民主党に近い朝日新聞が、昨日(25日付)の社説では、ふだん2本立ての社説を1本にして、「西松献金事件―小沢代表は身を引くべきだ」と声高に主張したのには驚かされた。毎日新聞は、「小沢代表続投 説得力のない会見だった」として小沢一郎を批判するとともに、「小沢代表続投 検察は与野党問わず捜査を」と題した社説も同日に掲載しており、

 一方で今回の捜査には、総選挙が近づく中で選挙妨害になるのではないか、政権交代の可能性が強まる民主党の代表を意図的にターゲットにしたのではないか、などという疑問の声が国民の一部から聞かれるのも事実だ。

 そうした国民の疑念をぬぐい去るためにも、検察には節目節目で捜査の必要性を十分に説明してほしい。そして何よりも、政界にはびこる疑惑を徹底的に解明することだ。

と書いて検察にも注文をつけ、バランスをとっている。こちらの方がまだ納得できるスタンスだ。

朝日新聞は、一昨年の東京都知事選の際にも、菅直人代表代行の立候補を求めるなど、時に民主党の人事を動かそうとするかのような社説を掲載する。そして、今朝の2面では、24日の党三役会議の開始5分前、菅直人が小沢一郎に直談判して、代表辞任を小沢一郎に迫ったとの記事を掲載している。朝日の2面には、このほか、仙谷由人氏が「(代表)自ら政治判断をスパッとなさるべきではないか」と記者団に公言したこと(これはテレビ報道でも流れた)にも触れ、さらに「幹部から批判ののろし」、「雪崩うつ若手・中立派」との見出しが並ぶ(大阪本社発行統合版による)など、朝日新聞は「小沢降ろし」の急先鋒に立っているように見える。

当ブログとしては、小沢一郎が辞任したあと、党執行部が右寄りになる刷新が起きることには反対である。今後、党内の批判が強まって、小沢氏が辞任する場合、比較的左派色の強い「国民の生活が第一」の路線が継承されるならそれでもかまわないと思うが、新保守主義や新自由主義の系列の人たちに再び台頭されるのはまっぴらだ。非常時の今はとりあえず菅直人をリリーフに立てて衆院選に臨み、衆院選以降、あるタイミングで菅直人にも退いてもらって、リベラル・左派系の若手が主導権を握っていけるようにならなければ、いつまで経っても民主党は「第二自民党」から脱出できないのではないかと危惧する今日この頃である。


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前回、3年前のWBC決勝戦は、確か日本の休みの日に行われたと記憶している。全国ネットのテレビ中継を見ていたのだが、「一部の地域を除いて、このまま放送を延長いたします」という、その「一部の地域」に当たっていたため、優勝決定の場面をリアルタイムで見ることはできなかった。

今回は、平日の昼間だったので、テキストベースの情報を追うことしかできず、ストレスがたまった。特に、日本は小刻みに加点するものの、「なおも続くチャンス」を逃し続け、その間に先発の岩隈久志が同点ホームランを浴びたり、2点のリードをもらいながら1点差に追い上げられるなど、決して良い流れではなかった。リアルで映像を見ていなかったのでなんともいえないのだが、岩隈は7回84球を投げて1失点のところで交代し、8回をダルビッシュ、9回を藤川球児という継投かなと思っていたので、8回も岩隈が続投すると知って、いやな予感がした。そして、リードを1点に詰められた9回にダルビッシュが登板したと知って、なおいやな予感がした。これらの予感はことごとく当たり、ダルビッシュは打たれて、土壇場で試合は延長戦にもつれ込んだ。

これは、日本が勝つとしたらイチローが決めるしかないなと思った。そして、10回表にチャンスでイチローに打順が回った時、ここで決めなければ日本は負けると思った。敬遠されたらいやだなとも思ったが、韓国は勝負を挑んできた。追い込まれたあとファウルで粘っていると知って、ああ、これは打てるなと思った。そしてその通り、イチローは決勝となる2点タイムリーを放った。

原辰徳監督は、松坂、ダルビッシュ、岩隈の先発三本柱にこだわったようだ。原が巨人に入団した頃、江川卓、西本聖、定岡正二の先発三本柱がしっかりしていた。特に江川と西本はリーグを代表する好投手で、完投が当たり前だった。故藤田元司監督は、昔の名投手だったから、先発完投へのこだわりが強かったのだろう。現在の巨人には、そこまでの能力を持った投手はいないので、どうしても継投に頼りがちだが、先発投手を球数制限ぎりぎりまで引っ張るのが、原のイメージ通りの采配なのかもしれない。

だが、岩隈の続投も、岩隈を継いだ杉内が後続を断ったのに9回にダルビッシュを救援に送ったのも、ともに原の采配ミスだと思う。そして、その采配ミスをイチローが救った形だ。

私は、原辰徳は決して悪い監督だとは思わない。巨人の前監督・堀内恒夫は本当に無能な監督で、アンチ巨人の私には大歓迎だったのだが、原は堀内よりははるかにましな監督だ。王貞治よりも上かもしれない。前回のWBCでは、メキシコがアメリカを破る番狂わせがなければ、日本は2次予選で敗退していた。王は、それまでも短期決戦に弱く、日本シリーズを制した2度(1999年と2003年)も、いずれも短期決戦最弱男の星野仙一(一度も勝ったことがない)が相手だった。王は、メキシコに助けられたり星野に助けられたりした運の良い監督だったと思う。今回のWBCにおける日本チーム(平沼赳夫を連想させるチームの愛称は私は用いたくない)は、前回と比較してもはるかに堂々たる勝ちっぷりだった。ましてや、昨年の五輪での「星野ジャパン」とやらのていたらくとは大違いだった。しかし、監督が渡辺久信であれば、さらに堂々たる勝ち方ができて、決勝戦も3点差くらいで勝っていたのではないかと思う。

もっとも、延長戦にもつれ込んだからこそ、長くファンの記憶に残るであろうイチローの決勝打が生まれたのであって、原辰徳というのは強運の持ち主なのだろう。

思い起こせば、藤田元司監督のもと、最初の3年間は順風満帆だった原は、4年目に新任の王貞治監督の未熟な采配からくるチームの成績不振の責任をマスコミに追及されるようになった。1986年のシーズン終盤では、早世した津田恒美の速球をファウルした時に骨折。ところが、原が戦線離脱すると同時にチームの結束が強まって巨人は連勝を重ね、優勝した広島をあと一歩のところまで追い詰めた。この頃になると、いまいち頼りない四番というイメージが定着してきた。最悪だったのは長嶋茂雄が1993年に監督に復帰したあとで、原は代打に長嶋一茂を送られる屈辱まで味わった。巨人を自ら敗戦に追い込む長嶋采配は、アンチ巨人の私には歓迎だったが、一茂を代打に送られた原には同情したものだ。

スター選手でありながら、スーパースターまでには至らなかった原は、それなりに屈辱を味わった男であり、だからこそ監督としてそれなりに成功できたのではないかと思う。私のような昔の世代のプロ野球を見てきた人間には、「巨人は嫌いだけどONは別」という表現がおなじみだった。それくらいONは国民的英雄だったのだが、あえて巨人を離れて福岡の地で苦難の道を選んだ王貞治はともかく、読売の威光をバックに好き勝手に四番打者を金の力でかき集め、プロ野球の魅力をすっかりそいでしまった長嶋茂雄には、その現役時代も末期しか知らないせいもあるのか、私には全然好感が持てない。そしてその長嶋茂雄に冷遇された原辰徳にはむしろ好意的で、「巨人は嫌いだけど原は別」というのが私の感覚だ。だから、今回のWBC優勝も素直に喜べる。

もちろん、野球の主役は監督ではなく選手だ。好機に弱い打線には不満が残ったが、松坂や岩隈ら投手陣はみごとな活躍を見せた。杉内も勝負強さを見せた。松坂は、若い頃はパ・リーグの首位攻防戦や五輪などでは決まって敗戦投手になり、「勝負弱い」とのレッテルを張られていたが、2004年の日本シリーズで第2戦は打たれたものの第6戦で勝ったあたりから、大勝負に強い選手に変身した。岩隈も、これまでは国際試合での実績はほとんどなかったが、今回のWBCで一皮むけたと思う。ダルビッシュも、結果的に決勝戦の勝利投手になったことは、今後に良い影響を与えるだろう。そしてなんといってもイチローである。私は、どんなに彼が不調でも、最後には彼の力が必要になる時が必ず来る、そうずっと思っていた。そして、それが現実のものとなった。

「続投」とか「イチロー」とかいうと、何かほかのことも思い浮かぶが、それについては今日は何も書かない。WBC日本チームの栄誉をひたすら称えたい。


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今日(24日)は大久保隆規秘書の起訴を受けて民主党の小沢一郎代表が進退を表明する日だ。民主党内の大勢は、起訴が政治資金規正法の虚偽記載の罪に留まる前提で、小沢続投を支持しているそうだが、かつてのことを考えると、小沢氏自らが代表辞任を言い出す可能性もあると私は考えている。2004年、菅直人がぬれぎぬに近い「年金未納」(実際未納だったが、社保庁の事務処理のミスによるものだった)を、のちに同じく年金未納だったことがわかった田原総一朗に糾弾されて代表辞任に追い込まれた時、後任に小沢氏の就任が確実視され、周囲からも期待を集めながら、自ら年金未納であることを公表して代表就任を辞退したことがあった。一昨年の大連立騒動の時にも、代表辞任の意向を示しながら、慰留にあってこれを撤回した。長く「闇将軍」として政界に君臨した田中角栄元首相に倣って、政権交代後には表舞台に立たずに影響力を行使したいと考えていても不思議はない。

2003年の民自合流を機に、労組政治家に転向したとされる小沢一郎だが、確かにその方向で人事に影響を与えていることは間違いない。たとえば衆院の静岡7区では、一昨年頃には「刺客」片山さつきに敗れた元自民党の「造反議員」・城内実を民主党から担ごうとする動きがあったそうだが、結局候補者を公募することになり、斉木武志氏が公認された(第3次公認になってしまったが)。これにも小沢氏の強い意向が反映されたとされる。万一城内実が民主党公認になっていたら、今頃当ブログは民主党批判の急先鋒に立っていたかもしれない(笑)。また、当初民主党千葉県連が自公と一緒になって極端な新自由主義者・白石真澄を担ごうとした千葉県知事選でも、小沢氏側近の平野貞夫氏の働きかけでこれを撤回させ、吉田平氏に乗り換えた。今回の知事選では吉田氏の劣勢、「無党派」を詐称する森田健作の優勢が伝えられるが、西松事件の影響が皆無とまでは言わないが、苦戦の原因はむしろ民主党の初動の誤りに帰されるべきものであり、小沢一郎はむしろ安易に新自由主義になびこうとしたKYの民主党千葉県連にストップをかけたことが評価されるべきだ。当ブログは小沢一郎に対しては是々非々で臨むスタンスだが、千葉県知事選を「小沢降ろし」に使う論法は間違っていると指摘しておく。

まあ、何があっても今日は野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の話題にかき消される日だ。もちろん、WBCならぬWTCの話題もかき消されるだろうから、当ブログで取り上げておく。

大阪府知事・橋下徹が提案した、「大阪ワールドトレードセンタービルディング」(WTC)への府庁移転条例案が、24日未明に否決された(下記に朝日新聞記事のURL)。
http://www.asahi.com/politics/update/0324/OSK200903230089.html

以下、朝日新聞記事から引用する。

大阪府庁舎WTC移転条例案、否決 橋下府政運営に痛手

 大阪府議会(定数112)は24日未明、橋下徹知事が提案した「大阪ワールドトレードセンタービルディング」(WTC、大阪市住之江区)への府庁移転条例案を否決した。無記名投票の結果、総数112票のうち賛成46、反対65、無効1だった。可決に必要な出席議員の3分の2(75人)に及ばず、過半数にも満たなかった。

 橋下知事が「関西再生の起爆剤」と位置づけていた府庁移転は頓挫し、今後の府政運営に影響するのは避けられない。主要会派は公明(23人)と共産(10人)が反対を表明。民主(24人)は自主投票を決め、最大会派の自民(49人)も賛否が割れていたため、条例案の否決は避けられない情勢だった。

 また、WTCビル購入費103億円を盛り込んだ補正予算案も無記名投票で採決し、総数111票のうち、賛成40、反対69、白票2で過半数に届かず、否決された。

(asahi.com 2009年3月24日 2時49分)


この件に関しては、府民から募集したパブリックコメントでも反対意見が86%を占めていた。府民は、立地条件の悪さや、WTCビルが災害に対して無防備であることなどを理由に移転に反対していた。自民党も22日の議員団総会で「賛成」を決めたものの会派拘束をしなかった。しかし、橋下は直前まで「3分の2の賛成が得られるのは当然」とか「WTC移転が実現しなかったら自公と決別する」などと強気を崩さなかった。結果は、3分の2どころか過半数にも達さない橋下の惨敗(大爆笑)。

これを機に、「橋下バブル」が一気に弾けてくれればよいのだが...


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三連休直前の先週木曜日の深夜、TBSテレビで「東京地検が小沢一郎氏への事情聴取を見送り」というニュースが流れた。毎日新聞にも載っており、TBS・毎日系へのリークだったのかもしれない。連休直前にこういう報道がなされるのは、陰謀論的思考(笑)によると、政府側に都合の悪い情報をダメージの少ないタイミングでリークしたということになる。

そして、翌日深夜には、今度は読売新聞が、東京地検は既に小沢一郎の元秘書で、自民党公認で岩手4区から立候補予定の高橋嘉信氏への事情聴取を行っていたと報じた。だが、読売新聞はなぜか高橋氏が「自民党から立候補予定」であるとは書いていない(一部に公認取り消しの報道も流されたが、現実とはなっていない)。民主党議員の石川知裕氏の参考人聴取の時には、聴取もされないうちから読売新聞が「出頭」などという言葉を用いて大々的に報じ、長年小沢氏の金庫番だった高橋嘉信氏の場合は、聴取が済んでから目立たない時期に報じたのである。これは、どんなに控えめな表現を用いても、検察が時の政権に寄り添って捜査を進めて、その情報をマスコミにリークしているということだ。

きわめつきは、昨夜のNHKニュースだった。NHKは、逮捕された大久保隆規秘書が「政治資金規正法違反の罪で起訴するものとみられます」と報じたのだが、ニュースでは談合へのかかわりだとか何だとか、いかにも重罪であるかのような印象を与えることをアナウンサーがしゃべっていたが、あくまで起訴の罪名は「政治資金規正法違反」。このバカバカしい報道には笑ってしまったし、「2ちゃんねる」の政治板でも嘲笑の対象になっていた。当ブログはあえて2ちゃんねるにはリンクを張らないので、興味のある方は2ちゃんねるを訪問されたい(もう次のスレが立って消えているかな?)。

‥‥そんなワケで(笑)、マスコミ報道はもう「ジ・エンド」と言ってよいかもしれない。マスコミの流す情報には、常に権力側からの強烈なバイアスがかかっていることを意識して読み解かなければならない時代になった。これも、ネットの普及の影響なのだろうか。この事件に関する当ブログ推奨のまとめ記事は、『JanJan』に掲載されたさとうしゅういち記者の「大山鳴動してネズミなし、西松建設事件「収束」へ」という記事である(下記URL)。
http://www.news.janjan.jp/government/0903/0903209796/1.php

さとう記者は民主党員だから、決して不偏不党の立場から書かれた記事ではない。だが、バランス感覚に優れた記事につねづね感服している。さとう記者は『広島瀬戸内新聞ニュース』には、「政権交代近づくからこそ高まる民主党以外の野党の存在意義」という記事を掲載していて、小沢一郎をもきっちり批判している。その部分を以下に引用する。

小沢さんは、
1、そもそもは自民党の最高権力者
であり、
2、小選挙区比例代表並立制を導入、
その結果
(1)小泉自民に見られるような「執行部独裁体制」を招いてしまった。
(2)政権交代が結果として遅れた(∵自民党有利になってしまった)のではないか?
ということは記憶しておかねばなりません。

また、現時点で言えば以下のような個別政策への疑問点もある。

民主党の経済政策がいまひとつまだ、はっきりしない。国民新党や社民党のほうがまだはっきりしています。

高速道路値下げはそもそもは民主党の提案でしたが、「無料化」はもちろん、原則だとしても、環境問題と言う観点からどうか?また、若者の貧困が進み、クルマを持たない若者も多くなっている。一方、高齢化も進んでいる。高齢者の交通手段をどう確保するかも課題であるが、どうか?

