この政党からは、一応希望の党創立時の議員(小池百合子の用語法では「チャーターメンバー」)の多くは排除された。だから細野豪志、長島昭久、松原仁、笠浩史らは入っていない。ただ後藤祐一だけは国民民主党(国民党)に入った。まら、創立時の議員ではないが実質的には限りなくそれに近い前原誠司が加わっている。これは、国民党成立に関与した神津里季生自身が前原・小池(・小沢)らとつるんでいた経緯からそうなったものだろうが、前原の厚顔無恥さには開いた口がふさがらない。
一方、民主党・民進党時代からの大物議員の多くは国民党に参加せず、国民党の成立前に民進党を離党した。岡田克也、野田佳彦、玄葉光一郎らだ。
特に、岡田克也が不参加を早々に表明したことが大きかった。このことが、希望の中では比較的中道寄りの言動をしていながらどっちつかずだった議員(たとえば香川の小川淳也ら)を不参加へと踏み切らせた。岡田は、一昨年の参院選で「野党共闘」に腐心したものの、敗戦を細野豪志ら当時の民進党右派議員に追及された上、東京都知事選で鳥越俊太郎が小池百合子に歯が立たない情勢が明らかになっていたことから民進党代表を投げ出した経緯があった。その岡田が不参加とあっては、同じ参院選で香川選挙区を共産党に譲るのに骨を折った小川が国民党に加わる気がしなくなったのも当然だ。もちろん、従来から希望の党内で反旗を翻していた大串博志一派も加わらなかった。
ただ、注記しておきたいのは、岡田克也が貯め込んだ政治資金はそのまま国民党に引き継がれたことだ。想像だが、これで玉木雄一郎が小池百合子によって押しつけられていたとの噂の借金が返済されるのではないか。要するに、昨年の希望の党設立とかいうとんでもない茶番劇において、小池百合子は民進党の金庫から金を盗んだも同然だったと思う。私は昨年8月2日の時点で、極右の小池がリベラル派候補の「排除」をやらかすだろうと予想したことを誇りにしているが、それだけに希望の党設立劇に踊った国会議員やマスコミ人や市井の人々(たとえば小池と民進党との連携にワクワクしたブロガー氏ら)を今も許せない思いだ。
案の定、国民党の結成は安倍政権に大いなる「追い風」となった。たとえば、憎たらしい記事を多く書くことから私が目の敵にしている右派のフリーランスのジャーナリスト・安積明子が書いた「『安倍3選』に向け吹き始めた"追い風"の正体 - 永田町の風向きは急速に変わりつつある」(下記URL)を参照されたい。
https://toyokeizai.net/articles/-/220549
以下、安積の記事をかいつまんで紹介する。国民民主党の成立により、参議院においては最大会派の「自由民主党・こころ」が125議席、次いで「公明党」25議席、「国民民主党・新緑風会」(以下民主)24議席、「立憲民主党・民友会」(以下立憲)23議席となった。以下、安積の記事から引用する。
これによって参議院内では激震が起きている。民進党は4つの常任委員会委員長のポストを保有していたが、これをどのように分けるかについて5月9日の議院運営委員会で争いがあったのだ。この日の参議院本会議の開始が遅れたのは、それが原因でもある。
何が問題になったのか。
立憲は内閣委員長を含む4委員長のポストを民主と分け合うつもりでいた。会期が変わると委員長ポストも変更になるが、今回は会期の最中の変更であり、最小限にすませるべきだと考えていた。
内閣委員会はIR実施法案や国家戦略特区制度など、安倍政権が推し進める成長戦略の重要案件を管轄する。委員長には決裁権があり、ここを野党側が押さえておこうともくろんでいた。
ところが自民党は“原則”に従って「大会派順の選択」を主張。これが与野党の筆頭間(すなわち自民党・こころと民主)ですんなり合意されたため、立憲が議院運営委員会に参加しようとした時は、もはや決定事項になっていたという。
