“Coffee Lake-S Refresh”―Core i 9000 seriesは第1弾となるKモデルこそ昨年晩秋に登場した。そして今年4月にKモデル以外の無印モデルやTモデルが発表されはしたものの、14nmプロセスの製造容量逼迫もあってかなかなか自作PC市場に製品が流通しなかった。
最近になり、ようやくTDP65Wの無印モデルが出回るようになった。
今回取り上げるのはCore i 9000 seriesでTDP65Wの無印モデルの最上位となるCore i9 9900である。先代のTDP65Wの無印モデルの最上位となるCore i7 8700と比較する形で簡単なレビューをお届けしたい。
最近になり、ようやくTDP65Wの無印モデルが出回るようになった。
今回取り上げるのはCore i 9000 seriesでTDP65Wの無印モデルの最上位となるCore i9 9900である。先代のTDP65Wの無印モデルの最上位となるCore i7 8700と比較する形で簡単なレビューをお届けしたい。
まずCore i9 9900とCore i7 8700のスペックが以下である。
Core i9 9900, i7 8700(14nm++ / LGA1151) | |||||
コア数 スレッド数 | キャッシュ | iGPU | TDP | ||
周波数 | メモリ | EU数 | GPU周波数 | ||
Core i9 9900 | 8-core 16-thread | L2=256KB×8 L3=16MB | UHD Graphics 630 | 65W | |
3.10GHz TB 5.00GHz | 2ch DDR4-2666 | 24 | Base 350MHz Max 1200MHz | '19/4/23 $439 | |
Core i7 8700 | 6-core 12-thread | L2=256KB×6 L3=12MB | UHD Graphics 630 | 65W | |
3.20GHz TB 4.60GHz | 2ch DDR4-2666 | 24 | Base 350MHz Max 1200MHz | '17/10/5 $303 |
6-core/12-threadから8-core/16-threadとコア/スレッド数が増加していることがわかる。周波数も定格周波数こそ100MHz低下しているが、Boost時周波数は400MHz上昇している。
Core i9 9900 CPU-Zのスクリーンショット。
Steppingは最新のR0となる。R0 steppingを使用する場合、OSの再インストールが必要と告知されている。実際のところは再インストールなしでもOSは立ち上がって来るが、今回の測定はOSを再インストールした上で行っている。
左がCore i9 9900、右がCore i7 8700である。微妙にヒートスプレッダの形状が異なるのがわかる。
〇環境
・CPU:Core i9 9900, i7 8700
・M/B:ASUS R.O.G. STRIX Z370-G Gaming
・GPU:Quadro P2000
・memory:DDR4-2666 16GB×4
・Storage:東芝XG-3 256GB
・Case:abee acubic G40 (MicroATX)
まずは各種ベンチマーク。
Core i7 8700→Core i9 9900によりコア/スレッド数増加、定格周波数微減・Boost時周波数上昇となるので、いずれのベンチマークにしろ基本的には下がる要素はないはずである。
PCMark 10も概ねはその傾向に乗っ取っているのだが、Productivityの項目だけは何故か1割ほど下がってしまっており、これが足を引っ張ってか総合スコアの差が縮まってしまっている。
8-core/16-threadを使い切れておらず、さらには狭小ケースゆえBoost時の周波数上昇もCore i7 8700と比較して芳しくなかったのかもしれない。
CineBenchは非常にわかりやすく、コア/スレッド数の増加が良く効いている。
逆にコア/スレッド数の増加の恩恵があまりないのがFF14である。Boostの効きが悪いことも足を引っ張ってしまっているのかもしれない。
Blenderはそこそこ差をつけている。
Photoshop CS 5.1のCamera Rawで100枚の写真を現像させた際にかかった時間を計測したものである。18秒ほど縮まっている。
さて動作温度である。総じてCore i9 9900の方が高い傾向にある。後述するが、Core i9 9900の方がTurbo Boostで容赦なく周波数を上げる傾向があり、それゆえ負荷時の最大の温度は高くなる傾向にある。しかしながら、狭小ケースの場合、すぐにBoostの効きが悪くなって周波数が落ち、長時間の負荷時はCore i7 8700と同じ程度の温度の動作となる。
Boostの効きをよくしたいとなるとケースやクーラーに気を遣う必要があるが、とりあえず定格動作させるだけなら、Core i7 8700と同程度の環境でも良さそうである。最初の1分程だけ熱くなるが、すぐに適切な温度と周波数に切り替わってくれるため、熱暴走を招く心配はなさそうである。このあたりは温度・周波数管理が優秀とも言えるが、第9世代はTurboBoostで強引に性能を上げている節も感じられる。
(訂正:Comer Raw→Camera Raw)
そしてTurboBoostのやや強引とも言える周波数上昇は消費電力にも影響を及ぼしている。
Idle時の消費電力は誤差程度であるが、最大負荷時の消費電力は50W近い差が生じている。実際のタスクに近いであろう写真現像においてもそこそこの差が生じており、温度が許す限りにおいてはCore i9 9900の方が消費電力が高くなる傾向が見て取れる。では温度が許さなくなったら? というのがOCCT Averageの状態でCore i9 9900とi7 8700の差は小さなものとなる。どちらも狭小ケースの環境ではBoost時の最大周波数を維持したままの長時間動作は無理のようで、すぐに周波数を下げて動作温度を70℃前後にとどめる。
