怖すぎる二重人格な部下とどう接するべきか深く悩んだ話。
女は女優
そんな言葉がある通り、女性の部下が多い職場にいると、
彼女たちの「演技」に振り回さわれることは多いです。
彼女たちが本当の想いと裏腹に見せる笑顔や涙に、
何度も仕事における判断を躊躇させられたことでしょうか。
その中でも、Yさんという部下の圧倒的な演技力の前に、
僕は恐怖すら覚えた経験があります。
そして、そのような誰もが持つ二面性に対して、どうやって接していくべきなのか?
についても深く考えさせられました。
強烈な二重人格のYさん
僕がマネージャーとして着任した当初、
部下である現場のメンバーで一番親近感をもっていたのが、Yさんです。
小柄で小動物的な笑顔が可愛く、
でも、動きはテキパキ、発言もハキハキした女性でした。
高校を卒業してアルバイトで入社して、
5年目で正社員にまで上がっている優等生でした。
つまり、大卒の新入社員とちょうど同じ年齢で正社員になったのです。
僕の会社の規模感や人事制度から考えても、
かなり異例の速さでした。
しかし、彼女の性格の特異性に気が付いたのは、
すぐの出来事でした。
自分の部下である新入社員のメンバーに、話す機会があり、
「何か困ったことはある?」
という質問をすると、
「Yさんと仕事がやりづらい。」
と皆が口をそろえて言うのです。
具体的な事実としては、こんなことがあるそうです。
- 挨拶をしても無視される。
- 何も教えてくれない。
- 失敗するとバックヤードに呼び出してめちゃくちゃ怒る。
- 明らかな私用を押し付けられる。
そして、話しかけてこないのに、
常にあらさがしの為に、監視されているよう感じる。
なぜなら、理不尽な注意を受けたり、私用を押し付けられるのは、
決まって上司や先輩が誰もいないタイミングだというのです。
正直、僕はあのYさんがそんなことするのかなぁ。
と半信半疑でした。
ほとんど、新入社員の彼らが言っていることの裏づけになるようなことが、
思い当たらなかったからです。
しかし、ある日衝撃的な場面を目撃してしまいました。
その日は、珍しく僕が商品の確認があり売場のバックヤードに入りました。
そこはちょうど、Yさんが担当する売場でした。
すると、人影が見えたと思ったら、
Yさんが僕の聞いたことないような口調で、
新入社員のD君に詰め寄っていました。
「この前も同じこと言ったよね?
何回、同じミスしてるの?
私が新入社員の時は、こんなミス絶対しなかったよ?
この仕事向いてないんじゃない?
学歴は高いかもしれないけど、仕事は全然だめだよね。
転職でもしたらどう?」
そこでようやく、
「二人とも…何かあったのか?」
と僕が声をかけると、
Yさんが一瞬ハッとした表情をしましたが、
すぐにいつもの笑顔に戻って、僕に歩み寄ってきました。
「マネージャー!?こんなところで何やってるんですかー?
珍しいですねー。何かお手伝いすることありますかー?」
「それよりも、D君がなんかしたの?」
「なんかー。
D君っておっちょこちょいでー、何回も同じミスしちゃうんですよー。
だから、私がちょっとお説教しちゃってました。」(てへへ)
「ずいぶん、キツい感じだったけど大丈夫?」
「ちょっと言い過ぎちゃったかも??ごめんなさい、マネージャー。
でも、私の事嫌いにならないでくださいね。」
そういって、Yさんは僕の手を握ってきました。
Yさんは、全く反省している様子はありませんでしたが、
さすがに、その状況は第三者に見られたらマズいし、
形式上だけでも彼女が反省の弁を述べている以上、
そこで引き下がるしかありませんでした。
この出来事で、新入社員が語っていた「Yさんとのやりづらさ」について
確信を持ちました。
しかし、僕に見られたくない現場を目撃されながら、
あそこまで開き直って、自分が不利にならない切り替えしを演じた彼女は、
「女優」としか言いようがありませんでした。
彼女は知っているのかわかりませんが、
そのバックヤードには監視カメラがあり、
万が一、僕がYさんと手を握っている場面だけを切り取られようものなら、
完全に僕が不利です。
つまり、逆に僕が弱みを握られてしまったということです。
かといって、この状況を放置するわけにもいかない。
非常に難しい問題だと思いました。
Yさんのプライドとコンプレックス