内閣委員会の理事の構成も、自民党から2名、公明党から1名、そして民主から1名という構成だ。「これでは法案を止めようがない」と、立憲関係者は嘆く。「参議院は衆議院から送られてきた法案をより客観的に冷静に審議すべきところだが、このような状態では会期末までに法案をただ採決するだけの場所になりかねない。民主(国民民主党・新緑風会)は自民党になびいているようにみえる」(立憲関係者)。
(安積明子「『安倍3選』に向け吹き始めた"追い風"の正体 - 永田町の風向きは急速に変わりつつある」(東洋経済オンライン 2018年5月13日)より)
そして、何よりも許しがたいと思えるのは下記の指摘だ。
さらに安倍政権が「70年ぶりの大改革」と位置付ける「働き方改革関連法案」も、5月下旬に衆議院から参議院に送られるが、厚生労働委員会の委員長ポストは自民党。理事ポストに至っては、公明党と民主が1つずつ保持するほか、自民党は4つも持っている。
このまま6月20日の会期末まで、とんでもないスピードで法案がどんどん可決されていく可能性があるのだ。
(同前)
いうまでもなく、安倍政権が今国会の目玉としている「働かせ改革」法案は財界の意にそのまま沿ったもので、悪名高い「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)法案が含まれる。経産省のデータ偽造から政府が提出断念に追い込まれた「裁量労働制」法案よりさらに悪質とされる法案だ。
それが、こともあろうに労組の親玉が肝煎りで成立させた国民党が安倍政権に積極的に協力することもあっていとも簡単に成立する恐れがあるという。これを成立させれば、昨年同様国会は早々と閉会されて議員たちは長い夏休みに入り、7月、8月には何も起きないから安倍晋三の総裁選3選は早々と動かない情勢になり、対抗馬は惨敗するとその後の影響力にかかわるから出馬すらできず、「安倍一強」はびくともしない。そんなうんざりするような事態を安倍政権は狙っているし、それに積極的に協力しているのが大塚耕平と玉木雄一郎が共同代表を務める国民民主党だといえる。
とんでもない話だ。
もちろん、既に官僚の多くを敵に回してしまった安倍政権のことだから、今後どんな事実が明るみに出てピンチに陥らないとは限らない。年度替わりの4月や連休明けの5月は、2007年の第1次安倍内閣の時でさえ内閣支持率が一時持ち直した時期だったが、11年前には安倍はそのあと奈落の底へと落ちていった。その再現がないとも限らない。どちらに転ぶか、これから1か月半ほどが正念場と思われる。
ただ、言いたいのは、連休前後の政局において安倍政権をアシストしまくった国民党の成立にかかわった政治家や労組の人間らの罪は万死に値するということだ。ことに、労組の親玉が仲介した政党が財界首脳の思いのままの労働者酷使に加担している現状に対し、抑えがたい激しい怒りを覚える。
当然ながら、国民党は早くも厳しい民意の審判を受けつつある。
連休後最初に発表された共同通信の世論調査で、国民党の政党支持率は1.1%だったのだ。
https://twitter.com/miraisyakai/status/995650686099505152
https://note.mu/sgn_onlaine/n/n10e00d86398a
自民党の政党支持率は37.1%、立憲民主党は13.3%だった。共産党4.5%、公明党3.7%と続き、維新(1.5%)、国民(1.1%)、社民(0.8%)、自由(0.7%)、希望(0.7%)の5党が、まるでプロ野球のセントラル・リーグみたいな「5弱」を形成している。さしずめ、図体ばかりがでかい国民党は読売ジャイアンツといったところか。
私は、日本プロ野球において読売ほど有害な球団はないと信じるが、それと同様、日本の政界において、論外の自民党を別にすれば、国民党ほど有害な政党はないといえるかもしれない。昨年の衆院選でも、旧希望の党は安倍政権と自民党の救世主になった。今後もこのトンデモ政党の妄動に目を光らせて批判することを怠ってはならないと思う今日この頃だ。