将来的にはガソリンはもっと高くて、福祉や環境施策、教育を充実、でいいと思う。

国民新党や社民党が言うように、恒久的な財源は、累進課税強化でいいのではないか?

(『広島瀬戸内新聞ニュース』 2009年3月22日付「政権交代近づくからこそ高まる民主党以外の野党の存在意義」より)


ここで書かれた主張には、私はすべて賛成である。四国に住んでいて痛感するのは、公共交通網が年々貧弱になっていることである。民主党にはどうもモータリゼーションに親和的な体質が強すぎる。

おことわりしておくが、さとう記者は決して「反小沢」ではなく、むしろ私の目から見ると「親小沢」の立場の人である。だが、リベラルであれば小沢一郎に対してであれ批判的な視座を持っていて当然。記事では、共産党にも一定の評価を与える記述がされているが、「共産党が自民党と一緒になって小沢代表を攻撃している。共産党は自民党の補完勢力だ」などと叫ぶ一部の人たちとは全く異なる。私などは、何十年にもわたって「小さな政府」なるスローガンに反対だったのだが、このスローガンは、つい先ごろまで疑いもなく正しいこととされていた。つまり長年の少数派時代を耐えてきた人間だから、「民主党と一緒になって小沢代表を守る」ことを、少数派である共産党および同党支持者に強要するかのような感性にはとても耐えられないものがある。

さて今後だが、24日の大久保秘書の「政治資金規正法違反」による起訴は間違いなく、そこで小沢一郎氏がどう身を処すかが一つのカギだ。29日の千葉県知事選は森田健作が圧勝の見通しで、これは西松事件の影響というよりポピュリズム政治の問題と考えるべきだろう。郵政総選挙より前の前回の知事選でも、森田は現職の堂本知事に肉薄する得票を得た。今回の選挙でも、仮に西松事件がなかったとしても森田が勝つ可能性が高かった。大阪の橋下徹だとか宮崎の東国原英夫らを論じるのと同じ視点でとらえるべきである。なお、森田は事実上自民党の候補者であるにもかかわらず、「完全無所属」を詐称しているのだが、その詳細は『東京サバイバル情報』に詳しいので、読者の皆さまには是非ご参照されたい。

いずれにしても、「政治の季節」はまだまだ続く。総選挙はまだまだ先だ。本当に任期満了選挙になってしまうかもしれない。


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昨夜(19日)遅く、TBSテレビ「NEWS23」が報じた、「小沢代表への参考人聴取、見送りへ」というニュースには驚かされた(下記URL)。アナウンサーははっきり、「小沢代表の立件は困難」と述べている。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4087592.html

この件は、共同通信からも報じられた。
http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009031901001085.html

以下、共同通信の記事を引用する。

小沢氏聴取を当面見送り 「監督責任」立件困難

 西松建設の巨額献金事件で、東京地検特捜部は19日までに、小沢一郎民主党代表の参考人としての事情聴取を当面、見送る方針を固めたもようだ。政治資金規正法違反容疑で逮捕した公設第1秘書大久保隆規容疑者(47)に対する同法上の選任・監督責任については立件困難と判断したためとみられるが、今後も同容疑者の調べを続け、最終判断する。

 大久保容疑者の拘置期限は24日。(以下略)

(共同通信 2009年3月20日 2時23分)


当然ながら、これも検察のリークによる情報だろうが、あまりのことにあっけにとられてしまい、書く言葉が出てこない。そこで、昨日のエントリにいただいた、Black Jokerさんによる記事への批判と、それに対するsweden1901さんの反論を紹介することにしたい。

まずBlack Jokerさんのコメント。

「捜査の手が及ぶ」
これは強制捜査のことですか。
小沢に関する捜査は、3月になってから始まった訳ではありません。小沢側に対する強制捜査と秘書逮捕は3月になってからですが、それはその前のステップ(すなわち以前からやっていた西松に対する強制捜査に付随する形で小沢についても強制でなく内密に調べていた)で、ある程度の証拠(例えば小沢側から西松に送付された請求書の類)を掴んでいたから、次のステップに進めた訳です。何の証拠もなしに強制捜査や逮捕はできませんから。
小沢以外について言えば、前のステップはやっていますが、まだ次のステップに進めてはいません。それは「有力な証拠を掴めていない」ということであって、「捜査自体してない」ということではありませんよ。
普通、企業の交際費や接待費だと、領収書や請求書等を店からもらうことはあっても相手からはもらいませんし、金額の上限もそれほど大きなものではありません。その上限を超える多額の支出の場合、普通の交際費や接待費の扱いとは別の形態で処理されたりします。おそらく、そういう社内処理の都合で西松は小沢側から請求書の類を受け取った(検察はそれを証拠として掴んだ)のではないでしょうか。実際、小沢だけ金額が突出してますし。

「私は今回の事件は政府と官邸が結託した「国策捜査」ではないかとの疑いをますます強めているのだが」
・・・ということで、現時点では早合点ではないかと。少なくとも「捜査の手が及ぶ」の意味合いについては注意が必要かと。「小沢以外は強制でなく内密に調べることさえやっていない」という訳ではないでしょう。

2009.03.19 19:07 Black Joker


これを受けてのsweden1901さんの反論。

>Black Jokerさん
>ある程度の証拠(例えば小沢側から西松に送付された請求書の類)を掴んでいたから、次のステップに進めた訳です。何の証拠もなしに強制捜査や逮捕はできませんから。

その「請求書」の存在が確実なものかどうかは現時点では分からないのではないでしょうか。
あくまでもソースが「関係者」または「捜査関係者」の話でしかありませんから。
明らかになるのは裁判になってからでしょう。(起訴状に書かれる可能性はないとは言いませんが)

>「小沢以外は強制でなく内密に調べることさえやっていない」という訳ではないでしょう。

現時点では、Black Jokerさんいうところの「内密の捜査」を、「やっているかもしれないし、やっていないかもしれない」としか、言いようがありません。

郷原・元検事は、3月17日付の日経ビジネスオンラインで、二階氏への捜査が行われていない理由の一つとして、
【政治資金規正法の「大穴」がある。「裏献金」が、政治家個人に宛てたものか、資金管理団体、政党支部などの団体に宛てたものかがはっきりすれば、政治資金規正法のどの規定に違反するのかが特定できる。】
【もし「政治資金の宛先」が特定できないのであれば、政治資金規正法違反の事実が構成できず刑事責任が問えない】
というのを挙げているのですが、たとえそういう法解釈に基づくとしても、Black Jokerさんのいうところの「内密の捜査」をやらなければ、
・「裏献金」があったのかどうか。
・疑わしい献金があったとして、それが誰宛だったのか。本当に宛先が特定できないのかどうか。
すら検察は判断できないはずです。

2009.03.19 19:34 sweden1901


このように、西松建設事件に関しては、コメント欄でも活発に意見が交換されているのだが、大久保秘書の形式犯だけでの起訴に終わると、今度は検察側が厳しい批判にさらされることになるだろう。


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政治について書いているブログは他のところも同様だろうが、当ブログも今月はブログ開設以来の月刊最多アクセス数を更新する勢いで、小沢一郎の秘書・大久保隆規氏が逮捕されて以来、平日は連日5千件台、もっとも多い日には7千件台のアクセス数を記録した。現在この件の報道は一段落しているが、来週大久保秘書が起訴されるかどうかで情勢は変わる。おそらく起訴されることは99パーセント間違いないだろう。

政治について論じる時、「なんらかの陰謀があるのではないか」という疑いを持つのは当然のことである。1973年のチリのクーデターが「アメリカの陰謀」だったことは歴史的事実だし、ニクソン大統領は敵対する政治家たちの情報を、盗聴によって入手しようとしていたことが暴露され、大統領辞任に追い込まれた。

今回の小沢一郎秘書逮捕についても、権力の陰謀を疑う仮説を立てるのは当然のことである。仮説を覆す事実が出てくれば、陰謀仮説は間違っていたとしてこれを棄却するだけの話だ。今回の事件で言えば、西松建設から献金を受け取った時に公共工事にかかわる職務権限を持っている政治家、たとえば尾身幸次に捜査の手が及べば、鳩山由紀夫が小沢一郎の秘書逮捕と同時に言った「国策捜査」だとの疑いは薄くなる。しかし、実際にはそうはなっていない。検察から二階俊博周辺に捜査の手が及ぶとの情報がリークされた時、「そら見ろ、二階も捜査される。これでも国策捜査か」と言った論者は多いが、実際にはいまだに二階俊博には捜査の手が及んでいない。捜査の手が及んで初めて国策捜査否定論になるのであって、今の段階で「国策捜査」の可能性を否定するのは、それこそ権力の走狗としかいいようがなく、そんなことを言う人間は国外退去してもらいたいくらいだ。

私が決定的に「陰謀仮説」に傾いたのは、かつて小沢一郎の金庫番と言われ、小沢と決別して自民党公認で衆院選岩手4区から立候補しようとしている現在も、叩けばほこりが出るのではないかとの情報もいただいている高橋嘉信を検察がスルーし、石川知裕・民主党衆院議員を参考人聴取したためだ。石川氏が次期衆院選で立候補を予定している北海道11区が、麻生太郎や安倍晋三の盟友である中川昭一の選挙区だから、権力の陰謀を疑わない方が不自然だ。

私は今回の事件は政府と官邸が結託した「国策捜査」ではないかとの疑いをますます強めているのだが、もちろんこの仮説を否定する材料が出てくれば、誤りを認めて仮説を取り下げれば良い。仮説を立てて、現実と仮説を比較して仮説を検証するというのは、学問でも当たり前に行われる方法論であって、それこそ「陰謀論、ていえば済む訳じゃない」

そんなわけで、事件が起きた当初、「こんなに権力の陰謀が明らかなのに、ブログ主は病的なまでの陰謀論嫌いだ」と批判されていた私は、一転して「陰謀論者だ」と批判されるようになったのだが(笑)、私には私の固有の立場があり、態度は一貫している。権力は陰謀を好んで行うものであるが、陰謀仮説を批判が許されないドグマにしてしまってはならないと言っているだけだ。今回は、陰謀仮説を否定する材料が全然出てこないだけの話であり、これまでに表面に現れた現実は、陰謀仮説によって実にうまく説明できるのだ。繰り返すが、「新聞が二階俊博捜査の見込みを報じた」などというのは、陰謀仮説を否定する根拠にはならない。

さて、『kojitakenの日記』でちょっと紹介した「安倍晋三黒幕説」については、さすがに私自身信用しているわけではない。しかし私は大の安倍晋三嫌いであるため、紹介せずに入られなかったし、安倍晋三の関与に関して、「あっても不思議はない」くらいには思っている。

その安倍の地元・下関市長選は、3月15日に投開票が行われた。安倍晋三系列といわれた江島潔前市長が立候補せず、安倍系列の友田有氏を含む3氏の争いとなったが、友田氏は敗れ、中尾友昭氏が当選した。

私はKRY山口放送の開票速報を追いかけていて、中尾氏の当確が報じられると「やったー」と喜び、『kojitakenの日記』に速報したが、「AbEnd」ブログ多しといえども、この件を取り上げたブログはほとんどなかった。私の記事は、中尾氏の立ち位置がよくわからなかったために、間抜けな玉虫色の表現になっているが、さすがに山口県のお隣・広島県から発信される『広島瀬戸内新聞ニュース』の記事は明快にまとめられている(下記URL)。
http://hiroseto.exblog.jp/9848216/

記事には、

地方選挙とはいえ、保守王国、さらにいえば、「地方圏の割に創価学会が強い」山口県で、自公が推す候補が、柳井市長選、県議補選、下関市長選と3連敗しているのは相当な重症です。

と書かれている。敵の失点(それも、アンパイアの怪しげなジャッジによる)があったからといって、自民党が党勢を回復したわけでもなんでもない。


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小沢一郎をめぐる新たな動きは2つあって、1つは逮捕された大久保隆規秘書に対する処分が決定する24日の時点で、進退問題などについての考え方を示す意向を明らかにしたことだ。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090317dde007010028000c.html

もう1つは、小沢一郎が「企業団体献金の全面禁止を検討すべきだ」と述べたことである。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090318ddm001040025000c.html

毎日新聞の記事は、

次期衆院選での争点化も視野に、企業団体献金の規制強化に慎重な声が出ている自民党との違いを示す狙いがあるとみられる。ただ、小沢氏は具体的な法改正案などには言及しておらず、民主党内からも実現を疑問視する指摘が出ている。

と書いている。

当ブログにしばしばコメントをお寄せくださるGl17さんは、

東京地検が何がどうでも強引に起訴してくるとすれば、代表のままよりも戦略的撤退のほうが抗戦に有利という判断に思えます。
そして、その場合は自民にとって悪夢と言えるシナリオを用意しているから、貴様等地獄を見せてやるぜ、という表明では。
無論、その脅しが起訴されない方向に効力を発揮すると事情は変わるかもしれませんが、その場合は自民側の自爆です。

と指摘されている。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-864.html#comment5242

なるほどと思える鋭いご指摘だ。小沢一郎の全面降伏だとの見方もあるが、私にはそうは思えない。しかし、小沢一郎が代表を退く可能性は高まったのではないかと思う。以前から書くように、小沢氏には検察への徹底抗戦をする権利も理もあると私は思うが、選挙の争点はあくまで「国民の生活を守る」ことであり、「コイズミカイカク」および中曽根康弘から安倍晋三にかけて推進された「戦後日本の総決算」路線への審判であるべきだ。これは「国策捜査批判」とは分離されることが好ましく、民主党の代表交代は、必ずしも選挙に不利には働かないと思う。ただ、後任を誰にするかが問題で、私は菅直人代表代行の昇格が妥当だと思うが、代表選を行ってもよいかもしれない。

ところで、今回の西松事件で「政府高官」・漆間巌官房副長官の実名が出た件だが、産経新聞の常務取締役編集担当・斎藤勉がとんでもない妄論を書き散らかしている。
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090311/stt0903111210006-n1.htm

「「漆間発言」とメディア 取材源、安易に暴露していいのか」と題されたこの記事は、あまりにもバカバカしく低劣なものだが、上杉隆がこの斎藤の記事を厳しく批判している。
http://diamond.jp/series/uesugi/10069/

