ダムとは? わかりやすく解説

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dum

別表記:ダム

「dum」の意味・「dum」とは

「dum」はラテン語接続詞で、「〜する間に」や「〜している間に」という意味を持つ。古代ローマの詩や散文頻出し、その文脈により微妙なニュアンス伝える。例えば、「dum loquor, fugerit invida aetas」は「私が話している間に、妬み深い時間逃げていく」という意味になる。

「dum」の発音・読み方

「dum」の発音は、国際音声記号IPA)では/dʌm/と表記される。これをカタカナ表記にすると「ダム」となる。しかし、日本人発音する際は「ドゥム」となることが多い。発音によって意味や品詞が変わる単語はないため、特に注意する要はない。

「dum」の定義を英語で解説

「dum」は、Latin conjunctive adverb that means "while" or "as long as". It is frequently used in ancient Roman poetry and prose, conveying subtle nuances depending on the context. For example, "dum loquor, fugerit invida aetas" translates to "While I speak, envious time will have fled".

「dum」の類語

「dum」の類語としては、「donec」や「quoad」がある。これらもラテン語接続詞で、「〜するまで」や「〜する限り」といった意味を持つ。しかし、「dum」が「〜している間に」の意味強調するのに対し、「donec」や「quoad」は終了時点強調する

「dum」に関連する用語・表現

「dum」は、特に古代ローマの詩や散文において、時間の経過や一連の行動を表すために使われる。そのため、「dum」に関連する表現としては、「interim」(その間に)や「mox」(すぐに)など、時間を示すラテン語接続詞挙げられる

「dum」の例文

以下に「dum」を用いた例文10例示す。 1. Dum spiro, spero.(息をしている限り希望がある)
2. Dum loquor, hora fugit.(話している間に、時間過ぎていく)
3. Dum vivimus, vivamus.(生きている間は、生きよう
4. Dum inter homines sumus, colamus humanitatem.(人間社会にいる間は、人間らしさ保とう
5. Dum fata sinunt, vivite laeti.(運命が許す限り楽しく生きよう
6. Dum lego, cresco.(読んでいる間に、成長する
7. Dum nocte dormimus, corpus requiescit.(夜に眠っている間に、体は休息を得る)
8. Dum in foro ambulamus, multos homines videmus.(市場歩いている間に、多く人々を見る)
9. Dum in horto laboramus, sudamus.(庭で働いている間に、汗をかく
10. Dum in schola discimus, amicitias facimus.(学校学んでいる間に、友情を築く)

dame

別表記:ダム

「dame」の意味・「dame」とは

「dame」は、日本語で「だめ」や「不可」を意味する言葉である。英語ではその意味は「no good」や「unacceptable」などとなる。また、スペイン語では「lady」を意味しフランス語では「checkers」を意味するこのように言語によって意味が大きく異なるため、文脈による理解が重要である。

「dame」の発音・読み方

英語の「dame」の発音は、IPA表記では/dæm/となり、カタカナ表記では「ダム」に近い。一方スペイン語フランス語の「dame」の発音は、IPA表記では/da'me/となり、カタカナ表記では「ダメ」に近い。このように言語によって発音異なるため、注意が必要である。

「dame」の定義を英語で解説

英語の「dame」は、主にイギリス英語使われ女性対す敬称や、特に舞台映画などエンターテイメント業界で使われる女性役職を指す。例えば、「Dame Judi Dench」は、女優ジュディ・デンチ対す敬称である。

「dame」の類語

英語の「dame」の類語としては、「lady」や「madam」、「miss」などがある。これらはすべて女性を指す言葉で、敬意を表す際に使われる一方スペイン語の「dame」の類語としては、「señora」や「mujer」などがある。

「dame」に関連する用語・表現

「dame」に関連する用語としては、「damsel」や「mademoiselle」、「missus」などがある。これらも女性を指す言葉で、特定の文脈地域使われることが多い。例えば、「damsel」は、古英語未婚女性指し、「mademoiselle」はフランス語未婚女性を指す。

「dame」の例文

以下に、「dame」を用いた例文10例示す。 1. Dame Judi Dench is a renowned actress.(ジュディ・デンチ女史著名な女優である。)
2. She was made a dame for her services to drama.(彼女は演劇への貢献女性騎士叙された。)
3. The dame of the play was a talented actress.(その劇の女主人公才能あふれる女優だった。)
4. The old dame lived alone in the countryside.(その老婦人田舎一人生活していた。)
5. She is a dame to be reckoned with.(彼女は無視できない女性である。)
6. The dame stood up and left the room.(その女性は立ち上がって部屋出た。)
7. Dame una manzana, por favor.(リンゴ一つください。)
8. La dame en noir est ma tante.(黒い服の女性は私のおばである。)
9. Dame tu mano.(手を差し出して。)
10. La dame de pique est une carte de jeu.(ピケ女王トランプ一枚である。)

dam

別表記:ダム

「dam」とは・「dam」の意味

「dam」は英語の単語で、日本語では「ダム」または「堰」を意味する。主に水流制御するために建設される構造物を指す。ダムは、水源地確保洪水防止発電など、多様な目的使用される例えば、日本の「黒部ダム」は、その巨大な規模美し湖面知られ観光地として利用されている。

「dam」の発音・読み方

「dam」の発音は、IPA表記では/dæm/となる。IPAカタカナ読みでは「ダム」、日本人発音するカタカナ英語では「ダム」と読む。この単語発音によって意味や品詞が変わる単語ではない。

「dam」の定義を英語で解説

A "dam" is a barrier that stops or restricts the flow of water or underground streams. Dams are often used to prevent floods, provide drinking water, generate electricity, and create recreational areas. For instance, the Hoover Dam in the United States is a famous example of a dam used for both electricity generation and recreation.

「dam」の類語

「dam」の類語としては、「barrier」、「dike」、「weir」などがある。「barrier」は一般的な障壁を指す言葉で、「dike」は特に海や川から陸地を守るための堤防を指す。「weir」は水位調節するための小さなダムを指す。

「dam」に関連する用語・表現

「dam」に関連する用語としては、「reservoir」、「hydroelectric power」、「flood control」などがある。「reservoir」はダムによって作られ貯水池指し、「hydroelectric power」はダムを利用した水力発電を指す。「flood control」はダムが果たす洪水防止役割を指す。

「dam」の例文

1. The dam was built to prevent flooding.(ダムは洪水を防ぐために建設された。)
2. The dam provides a reliable source of water for the city.(ダムは都市信頼できる水源提供する。)
3. The Hoover Dam is a marvel of modern engineering.(フーバーダム現代工学驚異である。)
4. The dam creates a large reservoir.(ダムは大きな貯水池作り出す。)
5. The dam generates hydroelectric power.(ダムは水力発電を行う。)
6. The dam's construction had a significant impact on the local ecosystem.(ダムの建設地元生態系大きな影響与えた。)
7. The dam is a popular tourist attraction.(ダムは人気観光地である。)
8. The dam's failure could have catastrophic consequences.(ダムの決壊壊滅的な結果もたらす可能性がある。)
9. The dam helps with flood control.(ダムは洪水防止に役立つ。)
10. The dam is a crucial part of the city's infrastructure.(ダムは都市インフラ重要な部分である。)

dumb

別表記:ダム

「dumb」とは、物の言えない言葉の不自由な言葉伴わない言葉では伝えられない驚きなどでものも言えない音の出ないといったことを意味する英語表現である。

「dumb」とは・「dumb」の意味

「dumb」は、形容詞として用いられ、「口のきけない」「言葉の不自由な」「言葉伴わない」「言葉では伝えられない」「驚きなどでものも言えない」「音の出ない」といった意味をもつ。「口のきけない」という意味で用いられるときは、やや軽蔑的なニュアンスを含むことがある

また、口語的に「dumb」が用いられるとき、「のろまな」「ばかな」「頭の回転が遅い」といった意味をもつことがある侮蔑的な意味をもつこともあれば、冗談めかして会話中に用いられる場合もある。スラングとして「dum-dum」という形で用いられることもある。

比較級は「dumber」、最上級は「dumbest」である。ただし、比較級最上級の形で使われることは少ない。

「dumb」の発音・読み方

「dumb」の発音記号は、「dˈʌm」である。実際に発音する際は、「ダァム」のようになる。「d」は、舌先前歯の裏歯茎につけて息を止めた状態を作った後、勢いよく息でを破裂させるように「ドゥ」と発音する。「ʌ」は、日本語の「ア」とほぼ同じ発音である。「m」は、唇を閉じて一旦口から息が出るの止め、鼻に抜けるように「ム」という声を出す。

「dumb」の語源・由来

原義は、「言葉の不自由な」「物の言えない」「口のきけない」である。印欧語系で「暗くする」という意味をもつ「dhewbh-」がゲルマン祖語で「言葉の不自由な」 「口のきけない」といった意味をもつ「dumbaz」となり、最終的に英語の「dumb」へと変化した

「dumb」の覚え方

「dumb」と同じ語源をもち、「不自由」という共通したニュアンスの意味をもつ単語に、「deaf(耳の不自由な)」がある。「dumb」と「deaf」をまとめて覚えるとよい。「dumb」と同じく「ものの言えない」という意味をもつ「speachless」と関連させて覚えることも有効である。

「dumb」を含む英熟語・英語表現

「dumb ways to die」とは


Dumb Ways to Die』は、オーストラリアの鉄道会社メトロ・トレインズ・メルボルン(Metro Trains Melbourne)」が制作しYoutube上で公開したインターネット広告、および広告中に使用された歌の題名である。日本語では、「おバカ死に方」と訳されるキャラクターたちが様々な危険行為によって致命傷を負うアニメーション用いて鉄道事故防止訴え内容となっている。

2014年8月には、iOS及びAndroidゲーム版として『Dumb ways to die game』の提供が開始された。同年11月12月には、iOSAndroidそれぞれ第2弾として『Dumb ways to die 2 the game』がリリースされた。

「dumb down」とは


「dumb down」は、「レベル下げて易しくする」「誰でも分かるように易しく説明する」 といった意味で用いられる英語表現である。用例には、「Please dumb it down a little for me(もう少し簡単に説明してください)」「The teacher had to dumb down the materials(教師教材レベル下げなければならなかった)」などがある。

「dumb」を含む用語の解説

「DUMB DUMB(Joen Somiの曲)」とは


『DUMB DUMB』は、2021年8月2日チョン・ソミのスタジオデビューアルバム『XOXO』からの先行シングルとしてリリースされ楽曲である。レーベルは、The Black LabelInterscope Recordsである。Gaon Digital Chartで8位、K-pop Hot 100で9位を記録した動画共有SNSTikTok」にて、『DUMB DUMB』の音源利用した動画多数公開されている。また、チョン・ソミ本人も、TikTokにて「DUMB DUMB」に合わせてダンスをする映像公開している。

