灯油
「灯油」とは、原油から分離して精製される石油製品のうち、主に石油ストーブなどの暖房用燃料あるいは給湯器や発動機などの燃料として用いられる液体のことである。灯油の主成分は「ケロシン」である。一般的に「灯油」といえば、ケロシンに各種成分を添加した製品を指す。
灯油は(ケロシン)は無色透明で独特の匂いがある。引火点が常温よりも高い(常温では発火しない)など何かと扱いやすい。しかも安い。そのため、一般家庭における冬場の暖房用燃料をはじめ多種多様な用途に用いられている。
「灯油」の基本的な意味、元々の意味
「灯油」は、もともとは、文字通り「灯火用の油」の総称であった。「灯油(ともしびあぶら)」とも言った。たとえば「行灯(あんどん)」に用いられる油脂などが、元来の意味における「灯油」である。かつては「灯油」は、胡麻油、菜種油、荏胡麻、魚油、鯨油など、灯火用燃料として使えるあらゆる種類の油脂を含む総称だった。
今日では「灯油」といえば、もっぱら規格化された原油由来の液体燃料を指す。
「照明器具に用いられる液体燃料」は、かつては「灯油」と総称されたが、現代では規格に応じて「灯油」「アルコール」「バイオエタノール」などと呼び分けられる。一括して「灯油」と呼ばれることはない。
灯油の扱い・保管・捨て方の注意点
灯油は、長期間使わずに置いておくと次第に変質(劣化)する。寒暖差の大きい場所、直射日光の当たる場所、空気に触れる状態、といった環境で保管すると劣化が早まりやすい。劣化した灯油(不良灯油)を使用すると機器の故障や思わぬ事故を招く危険がある。
暖房用燃料に灯油を用いる場合、1シーズンで使い切ることはなかなか容易でないが、使い切ってしまうことが望ましい。次の秋冬まで持ち越すことは、できれば避けたい。
使いきれずに余った灯油が少量であれば、暖房器具などで消費しきってしまうとよい。少量なら紙や布に滲みこませて可燃ゴミとして捨てるという方法もあるが、これは自治体によっては禁止されている場合がある。
灯油が大量に残った場合、購入した店舗が引き取って処分してくれることも多い。量の多寡にかかわらず、捨て方を自治体に確認することが推奨される。
「灯油タンク」とは
灯油タンクとは、灯油を保管しておく用途で一般的に用いられる容器の総称である。容量もタンクの材質も幅広い。容量が10~20リットル程度のポリタンク(いわゆる「灯油缶」)を指す場合もあれば、屋外に固定して設置される容量100~200リットル程度の金属製タンク(いわゆる「ホームタンク」)を指す場合もある。「灯油タンク」と「軽油タンク」は
灯油の携行用ポリタンク(灯油缶)には厳格な安全性能が求められる。灯油用の携行缶は灯油専用であり、他の液体燃料(軽油やガソリン)の携行缶とは規格が異なる。そのため、「軽油用」として販売されているポリタンクに灯油を入れたり、逆に「灯油用」タンクに軽油を入れたり、といったことは避けるべきである。「灯油」を含むその他の用語の解説
灯油ストーブとは
「灯油ストーブ」とは、灯油を燃焼させて室内の空気を温めるストーブの総称である。「石油ストーブ」ともいう。「灯油ストーブ」は、一般的には、「対流形」と「反射形」に大別される。対流形は、灯油の燃焼から生まれる熱対流(自然対流)によって部屋を温める方式である。反射形は、反射板を使って側方へ伝わる熱を片側に集中させる方式である。
電気を使ってファンを回して熱を前方に送り出す方式の灯油ストーブは「石油ファンヒーター」と呼ばれることが多く、単に「灯油ストーブ」といった場合には念頭に置かれないことが多い。
灯油ポンプとは
灯油ポンプは、灯油タンクなどから暖房器具のタンクなどに灯油を移し替える際に用いられるポンプの総称である。「石油ポンプ」とも呼ばれる。JIS規格では「石油燃焼機器用注油ポンプ」という。手動でポンプを動かす製品が一般的だが、最近では電気で制御する電池式の製品も普及しつつある。灯油ポンプには「サイフォンの原理」が用いられており、ポンプの管を灯油で満たせば後は勝手に灯油が流れ続ける。このため従来型の手動ポンプでも労力を節約して灯油補充ができる。