「漆間発言で思う、「オフレコ」を当然と思う日本メディアの甘さ」と題したこの記事で、上杉氏は下記のように指摘している。

 問題は、漆間氏のオフレコ懇談の環境が、「オフレコ」の条件をまったく満たしていないことにある。

 海外で「オフレコ」(以下BBもオフレコに統一)が認められるのは、情報源を明示することによって生命の安全が脅かされる可能性のある場合、あるいは氏名公表によって著しい不利益を蒙る可能性が高い場合に限定される。

 よって、公人中の公人である権力側の「政府高官」のオフレコは、基本的には認められない。国民の税金で口を糊する権力者の発言は、政治利用の恐れがあるため、実名が原則だ。それが事務次官会議を主宰し、官僚トップの官房副長官ならばなおさらだ。いかなる言動についても、公人としての説明責任が伴うのである。

 さらに、今回の懇談は、首相官邸という高い公共性を帯びた建物の中で、定例の記者懇談という形で行なわれている。当然、生命の安全を脅かされることも、不利益を蒙ることも考えられない。

 本当に、私的なオフレコ懇談が必要ならば、ホテルなどのプライベートな空間で開けばいいだけの話だ。そもそも複数の記者の前で、「オフレコ」が完全に通じると思う「政府高官」の認識が甘い。逆に、そうした「談合」を許し続けてきた記者クラブ側の意識の低さも今回の騒動の遠因にもなっている。実際、記者クラブ記者たちのそうした認識の低さは、きょうの産経新聞の斎藤勉・編集担当のコラムに顕著だ。

("DIAMOND ONLINE 週刊上杉隆" 第69回 「漆間発言で思う、「オフレコ」を当然と思う日本メディアの甘さ」 より)


以下、上杉は斎藤の主張をいちいち検証して胸のすく反論を行っている。ワシントン・ポストのブラッドリー編集主幹とキッシンジャー国務長官の戦いは特に面白い。ワシントン・ポスト紙はキッシンジャーの要求に応じて、名前を伏せて「政府高官」として記事を掲載したのだが、記事に「政府高官」のキャプションとのついたキッシンジャーの顔写真が載っていたというのだ。これにはウケた。

以前、この「オフレコ破り」について記事を書いた時、「新聞記者と政治家の信頼関係が大事だ」とコメントされた方がいたが、私は「信頼関係と同時に緊張関係も必要だ」と応じたが、このワシントン・ポストの報道は、その恰好の実例だ。日本の新聞でもこんな記事を見てみたいもので、たとえば経営破綻の恐れがあるのではないかと危惧されている毎日新聞あたりには、このくらいの勇気が求められているのではないか。こんな報道が一つ出ただけで洛陽の紙価を高め、同紙が危機を脱出するきっかけになるかもしれない。差別主義者の城内実にまでコケにされながら破綻への道を歩む必要などない。

それにしても、産経新聞の「国策報道」ぶりは、目を覆いたくなるほどひどい。私は産経批判などあほらしいという感覚なので、あんまり「産経ヲチ」はやらないのだが、たまにはやらないといけないなあと思った今日この頃である。


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佐藤優という人間は、アパグループ会長・元谷外志雄が陰謀史観に基づいて書いた著書『報道されない近現代史 戦後歴史は核を廻る鬩(せめ)ぎ合い』を絶賛した人間である。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20081106/1225976062

そして、佐藤優は安倍晋三が内閣総理大臣になった2006年、安倍晋三支持を明言した。

「国策捜査」という言葉は、佐藤優が『国家の罠』(2005年)で流行らせたかのように言われているが、その4年前に出版された魚住昭の『特捜検察の闇』によって既に知られた言葉だった。魚住昭は、2000年に出版された労作『渡辺恒雄 メディアと権力』によって一躍注目を浴びた、元共同通信記者のフリージャーナリストであって、これは滅多にないほど面白い本だった。その魚住昭が書いたからこそ、私は『特捜検察の闇』も読み、魚住昭が絶賛したから『国家の罠』を買って読んだのだった。

しかし、その佐藤優はとんでもない食わせ物だった。佐藤優が3年前に週刊誌で安倍晋三支持を明言したので、私は佐藤にいったん幻滅したのだが、魚住昭との共著を出したので、再び佐藤を評価する側に戻った。しかし、それは誤りだった。左右両側からもてはやされていた佐藤優に、左側から本格的な批判を加えたのは、金光翔氏の「<佐藤優現象>批判」だった。掲載するメディアの立ち位置によって文章を書き分ける佐藤と、彼に入れあげる「護憲派ジャーナリズム」を痛烈に批判した論文である。これは繰り返し何度でも読むべき名論文であり、このエントリを書くために読み返していても、今なお私自身「痛いところを突かれている」(=現在の私にも当てはまっている批判である)と痛感させられる箇所がいくつもある。

最近、ようやく「<佐藤優現象>批判」の影響が広がってきている。私自身もはっきり佐藤優批判側に転じたのはやっとこさ昨年のことなのだが、最近はあちこちで佐藤優批判を目にするようになった。岩波書店でも佐藤との関係を見直す動きがあるとのことだ。しかし、残念ながら現在もなお魚住昭は佐藤優の強烈な影響下にあり、つい最近も佐藤との共著の第二弾を朝日新聞出版から刊行した。もちろん、購入はおろか立ち読みする気さえ起きない。

その佐藤優は、自らや鈴木宗男の逮捕は「国策捜査」だが、小沢一郎の秘書の逮捕は「国策捜査」ではなく一部の検事のはね上がりだという。そんな佐藤に「フォーラム神保町」の「ジャーナリスト」たちは引っ張られていってしまう。そして、大久保秘書の逮捕が「国策捜査」であるとする鈴木宗男らの主張は、「立場が違えばいろんな主張が変わる」と佐藤優にかわされてしまう。「フォーラム神保町」が開催したシンポジウム「青年将校化する東京地検特捜部?小沢第一秘書逮捕にみる検察の暴走?」の動画が公開されているが、一番最初にあれっと思ったのが、あれほど意気投合していて一心同体かに思っていた鈴木宗男と佐藤優の主張に、かなりの開きがあることだった。

単刀直入に言えば、鈴木宗男は民主党、社民党および国民新党と組んで自公政権打倒を目指す立場に立っているのに対し、佐藤優は自公政権を守ろうとする立場に立っている。だから、鈴木宗男は国策捜査だと言い、佐藤優はそうではないと言うのではないか。シンポジウムは、佐藤の論調に引っ張られて、欲求不満ばかりが残るものになってしまった。佐藤の「国策捜査」論に立脚して大久保秘書逮捕の件を論じようともくろんでいた人たちにとっては肩透かしを食わされたようなものだろうが、もともと佐藤は保守というより彼自身が認めるように右翼なのだから、そんな佐藤に乗っかって「権力の陰謀」を暴こうなどというのは、あまりにも甘い考え方なのである。

佐藤優が湯浅誠、雨宮処凛や小沢一郎、それにコイズミ時代に自民党を追い出された政治家たちと手をたずさえて、自公政権が倒れたあとに、平和志向の福祉国家を建設するという夢想をするのは別にかまわないが、政治を論じるというよりは政治に題材をとったコンピューターゲームでもやっているようなもので、全く現実的ではない。政治家たちの思惑の、表に現れている部分からさえ目を背け、自らの願望に浸っているとしかいいようがない。たとえば平沼赳夫については、2ちゃんねらーの方が「自End」界隈のブログよりもずっと冷徹な批判を加えている。その一例を『kojitakenの日記』に収録した(下記URL)。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20090315/1237089415

「10年ほど選挙を凍結し大連立を」などという平沼の妄言は、2ちゃんねらーが指摘する通り、

憲法改正が無理な現状では「武力による憲法停止」と同じ意味

である。あまりの電波発言に自民党支持者からさえ見放されている。もちろんしばしば平沼に期待を持たせるような思わせぶりな態度をとっている民主党も、単純な平沼をおだて上げて動きを封じているだけであることはいうまでもない。数年前ならともかく、今となっては平沼赳夫はとっくに「終わった」政治家であり、私にしても単にストレス解消のために平沼を叩いているに過ぎない(笑)。しばらく前までは本気で平沼を警戒していたが、コメント欄などでしばしば指摘されたように、それは平沼に対する過大評価であったことを今では了解している。

妄想を膨らませて自己陶酔の世界に浸っているというと、ネット右翼たちがそうなのだが、「左」の方でも同じことをやってれば世話はない。今後、現実は大きく、そして劇的に動いていく。亀井静香の言うとおり、血みどろの戦いになる。「ネット右翼」の夢も「ブログ左翼」(?)の夢も泡と消え、その一方で平沼赳夫批判スレに書き込んでいたリアリストの2ちゃんねらーはしたたかに生き残っていく(もちろん、「ニュース速報+」などで騒いでいる有象無象のネット右翼は言論戦に生き残れない)。日本の社会をマイルドな変革によって徐々に変えてゆければよかったのだが、どうやらそれは許されそうにはない。運命は、4年前の郵政総選挙で自民党を大勝させてしまった時に既に定まっていたのかもしれない。

合従連衡の模索から、「万人の万人に対する戦い」への移行。自然状態への回帰。その時こそ、まさに「右」も「左」もない。乱世の到来である。


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結局、先週末まで10日間も西松建設献金問題のエントリを上げ続ける羽目に陥ったのだが、この事件については、以前から当ブログにしばしば罵倒のコメントをいただいている荒岡拓弥氏(注)が、3月11日付のエントリ「小沢一郎の「収賄疑惑」も「小沢神話」もすべて幻では?」へのコメントで、

乞食多見くん、あんた幸せ者だね。あんたより知恵も洞察力もある人達が、あんたが理解できないでりう道理を教えるためコメントをくださっている。あんたのエントリよりコメントの方が中身が濃いね。それが、このブログの価値かも知れない。謙虚に喜ぶべきだろう。

と書いている通りであって(笑)、先週の当ブログのエントリには、実に興味深いコメントが並んでいるので、是非さかのぼってご参照いただきたい。右から左まで、小沢氏支持派から強烈な批判派まで、あるいは岩手県在住で地元情報に詳しい方から、マスコミ報道を丹念に追いかけて報告される方に至るまで、さまざまな立場からのコメントが読める。

(注)荒岡拓弥氏は、最近では「アホバカマヌケ」とか「愛読者」などと名乗っているが、2007年11月7日付エントリ「小沢一郎が一転留任 ? 民主党は選択を誤った」では本名で投稿されているので、ここでは実名を出させていただく。民主党員で菅直人の後援会員だそうだ。「乞食多見くん」とは、たいそう立派な肩書きをお持ちの荒岡大先生にふさわしい、いたって上品な言い回しだ。


週末にかけては、さすがにひところよりはこの事件に関するマスコミの報道量は減ってきたのだが、昨日はテレビやインターネットで注目すべき番組があった。今日は、それらについて書きたいと思う。

昨日の夕方には、「フォーラム神保町」主催のシンポジウム「青年将校化する東京地検特捜部?小沢第一秘書逮捕にみる検察の暴走?」が行われ、インターネット配信されたのでずっと視聴していた。講師は魚住昭、佐藤優、鈴木宗男、田原総一朗、平野貞夫、宮崎学、郷原信郎の各氏だった。途中、次の選挙で山口4区で民主党から立候補予定の戸倉多香子さんが質問に立って、「なぜ検察は『ダーティーなタカ』であるコイズミ・竹中ではなく小沢さんをやろうとしているのか」と佐藤優に迫った。これに対して佐藤は、小沢一郎は田中角栄や加藤紘一同様「ダーティーなハト」であるのに対し、コイズミは「クリーンなタカ」であるとして、検察官であればコイズミや竹中にだって狙いをつける、と言ったあと、突如、「右のほうでも(国策捜査を)やられた人がいる」と、村上正邦の件に話をそらして逃げた。シンポジウムの最後に民主党の石井一が現れ、2004年に年金未納問題で田原総一朗が菅直人を代表辞任に追い込んだあと、菅の年金未納が社保庁の事務処理のミスによるものだったと判明した(しかも、石井は言わなかったが、田原総一朗自身の年金未納も発覚したw)ことを詰り(要は、田原の影響力を利用して小沢一郎を辞任に追い込むようなことはするなと言いたかったようだ)、それに対して田原が色をなして言い返し、それ以上に佐藤優が「この場を民主党の宣伝に利用することには反対!」などと大声で怒鳴りながら閉幕するという、なんともぶざまな幕切れだった。肝心のシンポジウムの本論については、あえて当ブログでは触れないでおく。「フォーラム神保町」から後日オンデマンド配信されるそうなので、直接ご参照いただきたいと思う。

昨日は、これを見る前の昼間、普段は見ない読売テレビの『たかじんのそこまで言って委員会』を見て、その過激な新保守主義かつ過激な新自由主義に貫かれた恐るべき極右番組ぶりに慄然とした。『kojitakenの日記』に速報を書いたが、ここに再録する。

番組はまず、西松建設の違法献金事件問題を取り上げ、その後憲法改正についての議論へと移った。『kojitakenの日記』には、下記のように書いた。

普段は見ない読売テレビ制作の『たかじんのそこまで言って委員会』を見ていると、三宅久之を筆頭とする電波芸者たちが、ここぞとばかり民主党攻撃のシャワーを浴びせている。今投票するとしたら自民党か民主党か、という問いに対して、電波芸者たちが立場を明確にしてディベートごっこをやっている(もちろん、その他の政党は最初から弾き出している)のだが、民主党支持は桂ざこばの1人だけで、立場を鮮明にしなかったのが三宅久之と宮崎哲弥の2人、その他の5人は自民党支持だ。森本敏、金美齢、浅川博忠、花田紀凱、高田万由子が「自民党」を選んでいて、高田万由子は呆れたことに自民党を支持する理由として、「民主党では日本を変えられない」と書いていた。自民党なら変えられると考える理由が理解できないのだが、高田の喋りを聞いていると、どうやらコイズミ信者らしい。

今この時間帯では、出演者が声を揃えて改憲を主張しているし、田原総一朗を「右」から批判しており、故筑紫哲也氏のことを、「筑紫」と侮蔑を込めて呼び捨てにしていた。なんとも恐るべき番組であり、こんな番組が人気を博している大阪で、橋下徹が絶大な人気を誇っている理由の一端がうかがわれる。橋下は、この番組の常連だった。

こんな番組を見ながら、あまりに怪しい西松建設違法献金事件の捜査のことを思う時、共産党支持者の言う「自民党も民主党もどっちもどっち」論だとか、「国策捜査ではないか」という疑念に対する左右双方からの「陰謀論批判」などは、今回ばかりは成り立たないと思える。

現在行われているのは、自民党と検察・警察(ともに行政機関である)とマスメディアが一体になった、自民党政権を守るための一種の「白色テロ」であって、きれいごとの「どっちもどっち」論に立っていたのでは、今後恐るべき極右恐怖政権の成立を呼び込むだけではないかと思えるのである。

この脅威の前では、小沢一郎ら旧経世会の「金権政治」など、取るに足らないとまではいわないが、小さいものだと言わざるを得ない。戦後民主主義は、いま最大の危機を迎えている。


これだけでも頭がクラクラする思いだったが、番組の後半ではなんとあの湯浅誠が現れた。そして、湯浅の「すべり台社会」論に対して、電波芸者たちがすさまじい批判を行ったのである。以下、再び『kojitakenの日記』に書いた速報より。