「dumb」の使い方・例文

「dumb」を用いた例文には、「This piano has some dumb notes.(このピアノには音の出ないキーがある)」「I was struck dumb by the news.(私はその知らせに驚くあまり口もきけなかった)」「He is the dumbest kid in this class.(彼はクラスで一番のまぬけだ)」「He remained dumb during this discussion.(この議論の間、彼は何も言わずに黙っていた)」「She was born dumb.(彼女は生まれつき言葉が不自由だ)」「Education of the blind and dumb is important.(盲唖教育重要だ)」などがある。

damn

別表記:ダァム、ダム

「damn」とは、畜生という意味がある表現である。

「damn」とは・「damn」の意味

「damn」とは、「畜生」「しまった!」などの意味があるスラングだ。苛立ち怒り嫌悪、不満、非難などのネガティブ感情表現する際に用いられるまた、「damn」はいい意味のニュアンス用いられる表現でもある。例えば、驚いた感動したりした時にすごいね」「カッコいいね」という意味で使われるのが特徴だ。ただ「damn」は上品な言葉ではないので、いい意味でも悪い意味でもビジネスフォーマルな場所では使うのを控えた方がいい。

「damn」の発音・読み方

「damn」の読み方は「ダァム」である。最後のnは読まない

「damn」の語源・由来

「damn」の語源は、damnare(非難する)である。

「damn」を含む英熟語・英語表現

「God damn」とは


God damn」とは、「畜生」「くそっ」などの意味がある表現である。人物物事状況に対して怒り悔しさ感じた時に用いられる。 「damn」と同じ意味だが、前にGod」を置くことでより強調され意味合いになるのが特徴だ。 使い方の例を挙げると、「Got damn! Who broke my cup?」(畜生、私のコップ壊したのは誰だ)となる。

「Oh damn」とは


Oh damn」とは、「何てこった」「畜生」という意味の表現だ。怒り嫌悪不満などを直接的に表現する際に用いられる

「Give a damn」とは


Give a damn」とは、「気にする」「関心を持つ」などの意味がある言い回しだ。通例否定文用いられる例えば、「Nobody gives a damn about us.」(私たちのことを気にかけてくれる人は誰もいない)というように使われる

「don't give a damn」とは


don't give a damn」とは、「気にしない」「どうでもいい」「余計なお世話」という意味合い用いられる表現だ。例えば、「I don’t give a damn about what you think.」(君がどう思っているかなんで、どうでもいい)、「She doesn’t give a damn about the environment.」(彼女は環境問題関心がない)というように使われる

「Damn good」とは


「Damn good」とは、「ものすごくいい」という意味の表現だ。この場合、「damn」は副詞として使われていて、口語で「すごく」「とても」という意味である。「damn」の後に続く形容詞によって、ポジティブな意味にもネガティブな意味にもなるのが特徴だ。使い方の例を挙げると、「Her performance is damn good.」(彼女の演奏はすごくいい)となる。

「damn」に関連する用語の解説

「damned」とは


忌々しい」「バカバカしい」という意味の形容詞である。一般的に名詞前に付けて用いられる使い方の例を挙げると、「I'm not going to a damned school.」(忌々しい学校になんか行くつもりはない)となる。

「damn」の使い方・例文

「damn」という言葉上品な言い回しではないので、ビジネスシーンフォーマルなシーンで使うことは厳禁である。若者の間でよく使われるスラングなので、仲の良い友人同士で使うのが賢明だ

God damn, I locked my keys in the car.
畜生カギ自動車置いたままロックしてしまった)
・Damn! I’ve misplaced my phone again, what a clumsy I am.
畜生、また電話置き忘れた、なんて私はドジなんだろう
・You spilled coffee on my white shirt. Damn!
あなたは私が着ている白いシャツコーヒーこぼしたな、畜生
・I don’t give a damn about what you say to me, and I just follow the path I believe in.
(あなたが何を言っても私は全く気にしない、ただ自分信じる道を進むだけだ)
Oh damn, we just missed the bus, so we are confirmed to be late.
最悪だバスに乗り遅れてしまったので私たち遅刻確定だ)
God damn! how can I be able to master French?
畜生どうしたフランス語習得できるだろうか?)
・Damn! her piano playing moves everyone's hearts.
すごいね、彼女のピアノ演奏みんなの心を揺さぶる)
・Damn! there is a beautiful woman at the corner of that road.
(すごいよ、あの道の角に美しい女性がいるよ)
・Damn! I’ve got more tasks to do, so I have to work overtime today.
(やばい、まだやらなければいけない仕事がある、だから今日残業覚悟して働かなければいけない)
God damn, train service is still stopped, so what should I do?
(くそっ、電車の運行がまだ止まっている、どうすれば良いんだろう?)

ダム【Carl Peter Henrik Dam】

読み方:だむ

[1895〜1976]デンマーク生化学者ビタミンK発見し、その性質生理作用研究解明1943年ノーベル生理学医学賞受賞


ダム【dam】

読み方:だむ

発電利水治水砂防などの目的で、河川せき止め上流部蓄え構造物アーチダム重力ダム・バットレスダム・ロックフィルダム・アースダムなどがある。堰堤(えんてい)。


ダム【Damme】

読み方:だむ

ベルギー北西部の町ダンメフランス語名


だ・む【彩む】

読み方:だむ

[動マ四]《「たむ」とも》

彩色するいろどる

赤木の柄(つか)の刀に—・みたる扇差し添へ」〈義経記・七〉

金箔銀箔をはる。

一つを五匁づつにして上を金銀に—・みて」〈浮・一代男・八〉


だ・む【×訛む】

読み方:だむ

[動マ五(四)古くは「たむ」とも》言葉がなまる。声がにごる。

「聞馴れぬ—・みたる声が聞えた」〈魯庵社会百面相

言葉—・みて」〈源・橋姫

[補説] 「た(回)む」からの派生で、文や言葉折れまがるの意とし、活用も上二段とする説がある。


ダム (だむ)

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【「ダム」という言葉

 ダムとは、河川など堰き止めてを貯めたり、水位上げたりするために建設される構造物のことです。例えば、広辞苑は、ダムとは「発電利水治水保全などの目的河海をためるために河川渓谷などを横切って築いた工作物とその付帯構造物総称」としています。なお、古くは「堰堤」と呼ばれていたようで、広辞苑にも堰堤はダムである旨の記述あります
 一方類似の施設として堰があります。ダムは高さが高く、堰はダムほどの高さはなく、横に長いといった感じがしますが、大規模な堰を想定する両者区別は必ずしも明確ではないよう思われます。
 なお、日本語の「ダム」は、英語の Dam を、その発音カタカナ日本語表記したものですが、英語のDamという言葉は、必ずしも高さの高いものだけを指すのではなく、高さの低い、日本では通常堰と呼ばれているようなものも含んでいるようです
 また、国際的には、「大ダム」(large dam)という言葉使われることがあるようで、例えば、国際大ダム会議International Commission on Large Dams1928年創立世界85カ国参加)という国際的な組織があり、そこでは世界のダムをダム台帳登録していますが、登録対象ダムは高さが15m以上と、高さが5m上で貯水容量300m3以上のものになってます。

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河川法などにおけるダムの取り扱い

 河川法は、ダム、堰、水門堤防などを「河川管理施設」とし、河川管理施設については、安全な構造のものでなければならないなどの規定置いてます。さらに、ダムのうち堤高が15m以上のものについては、これを「ダム」と定義して水位・流量観測操作規定定めることを義務付けるなど、特別の規定置いてます。また、河川管理施設等のうち主要なものの技術基準定めている河川管理施設等構造令では、砂防ダム以外の堤高15m以上のダムについて、「第2章 ダム」で詳細な技術基準定めてます。
 このように河川法体系では、堤高15m以上のダムについて主要な構造物として特別な扱いがされています。このため、「ダム」を堰とは区別して明確に定義する必要がある場合などに、堤高15m以上のものをダムと呼ぶことがあります例えば、(財)日本ダム協会発行の「ダム年鑑」では、「原則として堤高15m以上のもの」をダムとしています。
 なお、堤高15m以上のダムをハイダムと呼びそれ未満のものをローダムと呼ぶことがあるようですまた、国際的にも、高さ15m以上のものを「大ダム」(large dam)と呼んで区別することがあるようです

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ダムの語源

 日本語の「ダム」は、英語の Dam を、その発音カタカナ日本語表記したものです。
 中世ヨーロッパでは、ゲルマンアングロサクソン地方各地で、Dam という言葉の起源とも思われるさまざまな言葉用いられいましたが、英語の Dam の直接起源は、14世紀オランダ語だといわれますオランダは、国土の約四分の一海面下の土地で、延々と続く堤防によって海水堰き止めてます。首都であるアムステルダムや第2の都市ロッテルダムの名前は、「アムステル川堤防」、「ロッテ川の堤防」という意味です。これらの都市は、13世紀建設されたものですが、当時オランダで、堤防という意味でダムという言葉使われていて、やがてそれが英語になったもののようです。
 なお、英語のDamという言葉は、必ずしも高さの高いものだけを指すのではなく、高さの低い、日本では通常堰と呼ばれているようなものも含んでいるようです

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ダムの歴史

世界のダム)
 古代都市社会発展するためには、安定的な食料生産前提であり、灌漑用水源としてダム建設必要でした世界四大文明発祥の地では、強力な権力者存在し大規模に労働力動員することができたため、ダムの建設可能でした
 歴史上文献現れる世界最古のダムは、ヘロドトス著「歴史」に登場します紀元前2900年初期第一エジプト王朝の創始メネス王が首都建設するために、堤高15mのダムを築造してナイル流れ変えたとされています。しかしこれはダムではなく堤防ではなかったのかといわれています。ダムと呼べるものとしては、カイロ南方で、エジプト・クフ王朝時代紀元前2750年頃と推定されるサド・エル・カファラダムの遺跡あります。これを最古のダムとするのが現在の定説だといわています。このダムは、ピラミッド建設用石切場労働者飲料水確保するために造られ堤高11m、堤頂長106m、底幅84mと大規模なものであったようです
 古代アラビアでは、シーバ女王有名なサバ王国で、紀元前750年頃、首都マリブの町の給水のためマリブダムが建設されました。このダムは、世界で初め洪水吐備えたダムで、ダム技術史画期的なものでした。マリブダムは2度嵩上げが行われたようですが、その際洪水吐石積み構造嵩上げされています。
 中国では、紀元前240年頃、山西省のグコー川に堤高20mの当時としては世界最高のダムが建設されました。このダムは、14世紀末にスペインのアルマンサダムが完成するまで、1600年余りに渡って世界一高いダムであり続けました
 ローマ人古代の最も偉大な技術者と言われています。ローマ人が、紀元前193年スペイントレド征服したとき、この町の給水のため、堤高20mのアルカンタリアダムを建設しましたローマ帝国遺跡知られるメリダ近くでは、130年頃に堤高19mのプロセピナダムが、またその後堤高28mのコルナルボダムが建設され、これらは現在もなお使用されています。ローマ人また、北アフリカチュニス南西で、2世紀頃カセリンダムを建設しました。このダムは土砂と粗石でできたコア持ち表面水硬性モルタル漆喰継ぎ目固めた切石はめ込み積みでした。
 現存最古のアーチダムは、テヘラン南西1300年頃に建設され堤高26mのケパールダムだと言われます。下流面が半径38mの円筒形をしているアーチダムで、蒙古人によって造られようです。その100年ほど後に、スペイン人建設したアルマンサダムは、下流曲率半径25mのアーチダムでした。スペイン人また、1594年堤高が41mに及ぶ、世界一堤高のチリダムを完成させました。この堤高300年渡り破られませんでした。これもまた上流面曲率半径107mのアーチ状のダムでした。その後、エルシュダム(堤高23m、1632年着手)、レルダム(堤高28m)がスペイン人によって建設されましたが、これらはより薄肉断面のアーチダムでした。
 1747年に北スペイン建設されたアルブエラ・デ・フェリアダム(堤高23m)は、製粉用水車を回すための設備備えており、世界初動力用貯水ダムです。また、近代的バットレス技術採用され最初の大ダムでもありました
 1824年イギリスポルトランドセメント発明され、ダムにもセメント使用されるようになりました。これにより、重力式コンクリートダムやアーチダムが可能となり、イギリスフランス中心にダム技術大きな変革もたらされました。19世紀後半イギリスでは都市化進展し需要まかなうために各地にダムが建設されました。
 アメリカでは1933年より始められニューディール政策一環として各地でダムが建設されました。東部では、TVAテネシー渓谷開発公社)が設立されテネシー川総合開発実施されました。多数のダムを建設し発電かんがい洪水調節により、地域経済の発展図ろうとするもので、大きな成果得られました。西部では、コロラド川大規模なフーバーダム建設されましたが、このダムはダム技術集大成ともいうべきダムで、以降世界ダムモデルとして大きな影響があったといわれています。
 [世界ダムの歴史については、主として竹林征三著「ダムの話」によっています。

