高校日本史用語事典

室町幕府（むろまちばくふ）
足利尊氏が京都に開いた武家政権。
名は3代将軍足利義満が建てた室町殿（花の御所）にちなむ。
将軍（征夷大将軍）には足利氏がなり、足利幕府ともいう。
成立時期には諸説があるが、建武式目を定めた1336年とすることが有力。
（足利尊氏が征夷大将軍となったのは1338年だった。）
守護大名が連合したもので、守護同士の対立や内紛で揺れることが多かった。
京都には鎌倉幕府に倣って侍所、政所、問注所、評定衆、引付衆などが置かれたが、特に侍所と政所が力を持った。
また、管領（初期は執事）が将軍を補佐した。
地方では鎌倉府が東国を管轄し、他に九州探題、奥州探題、羽州探題なども置かれた。
南北朝時代の時期は、南北朝の動乱や観応の擾乱などで混乱した。
3代将軍足利義満のときには、南北朝合一や有力守護大名の削減によって公武を従える政権をつくることができた。
6代将軍足利義教は守護大名を抑圧したが嘉吉の乱を招き、8代将軍足利義政は守護大名の統制に失敗して応仁の乱（応仁・文明の乱）が起きた。
1493年の明応の政変からは細川氏が幕府の実権を握り、戦国時代になると地方は戦国大名の領国となった。
1573年、15代将軍足利義昭が織田信長によって京から追放されたことで滅んだ。

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公方（くぼう）
将軍（征夷大将軍）などを指した語。
もとは公務の意味で、「公家の方」のこととして天皇や朝廷のことをいった。
鎌倉時代後期までには、鎌倉幕府の将軍や幕府、得宗、守護、荘園領主などのことをいうようになった。
室町時代には室町幕府の将軍以外に関東公方（鎌倉公方）ように鎌倉府などの長のこともいった。
江戸時代には江戸幕府の将軍をことをいった。

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管領（かんれい）
室町幕府の将軍を補佐し、政務を統轄した役職。
初期は執事といった。
主に三管領（三管）の細川氏、斯波氏、畠山氏から任じられるようになった。
応仁の乱の後に細川氏が実権を握ると、管領も細川氏が続いた。
鎌倉府の補佐役は関東管領といった。

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三管領（さんかんれい）
室町幕府の管領に任じられた武家。
細川氏、斯波氏、畠山氏のこと。
いずれも足利氏の一族。
三管ともいう。
侍所所司となった四職とともに、三管四職などともいう。

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細川氏（ほそかわし）
足利氏の一族。
鎌倉時代の所領があった三河国の細川郷を名字とした。
鎌倉時代から足利氏に従い、室町時代には瀬戸内海東部や四国に勢力を広げて室町幕府の有力な守護大名となっていった。
細川清氏が2代将軍足利義詮の執事となり、細川頼之は3代将軍足利義満の管領となった。
細川氏の中の京兆家が三管領（三管）の一つとして多くの管領を出し、摂津国、丹波国、讃岐国、土佐国の守護となった。
庶家も和泉国、阿波国、淡路国、備中国の守護となった。
応仁の乱（応仁・文明の乱）では細川勝元が管領となって東軍を率いた。
1493年には細川政元が明応の政変で室町幕府の実権を握り、細川氏が管領を独占するようになった。
一方で細川政元が殺害されると内紛が続き、細川晴元のときには三好氏に実権を奪われた。
庶家の細川藤孝は織田信長に仕えるようになり、その子の細川忠興は江戸時代に豊前小倉藩主、子孫は肥後熊本藩54万石の藩主として続いた。
江戸時代中期には藩政改革を行なった細川重賢が出た。
平成には細川護熙が内閣総理大臣となった。

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斯波氏（しばし）
足利氏の一族。
鎌倉時代の所領があった陸奥国の斯波郡を名字とした。
足利氏の中では宗家に次ぐ家格で、南北朝時代には足利尊氏に従って北陸に勢力を広げた。
越前国の守護となって本拠とし、尾張国、遠江国でも代々守護となった。
斯波義将が管領となってから三管領（三管）の一つとして何人もの管領を出した。
斯波義健の死後、斯波義敏と斯波義廉が家督を争って応仁の乱（応仁・文明の乱）の一要因となった。
乱後は衰え、越前国は守護代の朝倉氏、尾張国も守護代の織田氏に実権を奪われた。
遠江国は隣国の今川氏に奪われた。
一族からは奥州探題となった大崎氏、羽州探題となった最上氏が出た。