しかし、驚いたことに極右番組『たかじんのそこまで言って委員会』に湯浅誠が出てきたのである。初出演だそうだ。

湯浅の「すべり台社会」論の賛否を電波芸者に問うたところ、賛成はわずか2人で、残りはすべて反対だった。三宅久之と金美齢は、自己責任論を振りかざして湯浅誠を責め立てていたし、浅川博忠は財政再建論に立って社会保障を手厚くする余裕がないと主張していた。雇用の流動化のさらなる促進を主張する論者もいた。税金がなぜ貧困対策に使われるんだとがなり立てる「民主党支持」の大阪芸人もいた。ここまで露骨な新自由主義の立場に立つ番組は、東京発の全国放送の番組にはほとんど見られない。こんな番組を、「大阪らしい本音トーク」と持ち上げる大阪人は、やはり身も心もテレビが発信する新自由主義に染め上げられているとしか思えず、ああ、だから彼らは橋下徹を支持するんだなと得心した次第だ。


この『たかじんのそこまで言って委員会』は、大阪の読売テレビが制作しており、首都圏(日本テレビ)とごく一部の局を除くほとんどの日本テレビ系列局にネットされている。

番組が終わってから、首都圏の人たちの目に触れないところでこんな番組が流れているのはなぜかと考えてみた。一般には、司会のやしきたかじんが東京嫌いであり、東京へのネットを拒否しているからだと説明されている。だが、単なるチンピラ右翼であるたかじん自身はそうなのかもしれないが、あそこまで番組が極右化した原因を、たかじん一人のせいに帰するわけにはいかないだろう。

あの番組では、新保守主義と新自由主義が渾然一体となっている。番組中ほどで、憲法改正を大々的に論じて、典型的な新保守主義の傾向を見せたかと思うと、番組後半では湯浅誠を詰ったことからわかるように、典型的な新自由主義の傾向を見せたのだ。

最近は、というより郵政総選挙以後、政治思想極右の一部がコイズミ自民党から弾き出され、彼らが新自由主義批判を始めたため、「新保守主義と新自由主義は別物」などと論じられることが多いが、当ブログは繰り返し主張するのだが、決してそんなことはない。サッチャーでもレーガンでも新保守主義と新自由主義は一体だった。というより、新自由主義で切り離された社会的なつながりを再構築するために、強烈な国家主義を持ち出すのであり、これが新保守主義のイデオロギーだ。だから、新自由主義と新保守主義は不可分の関係にある。

つまり、『たかじんのそこまで言って委員会』には、新保守主義と新自由主義が一体だった頃(中央では2005年の郵政解散以前まで)の姿がそのまま残っているのだ。私がよくブログで橋下徹批判を行うと、中央の政治・社会問題の議論ではほとんど絶滅寸前になっている「自己責任論」に基づく反論をしばしば受けることに驚くのだが、批判者がたかじんの番組(や平日夕方に関西テレビや朝日放送が流している情報番組)に慣れ親しんでおり、それらの番組は中央から数年遅れた流行を今なお保持していると考えれば合点がいく。そして、なぜそんなことになっているかというと、日本ではいわゆる「知識人」が首都圏、特に東京に偏在しすぎており、たかじんの番組ごときは彼ら「知識人」の目に触れず、批判を受ける機会が少ないので、発信者側であるマスメディアが、露骨に彼らの狙いを反映させた番組を作ることができると考えられる。要するに、たかじんの番組を作る側は、いまだに「B層」作戦をやっているのだが、おめでたい大阪人は、そんなものを「東京では作れない、大阪発ならではの本音トーク番組」と思い込んでいるのである。これでは、大阪で橋下徹が絶大な支持率を誇るのも無理はない。

「庶民の町」だったはずの大阪の文化が、いつの間にそんなにうすっぺらなものになってしまったのかと、残念でならない。

[追記]
やしきたかじんの番組に関して、出演者の支持政党表明に一部誤記がありましたので、訂正いたしました。


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昨日のエントリで、『きっこの日記』(『きっこのブログ』)が西松建設違法献金事件について書いた真偽不明の情報について紹介したが、コメント欄で「負け組みの矜持」さんに、同じニュースソースによると思われる時事通信の報道のことを教えていただいた。速報として『kojitakenの日記』で記事にしたが、再度こちらでも内容を検討してみたい。

まず、『きっこのブログ』の報じた内容は下記の通り。
http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/2009/03/post-bc77.html

西松建設前社長が小沢氏からの便宜供与を否定

「西松建設前社長が小沢氏からの便宜供与を否定」(世田谷通信)

西松建設の違法献金事件に関して、西松建設の国沢幹雄前社長が、民主党の小沢一郎代表側からの便宜供与はなかったと証言していることが分かった。東京地検特捜部は、西松建設による小沢氏側への献金は公共工事などの見返りを目的としたものとして捜査しているが、国沢前社長は「公共工事が欲しかったので(小沢氏側への)献金を続けていたが、まったく工事を回してもらえないため、このまま献金を続けていても無駄だと思い、2つの政治団体を解散するに至った」と証言した。この証言は、小沢氏の影響力が強いと言われている東北地方での公共工事が、西松建設側にほとんど斡旋されていなかった事実とも合致している。小沢代表は11日の党本部での会談で「何としてでも衆院選で勝つ。俺は何も悪いことはしていない。いずれ真実が明らかになれば国民も理解してくれるはずだ」と語った。一方、西松建設による裏金疑惑や違法献金容疑を報じられている自民党の二階俊博経済産業相や森喜朗元首相の地元である近畿地方や北陸地方では、数十億円単位の公共工事が西松建設へと優先的に流されていた事実が判明しており、今後の捜査の方向性が注目される。(2009年3月11日)


「きっこの日記」が更新されるたびに配信される「お知らせメール」によると、「きっこの日記」の更新日時は、3月11日13時49分56秒となっている。

その6時間後、時事通信が下記の報道を行った。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090311-00000140-jij-soci

「東北支店弱く、焦って献金」=受注工作の一環?規正法違反事件・東京地検

3月11日19時57分配信 時事通信

 西松建設が小沢一郎民主党代表の資金管理団体「陸山会」に違法献金したとされる事件で、同社担当者が小沢氏側への献金について、東京地検特捜部の調べに対し、「東北支店が弱く焦っていた。東北には公共工事が多いため、(受注の)戦略のため献金した」と話していることが11日、分かった。同社関係者が明らかにした。同社は過去十数年間で小沢氏側へ約3億円を献金しており、特捜部は受注工作の一環だったとみて、裏付けを急いでいる。
 西松関係者によると、同社は2000年、陸山会の会計責任者を引き継いだ公設第一秘書大久保隆規容疑者(47)=政治資金規正法違反容疑で逮捕=と企業献金の枠組みを調整。社名を隠すため、ダミーの政治団体「新政治問題研究会」などを通じ、岩手県の民主党支部や党連合会などにも献金していた。
 同社東北支店の営業には、「業務屋」と呼ばれる談合担当がいたという。しかし、他社との受注調整でも公共工事を取るのは容易でなく、小沢氏の影響力が強い岩手県を中心に東北地方で、政治的影響力を背景に受注を目指したとされる。


非常に面白いのは、この2つの記事は、互いにまったく矛盾しないことだ。時事通信が書いた、

東北支店が弱く焦っていた。東北には公共工事が多いため、(受注の)戦略のため献金した。

というのは、要するに利益供与はなかったと証言しているという意味だし、担当者が言ったとなっているが、明かしたのは「同社関係者」と書かれており、これが国沢幹雄前社長だとすると、『きっこのブログ』の記述と符合する。時事通信は、

他社との受注調整でも公共工事を取るのは容易でなく、小沢氏の影響力が強い岩手県を中心に東北地方で、政治的影響力を背景に受注を目指したとされる。

と書いたが、献金の効果が上がっていないのにもかかわらず、ことさらに小沢氏の名前を読者に印象付けようとする文章だ。そして、『きっこのブログ』が書いた、

国沢前社長は「公共工事が欲しかったので(小沢氏側への)献金を続けていたが、まったく工事を回してもらえないため、このまま献金を続けていても無駄だと思い、2つの政治団体を解散するに至った」と証言した。この証言は、小沢氏の影響力が強いと言われている東北地方での公共工事が、西松建設側にほとんど斡旋されていなかった事実とも合致している。

という重要な指摘は、時事通信の報道からはすっぽり抜け落ちているが、単に書いていないだけであって、両者の記事にはまったく矛盾がない。よって、両者は同じ情報源による記事と推定され、西松建設の件で小沢氏との間に贈収賄罪が成立していた可能性を否定する証言を、ことさらに小沢氏に不利な印象を与えるように書いたのが時事通信の記事であるといえる。

『きっこの日記』は、ニュースソースを明かさないという特徴があるし(情報源の秘匿に関しては間違ったやり方ではない)、ライブドア事件当時、週刊誌の取材に答えたきっこさんが、真偽不明の情報も流していると言っていた記憶もあるが、独自のニュースソースを持っていることも確かであり、それが2004年から2006年にかけてアクセス数が急増した理由の一つだと思う。

たとえば、2005年3月3日の西武グループ総帥・堤義明の逮捕を、同年1月29日付日記「最近の若いもんは‥‥」で、「逮捕も秒読み段階に入った」と正確に予言している。

さらに、2006年1月10日の日記「虚業と言う巨悪」で、ライブドアを過激に批判すると、その翌週、ライブドアに強制捜査が行われた。そして、公開後すぐに削除されたが、同年1月21日には、「特別日記」と題して、下記のように書いていたのだ。

■2006/01/21 (土) 特別日記

ライブドア関連の日記は、イノシシ社長に大損させられてカンカンに怒ってるホニャララ団が怖いので、あんまり書く気はなかったんだけど、今日付けで、ライブドアの上場廃止と解体、イノシシ社長の逮捕がほぼ決まり、村上ファン怒も一蓮托生の運命が決まったので、あたし的にはバンザーイ!ってことになった。

それにしても、コイズミは「結城純一郎」って偽名を使って数々のレイプ事件を起こして来たけど、イノシシ社長は「有馬純一郎」って人物に成りすまして自社株を動かしてたなんて、中身の無い見せかけだけの内閣と、中身の無い見せかけだけの虚業とは、使う名前も似てるんだね(笑)

‥‥そんなワケで、イノシシ社長がやって来た悪事の数々を詳しく解説して、ライブドアって言う虚業が崩壊することを何ヶ月も前から予見してたサイトをご紹介します。ここに登場するペテン師たちの名前を良く覚えておきましょう。

http://blog.goo.ne.jp/yamane_osamu

(『きっこの日記』より。現在は削除されている)


この日記が公開された2日後、堀江貴文は逮捕された。しかも、なお驚くべきことに、5か月後の村上ファンド摘発(2006年6月5日に村上世彰逮捕)まで正確に見通していた。

つまり、『きっこの日記』の発信には、確かに真偽取り混ぜた情報が混ざっているが、ある種の情報に関しては正確で、しかもマスコミ報道より早いのである。最近は、ライブドア事件当時の路線から離れていたが、今回の西松建設献金問題に関して、『きっこの日記』が大久保隆規秘書逮捕の翌日、3月4日付の日記で、早くも「西松建設事件は自民党の自作自演劇」と断定したのにも、情報源の裏打ちがあると思われる。

小沢関連で他のゼネコンへも捜査の手を伸ばした、と新聞が報じているが、これは裏を返せば西松1社では東京地検は起訴にこぎつけられそうにもない、という意味にも取れる。

ところで、今回の事件に関して「自民党への波及はない」とオフレコの記者懇談会でしゃべった漆間巌だが、ライブドア事件をめぐるエイチ・エス証券副社長・野口英昭氏(「安晋会」理事)が沖縄で怪死を遂げた事件が起きた時の警察庁長官であり、この事件を「自殺」で片付けた人物であることも、既にこれまで多くのブログ等が指摘しているけれども、当ブログも改めて指摘しておきたい。

そして、発売中の『文藝春秋』4月号に載っている、「各界識者33名&政治記者84名アンケート これが日本最強内閣だ」なるくだらない特集で、佐藤優が内閣官房長官にこの漆間巌を選んでいることも、合わせて指摘しておきたい。佐藤は、漆間を「こういう恐い人が官房長官をすると国家が引きしまる」などと評している。これは、今回の事件を考えた時、ぞっとせざるを得ないコメントである。

「右も左もない」という考え方は間違っている。新自由主義に反対でさえあれば、極右とでも手を組むという行き方には、私は断じて与しない。


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いやはや、すさまじいばかりの情報シャワーだ。東京地検のリーク作戦は、これまで見たことがないほど徹底したもので、マスメディアがそれを垂れ流すものだから、多くの国民にとっては、小沢一郎や二階俊博はとんでもない国賊に思えることだろう。

この表現にも、何だ、お前は小沢と二階を同列に論じるのか、と小沢支持者からお叱りを受けそうだが、私にとっては二人は同列なのである。そして、森喜朗や尾身幸次は異系列に属する。ここまで書けばお気づきの方も多いだろう。小沢一郎と二階俊博は田中角栄、森喜朗と尾身幸次は福田赳夫の系列に属する。麻生太郎は、清和会の傀儡として擁立されたのに、清和会の路線を骨抜きにしようとして党内から「麻生降ろし」を食う羽目に陥ったが、小沢一郎の秘書逮捕によって生じた奇妙な均衡によって、かろうじて権力の座を守っている。だがそれは、両側が切れ落ちた崖になっているナイフリッジの稜線を歩くような、危なっかしい政権運営だ。

それにしても、小沢一郎の疑惑は、ロッキード事件を覚えている世代の人なら、誰しもこれを思い出さずにはいられないものだ。逮捕された田中角栄は、自民党を離党して総選挙に立候補し、地元新潟3区の有権者は、田中に17万票の得票を与え、大勝をもたらした。総選挙後、田中を逮捕させた三木武夫は首相の座を降り、福田赳夫が後継首相になったが、緊縮財政路線をとった福田は、得意としていたはずの経済政策で成果を挙げることができず、皮肉にも田中角栄の置き土産である日中平和友好条約の締結が最大の成果となった。そしてこれを成し遂げた直後、自民党総裁予備選で、田中角栄の支援を受けた大平正芳に惨敗して総理総裁の座を降り、以後2000年に森喜朗が首相になるまで、岸信介から福田赳夫の流れを汲む名門派閥は、冷や飯を食わされ続けた。

当時、ロッキード事件で逮捕された田中角栄は法を犯したが、そうまでして金を集めなければならなかった田中角栄よりも、官僚上がりで岸信介譲りの尻尾をつかませない金集めのできる福田赳夫のほうがもっと悪質だという意見があり、私はそちらに傾いていた。田中角栄に投票した新潟3区の有権者に対して、日本中から罵詈雑言が浴びせられたが、私はいたって同情的だった。

A級戦犯の岸信介の流れを汲むだけあって、福田赳夫はタカ派色の強い男で、1978年の終戦記念日に靖国神社に参拝し、公用車を使用、公職者を随行したうえに「内閣総理大臣」と記帳しておきながら、しゃあしゃあと私的参拝だと主張した。同じ年の夏、栗栖弘臣が「週刊ポスト」誌上で「超法規発言」を行って解任された時にも、福田赳夫は閣議で有事立法・有事法制の研究促進と民間防衛体制の検討を防衛庁に指示し、これがたいへんな議論を巻き起こした。その後時代が流れ、朝日新聞の論説主幹が若宮啓文に代わって有事法制賛成に社論を転換した直後、コイズミ内閣下で有事関連3法案が成立した。