前述の通り、温度についてはCPU側が適切に調整してくれるのでCore i7 8700と同程度の冷却機構でCore i9 9900を動作させることはできる。一方、消費電力はCore i9 9900が高い傾向になり、最大瞬間風速的とはいえどi7 8700との差は無視できないものであるため、電源についてはi7 8700環境でギリギリの容量のものでi9 9900を動かすのはお勧めできない。
OCCT v5.3.2ではこのテストレポートの画面をとれるのは1度きりで、i7 8700については上述の画面を得られたものの、i9 9900の画面は得られていない点はご容赦いただきたい。
Core i7 8700の場合、まず4.11GHzまで周波数を上昇させるものの、30秒ほどで3.30~3.40GHzに周波数が落ちる。そしてこの周波数で70℃前後の動作温度を維持する。
Core i9 9900はもっと極端で、4.50GHzまで周波数を引き上げるものの、10~20秒程度で周波数が落ち。3.40GHzでやはり70℃前後の動作温度に落ち着く。
一応どちらも定格周波数よりも若干高い周波数を維持することには成功しているが、Core i9 9900については最大性能を得ようとすると冷却機構・電力ともにCore i7 8700よりもシビアなものとなり、同等の環境の場合はBoost時の上げ幅をより妥協することになる。
「Core i9-9900K」再テスト結果報告。定格のTDP 95Wで動作させると「ゲーム用の最速CPU」は何が変わるか?(4Gamer.net)
Core i 9000 seriesはTurboBoostが強くかかり、結果消費電力・発熱の増加を招いていることはCore i9 9900Kのレビュー時に指摘されている。その対策としてマザーボードのBIOSの設定を調整して“TDP95WのCPU”らしい動作にする方法が紹介されており、消費電力低減に一定の効果を挙げることが可能である。Core i9 9900においてもBIOSの設定を調整することにより“TDP65WのCPU”らしい動作をさせれば、最大消費電力の抑制を図ることができるだろう。具体的にはPL1 (Long Duration Package Power Limit) の値を65に、PL2 (Short Duration Package Power Limit) をPL1の1.25倍の81に、Tau (Package Power Time Window) を1に設定すれば、“TDP65WのCPU”らしい動作に収められるだろう。
・・・これを書く前はTDP65Wの“無印モデル”であれば(“Kモデル”と異なり)消費電力や発熱の増大は少ないだろうと予想していたのだが、結果としては“Kモデル”と同様の傾向が“無印モデル”にも生じていた。確かにBoostの効きをよくすることで性能は上げられるのだが、性能と発熱・消費電力のバランスを求めたいTDP65Wモデルにおいてはその挙動は少々強引な印象である。
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この記事へのコメント
省電力期待して小型ケースに入れたら不安定になりそう
電源の出力低下を検知してブーストやめるとかあるのかな?
電源の出力低下を検知してブーストやめるとかあるのかな?
2019/08/25(Sun) 12:31 | URL | LGA774 #-[ 編集]
インテルもZen2対策にかなり苦しんでる印象
14nmでは消費電力を抑えたまま多コア&高クロック化は難しいんでしょうな
8000系まではTB込みでTDP枠に収まってたんですけどね…(´・ω・`)
14nmでは消費電力を抑えたまま多コア&高クロック化は難しいんでしょうな
8000系まではTB込みでTDP枠に収まってたんですけどね…(´・ω・`)
2019/08/25(Sun) 13:56 | URL | LGA774 #-[ 編集]
こりゃーDeskMiniに突っ込めそうにありませんな…
2019/08/25(Sun) 22:32 | URL | LGA774 #-[ 編集]
安価な下位品種でも性能向上すること自体は良いことだけど
省エネを重視してあえて下位品種を買ってる人にとってはたまったものじゃないな
省エネを重視してあえて下位品種を買ってる人にとってはたまったものじゃないな
2019/08/26(Mon) 01:00 | URL | LGA774 #-[ 編集]
おお ついに出たか 待望のレビュー。
じっくりと拝見させていただきます。
じっくりと拝見させていただきます。
2019/08/26(Mon) 06:40 | URL | LGA774 #-[ 編集]
FF14の結果から UHDGgra.の性能に左右されている程度の違いとみました。8700のシリコンから OCできるものを選抜して8coreにしたような いや 周波数を落としているから 8coreにできたけど あまり電力を上げれないのを 65W定格にしたのか。来年はピン数も変わりそうだし 待ち かなぁ。
2019/08/26(Mon) 06:50 | URL | LGA774 #-[ 編集]
9900Kと値段変わらないから、こっちかって普段はアプリかなんかで制御してクロック抑えたほうがいいのでは?
2019/08/26(Mon) 12:47 | URL | _ #-[ 編集]
とても有益なレポートありがとうございます
やはりノート向けでベース低くTB高いIce Lakeは実質性能出なさそうですね
やはりノート向けでベース低くTB高いIce Lakeは実質性能出なさそうですね
2019/08/27(Tue) 02:09 | URL | LGA774 #-[ 編集]
まあPLを弄ればいいのでは
性能はその分落ちるけど小型PCを全力でぶん回すのは用途違いですからね
性能はその分落ちるけど小型PCを全力でぶん回すのは用途違いですからね
2019/08/27(Tue) 09:14 | URL | LGA774 #EBUSheBA[ 編集]
BOXなら採算度外視でXeon、他はノートで良い時代になりました。
2019/11/14(Thu) 22:14 | URL | LGA774 #-[ 編集]
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