日本のダム
 日本では古くから稲作が行われ、そのために洪水の危険の多い低湿地移り住みました洪水を防ぐとともに稲作必要な確保するために、溜池などの貯める工夫をしてきました
 日本で最も古い溜池がどこかは厳密にわからないようですが、大阪府史跡・名勝指定されている狭山池は、我が国最古潅漑用ため池と言われることがあります。「古事記」や「日本書紀」にも記述がみられ、古く行基重源ちょうげん、1120〜1206)により改修が行われ、江戸時代初期には豊臣秀頼(1593〜1616) の命を受けた片桐且元(かたぎりかつもと、1556〜1615 )が大規模な改修工事を行うなど、多く改修記録残されています。狭山池では、ダム化への改修工事が行われました。この工事先立ち大阪狭山市在住考古学者末永雅雄博士の提唱により、大阪府土木部の協力のもとに、狭山池調査事務所設立して文化財調査進められました。この調査により発掘された東(ひがしひ)の木製樋管コウヤマキ)について、年輪年代測定法により伐採年代測定したところ、616年との結果得られました。これによって、狭山池築造7世紀前半とする説が、現在有力であるようです。(→日本のダム:狭山池(再)
 満濃池香川県)も古い溜池として有名です。満濃池は、大宝年間701703)に讃岐の国道守朝臣金倉川沿いの谷地湧き水せき止め造ったといわれており、地元満濃町ホームページなど各種資料にこの趣旨記述見られます。満濃町では、2001年満濃池築堤から数えて1300年となるとして、2001年4月からほぼ3年わたって満濃池築堤1300年祭」が開催されました。
 以降日本各地多数溜池作られましたが、近代技術使った本格的なダムと呼べるものは、明治になってからのことで、まず水道用のダムが建設され次いで発電用のダムが建設されるようになりました
 日本初水道用のダムは、長崎市本河内高部ダムです。明治24年完成した堤高18.6mのゾーン型アースダムでした。水道計画・設計には、当時イギリス水道計画・ダム貯水池計画技術導入されており、その後多くの年の水道計画の礎となりました。このダムは現在再開発進められていますが、今後引き続き水道用として使われる計画です。(→日本のダム:本河内高部(再)
 日本最初コンクリートダム水道用のダムで、神戸市布引五本松ダムです。布引五本松ダム水道用の重力式コンクリートダムで、明治33年完成しました英国人ウィリアム・バルトンの指導設計大阪市から招へいされた技師佐野藤次郎です。阪神・淡路大震災にも耐え、改修経て現在でも神戸市水源として使用されています。(→日本のダム:布引五本松(元)
 日本最初発電用コンクリートダムは、栃木県黒部ダムと言われています。大正元年竣工石張りコンクリートダムで、その後改修されていますが、現在も発電使われています。(→日本のダム:布引五本松(元)
 大野ダム山梨県)は、台帳整地形成する発電用アースダムで、大正3年竣工堤高37.3mは当時日本一高いアースダムでした。(→日本のダム:大野
 大正後期には、長距離送電ができるようになり、中部山岳地帯大規模に水力開発行って、それを大都市地域送電することが可能となりましたこのため大正末期から大容量水力発電が活発となりました。代表は、大井ダム有した大井発電所でした。大井ダム木曽川本川締め切る堤高53.4mの重力式コンクリートダムで、「日本初の高さ50mを超えるダム」ともいわれる。(→日本のダム:大井
 昭和5年完成した小牧ダム富山県)は、当時東洋一のダムと言われ堤高79mの重力式コンクリートダムで、今日のような機械化施工技術建設され最初の重力式コンクリートダムとも言われます。(→日本のダム:黒部
 このようにコンクリートダムとしては、まず重力式コンクリートダムが造られましたが、次いでアーチ構造利用して堤体積を大幅に少なくすることができるアーチダムが建設されるようになりました
 日本初めてのアーチダムは、三成ダム島根県)です。三成ダムは、昭和29年3月竣工発電用ダムです。堤高が36m、堤頂長109.7mと小規模ですが、アーチダムの先駆けとなりました。(→日本のダム:三成
 本格的なアーチダムとしては、上椎葉ダム宮崎県)があげられます。難工事克服して昭和31年竣工した堤高110mの大規模ダムです。(→日本のダム:上椎葉
 その後日本経済高度成長によって、労働賃金上昇したため、経済性観点から、投入労働力少なく機械化度合いの高い施工方法求められるようになり、ロックフィルダムが建設されるようになりました初期の頃代表的なロックフィルダムとしては、御母衣ダム岐阜県)があります堤高131mの大規模ロックフィルダムで、機械化施工駆使して建設されました。(→日本のダム:御母衣

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ダムの種類

 いろいろな観点から、ダムの種類分けをすることが可能です。ダムの目的による分類については、こちら(→ダムの目的)を参照してください
 ダムは、堤体材料構造などにより分類されますが、よく使われる種類としては、次のようなものがあります

アーチダム
 コンクリート作られたダムで、上から見た形がアーチ型なのでこう呼ばれますアーチの持つ力学的特性によって、水圧大部分両岸岩盤伝えることにより、重力式コンクリートダムと比べ堤体薄くすることができ、経済的ですが、ダムの両岸岩盤に伝わる力が大きくなりますので、両岸良好な岩盤が必要です。
 黒部ダム(→日本のダム:黒部)、温井ダム(→日本のダム:温井)、奈川渡ダム(→日本のダム:奈川渡)などが代表的なアーチダムです。

重力式コンクリートダム
 コンクリート作られたダムで、貯水池からの水圧をダムの重量支え形式のダム。コンクリートダムとしては最も一般的なものです。ダムの重量支えるのに十分な基礎岩盤上に建設することが原則です。
 奥只見ダム(→日本のダム:奥只見)、浦山ダム(→日本のダム:浦山)、宮ヶ瀬ダム(→日本のダム:宮ヶ瀬)、佐久間ダム(→日本のダム:佐久間(元))などがこのタイプです。

中空重力式ダム
 コンクリート作られたダムで、重力式コンクリートダムの一種ですが、その内部が空洞になっているダム。コンクリートの量は節約できますが、構造複雑なので、畑薙第1ダム(→日本のダム:畑薙第1)、井川ダム(→日本のダム:井川)など昭和30年代から40年代にかけて造られたものが数例あるのみです。

重力式アーチダム
 コンクリート作られたダムで、重力式コンクリートダムとアーチダムの両方特性備え、それによって水圧支えようとするダムです。新成羽川ダム(→日本のダム:新成羽川)、阿武川ダム(→日本のダム:阿武川)など、国内10ダム程度あります

バットレスダム
 水圧を受ける鉄筋コンクリート版を扶壁バットレス)で支え構造のダム。扶壁式ダムとも言われます。構造と施工が複雑で、国内最近建設されたものはなく、丸沼ダム(→日本のダム:丸沼)、笹流ダム(→日本のダム:笹流)など大正から昭和初期にかけて造られたものが数例あるのみです。

アースダム
 主に土を材料にして作られたダム。土堰堤とも言い古くからあるかんがい用溜池などはこれに該当し最近でも作られていますので、最も数の多いタイプのダムです。ロックフィルダムとともにフィルダム一つです。堤高の高いものとしては、清願寺ダム(→日本のダム:清願寺)、長柄ダム(→日本のダム:長柄)、中里ダム(→日本のダム:中里)などがあります

ロックフィルダム
 岩石多く使ったダムです。中央部遮水を受け持つ遮水ゾーンコア)を持つタイプのロックフィルダムが多いですが、上流側堤体表面コンクリートアスファルトなどで遮水するタイプあります高瀬ダム(→日本のダム:高瀬)、奈良俣ダム(→日本のダム:奈良俣)、手取川ダム(→日本のダム:手取川)などがロックフィルダムです。

重力式コンクリート・フィル複合ダム
 重力式コンクリートダムとフィルダムとの二つ型式のダムが連続して一つのダムを形成している構造のダムです。竜門ダム(→日本のダム:竜門)、大川ダム(→日本のダム:大川)、忠別ダム(→日本のダム:忠別)などがこれに当たります

台形CSGダム
 日本開発され新し技術に基づくもので、堤体断面台形で、材料CSG使用したダムです。条件さえ合えばコスト縮減環境保全などに有効です。まだできあがったダムはありませんが、建設中のものがいくつかあります


 種類分け基礎となっている考え方以下の通りです。
______________________________________
機能により)
貯水ダム
取水ダム
砂防ダム
貯砂ダム
これから下の種類分けは、貯水取水用のダムを念頭に置いたものです。

______________________________________
目的の数により)
専用ダム
多目的ダム

______________________________________
構造により)
可動ダム
 一連のゲート主体となっているダム。
固定ダム
 本体主要部分固定されているダム。通常のダムはこれに該当します

______________________________________
固定ダムについて水理機能により)
越流式ダム
 堤頂から洪水越流させる方式のダム。
■非越流式ダム
 堤体外に洪水吐を持つダム。

______________________________________
堤体材料により)
フィルダム
 土や岩石材料とするダム。通常ダムサイト周辺採取される土や岩石材料として使用します
 ■アースダム
  土を主体にしたダム。
  土堰堤とも言い古くからあるかんがい用溜池などはこれに該当します
 ■ロックフィルダム
  岩石多く使ったダム。
コンクリートダム
 コンクリート材料とするダム。

■台形CSGダム
 CSG材料とするダム。

______________________________________
フィルダムについて遮水方法により)
均一
 堤体均一な細粒材料構築したダム。
ゾーン
 堤体内部を、遮水を受け持つ遮水ゾーンコア)、堤体安定を受け持つ透水性ゾーンなどにゾーン区分をしたダム。
表面遮水
 上流貯水池側)の堤体表面コンクリートアスファルトなどで遮水するダム。
 ■アスファルト遮水
 ■コンクリート遮水