こうしたことを考える時、自民党政治を終わらせることは、2000年から始まった清和会支配を終わらせることだと考える。いまさら田中角栄的な土建政治に戻る必要はないが、グリーン・ニューディールなど新たな政府支出によって産業を振興させていかなければ、世界金融危機に端を発した恐慌から脱出することはできない。すでに、清和会の方がかつて新自由主義路線を突っ走っていた路線を転換しようとしているが、「コイズミカイカク」によって国民生活をズタズタにした張本人たちの責任を追及し、彼らを権力の座から追い落とさなければならないと私は考えている。だから、きたる総選挙は必ずや「コイズミカイカク審判選挙」でなければならないのである。

単に新自由主義を問うだけではない。政治の混乱に乗じて、安倍晋三が元気を取り戻し、産経新聞は「日教組問題を総選挙の争点にする」などとたわけたことを言い出している。もちろん、そんなものが争点になどなろうはずもないが、かつて「安倍晋三降ろし」(AbEnd)のブログキャンペーンに加わって安倍の改憲路線を批判していた人間が、現在では平沼赳夫一派に加担し、あわよくば平沼一派を小沢民主党と組ませようなどと夢想しているし、「偽装CHANGE勢力」批判を行う人たちの多くも、平沼一派に容認的か、あるいは積極的に支持している。

そして、小沢一郎支持者の間で最近目立ってきたのは、「小沢さんじゃなきゃ対米従属から脱せない」とか「小沢さんじゃなきゃ官僚支配を打倒できない」という、小沢一郎に対する盲目的な信仰である。これは、かつての日米構造協議で小沢一郎がほとんどアメリカの言いなりだったことや、小沢が新自由主義的政策を強く打ち出した『日本改造計画』(旧版)が、実は官僚が書いたものだとされていることを考えると、いかにも奇妙で実態にそぐわない、誤った信仰であるとしか私には思えない。

そもそも小沢一郎は、よく当ブログにコメントいただくsonicさんが指摘されるように、中央で新自由主義者を気取っていた頃は、地元では田中角栄直系らしい、土建業者と強く結びついた利益誘導型の政治家であり、民自合流で民主党に移ってきた当初、党の保守系の人たちが「小さな政府研究会」を発足させて、「小沢派結成か」と言われた時には、労組に支えられる組合政治家に転向していた男なのである。

小沢一郎は、民主党内右派の政治家を引き連れているにもかかわらず、党内で社会党出身の左派政治家たちと組んだのも、組合政治家に転向していたことを考えれば当然で、だからこそ2006年に代表に就任するや、それまで自民党と「カイカクを競う」方向性をとっていた党の方針を180度転換して、「国民の生活が第一」と言い出した。そして、共産党の政策をパクったが、同じ政策でも共産党が言うのでは支持されず、民主党が言うと支持されるというのは、共産党支持者の方々が言われる「アカの壁」なのだろうと思う。

内実はともあれ、民主党の「国民の生活が第一」というスローガンが国民の心を捉え、新保守主義と新自由主義の権化だった安倍晋三率いる自民党をものの見事にノックアウトしたのが、2007年の参院選だった。その後、小沢一郎支持者が個人崇拝の度を強めていったのは、おそらく、その大勝利の印象があまりに鮮烈だったからではないだろうか。「大連立」騒動の時でさえ、小沢一郎を批判し、代表辞任を求める意見は、「自End」ブログ界隈ではごく少数派だった。当時、当ブログをコメント欄で何度か罵倒した、「araなんとか」と名乗っていた人間は、最近も「アホバカマヌケ」とか「愛読者」などと名乗って、当ブログを罵倒しているが、そんな無駄なことに時間を費やすよりも、自分のブログで当ブログを批判し、支持を集めたほうがよっぽど良いと思う。

当ブログは、民主党の方向転換と、2007年の参院選勝利については、小沢一郎を高く評価している。しかし、かつての新自由主義にしても、近年の路線転換にしても、小沢一郎の思想信条から発するものとはあまり思えない。前者は時流に乗っただけのものだし、後者は時流に乗ったことに加えて、選挙区の支持者の都合からきたものだと思っている。小沢一郎であればアメリカに対抗して自主独立の道を歩めるとか、官僚支配から脱却できるというのは、幻想に過ぎまい。

昨日(11日)、『きっこのブログ』が「西松建設前社長が小沢氏からの便宜供与を否定」と書いた。

西松建設の違法献金事件に関して、西松建設の国沢幹雄前社長が、民主党の小沢一郎代表側からの便宜供与はなかったと証言していることが分かった。

とのことだが、ニュースソースは示されていない。しかし、それは正体不明の「関係者」発の情報であふれ返るマスコミ報道とて同じである。そして私は、きっこさんが2005年の堤義明逮捕や、その翌年の堀江貴文逮捕を正確に予言したことを覚えているので、ニュースソースこそ示されていないものの、根拠のない情報とは思えない。

これについての、sonicさんのコメントを紹介したい。

なんか、きっこのブログを見ていたら、西松が、小沢さんに献金していたのに便宜をはかってもらえないから政治団体を解散したとバラしてしまったそうです。
きっこのブログはソースを明らかにしないので、これ自体確実な情報ではありません。
でも、とても本当っぽいですね。
岩手の建設業者はそう言う思いを味わいましたので。

ほんと、自民党時代はともかく、離党後の小沢さんは応援してもぜんぜんダメだった。
利益供与? ちゃんちゃらおかしい。
一番バカバカしかったのは自自連立時代で、この時は与党なので地元ゼネコンは小沢べったりで応援したのに、東京では新自由主義をきどっていましたよね。
小沢さんを応援してもしなくても、建設予算は徐々に縮小。
当時は談合組織が残っていたから利益を分け合って潰れずに済んでいた。
会社の偉い人は頑固に小沢一郎支持で固まっていましたが、私ら若手の不満はとても大きかった。
予算がつくようになったのは、小沢チルドレンだった増田前知事が官僚に門前払いされると言う屈辱を味わい、2期目の途中で自民党に鞍替えしてからです。
与党の公共事業への影響力と言うのは、それほど強いのです。

小沢一郎がどれほどカリスマ性があり、実力があったとしても、野党は所詮野党に過ぎません。
そして野党小沢一郎が公共工事に対して急激に無力化するのを私らは経験しました。

今回の西松騒動で報道されるように野党小沢一郎に便宜をはかる力があったと思うのは、いくらなんでも過大評価です。

...というか、小沢さんが首相をやって日本を変えられると思うのも過大評価だと思います。

2009.03.11 20:49 そにっく


「小沢さんが首相をやって日本を変えられると思うのも過大評価だと思います。」というコメントの結びにウケた。

今回の西松建設違法献金事件に絡んだ小沢一郎の収賄疑惑も、小沢が首相になれば自主独立で官僚支配から脱却できるという夢も、ともに幻想ではないかと私には思える。民主党も、いつかは「小沢一郎離れ」をしなければならない。今は、その良いチャンスではないだろうか。

何はともあれ、自民党支配の政治は終わらせなければならない。それはそうなのだが、かつてコイズミが個人崇拝されたように、小沢一郎が個人崇拝されるようだと、日本の政治は何もよくならないと思う今日この頃なのである。


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小沢一郎であれば、「政治とカネ」で叩けばほこりが出るのは当たり前。そう私は思っている。だから、西松建設からの違法献金事件が報じられた時、小沢氏は潔く代表を退くべき、と書いた。だが、その後の捜査の進展と報道を見ていると、権力側による謀略の可能性がきわめて高くなったと言わざるを得ない。

昨日(10日)の朝日新聞が報じた「談合関与」が疑われる小沢一郎の元秘書とは、明らかに高橋嘉信氏を指すのだが、読売新聞は昨日の夕刊一面トップで、「小沢代表元秘書・民主の石川衆院議員を参考人聴取へ」と報じた(らしい。当地は朝夕刊統合版地域だが、これは大都市圏の版の話)。

なんだ、お前は自民党公認で総選挙に立候補予定の高橋嘉信氏と書いたが、元秘書は民主党から中川昭一の選挙区で立候補予定の現職議員・石川知裕氏ではないか、と思われた読者も多いだろう。だが、朝日新聞は明らかに高橋嘉信氏を念頭に置いて書いたのである。朝日の記事には、

 今回の事件で政治資金規正法違反容疑で逮捕された、小沢代表の公設第1秘書で陸山会の会計責任者も兼ねる大久保隆規(たかのり)容疑者(47)は、元秘書の後任だった。

この記述に該当するのは高橋氏であり、35歳の石川氏ではない。読売の記事には、

 石川議員は1996?2004年に小沢代表の秘書を務め、00?04年には、陸山会の事務担当者に就いていた。

とある。

当ブログに寄せられた小沢氏に関する情報によると、小沢氏は自民党時代から自由党時代にかけてはずいぶんあくどいことをやっていたとのことだ。そして、高橋嘉信氏こそその鍵を握るキーパーソンである。しかし、小沢事務所とかかわりの深かった地元の建設会社は2002年4月に破綻しており、これを契機に地元の建設業界は小沢離れを起こした。従って、高橋氏の関与した件は時効になっていると思われる。その後の小沢氏については、たとえば建設会社との間の贈収賄罪を立件するのは困難ではないか。西松建設の東北進出に関しても、主役は小沢氏ではなく、もっとミエミエに怪しい他の大物政治家がいるが、検察の捜査がそこに伸びているとの報道は皆無だ。以上が、当ブログが持っている感触である。

以上の認識からすると、高橋嘉信氏をさしおいて、中川(酒)の選挙区である北海道11区から立候補予定の石川知裕氏を先に参考人聴取するということなど、小沢一郎と民主党のイメージを落とすことが目的の、政府と東京地検が結託した「国策捜査」以外のなにものでもない。「ここまでやるか」と、そのなりふりかまわない手口に唖然とする。ましてや、報じたのは「自民党の機関紙」ともいわれる読売新聞なのである。ここまで露骨だと、有名ブログが書く「麻生首相の権力犯罪」という表現が、決して大げさではないと思える。

そんなわけで、かつては真っ黒な政治家だったが、西松建設との件に関しては「でっちあげ」の様相の濃厚な小沢一郎が検察に徹底抗戦するのは、それなりに「理」はあると思う。でも、それはあくまで小沢一郎事務所の問題である。

民主党員でもある『JanJan』のさとうしゅういち記者は、3月10日付の「民主党のピンチはチャンス めざせ女性初の総理」と題した記事で、次のように書いている。

■自民党こそ政官業一体、されど「国民の生活が第一」のためには・・・

 民主党よりも、自民党のほうが、大手企業(経団連)からはたくさんお金をもらっています。2007年で言えば、経団連企業の献金総額は29億8000万円で、うち97%の29億1000万円が自民党へのものです。経団連は「政策優先事項」を定め、各政党の「通信簿」をつけ、各企業の献金の参考にしてもらっています。そのことが、自民党の衰退の背景にあります。

<参考>
日本経団連、献金総額4億増、民主は横ばい 政治資金収支報告
「優先政策事項」と「企業の政治寄付の意義」について
2008年政策評価の発表にあたって

 西松建設問題ばかりに焦点がいくマスコミ報道ですが、実際には、自民党と経団連が深く結びつき、新自由主義的政策を車の両輪として進めたことが、今の惨状の背景にあるのです。そして、小沢さんには、闘う権利があります。

 それはそうなのですが、今、国民生活が大変な状況です。そういう状況で、国民から「やめろ」という声が強い小沢さんが代表のままではせっかくのチャンスが生かせないと思います。

 「小沢さんがやめたら、自民党にさらに追撃される」という議論もありました。しかし、二階経済産業大臣側にも捜査が及ぶ情勢になり、状況が変わりました。言い方は悪いが「二階大臣もやめ、小沢さんもやめて相打ち」もありではないか。

 小沢さんは「潔白を証明するため、代表をやめ、法廷闘争に力を割く」ことにすればよいのです。

(『JanJan』 2009年3月10日付記事 「民主党のピンチはチャンス めざせ女性初の総理」より)


冷静で筋の通った正論だと思う。小沢一郎氏も、「次の総選挙で民主党が勝てるかどうかを見極めたうえで、進退を最終判断する」とした(下記URLの朝日新聞記事より)。
http://www.asahi.com/politics/update/0310/TKY200903100325.html

総選挙の争点は、あくまで国民生活を守るためにどのような政策をとる政党を選ぶかであり、ひいては、「コイズミカイカク」に対して審判を下すものでなくてはならない。国策捜査問題などを選挙の争点にしてはならないのである。


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漆間巌・内閣官房副長官が、報じられた「自民党側は立件できない」とした発言を、9日の参院予算委員会で「全然記憶にない」と否定したのにはあきれてしまった。昨日のエントリに対し、「政治記事は政治部の記者と各政治家との信頼関係で成立しており、情報元のプライバシーを守ることは、知る権利よりも優先的に守らねばいけない」とするコメントをいただいたが、それはあまりにもナイーブな見方だ。問題の本質は、マスメディアの横並びの体質にある。記者クラブに入っていれば、どの社にも同じような情報が「政府高官」からもたらされ、記者は労せず記事を書くことができる。それは、権力側の政治家の利益にはかなうが、国民の利益を損なうものだ。オフレコ取材が全く不要とはいわないが、権力者に過剰な権利を与えているのが現在のマスメディアのあり方であり、これは「メディアが権力と一体となっている」という以外に表現できないものだ。1972年の「西山事件」では、毎日新聞の西山太吉記者(当時)に情報源の秘匿の配慮が足りずに失敗してしまったが、今回の漆間の件はそれとは全く異なる。「政府高官」という符牒で報道されたことによって、マスメディア報道の慣習を知っている人にとっては、ああ、官房副長官が言ってるんだな、とわかるだったのであり、こともあろうにその内容が捜査への政府の介入を疑われるようなものだったから、報道関係者にとってはわかり切っていた発言者の実名の公表が求められたのである。繰り返して言うが、これは、政治家側に過剰なフリーハンドを与えている現在のマスメディアの問題である。政治家と新聞記者には、信頼感だけではなく緊張関係もなければならない。昔の新聞記者が書いた本などからはそれが感じられるのだが、現在の新聞記者からは感じられない。

それから、「国策捜査」批判への批判も結構出ているが、昨日、立花隆がテレビに出演して、検察はいつでも国策捜査をする、それが彼らの仕事だ、と言ったそうだ。これは、当ブログがずっと主張し続けていることでもある。検察が行政機関である以上当然のことで、何も小沢一郎の秘書逮捕の一件だけが「国策捜査」ではない。だから、検察の捜査については、常に権力側からのバイアスを疑ってかからなければならないのは当然である。何度も何度も書くけれども、陰謀の仮説を立てることは「陰謀論」でもなんでもない。立てた仮説がドグマと化してしまって、仮説への検証作業を攻撃したり排除したりすることが、「陰謀論」の弊害だ。陰謀論者も、型にはまった、というか考察を欠く「陰謀論批判論者」も、この点を理解していない。自然科学でも社会科学でも当たり前に行われるアプローチのプロセスを全くわかっていないのである。

とことで、各種メディアの世論調査は、予想通り民主党の支持率が大きく下落する一方、麻生内閣および自民党の支持率は変わらないか微増である。毎日新聞の調査で麻生内閣支持率が5ポイント上がって16%になったのと、テレビ朝日の調査で21%に増えたあたりが目立つ程度だ。だが、もともと毎日新聞調査では麻生内閣支持率は低かったし、テレビ局の支持率調査は、どういうわけか都市部の有権者の意見が強く反映されるように思う。麻生内閣が、経済軸で「右」から(つまり、渡辺喜美氏らのような新自由主義的な立場から)批判されていた頃は、テレビ局調査の世論調査で内閣支持率がいち早く下がった。地方在住者としての感覚からいうと、地方の保守は自民党が「コイズミカイカク」を総括しない限り、自民党支持に戻ることはあり得ない。