とう‐ゆ【灯油】
とぼし‐あぶら【▽灯油】
ともし‐あぶら【▽灯油】
読み方:ともしあぶら
「とぼしあぶら」に同じ。
灯油(とうゆ)
灯油には冷暖房用の白灯油(JISK2203の1号)と機械洗浄等に利用される茶灯油(JISK2203の2号)があります。灯油は夏冬の需要量の差が3倍ある季節商品で、しかも気温による変動を受けやすいです。灯油
【英】: kerosine, kerosene
灯油の名は、自動車の発明以前、まだ石油製品の多様化が進まず、光源としての灯油が唯一の石油製品として使用されていた時代の名残といえる。灯油は、比重 0.78 ~ 0.83 程度、沸点範囲 145 ~ 300 ℃程度の留分で、原油蒸留の際、ガソリンと軽油との間に留出する留分で、主として水素化精製により硫黄分などの不純物を除去・精製した無色または淡黄色、透明の石油臭を持った製品である。灯油成分中の炭素と水素の重量比( C/H 比)は 6 ~ 7 、すなわち炭素約 86 ~ 88 重量%、水素約 12 ~ 14 重量%である。灯油は、引火点が 40 ℃以上と比較的安全で、取り扱いが容易なことから、現在、家庭の暖房用およびちゅう房用として家庭燃料に欠かせないものになっているが、そのほか石油発動機用燃料、溶剤、機械洗浄用、石油乳剤製造原料に使用されている。また、その低硫黄性に着目して、近年、大気汚染防止規制の強化に伴い、都市のビル暖房用、火力発電所などでボイラー用燃料としても使用されている。日本工業規格(JIS)では灯火用および暖・ちゅう房用に使用する 1 号と溶剤および石油発動機燃料向けの 2 号に分類されている。前者は「白灯油」ともいい、その要求される品質としては、(1) 燃焼性が良いこと、そのためには発煙成分が少ないこと、(2) 安全性が高いこと、(3) 十分な揮発性を有すること、すなわち高沸点留分が存在しないこと、そのため、沸点範囲は 145 ~ 270 ℃程度のものが要求されること、(4) 腐食性物質は無害な程度まで少ないことなどが挙げられる。石油発動機用灯油は、白灯油ほど精製する必要がなく、やや色があるため「茶灯油」と呼ばれている。また、沸点範囲も白灯油よりも高く、150 ~ 300 ℃程度である。溶剤あるいは洗浄用の灯油は、アスファルトのカットバック用にも用いられる。沸点範囲は 140 ~ 220 ℃程度で、それぞれ用途により異なった品質が要求されるが、溶剤としては溶解度が重要な性質なので、芳香族炭化水素の量やアニリン点が重要視される。 |
灯油
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/28 16:06 UTC 版)
灯油(燈油、とうゆ)は、灯火用の液体燃料の総称。また、石油製品の一種。
注釈
- ^ ケロシンからはさらに高品質化することでジェット燃料やロケット燃料が作られる。灯油に利用されないケロシンは製油所で軽油の成分としても転用される。
- ^ 1996年以前は150 ppm以下。
- ^ セーボルト色とは、液体の透明度を数値で示したもの。
- ^ 関東以南では750 kg〜1トン積みの小型トラックの配達用ローリーも多い。軽自動車の石油配達用ローリーも存在するが、軽商用車の積載量は最大でも350 kgであるため400リットル程度しか積載できず、少数派である。
- ^ 例えば、北海道庁環境生活部生活局くらし安全課(2008年12月3日閲覧)では毎月の灯油価格を調査しているが、1リットルと18リットルで価格を表示している。
- ^ 総務省統計局による小売物価統計調査 (PDF) (2008年12月3日閲覧)では、ガソリンは1リットル当たりの価格であるのに対して、灯油は18リットル当たりの価格で調査されている。
- ^ 北海道では個人住居の場合500リットルが上限[16]
出典
- ^ a b c 『Fielder vol.26 野火のすべて』笠倉出版社、2016年、57頁
- ^ 『歴史学事典13』弘文堂、2006年、372頁