______________________________________
コンクリートダムについて水圧支え方などにより)
■重力式コンクリートダム
 貯水池からの水圧をダムの重量支え形式のダム。コンクリートダムとしては最も一般的なものです。ダムの重量支えるのに十分な基礎岩盤上に建設することが原則です。
■アーチダム
 アーチの持つ力学的特性によって、水圧大部分両岸岩盤伝えることで、水圧支え構造のダム。上から見た形がアーチ型なのでこう呼ばれます重力式ダム比べ堤体薄くすることができ、経済的ですが、ダムの両岸岩盤に伝わる力が大きくなりますので、両岸良好な岩盤が必要です。
 数は少ないですが、複数のアーチダムが連なっているマルティプルアーチダムというものもあります国内では、大倉ダム宮城県)と豊稔池香川県)がこれに該当します
■バットレスダム
 水圧を受ける鉄筋コンクリート版を扶壁バットレス)で支え構造のダム。扶壁式ダムとも言われます。構造と施工が複雑で、国内最近建設されたものはなく、大正から昭和初期にかけて造られたものが数例あるのみです。
中空重力式ダム
 重力式コンクリートダムの一種で、その内部を空洞にしたダム。コンクリート量は節約できますが、構造複雑なので昭和30年代から40年代にかけて造られたものが数例あるのみです。
■重力式アーチダム
 重力式コンクリートダムとアーチダムの両方特性備え、それらによって水圧支え構造のダム。

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単一構造か、複合構造かにより)
単一ダム
 大多数のダムはこれに該当します。ロックフィルダム、重力式コンクリートダムといった一形式構造のダムです。
■複合ダム
 二つ型式のダムが連続して一つのダムを形成しているような場合です。重力式コンクリートダムとフィルダム混合が多いようです

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ダムの型式

 ダムはいろいろな観点から分類されますが(→ダムの種類)、重力式コンクリートダム、ロックフィルダムといったダムの区分をダムの「型式」と呼ぶことがあります
 例えば、(財)日本ダム協会発行の「ダム年鑑」では次のような型式分類行ってそれぞれ略号表示してます。〔 〕内が「ダム年鑑」の型式です。(→日本のダム:まとめ

単一ダム
 (堤体材料により)
 ■フィルダム
  ■アースダム
   ■均一型        〔E  :アースダム〕
   ■ゾーン型       〔E  :アースダム〕
   ■表面遮水
    ■アスファルト遮水  〔FA :アスファルトフェイシングフィルダム
    ■コンクリート遮水   (国内にない)
  ■ロックフィルダム
   ■均一型         (国内にない)
   ■ゾーン型       〔R  :ロックフィルダム〕
    ■コアアスファルト 〔FC :アスファルトコアフィルダム〕
    ■その他       〔R  :ロックフィルダム〕
   ■表面遮水
    ■アスファルト遮水  〔FA :アスファルトフェイシングフィルダム
    ■コンクリート遮水  〔R  :ロックフィルダム〕
 ■コンクリートダム
  ■重力式コンクリートダム 〔G  :重力式コンクリートダム〕
  ■アーチダム
    ■単一アーチ     〔A  :アーチダム〕
    ■複数アーチ     〔MA :マルティプルアーチダム
  ■バットレスダム     〔B  :バットレスダム〕
  ■中空重力式ダム     〔HG :中空重力式コンクリートダム
  ■重力式アーチダム    〔GA :重力式アーチダム〕
 ■台形CSGダム      〔CSG:台形CSGダム〕
■複合ダム          〔GF :重力式コンクリート・フィル複合ダム〕
通常のダム以外
 ■堰など          〔FG :堰〕
 ■地下ダム         〔未記入

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ダム計画上の水位と容量

 ダム計画上、貯水池水位として次のようなものがあり、一般に最低水位常時満水位サーチャージ水位設計洪水位の順に水位高くなります

最低水位LWL
 貯水池運用計画上の最低の水位。ダムの堆砂容量水平に堆砂したときの堆砂上面とするのが一般的で、この場合堆砂位ともいいます発電用のダムなどでは、堆砂容量のほかに死水容量をもつものがあり、このような場合両方を貯めた場合の上面。通常これよりも下には取水口がなく、貯留利用できません。

常時満水位NWL
 ダムの目的一つである利水目的水道かんがい工業用水など)に使用するために、貯水池貯めることが出来最高水位貯水池水位は、渇水洪水時期以外は常時この水位保たれます。

サーチャージ水位SWL
 洪水時、一時的に貯水池貯めることが出来る最高の水位

設計洪水位DWL
 予想される最大洪水200年一回程度)が発生した時の流量設計洪水流量といい、そのとき貯水池水位設計洪水位いいます。この時、ゲート全開されています。自然現象として予想される最高の水位考えられます。

 これらの水位連動して次のような貯水池容量定められます。

総貯水容量
 堆砂容量死水容量利水容量洪水調節容量全部合計したもの。

有効貯水容量
 ダムの総貯水容量から堆砂容量死水容量除いた容量

洪水調節容量
 常時満水位からサーチャージ水位までの容量

利水容量
 最低水位から常時満水位までの容量利水容量利水目的に応じて利水目的毎の容量分割されます。

死水容量
 通常設定されることは少ないですが、一定の水位確保目的として、発電計画上の必要性がある場合取水放流施設設置必要がある場合などに設定されます。その場合の堆砂容量上面最低水位との間の容量

堆砂容量
 一定期間一般に100年間)にダム貯水池堆積する予想される流入土砂貯える容量

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ダムの造り方

 ダムはとても大きな構造物で、建設による地域社会周辺環境への影響大きなものがあります。そのためダムを造るときは、安全性経済性もちろんのこと地域社会環境への影響にも最大限配慮をしなければなりません。コンクリートダム本体一般的な建設手順工事段階の手順)です。

工事準備
 資材運搬する道路つくったり、川を工事影響のない場所に切り替える工事仮排水路建設)などを行い、ダム工事準備をします。

仮設備の設置
 ダム工事から発生する汚れたきれいにする濁水処理施設設置したり、コンクリートをつくるための設備整備します。これらは工事終了した撤去されるので「仮設備」とよばれます

基礎掘削
 ダムの基礎地盤露出するため、河床堤体側面掘削し、弱い岩盤ゴミ・泥などを取りのぞきます。

基礎処理
 基礎岩盤軟質部分割れ目補強し、ダムと基礎地盤密着させるためにボーリングした穴にセメントミルク流し込みます。専門用語で『グラウチング』といいます

コンクリート打設  コンクリートクレーンダンプなどにより運び、あらかじめ設置した型枠中に打設ます。

管理設備設置
 ダムを使用する際に必要な管理設備(取水設備警報設備など)を設置します

試験湛水  工事完了したら、をため、異常がないことを確認します

建設事例
重力式コンクリートダム(→知識を深める:ダム建設工事(福智山ダム)
ロックフィルダム(→知識を深める:ダム建設工事(金峰ダム)

ダム

 一般的に堤高15m以上の堰のことをいう。

ダム

名前 Damm; Dam; Damme

ダム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/29 09:51 UTC 版)

発電出力が世界第1位の三峡ダム
貯水量が世界第1位のカリバダム
堤高が世界第2位のヌレークダム

ダム: Dam)または堰堤(えんてい)は、水力発電治水・利水、治山砂防廃棄物処分などを目的として、を横断もしくは窪地包囲するなどして作られる土木構造物。一般にコンクリートなどによって築く人工物を指す。大規模なダムで川を堰き止めた場合、上流側には人造湖(ダム湖)が形成される。また、土砂崩れ地すべりによって川が堰き止められて天然ダムが形成されることもある。

一方、地上だけでなく、地下水脈を堰き止める地下ダムもある。このほか、貯留・貯蓄の比喩として用いられることがあり、森林の保水力を指す言葉に緑のダムがある。

(せき、い、いせき)ともいい、この場合は取水や水位の調節などが目的で、砂防堰堤は除く。

人間以外には、ビーバーがダムを造る動物として有名である。

日本のダムについての詳細は日本のダムを参照のこと。

語源

英語の dam という言葉は中英語に既にみられ、おそらくは中世オランダ語の dam から派生したと考えられている。北海に面した低地が多いオランダでは、河川の水位調整と海水浸入防止のためダムや堤防を築くことが多かった。ダムができるとその地点での渡河が容易となるため、しばしば都市の形成へと繋がった。たとえば、アムステルダムアムステル川に、ロッテルダムはロッテ川にダムが設けられたことを契機として形成された街である。

概説

ダムの定義は各国により異なるが、1928年(昭和3年)に創設され、現在88か国が加盟する国際大ダム会議英語版における定義では堤高が5.0メートル以上かつ貯水容量が300万立方メートル以上の堰堤を「ダム」として定めている。そのうち、高さが15メートル以上のものをハイダム、それに満たないものをローダムという。日本の河川法でいうダムとはハイダムを指し、これ以外の堰堤についてはたとえ「ダム」という名称が付いたとしてもとして扱われる。ちなみに、明確な定義が無かった時期は、山に接して設けられるものや積極的に流水を制御できる堰堤を「ダム」、堤防に接して設けられるものや常に越水するなど受動的にしか流水を制御できない堰堤を「堰」として分類していた。しかし、堰の中にもダムと同様に洪水調節・流水機能維持を目的に積極的な流水の制御を行う施設も建設されるようになり、ダムと堰の区別が曖昧になってきた。これにより、明確な定義を定める必要性が生まれたと考えられている。なお、ダムを上流から見た時、右側を右岸(うがん)、左側を左岸(さがん)といい、ダムの下流側の面を背面(はいめん)という。

ダムの建設目的は多岐にわたる。主なものとしては治水洪水調節不特定利水)と利水灌漑用水や上水道用水、工業用水、消流雪用水の供給、水力発電レクリエーション等)がある。治水を目的とするダムを治水ダムといい、利水を目的とするダムを利水ダムという。複数の利水目的を持つ利水ダムや、治水・利水両方を目的とするダムを多目的ダムという。なお治山を目的とする治山ダムや砂防を目的とする砂防堰堤鉱山鉱滓貯留を目的とする鉱滓ダム、廃棄物埋設処分を目的とするダム等は河川法のダムとは別扱いとなる。

本項では国際大ダム会議で定義されたダムのうち、日本の河川法、河川管理施設等構造令の基準にも援用されている高さ15.0メートル以上の、いわゆるハイダムについて説明する。治山ダム砂防堰堤鉱滓ダム天然ダム地下ダムについては、それぞれの項目を参照されたい。

日本語においてダムの数え方は「基」であり、1基、2基という呼び方で数える。

なお、2011年時点、世界で最も多くのダムを保有しているのは中華人民共和国である。その数は8万7千基に及ぶ[1]