それにしても、自民党はなんで麻生太郎のような男に総理大臣をやらせてしまったのかと、ベルサイユ宮の人たちの感覚にあきれるばかりだ。つくづく思うのだが、福田康夫総理のままで、昨年秋くらいに解散総選挙をやって、自民党はいったん下野し、経済危機の難局への対応は、一昨年の参院選で「国民の生活が第一」を唱えていた民主党を中心とした連合政権にやらせて、自民党は野党としてその政策を批判する状態にすればよかったと思う。「良き敗者」であれば、自民党に再生の道はあった。だが、自民党はその道を選ばず、権力にしがみつく道を選んだ。人気者だとうぬぼれて首相になった麻生は、その人気がコイズミ政権時代に捏造されたものだったという事実を認めることができず、小出しにする景気対策は後手に回り、ウケを狙うパフォーマンスも不発に終わり、あげくのはてには財務相が泥酔して辞任に追い込まれた。小沢一郎に狙いをつけたのは、「そうでもしなければ政権の座を守ることができなかった」麻生が、ついに禁断の手段に手を染めたものだ、そう誰もが思ったことだろう。だから、民主党の支持率が大きく下がったにもかかわらず、麻生内閣や自民党の支持率はほとんど上がらなかったのだ。敵失で支持率が上がるものではないし、「政治とカネ」の問題だから、直ちに自民党に跳ね返るのも当然のことだ。昨日のエントリでも書いたように、捜査が小沢一郎と二階俊博で止まったのでは、「旧経世会」の狙い打ちであり、依然として権力の利益と合致する。西松建設が受注した沖縄の公共事業に関する職務権限を持っていたことが指摘されている尾身幸次は、本当なら真っ先に捜査の手が伸びていて当然の人物だが、捜査がなされていないのは、尾身が町村派の政治家だからではないかと私は疑っている。とはいえ、「はてなブックマーク」のコメントでも指摘されたように、「国策捜査」と一言でいっても、何をもって「国策捜査」とするのかという問題もある。ライブドア事件のように、コイズミ内閣の利益とは必ずしも一致しない、旧保守側による「国策捜査」が行われた例もあるから、今後尾身幸次の身は安泰、とまでは言い切れないだろう。

ところで、私がとっている朝日新聞の早版には出ていないのだが、最終版では「小沢代表の元秘書、談合に関与か」という記事が一面トップになっているようだ(下記URL)。
http://www.asahi.com/national/update/0309/TKY200903090343.html

この元秘書とは、ネットでは既に広く知られているように、次回の総選挙で小沢一郎の「刺客」として岩手4区から自民党公認で立候補を予定している高橋嘉信氏を指すのは明らかで、早朝のテレビ朝日の番組でも、コメンテーターがその旨コメントしていた。今回の一件も、高橋氏によるタレコミに端を発するといわれていて、真偽不明の情報によると、これは朝日新聞の記者が社のスクープにはしないで検察に垂れ込んだのだという。今朝の朝日に、元秘書に関する記事が掲載されたのは、上記の噂話と一致する。

元秘書は自民党から立候補予定とはいえ、小沢一郎に歯が立つはずもなく、自民党からしたら絶対勝てない選挙区で候補者を差し替えれば良いだけだ。一方、元秘書が提供した情報が小沢一郎に与えるダメージの大きさは計り知れない。朝日新聞は、民主党に対して「この不信にどう答える」と題した社説も掲載しているし、当初検察の捜査に激しく反発していた鳩山幹事長も、トーンを下げてきた。

ことは「政治とカネ」の問題であり、自民党も民主党も深くかかわっているのは当然だ。「自民党もやっているから小沢代表は悪くない」という論理は成り立たないし、公共事業にかかわる職務権限を持っていた議員が複数いるのに、「金額が小沢一郎より少ないから問題ない」という論理も全く成り立たない。

そして、単に自民党も民主党も悪い、というのではなく、「民主党も悪いが、自民党はもっと悪い」のだということだけは押さえておかなければならない。政治不信に陥るのは仕方ないが、投票率が著しく下がると、公明党の票に支えられた自民党の議席が増え、最悪の政治勢力がさらに延命するという結果を招くことを忘れてはならない。比例区においては、何も自民党と民主党だけが選択肢ではないのだし。


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週末に、民主党・小沢一郎代表の公設第一秘書・大久保隆規容疑者が逮捕された西松建設の献金問題で、次々とお騒がせな材料が出てきた。こんな話題はいい加減に切り上げたいのだが、なかなかそうもいかない。

この件の議論に関しては、私が何か書くより、最近の当ブログのエントリのコメント欄をご覧いただいた方が良いと思う。興味深い情報の提示やいろんな立場からの議論が読める。当ブログは、捜査の進展状況によっては、総選挙に向けて民主党が大きなリスクをとることになるので、これを回避するためにも小沢一郎代表は速やかに辞任した方が良いという主張で、政治資金規正法違反の容疑や、ささやかれる贈収賄疑惑については、これまでもほとんど触れなかったし、今後も深入りするつもりはない。それよりもっと大事な問題(国民の生活を守ること)があると考えるからだ。

だが、3月5日に、「政府高官」が「捜査が自民党議員に波及する可能性はない」と述べ、誰もが疑っていた「国策捜査」を自ら認めてしまった失態を犯し、それがきっかけとなって、マスコミ報道が持つ問題点が噴出した。今日はそれについて書く。

「政府高官」が、首相官邸で記者団に対して「自民党側は立件できないと思う。特に(違法性の)認識の問題で出来ないだろう」と述べ、自民党議員に捜査は拡大しないとの認識を示したことは、3月5日に各メディアが一斉に報じた(下記は朝日新聞の例)。
http://www.asahi.com/politics/update/0305/TKY200903050292.html

この「政府高官」が内閣官房副長官の漆間巌であるという情報は、翌日にはネットを駆けめぐっており、当ブログも6日のエントリを公開したあと、コメントで教えていただいた。以後、ネットでは実名がバンバン流れているのに、マスメディアの報道は「政府高官」であるという状態が続いた。

私などは、「政府高官」と聞くと、はるか昔、1976年のロッキード事件の頃、ロッキード社のカール・コーチャン副会長が、「丸紅経由で約6億円を複数の政府高官に渡した」と証言したことを思い出す。当時、「政府高官」という言葉がはやった。時の稲葉修法相は、捜査の山場はいつか、と聞かれて「蝉の鳴く頃かなあ」と言ったが、その言葉通り、7月27日に前首相田中角栄が逮捕された。ロッキード事件の時、稲葉法相は明らかに捜査の状況を知っていたし、田中の逮捕を三木首相の同意のもと行われたのは当然だ。というより、三木は政権を安定化させるためにこの事件を最大限に利用した。稲葉修は中曽根派の政治家だったが、中曽根自身も党内の少数派だった三木の政権を支える立場に立っていて、そのおかげで「田中角栄以上に怪しい」と疑惑が取り沙汰され、腹心の佐藤孝行が逮捕されながら、中曽根自身には累が及ばなかったと言われている。歴史にもし、という言葉はないが、もし中曽根が三木政権を支える立場に立っていなかったら、中曽根は逮捕されたかもしれないし、もちろん中曽根が日本における新自由主義の開祖になることもなく、ましてや大勲位などに叙されたはずもなかった。

当時の「政府高官」とは田中角栄をはじめとする何人かの政治家を指したが、オフレコの記者懇談会における談話が記事になる時、「政府高官」というと内閣官房副長官を指すのだそうだ。そのことと、3人いる官房副長官の職務分担から、発言の主が漆間巌であることが容易に割り出され、その内容が「国策捜査」を事実上認める問題発言だったため騒ぎになったわけだが、問題発言であるにもかかわらず、漆間が実名報道を拒んだために、以後奇妙奇天烈な記事が新聞に載ることになる。

今朝の朝日新聞には、問題の経緯が報じられている。これによると漆間は6日、「一般論として、違法性の認識の立証がいかに難しいかという話をした」と釈明し、朝日新聞は実名公表を求めたが拒否された、とある。さらに7日には内閣記者会が漆間に実名公表を求めたが、「さかのぼってオン(公表)にすることはあり得ない」と漆間は重ねて拒否した。

この頃から、朝日新聞には奇妙な記事が載るようになった。3月7日午前3時の日付のあるasahi.comの記事には、「民主、漆間氏とみて追及へ 「自民立件ない」発言の高官」という見出しがついている(下記URL)。
http://www.asahi.com/special/09002/TKY200903060342.html

この記事には、新聞の遅版には載ったのかもしれないが、私が読む締め切りの早い版には出ていなかった(8日付の第2社会面の下のほうに出ていた)。だから報道に気づくのが遅れたが、抱腹絶倒ものの記事である。協定によって実名報道できないものだから、

民主党はこの政府高官を元警察庁長官で官僚トップの漆間(うるま)巌官房副長官とみて、週明けの国会で追及する。

とか、

新党大地の鈴木宗男代表は6日夜のBS放送の番組で、「漆間氏が『自民党に発展しない』と言うことがおかしい。権力側が裏でつるんでやってるという話になる」と実名を挙げて批判した。漆間氏は警察庁長官を経て、麻生内閣発足の08年9月に中央省庁を束ねる事務担当の官房副長官に就任した。

などと書く。事実上の実名報道なのだが、鈴木宗男氏のくだりは大阪本社発行の朝夕刊統合版には載っていなかった。金を払って新聞を購読している読者を馬鹿にする報道を、朝日新聞は臆面もなくやっている。その代わりといっては何だが、「政府高官は 漆間氏」という見出しの記事が、9日付紙面の真ん中やや右あたりに出ていて、社会面でオフレコ解除のいきさつを報じているわけだ。

結局、政府も騒ぎを抑え切れなくなって、8日にフジテレビとNHKの番組で、河村官房長官は発言の主が漆間巌であることを明かした。協定があったために、メディアはそれまで「政府高官」の呼称を用い続けたのである。

国民の「知る権利」とニュースソースの秘匿というと、毎日新聞記者が逮捕されたうえに毎日新聞社の経営まで傾けた1972年の西山事件を思い出すが、権力犯罪に迫った西山事件の場合と違って、この件は政府と新聞記者が馴れ合っている「記者クラブ」制度の腐敗の問題が表面化したものだ。ベクトルの向きが180度異なるといってもよい。おかげで、「政府高官」が「内閣官房副長官」を指すという政界の常識(なのだろう)を一市民の私もようやく知ったわけだが、このような慣習が、国民の「知る権利」を著しく侵害していることはいうまでもないだろう。一説によると、民主党が政権をとると「記者クラブ」制度が廃止されるという話があって、それを嫌う新聞記者が小沢叩きをしているのだと言う人もいるが、いくらなんでもそれは「陰謀論」のたぐいだろうと思う。

朝日新聞は、今日(9日)の紙面で下記のように書いている。

 記事の信頼性を確保するためには、情報源はできるだけ明示されることが好ましい。ただ、政治家や政府当局者に対するオフレコ取材は、本音や背景をつかむことで、実態をより正確に把握するために必要な側面があり、世界の民主主義国の報道機関で広くとられている手法でもある。

 漆間氏のような政権中枢が、政治家が関係するデリケートな事件の捜査の見通しについて語るのは極めて異例。そのため、朝日新聞を含む報道機関は「政府高官」「政府筋」として漆間氏の発言を報道した。

 朝日新聞や内閣記者会は発言の重要性を考慮し、漆間氏にオフレコ解除を求めたが拒まれた。情報源の秘匿を約束した場合、秘匿が解除されるのは、相手側が同意した場合だけというのが原則。そのため、朝日新聞も河村氏が匿名を明かすまで、基本的に「政府高官」として報道した。

(2009年3月9日付朝日新聞より)


いったい誰がこんな説明に納得できるだろうか。1976年、稲葉修法相は発言をオフレコになどせず、実名で法務大臣が捜査の進展を知っていることが報じられた。検察は行政機関であるから何の不思議もない。今回、町村信孝が「国策捜査なんかがあったら田中角栄は逮捕されなかった」と言ったが、これは人を馬鹿にした話で、田中角栄が三木武夫の政敵だったから逮捕されたというのはもはや歴史の常識であって、当ブログでも何度か書いた記憶がある。

問題は、いつの間にか政府側が過剰な権利を持つに至っていて、本来濫用してはならないはずの「オフレコ取材」が日常的に行われ、政府と癒着したマスメディアは権力批判に踏み込まなくなってしまったことだ。

コイズミ内閣末期から安倍内閣初期にかけて、安倍晋三にまつわる問題を取り上げた記事が、大手メディアにはほとんど載らなかったことがあった。当ブログは、安倍批判が載っている週刊誌を探してはブログで紹介することを繰り返していたものだ。安倍は、自民党の政治家の中でも特にメディア規制(言論の自由の抑圧)に熱心な政治家であり、先日国際会議の場で泥酔して財務相の座を追われた中川昭一と組んで、NHKの番組を改変させ、それを報じた朝日新聞と戦って朝日を屈服させたことがあった。これ以降、朝日新聞の報道に覇気が感じられなくなり、朝日にとっての「西山事件」になったのではないかと私は思っている。この件の経緯を報じた魚住昭の記事は、ネットで読める(下記URL)。
http://www.news-pj.net/siryou/2006/nhk-bangumikaihen200509.html

最後に、西松建設に関する疑惑の件に戻ると、漆間巌の言に反して、東京地検は今週二階俊博周辺の立件を行う見込みだそうだ。だが、私の推測ではこれもまた「国策捜査」であって、批判を抑え切れなくなった政府が東京地検に、かつて小沢一郎の「忠臣」として知られた二階俊博を差し出したものに過ぎない。

昨日の「サンデープロジェクト」では、野党の小沢一郎事務所が捜査されたが、西松建設から献金を受けた議員で、在任中に公共事業にかかわる職務権限を持っていた人間がいたのではないかという話が出た。コメンテーターは、それはいると言ったが、実名を出すのは拒み、その代わり、「沖縄及び北方対策担当大臣」という言い方をした。報道されている中でこの経歴に当てはまり、かつ献金を受けた額が多いのは尾身幸次である。この尾身は、町村派の議員であり、森喜朗ともども、「国策捜査」を画策している側としたら、絶対に捜査が及んでほしくないはずの人物である。捜査が尾身に及んで初めて、東京地検を見直す気にもなろう。

『なごなぐ雑記』の宮城康博(nagonagu)さんによると、

尾身は、沖縄では本邦初の「大学院大学」「泡瀬干潟」をはじめ様々な公共工事の利権をコントロールしにらみを利かし私腹を肥やす真っ黒な政治屋。東京地検が尾身にメスを入れきれるなら、多少は見直すに値すると私も思う。

とのことだ(『kojitakenの日記』へのコメントより)。捜査が小沢一郎と二階俊博の周辺だけにとどまるのであれば、不公正な「国策捜査」とのそしりは免れまい。


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どうやら民主党は、というより小沢一郎は徹底抗戦の道を選んだようだ。そして、自民党は、というより麻生太郎は、「景気回復が最優先」だと言って、政権にしがみつき続ける道を選んだようだ。かくして「政治空白」は続く。