彼女は以前から自分の家庭の「貧困」や「高卒」という学歴に対して、
かなりコンプレックスを持っているという話を本人からも聞いていました。
シングルマザーの家庭で、裕福とは遠い環境で育った彼女は18歳から親元を離れて一人暮らしをしており、自分の力で稼がなくてはいけないという意識が強かったように思います。
その状況の中で、
上司や先輩に対して「気に入られる」努力を人一倍して、
彼女なりのスピード出世をしたのだと思います。
(他方面から聞いた話では、人事部のマネージャーと一夜を過ごしたとか、過ごさないとか、真偽不明の噂もありますが…)
そんなプライドの高い彼女にとって、同じ年だけど、社歴も実務能力も下、
しかし、将来的には彼女より確実に早いキャリアを歩む大卒の新入社員の存在が、
気に入らなかったのかもしれません。
そして、上の人間には取り入るが、下の人間は徹底的に排除する。
というような極端な思考になってしまっていたのだろうと感じています。
二面性と向き合う
現実的な問題として、
Yさんの性格を根本的に変えるというのは不可能だと感じました。
少し調べたところ、彼女には解離性同一性障害(https://ja.wikipedia.org/wiki/解離性同一性障害)の特徴がいくつか当てはまり、すこしその気が少しあるのではないかと思ったからです。
医者でもない僕が、そこに介入するのは危険だと思いましたし、
Yさんに「君には障害があるかもしれないから診断を受けてくれ」なんてことも、
言えるはずがありませんでした。
診断結果によっては、今後の彼女の人生を大きく左右してしまうものかもしれないからです。
しかし、僕ができる範囲で部下としての彼女との接し方について、
また、彼女自身に見直してもらうべきこともあると思いました。
そして、僕は2つのことを考えました。
もう一人のYさんを受け入れる。
Yさんの別の一面を目の当たりにしたことで、
僕はYさんを優等生扱いしすぎていた部分があったかもしれないと反省しました。
僕の過剰な期待は、彼女にとってある種プレッシャーだったのかもしれません。
その期待に応えようとすればするほど、
もう一つの弱さがある自分との乖離してしまい、
自分のコントロールもできなくなっていってしまった部分があるのではないかと。
急にYさんに冷たくするという訳ではありませんが、
あまり彼女を舞い上がらせるような言動は控えるように気をつけなければならないと
思いました。
新しい動機付けをする。
Yさんの仕事の動機は、家庭環境なども影響しているとは思いますが、
「お金さえあれば自分は幸せになれる」という部分が強いように思いました。
これを心理学では、「衛生要因」と呼んだりしますが、
「衛生要因」というのは、あくまで不満を取り除くための要素であり、
それだけで、人生における満足感が満たされることはありません。
つまり、Yさんが仮にどれだけお金を手にしたとしても、
彼女の望む幸せは手に入れることができないだろうということです。
では、必要なのは何かというと、
「動機付け要因」と呼ばれるものだと思います。
それは、仕事における
- やりがい
- 興味
- 関心
これらのものが当てはまります。
Yさんとのコミュニケーションにおいては積極的に、
この「動機付け要因」を彼女自身に見つけてもらうような、
努力を僕自身もする必要があると感じています。
Yさんのその後
あの衝撃的な出来事があった後も、
Yさんは僕に対して何事もなかったように、
笑顔を振りまいてくれました。
僕の方が少しぎこちない反応になってしまうくらいでした。
しかし、これからはきちんと彼女の二面性も受け入れながら、
適切なコミュニケーションを取らなければと思います。
ある意味被害者になってしまっていた新入社員のメンバーに対しては、
僕が考えているYさんについてのことを、かなりオブラートに包んで話した上で、
お互いに我慢することや、受け入れることも大事であること、そしてまた何かあったらすぐに相談してほしいということを伝えました。
彼らなりには腑に落ちないという感じでしたが、
僕も気持ちは同じです。
ダイバーシティなどと言われますが、様々な人が集まって働く組織の中で、
全員が生き生きと気持ちよく働くことができる。
そんな環境っていうのは、本当に難しいなと改めて思わされます。