歴史

ダムの黎明

人類史上、初めてダムが建設されたのは古代エジプトエジプト第2王朝時代の紀元前2750年に建設されたサド・エル・カファラダムen:Sadd el-Kafara、意味は「異教徒のダム」)と考えられている。このダムは堤高11.0メートル、堤頂長が106メートルで、石切り場の作業員や家畜に水を供給する上水道目的で建設された。その後の発掘調査などから石積みダムであったと考えられているが、洪水吐き(放流設備)を持たなかったため建設後40年目にして中央から河水が越流し、決壊したと推定されている。このため、このダムは現存しない。またエジプト第12王朝時代のアメンエムハト4世(アンメネメス3世)の治世には干拓により形成された農地に灌漑用水を供給するためのダムが建設されたとされている。現存する最古のダムはシリアホムス付近に建設されたナー・エル・アシダムと考えられている。このダムは堤高2.0メートル、堤頂長2,000メートルのダムで、推定で紀元前1300年頃に建設されたとしている。現在でも上水道目的で使用されており、建設以来約三千年もの間、修繕を重ねながら稼働している貴重な遺産でもある。

現在高さ200メートル級のダムが多く存在する中近東では、メソポタミア文明時代においてチグリス川ユーフラテス川にダムが建設されたという記録が残されている。東アジアでは紀元前240年頃、黄河流域で建設されたグコーダムが初見である。戦国時代末期、現在の中国山西省付近にあったの領内に建設された堤高30.0メートル、堤頂長300メートルのダムである。このダムは12世紀初頭までの約1300年間、ダムの高さでは世界一であったとされている。その後前漢時代には軍事的観点でダムが建設された例が司馬遷の『史記』に記されており、「劉邦の三傑」と呼ばれた韓信項羽との戦いにおいて戦場の近くを流れる河川にダムを建設、意図的に破壊して城塞や項羽軍に大打撃を与えた。日本では616年飛鳥時代河内国大阪府)で狭山池が建設されたのが初見である。また、多目的ダム(後述)として奈良時代731年摂津国(現在の兵庫県伊丹市)で治水と灌漑を目的とした昆陽池が建設されている。

技術の進歩

古代ローマのコルナルボダム

ヨーロッパではローマ帝国時代に上水道供給を目的としたダム建設が盛んとなり、現在でもフランスイタリアなどに堤高20メートル規模のダムが現存、あるいは廃墟として残っている。この頃に初めてダム建設にコンクリートローマン・コンクリート)が使われ、止水用にモルタルが用いられた。日本においては灌漑用として稲作の発展と共に多数のダムが建設され現存しているが、1128年大治3年)に大和国奈良県)に建設された大門池は高さ32.0メートルと当時としては世界一の高さであった。14世紀頃になるとスペイン各地でダム建設が行われ、特に14世紀末に建設されたアルマンサダムはそれまで世界一であった大門池の高さを塗り替えて世界一に躍り出た。さらに1594年に完成したアーチ式コンクリートダムチビダム(別名アリカンテダム)は高さ41.0メートルとアルマンサダムの記録を塗り替え、以後300年間に亘って記録が破られることがなかった。このように中世においてはスペインが、ダム技術で世界屈指を誇っていた。

この時期まで世界で建設されたダムはおおむね上水道や灌漑といった利水目的で、洪水調節を行う治水目的のダムは建設されていなかった。だが、17世紀に入るとヨーロッパ諸国で治水目的のためのダム建設が計画され、さらに洪水に耐えうるだけのダム型式としてダムの自重と重力を利用して堤体を安定化させる重力式コンクリートダムの技術が研究・開発されだした。フランスではナポレオン3世により河川開発が強力に推進され、1858年にはロアール川に洪水調節用ダムが建設された。プロイセンでは1833年以降に比較的巨大なコンクリートダムの建設が進められるようになった。日本では遅れること1920年代にコンクリートダムの建設が盛んになり、1924年(大正13年)には当時「世界のビッグ・プロジェクト」と称えられた大井ダム木曽川)を建設。日本の支配下にあった外地でも大型ダム整備を進めた。台湾では1930年昭和5年)に烏山頭ダムが完成して嘉南大圳嘉南平原を沃野に変えた水路網)の要となった。1937年(昭和12年)には旧満州で当時東洋一といわれた豊満ダム(高さ90.0メートル)が、朝鮮半島鴨緑江では水豊ダム(高さ107.0メートル)が1942年昭和17年)に竣工し、世界のダム技術に追いついて行くようになった。

多目的ダムの登場

水力発電ダムの横断面

治水を目的としたダムが建設されると、今度は治水と利水双方の機能を組み合わせた多目的ダムの建設が志向されるようになった。既に731年日本において僧・行基が治水と灌漑を目的とした昆陽池を建設していたが、理論自体は提唱されていなかった。多目的ダムの理論を提唱したのは1889年、プロイセンのオットー・インツェドイツ語版が最初であり、それを1902年にマッテルンが経済性と技術的理論を結合した形で体系化した。こうしたプロイセンの治水・利水理論は1913年にプロイセン水法として纏められた。これは治水と利水を総合的に運用する法整備として近代における河川関連法規の模範ともされ、その後1918年スウェーデン水法、1919年のフランスにおける利水関連法規、1920年アメリカ連邦水力法、1934年オーストリア水法など諸外国に多大な影響を与えた。

こうした多目的ダムによる治水・利水の総合的な運用は、河川総合開発事業として発展するに至った。一つの河川にダムをはじめ用水路水力発電所を建設し、治水や灌漑、水道供給、発電を行うことで農業・工業生産力の向上を図り、雇用を安定化させ国力を高めることを最終目的にした事業であり、流域の広範囲に亘って大規模に実施された。特にアメリカにおいては金融恐慌の後、雇用の拡大と工業生産力向上を目指して大河川の総合開発を開始した。1936年にはコロラド川に当時としては世界最大級のフーバーダムを完成させ、さらに大統領フランクリン・ルーズベルトミシシッピー川の支流・テネシー川に多数のダムを建設して洪水調節と水力発電を行うテネシー川流域開発公社(TVA)を設立、ニューディール政策の一環として総合開発を行った。

このTVAの成功は諸外国を刺激し、第二次世界大戦に前後して各国で河川総合開発が加速した。代表的なものとしてはソ連五カ年計画に基づくエニセイ川ブラーツクダムクラスノヤルスクダムなど)、ヴォルガ川ドニエプル川[注釈 1] の総合開発、インドにおけるダモタル川総合開発事業、オーストラリアにおけるスノーウィーマウンテン総合開発事業などがある。日本では1938年(昭和13年)に物部長穂が「河水統制計画案」として提唱し、その理論は戦後打ち続く洪水に対処するため利根川淀川など主要7水系において「河川改訂改修計画」の策定へつながり、利根川上流ダム群などの大規模河川総合開発が行われた。

大ダムの時代

フーバーダム

第二次大戦後、ダム建設技術はさらに向上し、高さ200メートルを超える巨大ダムが各国で続々建設されるようになった。1962年には重力式コンクリートダムとしては世界一であるグランド・ディクサーンスダムスイス)が完成。1968年にはカナダケベック州においてマルチプルアーチダムとしては世界一となるダニエル・ジョンソンダムが完成した。そして1980年にはソ連(現在はタジキスタン)がヌレークダムを建設し、高さ300メートルという既設ダムとしては世界最高のダムを建設した。現在はタジキスタンのヌレークダム上流に高さ335メートルのログンダム英語版が建設されており、完成すれば世界一の高さになる。

貯水容量においても莫大な容量を有する人造湖が続々と誕生した。フーバーダム総貯水容量が348.5億立方メートルと日本にある全てのダム貯水容量を凌駕する容量を有するが、ジンバブエザンビア国境にあるカリバダムは総貯水容量が1,806億立方メートルと琵琶湖の約67倍の容量を誇り、人造湖単体としては世界最大の人造湖を生み出した。1957年ウガンダに建設されたオーエン・フォールズダムが世界最大ともいわれるが、総貯水容量2兆7000億立方メートルの大半はヴィクトリア湖の容量であり、ダムによる増量分は2,700億立方メートルである。このほか世界有数の大河川の本流にもダムが建設され、1958年に黄河で完成した三門峡ダム1970年ナイル川で完成したアスワン・ハイ・ダム1991年パラナ川で完成したイタイプダムなどはダム・人造湖の規模においても世界有数であり、2009年長江に完成した三峡ダムはダム・人造湖のほか世界最大の水力発電所を擁する。

ダム技術の革新

ダムの建設技術についても、20世紀に入り様々な手法が開発・導入されるようになった。20世紀前半はコンクリートが高価であり、工費圧縮のためコンクリート使用を抑制する工法が開発された。代表的なものとしてはバットレスダムがあるが、この型式では地震や洪水に弱いという難点があり、盛んに建設されることは無かった。こうした問題を解決したのが中空重力式コンクリートダムであり、重力式コンクリートダム内部に空洞を設け、ダムと基礎地盤との接地面を広く設けることで少ないコンクリートで重力式と同程度の安定性を保つ型式である。これはマルチェロによって理論が纏められ、彼の母国イタリアで盛んに建設されたが日本でも導入され、単体のダムでは世界で最も高い畑薙第一ダム大井川、125メートル)をはじめ多くの大ダムが建設された[注釈 2]。ただし空洞を形成するための型枠や人件費が高騰し、現在では施工例を見ることは極めて少ない。

コンクリートを打設する技術については、従来は区画毎に分けてコンクリートを打ち増す「ブロック工法」が主流であったが、大型機械の導入や組み合わせの試行錯誤によってスムーズなコンクリート打設を図る技術が進んだ。1967年に完成したクラスノヤルスクダムエニセイ川)ではコンクリート製造プラントからダム現場までをベルトコンベアで結び、休みなく連続して打設できる手法を導入した。こうした手法は世界各地のダム工事で採用され、工期の短縮と工費の縮減に貢献した。

さらなる合理化を図るために開発されたのがRCDコンクリート(Roller Compacted Dam Concrete)によるRCD工法であった。これは超硬練りのコンクリートをベルトコンベアやダンプカーで運搬し、ブルドーザーで敷きならした後にロードローラーで水平に薄く何層も締め固めるという工法である。コンクリートの量を少なく抑える他、ブロック工法のように継ぎ目を設けないので亀裂(クラック)を起こさず、安定性と経済性で従来の工法よりも優れることが確認された。この工法が世界で初めて本格的に手掛けられたのは日本で、1972年(昭和47年)より山口県において建設省が施工した島地川ダム(島地川)が初例である。この後、RCD工法は大規模なダム建設で採用され、中小規模のダムにおいてはRCD工法を中小規模用に改良した拡張レヤ工法が取り入れられた。ロックフィルダムについても大型機械の導入によって原材料の掘削や運搬、締め固め工法の技術が向上したことで大規模な体積を有するダムが多数建設された。

そして近年では、よりコンクリートの量を減らして工費縮減と工期短縮を図る型式の改良が進み、1999年(平成11年)には日本で台形CSGダムという新型式が開発された。これはセメントと土砂と水を最適な含有量で混ぜ合わせることでコンクリートに近い強度の骨材を作り、台形に仕上げることで強度を補強するものである。従来は骨材を選別するのに良質のものを選ばなければならなかったが、この型式だと品質に関係なく骨材を使用できるので工費削減と工期短縮に貢献できるとされている。2002年(平成14年)より沖縄県億首ダム億首川)で本格的な施工が開始されたが、洪水の処理や地震への耐久性が課題として残されている。