私がブログを始める直前に、「読み朝る毎」と称するブログキャンペーンがあって、当時ネットが主導していると言われた耐震偽装事件に絡んで、新聞報道なんか読むな、ブログを読めと言われたことがあった。しかし、ネット情報だけに頼るブログはだめだとその頃から思っていたし、その考えは今も変わらない。もちろん、新聞報道にはとんでもないバイアスがかかっているが、それを承知の上で読み解かなければならない。

小沢一郎の件に関しては、そもそもダムの建設といえば国土交通省の管轄なのに、どうして野党の政治家がかかわれるのかという疑問がある。もとは小沢は自民党の利益誘導型政治家の代名詞みたいな男だったから、人脈が残っているのかもしれないが、岩手県在住のsonicさんによると、小沢氏ははるか前に労組政治家に転身したとのことだから、なおさら疑問は強まる。東京地検からのリークに基づいていると思われるマスコミ情報も、事実がどうか疑わしいと指摘されるものがずいぶん多く、率直に言って、かなり無理筋なのを承知の上で、検察は強引に捜査を進めているように見える。

そもそも、『日本がアブナイ!』が指摘するように、検察は「司法」の性格も持つけれども紛れもない「行政機関」であって、今回の捜査にしても麻生太郎首相の同意を得ているに決まっているのである。行政機関である検察は、常に「国策捜査」を行う。

だが、それとは別に、今いちばん政治に求められているのは、日本経済が危機的状況にある現在、思い切った雇用確保や内需拡大のための財政出動を行うことである。テレビのニュースでは、中国で「内需拡大」の垂れ幕が掲げられて、巨額の財政出動をしていることが報じられている。しかし、麻生内閣は、わざと景気対策をチョロチョロ小出しにしている。いうまでもなく、政権を延命させるためだ。そして、小沢一郎にダメージを与えることによって、与党自民党同様、民主党も身動きをしにくくしようとしているのだ。

民主党が本当に「国民の生活が第一」と考えるなら、こんな麻生の作戦に乗ってはならないはずだ。森田実氏は、下記のように主張している(『森田実の時代を斬る』 2009年3月5日付)。

[1]小沢一郎氏が検察当局を批判して、自己の正当性を守るために戦うことは、小沢氏の当然の権利であり、当然のことである。小沢氏の支持者が、小沢氏を支持して、検察当局と戦うことも、また当然の権利である。
[2]しかし、この問題を国政の中心テーマにしてはならない。今日の日本の国政の中心テーマは、国民経済を守ることである。政府として不況対策を実行し、国民生活と国民経済を守ることである。これが、近い将来行われる衆議院議員選挙の中心テーマでなければならない。民主党は小沢代表を先頭にして検察当局の “国策捜査”との戦いを中心に据える方向に動いているが、これは慎むべきである。国政全体から見れば、主は経済である。“国策捜査”問題は重要だが、「主」とはいえないと思う。「木を見て森を見ず」の態度はとるべきではない。
[3]小沢代表ら民主党の執行部は、民主党全体を動員して、小沢事務所に対する検察当局の“国策捜査”と戦う構えだが、これによって多くの有望な民主党の若手候補者が危機に立つことは明らかである。民主党執行部が、強大な司法権力に対して民主党全体として戦いを挑んだとき大多数の国民が民主党を支持すると考えているとすれば、甘い、甘すぎる。
[4]小沢一郎氏が、検察当局の行為を理不尽と考えるとすれば、これと戦うことはよい。当然の権利だ。だが、この問題を国政のすべてに優先する中心テーマにしてはならないし、また、民主党全体を巻き込んではならない。政治指導者はつらいものである。ときには孤独に耐えて戦わなければならない。小沢氏はいま孤独に耐えなければならない。民主党全体を巻き込むのは慎むべきである。民主党は正念場である。
[5]民主党は、清潔な国民に支持されるよいイメージを持った若手政治家を代表につけて、総選挙に駒を進めるべきである。早くこの方向に転換すれば、「禍を転じて福となす」道が開かれるだろうと思う。小沢氏一人の民主党ではない。民主党は国民のものなのだ。


全国を回って、地方の惨状を目の当たりにされ、地方の保守の人たちの声に耳を傾けてきた森田氏ならではの説得力のある訴えである。このうち[5]は実現しそうにないが、[2]だけは絶対におろそかにしないでほしい。

今朝の朝日新聞の「天声人語」は書く。

 俳優出身の米大統領だったレーガンは才があったとみえ、気の利いた言葉をいくつも残している。「政治家は悪い職業ではない。成功すれば多くの報奨があるし、失敗したらいつでも本が書ける」など、なかなか機知に富んでいる▼本とは、職を退いて書く回顧録のたぐいだろう。その言に従うなら、執筆のペンを手にしかかっていたのが麻生首相だ。支持率は沈み、「麻生おろし」が吹きつのった。追い落としの急先鋒(きゅうせんぽう)が民主党の小沢代表だった▼それが一夜にして、小沢氏にもペンの用意が必要な事態になった。攻守所を変えるのかと思いきや、「奇妙な均衡」が与野党間にあるらしい。小紙政治面によれば、自民党は問題をかかえる小沢氏に代表を続けてほしいのだという▼同じように民主党も、不人気な麻生氏を相手に選挙に臨みたいそうだ。互いのマイナスイメージへの期待だろう。天王山を控えて、敵が喜ぶ大将とは情けない。野球の貧打戦を見るような、お寒い政治の光景である(以下略、『朝日新聞』 2009年3月6日付より)


野球の貧打戦といえば、開幕したWBCで日本はイチローの不振が響いて、大勝して当たり前の中国から5安打4点しか奪えず、安打数だけからいうと中国と同数で、勝つには勝ったもののすっきりしなかったが、それはさておき、こんな経済状況のときに、「奇妙な均衡」が生じて政治が停滞するというのは最悪である。

「天声人語」は、このあと「どっちもどっち。選挙で将来を託したいのに受け皿がない」などと書いていて、相変わらず自民党と民主党しか眼中にないらしく、両党を刺激するために、共産党なり社民党なり国民新党に投票する選択肢から目をつぶっており、結果的に自民党に手を貸しているように私には思えるが、そのあたりが朝日新聞の限界だ。書き出しでレーガンの言葉を引用しているも気に食わない。しかしそれでも、「奇妙な均衡」に対する批判は正しい。森田実氏の書く、「小沢代表を先頭にして検察当局の “国策捜査”との戦いを中心に据える方向に動いている」ことを後押しする「読み朝る毎」批判のブログの主張よりは、私には説得力がある。

本当に「国民の生活が第一」と考えているのなら、民主党はいつまでも「国策捜査」批判ばかり声高に叫び続けてはなるまい。


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やはりというべきか、小沢一郎も麻生太郎も、民主党も自民党も、「なんだかなあ」という動きを見せた。

「自End」ブログ界隈では、国策捜査だとして検察を批判し、小沢一郎を擁護する見方が多い。東京地検に関しては、かつて魚住昭が岩波新書の『特捜検察』(1997年)でその仕事を称賛しながら、4年後に文藝春秋から出した『特捜検察の闇』(2001年、その後文春文庫に収録)では一転して「国策捜査」を批判した。私は、後者を先に読み、前者をあとから読んだので、岩波新書の方の検察ヨイショぶりには苦笑させられた。「左」のはずの岩波で権力礼賛の本を出し、「右」のはずの文春から権力批判の本を出した魚住昭が佐藤優に接近してしまったのは、佐藤が『国家の罠』で国策捜査を批判したところが琴線に触れたのだろう。その佐藤優のでたらめぶりは、昨日hagakurekakugoさんのブログ『解決不能』が、「佐藤優をありがたがる人がわからない」という傑作なエントリを上げているので、是非ご参照いただきたい。雨宮処凛も、ましてや湯浅誠も、佐藤優ごときには接近しない方が良い。佐藤は、はったりで生きている人間である。

国策捜査云々をあげつらう主張に対しては、自民党や同党の支持者から批判が出ている。中には、「検察は以前はおかしかったが今回はまとも」などというご意見もコメント欄で目にしたが、私は基本的に権力を信用していないので、検察はいつだって国策捜査をやると考えている。だが、それが結果的に国民の多数だとか個々人が支持する側の利害と「たまたま」一致する場合もあるというだけの話だ。3年前のライブドア事件の強制捜査の際、大谷昭宏が「これは良い国策捜査だ」と言った。私は「うまいこと言うなあ」と思って、しばしばこの大谷の言葉を肯定的にブログで引用しているのだが、それに対して批判を浴びることが多い。だが、国策捜査をするのが検察の常態だと考えている私にとっては、「良い国策捜査」が検察のできる最上の仕事だとしか思えないのである。私はそこまでに検察の仕事を見くびっている。今回は、自民党や同党の支持者にとって「良い国策捜査」だったに違いない。ライブドア事件の時には、新自由主義に反対の立場をとる者にとって、「良い国策捜査」だった。それだけの話だ。

仮に国策捜査であったところで、小沢一郎は代表を辞任して菅直人を後任に据えた方が良いと私が考える最大の理由は、その方が衆院選を見据えてリスクが少ないからだ。天木直人氏がブログで主張するように、「党首を一新して自公政権の政策の行き詰まりを引き続き責めるべき」なのだ。小沢一郎をかばい続けていると、どうしても守勢に回る。これまでの勢いは完全に止まるし、捜査の進展によっては大きく後退を余儀なくされる。これまでだって、民主党が攻め込んでいたのではなくて、漢字が読めず解散もできず、ましてや雇用や景気の有効な対策など到底打てない総理大臣や、あろうことか昔で言う蔵相サミットのインターバルの昼休みに大酒かっくらって泥酔していたアル中の前財務相ら政府与党が勝手に自滅していただけだったが、そんなやつらに反転攻勢を許すようでは、民主党の存在意義など何もなくなってしまう。しばらく共産党に政権を渡して政治をやらせてみたほうがよほど良いと思えるほどだ。

なお、過去には典型的な利益誘導型の政治家だったが、現在は野党の政治家である小沢一郎について、岩手県在住のsonicさんからコメントをいただいているので、以下に紹介する。四国の民である私にはわからない、貴重な地元の声という位置づけである(但し、sonicさんは小沢一郎の岩手4区ではなく、岩手2区の地域に在住されている)。コメントは3件いただいている。まず1件目。

岩手2区です。
こちらでも話題になってます。
かなり動揺がひろがっています。
ただし、こちらの動揺の仕方はこうです。

小沢一郎は田中角栄型の利権誘導政治家だったことはみんなが知っている。
小沢一郎がゼネコンと癒着していたことなど常識だ。
それが、この時期に叩かれるのは陰謀に違いない。
これを乗り切っても大久保さんが殺されるかもしれないし、次は小沢さんが殺されるかもしれない。

ちなみに今朝話をしたのは大久保さんの親戚。(偶然でしたが、人間関係が密なので、こういうことは案外普通にあります。)

でも、これで年間3万人が自殺する政治を続けることを選ぶ方が嫌です。
岩手2区の有権者は、自民党支持者以外、共産党も含めて小沢辞任を求めないでしょう。
逆に小沢支持で固まると思います。

と言うか、東京で騒げば騒ぐほど岩手人は反対方向を目指すでしょう。
かえって「岩手県民は日本人にして日本人にあらず」という意識に火がつくような気がします。

2009.03.04 10:43 sonic


このコメントに対して、「すると岩手県民というのは、汚職、賄賂政治オーケー、朝鮮・中国による日本のっとり大歓迎と言う県民性ということになるんですか?」という、ネット右翼のコメントがついた。それを受けての2件目。

民主党の小沢一郎にはゼネコンに影響力なんて無いですね。
小沢一郎が労組側に寝返って民主党に合流したのは、高弥建設が破綻し、地元組織をほぼ完全に失ったからでした。
岩手県と言うか東北の建設業界は小沢一郎に公共工事の利権分配を期待して支援していたのですが、中央では新自由主義を標榜していた小沢一郎は建設関連予算の縮小に抵抗しませんでした。
そこで、高弥建設破綻後に岩手県建設業政治連盟の指導的対場にたった宮城建設は、建設業界の政治離れを宣言し、建設業界による小沢支援はなくなりました。
要するに、建設業界に見限られたことが小沢一郎の民主党合流の背景なわけです。
こんなことは、建設業者なら誰も知っていることなので、西松建設が小沢に献金したとして見返りを期待していとはちょっと考えられません。
予算編成に影響力を及ぼせない今の小沢は建設業界に利権をもたらすことが出来ないからです。
おそらく、小沢が政権をとると見て、先物買いで関わっておこうとしたのでしょう。しかし、今の小沢は労組政治家なので建設業界の支援を必要としません。

逆に自民党時代の新自由主義者小沢一郎ならば、典型的な田中角栄形のゼネコン支配だったので、叩けばいくらでも埃がでます。
自民党とはそう言うものです。
この場合、小沢には、それでは駄目だと思ったから党を出たと言う言い訳が成り立つでしょう。
実際、自民党を抜けたあとの小沢は利権誘導家として動かなくなり、先に述べたように公共工事は減っていき、地元建設業界は小沢を見限りました。

今、小沢の最大票田になっているのは日教組(岩教組)です。
固定的な大票田で頼りになるでしょうが、小学校の先生方では政治献金はしませんね。

2009.03.04 19:17 そにっく


ところが、マスコミは「西松建設はダムの受注を期待して小沢氏に献金した」と報じた。これを受けての3件目。

あら、西松、ダムの受注を期待していたと言っているという報道がありましたね。

これ、おかしいな。
西松建設、何考えてたんでしょうね?
高弥建設がどうなったか知らないはずないのに。

可能性
1、西松の証言は検察のでっちあげ。
2、西松は検察に協力して、口裏を合わせている。
3、西松は、建設業界における小沢の影響力低下を理解できず、本気で見返りを期待していた。
4、西松は、建設業界における小沢の影響力低下をわかった上で、それでも見返りがあるだろうと期待し、勝負をかけていた。
5、西松は、首相就任後に小沢の影響力が復活すると信じ、勝負をかけていた。

5かな?