- ^ 『Charles Jabez Rogers, Captain』、メイン州海事博物館。
- ^ a b “高位発熱量と低位発熱量”. 日本冷凍空調学会. 2022年8月19日閲覧。
- ^ a b “総合エネルギー / 基礎知識 各種燃料比較”. 岩谷産業. 2022年8月19日閲覧。
- ^ 総務省統計局ホームページ ガソリン/灯油の価格動向(2008年12月3日閲覧)
- ^ a b c d e 中野 幸弘. “石油製品試験方法規格の整備について” (PDF). ENEOS Technical Review・第58巻第1号. 2022年1月25日閲覧。
- ^ 日本産業標準調査会、JIS K2203、2007
- ^ “災害などに備えて燃料を備蓄される皆様へ”. 石油連盟 広報部. 2022年8月16日閲覧。
- ^ 京都府. “前シーズンに残ってしまった灯油はもう使えない?”. 京都府. 2019年10月9日閲覧。
- ^ 「無駄な買い物100万本 効果ない石油添加剤」『朝日新聞』昭和48年2月7日朝刊、13面、3面
- ^ a b c “自動車燃料油に関する欧州の品質強化と石油産業の対応” (PDF). 日本エネルギー経済研究所. 2017年8月15日閲覧。
- ^ “日韓対立で灯油の供給不足や値上がりも-韓国が対日輸出禁止なら”. Bloomberg (2019年8月19日). 2019年8月21日閲覧。
- ^ “灯油ポリタンクの色は地域で違う!?その理由とは”. ウェザーニュース. 2023年1月28日閲覧。
- ^ グラフで見る石油・ガス2016 (PDF) 経済産業省(2016年 11月、2021年8月17日閲覧)
- ^ “危険物の貯蔵、取扱い、運搬のQ&A/札幌市”. 2017年12月1日閲覧。
- ^ “揮発油税法(昭和32年法律第55号)第16条、第16条の2”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2019年3月29日). 2020年1月16日閲覧。
- ^ ガソリンエンジンを“灯油仕様”に改造する!? 3年で消えたキテレツ装置 【旧車雑誌オールドタイマーより】 - ドライバーWeb・2023年8月17日
- 1 灯油とは
- 2 灯油の概要
- 3 各地域での利用と法規制
- 4 脚注
灯油
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/03/13 08:30 UTC 版)
「EXIT TUNESプレゼンツ 週刊3D 出口はドコだ!?」の記事における「灯油」の解説
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「灯油」の例文・使い方・用例・文例
- あなたの家のタンクに灯油はまだ入ってますか?
- 燃料としては市販の灯油をご利用頂けます。
- 灯油以外の、ガソリンなどの燃料はご利用頂けません。
- 雪の多いところでは、灯油は必需品です。
- こんな寒いときは灯油を倹約しなくてもいい.
- 政府は石油会社にガソリンや灯油の値上げを自粛するよう要請した.
- 予想される品薄に乗じて灯油の価格を吊り上げた.
- 冬は 1 日に 2 回ストーブのタンクに灯油を補充しなくてはならない.
- ストーブのタンクから溢れた灯油はたちまちぼっと燃え上がった.
- 灯油で動くジェットエンジン
- 加熱または調理のために(灯油のように)油を燃やすヒーター
- 明り用の(灯油のような)油を燃焼させるランプ
- 燃料を毛管作用によって炎の中に導く(ろうそくや灯油ランプの)ゆるく撚ったコード
- 石油の炭化水素分子が促進剤の存在下で高圧下の水素の追加により灯油とガソリンに分解される過程
- 灯油
- 魚の脂からとった灯油
- 灯油を燃料とする内燃機関
- 油皿に灯油を注ぎ足すこと
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