型式別によるダムの種類

ダムのタイプ、いわゆる型式(かたしき)によるダムの分類としては、大別すると岩石を積み上げて建設されるフィルダムと、コンクリートを主原料として建設されるコンクリートダムの二種類があり、おのおの細分化した型式が存在する。このほか両者を連結・複合させたコンバインダム(複合ダム)や、日本で開発された新型式である台形CSGダムがある。いずれもアルファベットの略号で表されることもある。

ただしロックフィルダムとアースダムについては、世界的に見ると明確な区別がなされてはいない。外観がロックフィルダムであってもアースダムとして分類される(カナダのマイカダムなど)ことがあり、材料を混成して施工されることが要因となっている。したがって両方の型式を包括してフィルダムまたはフィルタイプダム、あるいはエンバクトメントダムと呼称される。ロックフィルダムを細分化した亜型で分類するのは日本が代表的である。

地形地盤気候河川流量、さらには地震の有無などにより採用される型式が異なり、地域によって特性が見られる。一般にアルプス山脈一帯や中近東は基礎岩盤が比較的堅固であるためコンクリート量を節減し経済性に優れるアーチ式コンクリートダムが多く建設されている。一方、日本のその他の地域(一部を除く)やアメリカ合衆国西海岸カリフォルニア州)のような地震多発地域では地震や洪水に最も強い重力式コンクリートダムが多い。

型式一覧

分類 小分類 略号 解説
コンクリートダム 重力式
コンクリートダム
G ダムの自重と重力を利用して水圧を支えるダム型式。
中空重力式
コンクリートダム
HG ダムの堤体内が空洞になっている重力式コンクリートダム。
イタリア日本に多く見られる型式。
アーチ式
コンクリートダム
A 河川両側の堅固な岩盤に水圧を分散させて支えるダム型式。
全世界における堤高200メートル以上のハイダムで多く採用されている型式である。
重力式アーチダム GA 重力式とアーチ式の両型式の特性を備えたダム型式。
マルチプル
アーチダム

(多連式アーチダム)
MA 複数のアーチが連なるダム型式。
扶壁で支える点からバットレスダムに比較的近い。
バットレスダム B 水を遮る壁(遮水壁)を垂直に扶壁で支えるダム型式。
地震や洪水に弱いため余り堤高を高くできない。
フィルダム アースダム
(アースフィルダム)
E 台形状に盛り土を行って建設されるダム型式。
地震の少ない地域では堤高200メートル以上のハイダムも存在する。
ロックフィルダム R 土砂と岩石を主体として建設されるダム型式。遮水壁の位置・種類によって種類が細分化される。
コンバインダム(複合型ダム) GF 重力式と、アースまたはロックフィルダムが複合したダム型式。
台形CSGダム CSG 日本で近年開発されたダム型式。事業費削減に貢献することができる。

地下ダム

地下水を貯水するため、地下に設ける止水壁地下ダムという。これは、地下水の流れを土中で塞き止め、そこから汲み上げて使用する。地下に空洞を作って地底湖のように貯水をするわけではない。

例えば、海岸部においては海水が地下水へ侵入するのを防ぎ、地下水の塩水化を防止する役割を果たすものとなっている。また、内陸部の場合は、帯水層の水が分散するのを塞き止めて、地盤内の隙間に水を貯える構造のものとなる。具体的には、サンゴ礁の島々など山岳地帯の少ない離島・海岸部の地点や、内陸部では自然の止水層が多くあり人工止水壁が少なくてすむ地点などに用いられる。

世界的にはワジが多く存在するサハラ砂漠など乾燥地帯に集中する。これは日本と異なり降雨量に対して蒸発量が大きく無視できない地域においては、貯水表面が外気に曝されないため、貯水の損失を防ぐ観点から有効である。日本(日本ダム協会調べ)では主に沖縄県を中心とした島嶼部や海岸沿いの地域に集中しており、福里ダムなど14基建設されている。

鋼製ダム

ダム本体がステンレスなどのいわゆるで形成されているダム。人造湖側は水を遮る壁(遮水壁)を設け、支柱などで基礎地盤と連結して貯水し、下流部をステンレス鋼で形成する型式のダム。断面の形状としてはバットレスダムに似る。安定性を保つために地中にアンカーを設置し、水圧に耐える構造を採っている。アメリカでは1898年完成のアッシュ・フォーク・ダムをはじめ20世紀初頭に幾つか建設されたが、現在施工例はない。日本国内ではハイダムの施工例は存在せず、2006年に竣工した大阪府の泉南農業公園調整池が唯一の施工例である。

木材ダム

ダム本体を木材で形成したダム。木材を組み、隙間に石や土砂を充填して堰堤とした。セメントの輸送が困難であった産業革命期に、北米の林業の盛んな地域で建設された。木材の性質上腐食しやすく、規模の拡大にも限界があったため、その多くがアースダムなど別の方式に建て替えられた。北米ではいくつかの木材ダムが残されている。

かつては河川での木材運搬を目的とした「鉄砲堰」と呼ばれる小規模な木材ダムが存在していた。

ダム諸元に関する表記

諸元とは、高さや、重量などのいわゆる概要であり、高さ等呼称は下記の通り。

諸元

諸元 単位 解説
堤高 m 「ダム高」とも呼ぶ。基礎岩盤接地部からのダム堤体の高さを指す。
岩盤を深く掘削して建設しているダムでは見かけ上低く見える。
堤頂長 m ダム頂上部の長さ。一般に堤高に比して長い。
まれに堤高と堤頂長の比が逆転しているダムもあり、
この場合ダムの外観は縦長となる
堤体積 m3 ダム堤体の体積。
ロックフィルダムでは体積が大きくなる
総貯水容量 満水時にダム湖に貯水される河水の総量。
洪水調節容量・利水容量・堆砂容量・死水容量の総和で量られる。
(注:死水容量 … 堆砂の最上面と最低水位が合わない時の貯水容量。)
有効貯水容量 総貯水容量から堆砂容量と死水容量を差し引いた容量。
実際に治水・利水に利用される貯水容量である。
流域面積 km2 ダム湖に注ぐ全ての河川が流れている地域(流域)の総面積。
面積が極端に狭いダムは揚水発電の上池であったり、
他河川より導水して貯水するダムであることが多い。
湛水面積 ha
km²
ダム湖の満水時における表面積。
湛水面積が広いからといって総貯水容量が多いとは限らないが、
堤高が低いダムでは比較的面積と容量の大きさが比例する。

世界の主なダム

現在、世界における最大の堤高を有するダムはタジキスタンに建設されている水力発電用のログンダムで335メートルの高さがあり、完成すれば東京タワー(333メートル)を超える高さとなる。現在既設ダムで世界一であるヌレークダム(300メートル)も同じタジキスタンの同一河川にある。堤高200メートル以上のダムを型式別で見るとアーチ式コンクリートダムが最も多く、続いてフィルダムが多い[2]

また、総貯水容量では人造湖単体としてはジンバブエザンビアの間に建設されたカリバダムが最も容量が大きい。その総貯水容量は実に約1,806億立方メートルであり、日本最大の自然湖である琵琶湖(約27億立方メートル)の約67倍の容量を誇っている。自然湖をダム化したものを含めると、ウガンダに建設されたオーエンフォールズダムの約2兆7000億立方メートル(琵琶湖の約1,000倍)が最大であるが、容量の9割はヴィクトリア湖の容量であり、ダムによる増加分は2,700億立方メートルである。その他、堤高の高いダムに関しても、容量が100億立方メートル級のダムが軒を連ねている[3]。面積においてもカリバダムが約5,180平方キロメートルと世界最大の広さを有し、三峡ダムのように貯水池延長が約500キロメートルという規模を持つダムもある。

ダムによる水力発電量ではブラジルパラグアイ国境にまたがるイタイプダムがかつて世界最大であり、その最大出力は1260万キロワットと日本最大の水力発電所である神流川発電所群馬県長野県。282万キロワット)の約4.5倍もの電力を供給する。2009年に中国・長江で完成した三峡ダム長江)では2012年に2250万キロワットまで発電能力を増やし[4]、イタイプダムのそれを大きく上回った。

堤高ランキング

順位 国名 ダム名 型式 堤高
(m)
総貯水
容量
(千m³)
完成年 備考
1位 中国 錦屏一級ダム アーチ 305.0 15,132,000 2012年 既設世界一
2位 タジキスタン ヌレークダム アース 300.0 10,500,000 1980年
3位 中国 小湾ダム アーチ 292.0 15,100,000 2010年
4位 中国 溪洛渡ダム アーチ 285.5 12,670,000 2013年
5位 スイス グランドディクサーンスダム 重力式 285.0 401,000 1961年
(参考) 富山県 黒部ダム アーチ 186.0 199,285 1963年(昭和38年)

総貯水容量ランキング

順位 国名 ダム名 型式 堤高
(m)
総貯水
容量
(千m³)
完成年 備考
1位 ジンバブエ
ザンビア
カリバダム アーチ 128.0 180,600,000 1959年
2位 ロシア ブラーツクダム 重力式 125.0 169,000,000 1964年
3位 エジプト アスワン・ハイ・ダム ロックフィル 111.0 162,000,000 1970年 ナセル湖
4位 ガーナ アコソンボダム ロックフィル 134.0 150,000,000 1965年 ボルタ湖
5位 カナダ ダニエルジョンソンダム 多連式アーチ 214.0 141,851,350 1968年
(参考) ウガンダ オーエンフォールズダム 重力式 30.0 2,700,000,000
270,000,000
1957年 上段はヴィクトリア湖を含む
下段はダム単体の増量分
(参考) 岐阜県 徳山ダム ロックフィル 161.0 660,000 2008年(平成20年)

発電出力ランキング

順位 国名 ダム名 型式 堤高
(m)
認可出力
(kW)
完成年 備考
1位 中国 三峡ダム 重力式 185.0 18,200,000 2009年
2位 ブラジル
パラグアイ
イタイプダム 複合型 196.0 12,600,000 1991年
3位 ベネズエラ グリダム 複合型 162.0 10,000,000 1986年
4位 ブラジル トゥクルイダム ロックフィル 95.0 8,370,000 1984年
5位 ロシア サヤノシュシェンスカヤダム 重力アーチ 242.0 6,400,000 1990年
(参考) 長野県
群馬県
南相木ダム
上野ダム
ロックフィル
重力式
136.0
120.0
2,820,000 2005年(平成17年) 揚水発電

ダムの名称

ダムに付けられる名称は通常、計画の段階で命名される。途中で変更になる場合もある[注釈 3]。命名については、河川名やダム建設地点の地名が採用されるケースが多い。この他キエフダムウクライナドニエプル川)やクラスノヤルスクダム(ロシアのエニセイ川)など所在都市名を採用したもの、中国の三峡ダム(長江)や三門峡ダム劉家峡ダム黄河)、日本の豊平峡ダム豊平川)のように峡谷名を冠したものなど、多彩である。また、同一河川・水系に建設されたダムの中には、完成順に番号で命名されているものもあり、イランにあるカールーン第一第三第四ダム(カールーン川)はその一例である。ダムによって形成された人造湖についても同様の傾向が見られるが、名称が特に定まっていないものも多い。日本ではダム完成前に一般公募によって人造湖の名称を決めるケースが多くなっている。