2009.03.04 21:20 そにっく


私もおそらく、西松建設の献金は「先物買い」ではなかったかと思う。小沢一郎は過去に田中角栄直系のゴリゴリの保守本流の政治家だったから、政権交代後のことでも考えたのだろうか。だが、一昨年に屋山太郎が「小沢自治労」と呼んだ小沢一郎は、確かに労組頼りの政治家に変わっていて、民主党に合流した当初、新自由主義系の議員の期待に反して、その名も「小さな政府研究会」という彼らの勉強会には加わらず、旧社会党系の議員と親密になったといわれていたと認識している。

ただ、西松建設からの献金は、自民党議員にも多く渡っているが、小沢一郎への献金が飛び抜けて巨額だったのも確かで、「国策捜査だろうけれど、公設第一秘書の逮捕にまで至ったのだから、小沢一郎は潔く代表を辞任すべき」という私の意見は変わらない。特に衆院選で民主党が勝つことを考えた場合、ここは「辞任」の一手だと私は思うのだが、予想通りとはいえなかなか期待通りにはことは運ばない(笑)。

期待通りに行動しないのは、麻生自民党も同じだ。昨日参院本会議に欠席して党に造反したコイズミのほか、コイズミ政権当時内閣総理大臣秘書官を4年以上務めた側近の小野次郎議員が採決前に退席したが、自民党はコイズミにはオトガメなしだったのに、小野議員を戒告処分にした。これにはぶっ飛んだが、よくよく考えればいかにも自民党らしいと思った。なぜなら、自民党政権は金持ち減税や法人税減税を行う一方で、社会保障を削減し、消費税増税を虎視眈々を狙っているからだ。上に厚く下に薄いのは自民党の習い性であり、その体質を露呈しただけの話だろう。

この件で、麻生太郎はいまだにコイズミの呪縛から脱していないし、脱するつもりもないことがはっきりした。麻生太郎の「脱カイカク」はポーズに過ぎず、麻生一派もしょせんは金持ちや大企業経営者のための政治家であって、国民のために政治をしてくれるなどとは間違っても期待できない。勝手に自滅しておきながら、小沢一郎の失策によって解散のタイミングを測っているだけであって、そんな状態で間違って衆院選で自民党が勝つようなことがあったら、それは新自由主義系の議員が大量に生き延びることを意味し、日本はいよいよ破滅への道を突き進むことになるだろう。自民党が「国民政党」として復活する可能性は、やはりほとんどない。麻生太郎は最後のチャンスも逃そうとしている。

予想通りとはいえ、民主党も自民党も賢明とはいえない動きを見せた。残念だが、日本の政治が良くなるのははるか先のことになりそうだ。


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3日、準大手ゼネコンの西松建設の裏金問題に絡んで、民主党・小沢一郎代表の公設第一秘書の大久保隆規容疑者が政治資金規正法(虚偽記載)の疑いで逮捕された。

週刊誌がこの件に絡んだ小沢一郎の疑惑を書き立てていたのは知っていたが、小沢一郎をめぐる噂は今に始まったことではない。山田洋行をめぐる防衛疑獄も、最終的にはコイズミを頂点とする利権構造があると思われたが、小沢一郎も山田洋行との親密な関係を指摘されていた。結局、この件では政治家の立件には至らなかった。また、朝日新聞の社説も、

小沢氏の政治資金をめぐっては、2年前、政治団体名義で東京都内や地元岩手県にマンションなどを所有していることが「財テクではないか」と批判を浴びたことがある。

と指摘している。今回も、噂だけで立件には至らないのではないかと漠然と考えていたので、まさかこの時期に小沢氏の秘書が逮捕されるとは思わなかった。

民主党は「国策捜査」、「陰謀」などという言葉を用いて反発しているが(特に鳩山由紀夫幹事長)、民主党の応援団ともいえる朝日新聞の社説でさえ、

党首の資金団体の会計責任者である側近逮捕という深刻な事件だ。政府与党の陰謀だなどと反発するだけで済まされるはずがない。

トンネル献金の事実は本当になかったのか。小沢氏自身のかかわりはどうだったのか。小沢氏は自ら国民にきちんと説明しなければならない。

と書いているのだ。これが正論だと私は思う。このまま小沢代表のもとで解散総選挙という事態になると、この件は与党の絶好の攻撃材料となる。民主党絶対有利と言われた選挙の情勢は一変した。

国策捜査ではないか、と言われたら、その可能性はかなり高いと私は思う。2002年、コイズミの政敵だった鈴木宗男と辻元清美が相次いで逮捕されたことがあったが、これらと同様、本件は国策捜査でないと思うほうが不自然だ。鈴木宗男の件については、佐藤優の唯一評価できる著書である『国家の罠』に詳しい(私は佐藤優に対してきわめて否定的だが、この著書にだけは一定の評価を与えている)。

しかし、特に政権末期ともなると、権力側も延命のために必死なのだ。そうでなくても、典型的な旧保守の政治家である小沢一郎は、叩けばいくらでもほこりが出る人物だ。選挙は勝たなければ意味がない。これまでの功績は功績として、ここは小沢一郎氏には、潔く代表の座を辞任してほしいと思う。早期の解散総選挙が考えられる時期でもあり、代表選などは行わず、代表代行の菅直人を後任とするのが望ましい。理解不能の発言を連発する鳩山由紀夫は不適任だ。2001年の参院選で惨敗したことに見られるように、国政選挙における実績もない。菅なら、2003年の衆院選で躍進した実績がある。

小沢一郎には、2005年の郵政総選挙で惨敗し、翌年の偽メール事件で大きく信用を損ねた党勢をわずか1年あまりで立て直し、参院選での圧勝を導いた功績がある。それは認める。特に、おそらく新自由主義の没落を見越してか、それまでの「カイカクを競う」路線から「国民の生活が第一」の路線に転換したことが大きかった。この路線なくして、一昨年の参院選の勝利はあり得なかっただろう。しかし、実際には、小沢一郎自身を含めて、民主党議員の体質には、新自由主義的だったり、旧保守的だったりして、急激に変化している現代社会に十分対応できているとはいえない。ここで新自由主義的というのは、「小さな政府」志向のことで、松下政経塾出身の議員に顕著な傾向だ。また、旧保守的というのは、「小さな政府」志向ではないが、土木・建設業とのつながりの深い、自民党旧田中派の系譜に連なる政治家に顕著な傾向で、小沢一郎はまさにその典型に当たる。そうではなく、医療、教育、再生可能エネルギーなどに金を使う「サービスの大きな政府」が現在求められているのだが、政治家は全然時代の流れについて行っていない。今こそ、民主党にも新しい血が必要なのだが、とりあえずは選挙に勝たなければならず、それには菅直人が最適任だ。そして、そう遠くない将来、菅直人から次世代の若手に政権のバトンを渡せばよい。

一方、党内にコイズミ一派らによる「麻生降ろし」、党外に民主党という「内憂外患」を抱えて手詰まり気味だった麻生太郎首相にとっては、絶好の衆議院解散の好機が到来した形だ。昨夜、『kojitakenの日記』にも書いたが、ここで麻生が早期解散に踏み切らなければ男でない、そう私は思う。早期解散なら、代表の秘書逮捕で浮き足立つ民主党に攻め込めるとともに、コイズミは既に引退を表明しているので、選挙後には「ただの人」になるコイズミの影響力を無化できる。麻生にとっては一石二鳥である。このタイミング以外に解散のチャンスなどあろうはずがない。

もし麻生がコイズミカイカクの路線から決別したいと本気で考えていて、かつ民主党より優れた政策を実施できる自信があるならば、絶対に早期解散を行うべきだ。

きたる総選挙は「コイズミカイカク審判選挙」であるべきなのである。これまで、首相の漢字誤読や前財務相の「もうろう会見」などに助けられてきただけに見える民主党の政策が国民の心をとらえられるものであれば、代表の秘書逮捕があったところで民主党は十分戦えるはずだ。そして、自ら早期の解散総選挙を訴えてきたのだから、今さら民主党のほうから時間稼ぎをすることなどあってはならない。

そして、国民にとって最大の関心事は、雇用問題である。今年に入ってからの国会論戦では、なぜか自民・民主両党とも、雇用問題の議論を避けてきたように見える。選挙では、雇用問題で国民の心を捉えた方が勝つ。自民、民主の両方に満足できなければ、共産党が大きく伸びるだろうし、共産党の勢力伸張が、自民・民主両党の政治家に緊張感を与える展開は、国民にとっても望ましいことだと思う(但し、共産党の議席数は小選挙区制によって阻まれ、劇的には伸びないだろうけれど)。私は必ずしも共産党は支持しないけれども、現在の日本にとっては大いに必要な政党だと考えている。

今こそ、国民の生活を第一に考えた政治が求められる時期なのである。


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定額給付金を麻生がもらうとかもらわないとかでマスコミや与野党が騒いでいるが、どうでもよい話である。そんな無意味な議論によって時間を空費する政治の罪は重い。そんなことについては何も書きたくないので、今日は山口県の地方選挙を取り上げたい。

1日に投開票が行われた柳井市長選で、民主党の平岡秀夫衆院議員の秘書を務めていた井原健太郎氏が、前自民党県連幹事長で前県議の長谷川忠男氏を破って初当選した。また、同日に行われた山口県議補選では、民主新顔の河北洋子氏が自民新顔の松野利夫氏を破って初当選した。
http://www.asahi.com/politics/update/0301/SEB200903010007.html

柳井市は平岡秀夫議員が議席を持つ山口2区だが、昨年の衆院補選で自民党公認で立候補した、「ノーパンしゃぶしゃぶ」「耐震偽装」で悪名高い山本繁太郎の出身地で、同補選でも柳井市に限っては山本繁太郎の票が平岡秀夫を上回った。その柳井市長選で民主党系の候補が自民党系の候補を破ったことは、いよいよ自民党の退潮がここまできたかと思わせるものだ。

ところで、個人的に注目しているのは、3月15日に行われる下関市長選である。この市長選には、あの悪名高い安倍晋三直系の江島潔が出馬を断念したのである。以前にも書いたように、ブログで江島について書いたいくつかのエントリのアクセス数が急に増えたことから、江島引退の一件を知った。

市長選に出馬するのは、友田有前県議(51)と香川昌則前市議(45)、中尾友昭元県議(59)の新人三人であり、このうち安倍晋三の系列に当たるのが友田氏らしい。今回の市長選では、安倍が江島に見切りをつけて友田氏に乗り換えたもののようだ。1月に友田氏が出馬表明をした時には、江島市政の刷新を訴えて地元を驚かせたとのことだが、当初は江島潔も出馬する姿勢を見せていた。江島は安倍晋三に支持を取りつけに行ったものの、あまりの悪政のために評判がさんざんで事前の調査でも当選の見込みの低かった江島は、安倍にこっぴどく叱られ、泣く泣く5選を断念したなどといわれているが、私は地元民ではないので正確なところはわからない。対抗馬は中尾友昭氏もかなり有力だが、今のところ友田氏が最有力とされているようだ。地元で悪政を行った江島と違って、安倍はまだまだ地元下関での人気が高いらしい。一方、中尾友昭氏を自民党の林芳正参院議員の系列とする見方がある。つまり、安倍晋三と林芳正の鞘当てがあるということらしい。

毎日新聞の山口版に、3候補のマニフェストが掲載されている。地元でもなんでもない当ブログとしては、市長選についてはこれ以上書かないが、私が関心を持っているのは江島潔の動向である。

いくらなんでも、次期総選挙における山口4区からの立候補はあり得ないと思うが、元参議院議員を父に持ち、東京出身で東大の工学系大学院を修了し、38歳にして下関市長になった世襲政治家の江島潔がこのまま終わるとは考えられない。県政に進出し、ゆくゆくは国政入りを狙う可能性が高い。世襲政治家の跳梁跋扈を許さないためにも、今後も監視していく必要のある男だと思う。


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昨年秋、麻生太郎が自民党総裁及び日本国首相に就任した直後に、全国に麻生の顔写真とともに「麻生が、やりぬく。」、「まずは、景気だ。」と大書されたポスターが張られた。目ざわりかつ不愉快なポスターだったが、かけ声とは裏腹に、麻生は何ら有効な景気対策を打ってこなかった。選挙をすると政治空白が生じると言って、衆議院の解散を先送りし続けたが、麻生内閣発足以来の5か月あまりこそ、政治空白そのものだった。

しびれを切らしたのは国内ばかりではなく、英フィナンシャル・タイムズまでもが日本の衆議院の解散を要求するという未曾有(笑)の事態になった。しかし、昨日(1日)のいわゆる「政治番組」では、これを題材に政府要人に解散を迫る展開になると思いきや、ワンテンポ遅れた郵政民営化の議論で時間を潰していた。いつも余裕綽々(しゃくしゃく)の竹中平蔵に亀井静香が舌鋒鋭く切り込み、竹中が冷静さを失って声を荒らげていたのは見ものではあったが、喫緊の課題は郵政民営化の是非ではない。そう思った。

もう誰もが感じていることだろうが、諸外国の景気対策はずっと早い。台湾で給付金の案が持ち上がったのは日本より遅かったが、既に実施されて経済効果が出ている。オバマは大胆な景気対策を打ち出し、富裕層の所得税減税を廃止して、逆に富裕層に増税する方針も示した。しかし、麻生は「まずは、政権延命だ」、「麻生が、さぼりぬく」とばかりに何もやらない。読売新聞や朝日新聞は、あろうことか強烈な消費税増税・緊縮財政論者の与謝野馨を次期自民党総裁に擬するありさまで、よほど日本経済を根底からくつがえしたいものと見える。いまや日本は、無能な政府とマスコミに破壊されようとしている。

本当は、昨日の「政治番組」では麻生内閣を解散総選挙に追い込む、そんな展開が期待されたのだ。だが、そうはならなかった。

いうまでも私は、現在の自公政権に反対である。だが、昨年秋以来、何度も「解散総選挙を先送りにすればするほど、自民党の議席は減る」と主張してきた。解散を先送りすると、いつかは情勢を自民党に有利にする「神風」が吹くとは、日本が「神の国」であると言ったことのある森喜朗なら考えそうなことだが、鮫の脳みそが夢想するような事態が起きるはずもない。

私は別に自民党のために早期解散を主張して、自民党の議席減に少しでも歯止めをかけさせてやろうなどと思ったわけではなく、既に安倍晋三政権の頃から政権担当能力を失っていた自民党政権が、これ以上続くのに耐えられなかっただけの話だ。特に、首相が福田康夫から麻生太郎に代わってからはひどかった。安倍、福田、麻生の三代の中では、辛うじて見どころがあったのは福田康夫だけであり、それでも福田にも合格点はつけられないが、麻生太郎に代わった時点で、「こりゃダメだ」と思った。しかし、ここまでひどいとは想像もしなかった。自公与党の連中はもうだいぶ前から「麻生がここまでバカだとは思わなかった」などと言っていたし、2009年度予算案成立を機に、自民党内から公然と麻生下ろしの声が上がっているが、麻生は彼らが選んだ総理総裁なのである。仮にこの時期に自民党総裁選を実施するとして、その大義名分など何もないし、何より彼らが総選挙を回避する口実に用いていた「政治空白」を自ら作り出すことになる。いくら「自民党のコマーシャル」をやるマスコミだって、今度は批判するだろう。

それでは、麻生がこのまま居座り続けたらどうなるだろうか。昨日のTBSテレビ『サンデーモーニング』で、田中秀征が「このまま麻生政権が続いて3月末を迎えると、不況が麻生さんのせいにされる」と言っていた。実際、世界金融危機の発生自体は麻生のせいではないが、昨年9月末の麻生内閣発足以来の無策によって景気の足を引っ張ったのは、明らかに麻生のせいである。「まずは、景気だ。」というかけ声には、実体が何も伴っていない。それどころか、アル中の中川昭一がG7で醜態をさらして辞任に追い込まれると、後任に(読売や朝日の思惑通りに)与謝野馨を据えた。仕事のやる気は何もないのに、権力の座にだけは醜く固執する。最悪の政権である。ようやく、さしもの自民党議員からも早期の解散総選挙を求める声が出てきた。

こんなていたらくでも、コイズミら新自由主義者よりましという観点からか、「麻生内閣を応援しよう」という声も出ているようだが、冗談ではない。コイズミは次期総選挙には立候補せず引退する。コイズミチルドレンは大部分が落選するし、彼らを束ねている武部勤も落選する可能性が高い。コイズミ一派を恐れて無策の麻生を応援するなどというのは、「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」の類の愚挙だ。「かんぽの宿」問題で目立っている鳩山総務相を応援する、などと言っている人もいるが、亀井静香の言うように、郵政民営化の見直しは次期政権に任せておけばよい。

とにかく、有効な景気対策を打てない麻生内閣は、日本の社会と経済にとって百害あって一利なしなのである。可能な限り早期の解散総選挙を求めたい。


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