特殊な例としては、人名を冠したダムがある。これらは該当するダムまたは建設事由である河川総合開発事業において主導的な役割を果たした、あるいは国政に功績のあった政治家を顕彰する意味を込めて命名されている。以下に示したものは、その一例である。

  • フーバーダム(アメリカ):治水とラスベガスなどへの電力供給他を目的に計画されたコロラド川総合開発事業(ボールダー峡谷計画)の中心として1936年に完成した高さ221メートルの重力式アーチダム。建設当時はボールダーダムという名称であったが、1947年の第80回連邦議会において第31代アメリカ合衆国大統領であるハーバート・フーヴァーの名を冠する議決がなされ、現在の名称に変更された。なお、人造湖であるミード湖は、当時のアメリカ合衆国内務省開拓局長官であったエルウッド・ミードの名を冠している[5]
  • セオドア・ルーズベルトダム英語版(アメリカ):水力発電を目的として1911年に建設された高さ109メートルの重力式コンクリートダム。完成からしばらくは河川名のソルト川から命名されたソルトリバーダムという名称であったが、1959年に第26代アメリカ大統領であったセオドア・ルーズベルトの名を冠した現名称へと変更された。前述のフーバーダムと同様にダムと人造湖双方に人名を冠した希有な例。
  • ダニエルジョンソンダム(カナダ):カナダ及びアメリカ東海岸地域に電力を供給する目的で1968年に建設されたダムで、マルチプルアーチダムとしては世界で最も高い214メートルの巨大ダム。ダム名は建設当時のケベック州知事で水力発電事業に力を注いだダニエル・ジョンソンにちなんで命名された。なお、彼はダム完成の直前に死去している[6]
  • アタチュルクダムトルコ):南西アナトリアプロジェクトにおける灌漑・水力発電を目的としたユーフラテス川総合開発事業の中心として、ユーフラテス川本流に1992年に完成した高さ169メートルのロックフィルダムでトルコ最大級の規模を有するダム。ダム名はトルコ建国の父であるケマル・アタテュルク(アタチュルク)にちなみ命名された[7]
  • シーナカリンダムタイ):映画『戦場に架ける橋』の舞台となったクワイ川(クワイヤイ川)に、水力発電と治水を目的とした河川総合開発・クワイヤイ第一計画の中心事業として1980年に完成した、高さ140メートルのロックフィルダム。日本の円借款および電源開発の技術協力で建設された。ダム名はタイ国王ラーマ9世の母であるシーナカリン王太后の名が冠され、計画名自体も途中からシーナカリン開発計画と改められた[8]
  • ホセ・マリア・モレーロスダムメキシコ):メキシコシティ南西に洪水調節・灌漑・水力発電が目的の河川総合開発事業として建設された高さ59.7メートルのロックフィルダム。ダム名はメキシコ独立革命の英雄で、メキシコ最初の憲法を制定したホセ・マリア・モレーロスの名が冠された。1968年完成[9]
  • ゾラダム(フランス):南フランス・エクサンプロバンス近郊を流れるローヌ川支流のアンフェルネ川に1854年完成した高さ42.5メートルの灌漑と水力発電を目的にしたアーチ式コンクリートダム。完成から約50年間アーチダムとしては世界最高の高さを有していた。ダム名はこのダムを設計した土木技師であるフランチェスコ・ゾラの名を冠しているが、彼の息子は文豪で知られるエミール・ゾラである[10]

人造湖については先述のミード湖のほか、アスワン・ハイ・ダム(ナイル川・エジプト)の人造湖が同事業を強力に推進した第2代エジプト大統領ガマール・アブドゥン=ナーセルにちなんでナセル湖と命名された例、グランドクーリーダムコロンビア川・アメリカ)の人造湖が建設を推進・指揮した第32代アメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトにちなみルーズベルト湖と命名された例などがある。

ダムの諸問題

ダムは建設に多額の投資が必要で、河川の場合は建設地周辺から河口に至るまで広範な地域の自然環境生活環境、社会・経済に大きな影響を及ぼす。このため各ダムは構想・計画段階から賛否両論があり(「ダム建設の是非」「ダムの代替案」参照)、訴訟や選挙の争点になることもある。建設や完成後の運用にも様々な問題が生じ、その解決策を模索することとなる。日本では、ダム事業が中止または長期化した例もある。ダム湖は大量の水を抱えるだけに、耐久限界を超えた水害事故による決壊が起きると、大きな被害を及ぼす。防災の役割を担う反面、ダムの建設や貯水によって誘発地震が発生する可能性も指摘されている。

現在は地球温暖化問題が深刻化し、世界各地で激しい洪水や深刻なかんばつが問題になっており、既存のダム運用に対する見直しも要求されている。一般に二酸化炭素(CO2)を排出しないとして水力発電は注目されているが、ダムの規模や設置している地域の気候などによっては貯水池より大量にメタンガスが発生するなど悪影響等も世界ダム委員会(WCD)の最終報告書等をはじめとして多方面より指摘されており、慎重な対応が求められている。

ダム湖化による地域の水没

集落や街道は川沿いに発達することが多いため、ダム建設が計画されると、ダム湖の湛水に伴う水没予定地域の住民や外部の自然愛好家らによる反対運動が起きることがある(四国早明浦ダムなど)。

さらに文化財遺跡が水没するという問題も発生している。アスワン・ハイ・ダムではアブ・シンベル神殿が水没することとなり、ユネスコなどの援助・指導によって移転されている。また三峡ダムでは『三国志』で有名な劉備終焉の地・白帝城が半分以上水没するなどの問題が起こった。

土砂・水の排出量管理

利水目的のダムにおいては、洪水のおそれがない時期は河川の水を全て堰き止めてしまうのでなく一定量を放流し、下流の生態系景観釣り漁業水利権への配慮を求められる。日本では国土交通省の発電ダムに対するガイドラインで、そのための維持流量の確保を定めている[11]

流域土砂管理を考えた場合、環境問題としては堆砂の問題と、河川の最大流量をコントロールすることで下流へ砂がフラッシュ(流下)されないという問題もある。また、ダム設置による河川の流量や水温への影響によって、河川生態系を攪乱するという指摘もある。三峡ダムでは黄土高原から流出する黄砂が貯水池に堆積、完成から二年で貯水池が埋没してダム機能が麻痺する事態が発生。さらにアスワン・ハイ・ダムでは下流への土砂流下減少によってナイル・デルタ縮小という問題が発生している。堆砂については従来の浚渫(しゅんせつ)主体から排砂バイパストンネルによる抜本的対策が試行されているほか、流砂連続性を確保するための人工洪水試験グレンキャニオンダム(アメリカ)やスイスの発電用ダム、日本の国土交通省直轄ダムの一部などで実施されている。ただし現在は試行段階であるため、海岸侵食などを有効に防止するまでには至っていない。

複数の国を流れる国際河川においては、上流部にある国が大型ダムを計画・建設することに対して、河川流量の減少を懸念する中流・下流部の国や住民が不満を抱いで国際問題化したり、逆に上流部の国による影響力拡大の手段に使われたりしている、下記のような例もある。「21世紀は水戦争の時代」と呼ばれる中、水資源開発とその保全は油田開発に匹敵する重要課題であると指摘する専門家も多い。実際問題として国連水質汚染と共に水不足を水の危機として警告を発しており、複数の国家間で紛争が発生している。

ダム新設の終焉や見直し論

ダム技術を切り拓いたヨーロッパ各国では、ダムのみではない多様な施策により治水安全度が格段に向上し、ドナウ川テムズ川をはじめ多くの大河川で一万年に一度の大洪水に耐えうる(日本では最大で百年から百五十年に一度)だけの治水整備(住宅撤去などによる氾濫原の復元など)が行われ、ダム建設は事実上終焉している。アメリカでは1990年代内務省開拓局長官であったダニエル・ビアードが「アメリカではダム建設の時代は終わった」と発言し、物議を醸した。日本ではこうした欧米の動きや、談合などの公共事業に関連する不透明な税金使用を背景にダム反対派が勢いを強め、「脱ダム宣言」をはじめダム事業に否定的な動きも出ている。

防災での限界と決壊事故

治水機能を持つダムは豪雨や長雨が予測されると、予備放流や事前放流を行って空き容量を増やしておき、降雨が本格化すると放流量を抑えて下流の水害を防ぐ洪水調節を行う必要がある。日本ではダム湖への水の流入が貯水能力を超えそうになると、ダムの損壊を防ぐため放流する「異常洪水時防災操作」を行うが、下流域で死傷者・行方不明者などの被害が出ることもあり、放流判断や告知が不適切であったとの批判が出ることもある。また事前放流するには、利水容量を回復させることが大前提となり、利水容量が回復しなかった場合は利水事業者が機能回復のために実施した措置に対し、ダム管理者が利水事業者と協議し要した費用を負担する、等の基本的事項[15] が弊害となり事前放流を行わなかったり不十分であったため、緊急放流による被害が大きくなっている、との指摘もある[16][17]平成30年7月豪雨では6府県にあるダム8か所で防災操作が行われた[18] が、肱川愛媛県)で氾濫により9人が死亡したため、検証作業が行われている[19]

また砂防ダムも、大量の水・土砂が強い勢いで流入すれば防ぎ切れなかったり、決壊したりする[20]

洪水時に限らず、多数の死傷者を伴うダム決壊事故は国内含め世界中で発生しており、その度にダムに対する安全性が問われ技術、運用面の改善が求められている。フランスのマルパッセダム決壊事故1959年)ではダム本体の安全性のみならずダム両岸の基礎岩盤の安定性が重要視された。アメリカのティートンダム決壊事故1976年)では岩盤の安定性だけではなく水分の透過性も重要視され、以降ダムの基礎工事が建設においては特に注意を払われた。さらに貯水の際における諸問題として地盤の変化に伴う地すべりや誘発地震の問題も指摘され、1963年バイオントダム地すべり事故(イタリア)では2000人の死者を出す惨事を招いた。因みに、史上最悪のダム決壊事故はアメリカのペンシルベニア州に建設されたサウスフォークダムで、1889年5月31日に決壊してジョンズタウンを壊滅させ、2200人以上の死者を出した。ギネスブックにも掲載されている。

ダムへの武力攻撃

被害が大きくなる攻撃禁止施設であることを示す特殊標章英語版

第二次世界大戦におけるイギリス空軍によるチャスタイズ作戦ドイツのダムへの爆撃作戦)や第四次中東戦争におけるアスワン・ハイ・ダムへのイスラエル空軍によるペイント弾空爆など、戦争やテロリズムによっては、ダムは攻撃の対象となる。朝鮮戦争において鴨緑江に戦前日本が建設した水豊ダム(スープンダム・北朝鮮)はアメリカ空軍による集中爆撃を受けたが、重力式コンクリートダムの特徴が幸いしダムは決壊せずに持ちこたえている。 2022年ロシアのウクライナ侵攻では、ウクライナロシア双方が、相手の進軍を遅らせるために小型のダムを破壊している[21][22]2023年6月に発生したカホフカダム破壊事件の真相は究明されていないが、ウクライナ側はダムが崩壊する前年から複数回、ミサイルによる攻撃を加えている[23][24]

リスク管理やテロ対策の面からも十分な対策が求められている。幾つかの国家ではダムは軍事施設にならぶ重要な防衛拠点として、写真撮影を含み立ち入りが禁じられていることもある。 なお、ジュネーヴ諸条約追加議定書1977年採択)第56条では、ダムは原子力発電所堤防と並び「危険な力を内蔵する工作物及び施設」として位置づけられ、武力による攻撃が禁止されている[25]

主なダム事故

ティートンダム決壊事故

ダム事故のなかでダムが完全に破壊される「決壊事故」(崩壊事故)は多数の犠牲者を出す最も重大な事故である。特に大雨によるダム本体からの越流や地震による崩壊といった天災に、施工不良や管理不良といった人災が重なって起こる場合がほとんどを占める。中には戦争による空爆や意図的なサボタージュによって事故が起こることもある。

最も危険なのはダム湖に試験的に貯水を行う試験湛水(たんすい)時であり、この工程中に決壊する例も多い。したがって試験湛水中はダム本体のみならず人造湖に接する周囲の地盤にも多大な注意を払っている。以下に主な事故を挙例する。

日本の事例については日本のダム#日本のダム事故を参照のこと
大雨によりダム堤体を貯水が越流して決壊。下流にあるジョンズタウンが壊滅して2,200人が死亡、世界のダム史上最悪の死亡者数をもたらした事故をおこす(ギネスブックにも公式に認定されている)。この水害を「ジョーンズタウン洪水」と呼ぶ。
第二次世界大戦時にイギリス空軍によるチャスタイズ作戦の折、軍需産業が盛んだったルール工業地帯に損害を与えて工業生産力を低下させ、ナチス・ドイツに致命的な打撃を与えるため両ダムを空爆し、破壊した。流域住民1,288人が死亡した戦争によるダム破壊の代表事例。終戦後両ダムは当時の西ドイツ政府によって再建され、現在も供用されている。
朝鮮戦争時にアメリカ空軍が戦況を有利に運ぶために、電力施設への空襲や北朝鮮軍および支援する中国軍に打撃を与えるべく数度に渡り空爆を行う。ダムはかつて朝鮮半島を統治していた日本が建設したものだが、ダムの体積が大きかったことや強固に建築されていたこともあって破壊させることに失敗する。
本体建設終了後に試験湛水を開始したがその約16時間後、ダム左岸部の堤体が基礎岩盤ごと決壊し500人以上が死亡。水圧を支えるはずの基礎地盤が軟弱であったことから莫大な水圧を支えきれずに崩壊したことが判明。以後のダム建設において両岸の基礎地盤対策が重要視された。日本においても黒部ダムのウイングダム化や奈川渡ダムの規模縮小など影響を与えた。
本体建設終了後、最初の試験湛水中に地すべりが発生。それを放置し満水にした所豪雨を被りダム上流の左岸に大規模な地すべりが発生、貯水池に3億立方メートルに及ぶ莫大な土砂が流れ込んだ。これにより貯水が巨大な波となってダムを越え、直下流のロンガローネ村に洪水を引き起こし村は壊滅。2,000人以上が死亡した。ダム自体は決壊しなかったものの放棄され、現在は機能を果たしていない。管理者であるイタリア電力公社の関係者が逮捕起訴され有罪となった。これ以後、ダムサイトだけではなく貯水によって水没する周辺山地の斜面対策がより重要視された。
台風3号により河南省一帯は記録的な大雨となり、一日降雨量が1,060ミリと世界で最も多い降水量を記録した(当時)。豪雨に伴い流域の河川が増水、文化大革命時に建設された板橋ダム(総貯水容量:約8億立方メートル)・石漫灘ダムの巨大ダムを始め大小合わせて62箇所のダムが連鎖的に決壊した。この事故により流域の住民や救援活動を行っていた中国軍兵士ら1,827人が死亡、全体でも推定26,000人が死亡したといわれている。原因はこのダムが1957年から1969年まで実施された「大躍進政策」により人海戦術で建設され、工事全体が欠陥だらけであったのに加え、洪水吐きなどの放流設備がほとんど設けられていなかったことが挙げられる。専門家らが指摘したが中国政府は黙殺、結果的に事故につながった。
最終的には鄧小平の指示によって洪水流下の阻害要因となっていた残りのダムが爆破されることで洪水は収束した。中国国内ではこの事故を「75.8大洪水」と呼んで「自然災害」とし、ダム決壊の事実は報道が全く禁止されて隠蔽された。この事実は近年明らかになっている。
アメリカ合衆国内務省開拓局が施工していたダムで本体建設終了後の試験湛水中に漏水が発生、ブルドーザーで補修を行うが漏水は拡大してブルドーザーごと陥没し同日午前11時57分に決壊した。漏水から決壊まで2時間半程度であった。約3億1,000万トンの湖水が洪水となって下流を襲い住民11人と6,000頭以上の家畜溺死、負傷者も数千人に上り、被災額や補償案件も膨大なものとなった。原因は建設前より指摘されていた基礎地盤の透水であり、亀裂の多い溶結凝灰岩でその止水対策が不十分であったためと見られている。これ以降フィルダムにおける基礎地盤掘削以降の止水対策が強化されるようになった。
このダム決壊事故は決壊までの一部始終が初めて映像で収められたほか、メディアによって世界中に映像が報じられ各国のダム関係者に大きな衝撃を与えた。この水害は「ティートン洪水」と呼ばれ、地元農業団体を中心にダム再建が求められたが内務省開拓局は再建を行わず、現在は左岸堤体のみが残る廃墟となっている。[26]
折からの大雨で貯水池が満水位を超え、結果ダム本体を越流して決壊する。下流の住民70人以上が死亡したが、フィルダム施工の基本である遮水(しゃすい)対策が不十分だったことが判明し、施工不良であることが決壊の原因とほぼ断定された。
老朽化した送水管が破裂し、施設を水没させ死者74名ともされる事故となった。
カリフォルニア州にある米国一の高さをもつダム。豪雨に伴い放流していたところ放水路が陥没、さらに非常用の放水路においても浸食が認められたため、決壊の危機に陥ったとして州知事が非常事態宣言、住民18万8,000人に避難指示が出された[27]
ナクル近郊の農地に設置されていた私営ダムが集中豪雨により決壊。死者45人以上。ダムについては灌漑用などに用いられていたが、事故後、最高検は構造物としての質について問題があるとして調査に乗り出している[28]

ダムが登場する作品

日本

日本のダムに関連する作品については、日本のダム#ダムが登場する作品を参照のこと。

日本国外

映画

ダムに関連する人物

日本

日本人に関しては日本のダム#日本のダムに関連する人物を参照のこと

日本国外

脚注

注釈

  1. ^ 建設計画自体は1920年代に採用されている。
  2. ^ コンバインダムを含めたものではイタイプダムが最も高い。
  3. ^ 一例としては日本で、群馬県渡良瀬川1977年(昭和52年)完成した草木ダムがある。当初は建設予定地点の地名より命名された「神戸ダム」という名称であったが水没予定地に住む住民の要望で現在の名称へと変更になった。

出典

  1. ^ 「ダム王国」中国の脅威、半数の4万基が傷んでいる - 東洋経済オンライン 2011年11月4日
  2. ^ 『ダム便覧』世界のハイダム
  3. ^ 『ダム便覧』世界の貯水池容量の大きいダム
  4. ^ 「中国・三峡ダムが全面稼働、発電量は原発15基分」AFP(2012年7月6日)2018年7月28日閲覧。
  5. ^ 財団法人日本ダム協会『ダム便覧』 フーバーダム
  6. ^ 財団法人日本ダム協会『ダム便覧』 ダニエルジョンソンダム
  7. ^ 財団法人日本ダム協会『ダム便覧』 アタチュルクダム
  8. ^ 『電発30年史』p331-334。
  9. ^ 社団法人日本大ダム会議『大ダム』No.78 pp.54-58.1976年12月。
  10. ^ 『北海道のダム』p.247
  11. ^ 発電ガイドラインについて 国土交通省河川局(平成15年7月18日)2018年7月28日閲覧。
  12. ^ 「メコン川開発 中国、ダム建設加速で影響力拡大 下流域の首脳会議、連携強化確認」『日本経済新聞』電子版(2018年4月8日)2018年7月28日閲覧。
  13. ^ 「エジプト:スーダンでルネッサンスダムをめぐる閣僚級会合実施」中東調査会(2018年4月10日)2018年7月28日閲覧。
  14. ^ 『毎日新聞』朝刊/印パ独立70年・第3部<紛争の水源インダス>、(1)ダム建設、相互不信 印、水資源を圧力カードに/パ、枯渇恐れ計画に異議(2)「川解放へ聖戦」(3)水枯れ 疑心暗鬼、2017年12月17日~19日掲載。
  15. ^ ダムの事前放流 電力土木技術協会 2019年10月22日閲覧。
  16. ^ 5人死亡のダム放流「天災だが人災」 説明会で住民訴え 朝日新聞 2018年8月10日
  17. ^ 緊急放流の6ダムで事前放流せず 国交省・自治体に重大責任 日刊ゲンダイ 2019年10月16日
  18. ^ 4割ダムで「洪水調節」『日本経済新聞』朝刊2018年7月20日(社会面)2018年7月28日閲覧。
  19. ^ 「ダム放流 適切か検証/愛媛・肱川9人死亡 住民は怒り」『日本経済新聞』朝刊2018年7月20日(社会面)2018年7月28日閲覧。
  20. ^ 【西日本豪雨】老朽化砂防防ダム決壊 70年以上前の石積み、「雨が降ると隙間から勢いよく水が…」広島産経WEST(2018年7月24日)2018年7月28日閲覧。
  21. ^ ロシアの進軍阻むため水浸しになった村、忍耐の限界に ウクライナ”. AFPate=2023-03-13. 2023年9月11日閲覧。
  22. ^ ロシア軍の「水浸し」退却術、乗り越えるには架橋戦車がもっと必要”. Forbes (2023年9月9日). 2023年9月11日閲覧。
  23. ^ ウクライナ軍、ロシア占領の南部ヘルソンで主要な橋をまた破壊と 移動に不可欠”. BBC (2022年8月14日). 2023年6月9日閲覧。
  24. ^ ウクライナ南部で停電・断水 ダム損傷か”. AFP (2022年11月7日). 2023年6月9日閲覧。
  25. ^ 1追加議定書(全文)(PDF)”. 外務省. 2022年3月7日閲覧。
  26. ^ "Teton Dam Failure", Arthur Gibbs Sylvester, University of California Santa Barbara
  27. ^ 米加州でダム決壊の恐れ、住民18万人超が避難継続”. CNN (2017年2月14日). 2017年2月14日閲覧。
  28. ^ ダム決壊の死者45人に”. AFP (2018年5月12日). 2018年5月13日閲覧。

関連項目

参考文献

外部リンク


ダム

出典:『Wiktionary』 (2021/11/17 15:31 UTC 版)

語源

英語 dam からの借用語

発音

名詞

ダム

  1. や砂などの流れをせくために、川や谷を横断した窪地囲んだりして作られる構造物
  2. 国際大ダム会議にて定義されている、堤高5.0メートル上で貯水容量300立方メートル上の堰堤
  3. 日本の河川法で定められているハイダム。

類義語

派生語

熟語

翻訳


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