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畠山氏（はたけやまし）
足利氏の一族。
鎌倉時代に桓武平氏の畠山重忠の妻と再婚した足利義純の子が畠山氏の名を継いだ。
足利氏の中では宗家、斯波氏に次ぐ家格で、南北朝時代には足利尊氏に従った。
嫡流はふるわず、陸奥国の二本松で続いていたが安土桃山時代になって伊達政宗に滅ぼされた。
一方で畠山基国の流れは室町幕府の管領を出し、三管領（三管）として有力な守護大名となった。
越中国、河内国、紀伊国の守護となり、畠山満家のときには4代将軍足利義持から6代将軍足利義教まで政治の実権を握った。
しかし畠山持国の後継を畠山持富から畠山義就に変えたことで、持富の子の畠山政長らと畠山義就が争うようになり応仁の乱（応仁・文明の乱）の一要因となった。
乱後も対立は続き山城の国一揆を招き、戦国時代には衰えた。
他に能登国の守護となった流れは戦国大名となったが、上杉謙信に滅ぼされた。

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侍所（さむらいどころ）（室町幕府）
室町幕府で武士の統率や京都の治安、裁判などを司った機関。
別当は置かれず、所司が長官だった。
所司は山城国（京都府南部）の守護を兼ねることもあった。
土岐氏などが所司になることもあったが、主に赤松氏、一色氏、山名氏、京極氏の四職が任じられるようになった。

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四職（ししき）
室町幕府の侍所所司に任じられた武家。
赤松氏、一色氏、山名氏、京極氏のこと。
いずれも室町幕府の有力な守護大名だった。
管領となった三管領（三管）とともに、三管四職などともいう。

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赤松氏（あかまつし）
播磨国（兵庫県西部）の豪族。
村上源氏。
鎌倉時代には播磨国の地頭だったが、鎌倉時代末に赤松則村（赤松円心）が挙兵して足利尊氏とともに行動した。
室町幕府では播磨国などの守護となり、四職として侍所所司を何人も出す有力な守護大名となった。
1441年に嘉吉の乱で赤松満祐が没落したが、1456年に後南朝から神璽を奪還したことで復権していった。
戦国時代になると守護代の浦上氏に実権を奪われた。

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一色氏（いっしきし）
足利氏の一族。
鎌倉時代の所領があった三河国の吉良荘一色を名字とした。
南北朝時代には足利尊氏に従って、鎮西管領（九州探題）となった。
九州撤退後、室町幕府では丹後国、若狭国などの守護となり、四職として侍所所司を何人も出す有力な守護大名となった。
一色義貫は幕府内で重きをなしたが、1440年に6代将軍足利義教の命によって殺害され、以降は衰えた。
戦国時代まで丹後国の守護大名として続いたが、織田信長のときに細川藤孝（細川幽斎）、細川忠興に滅ぼされた。

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山名氏（やまなし）
新田氏の一族。
平安時代末期から所領があった上野国の山名郷を名字とした。
南北朝時代には新田氏ではなく足利尊氏に従っていたが、観応の擾乱で足利直義方となり、その後は南朝で活動した。
2代将軍足利義詮のときに北朝に戻り、伯耆国、因幡国（鳥取県）など山陰を中心に勢力を広げた有力守護大名となった。
室町幕府では四職として侍所所司を何人も出した。
南北朝時代末には一族で11か国の守護となり六分一衆（六分一殿）と称された。
1391年、一族の内紛から明徳の乱で山名氏清らが3代将軍足利義満に滅ぼされて衰えた。
1399年、応永の乱の功績で再び中国地方に勢力を広げた。
山名持豊（山名宗全）のときには、1441年に嘉吉の乱を治めたことで大勢力となり、応仁の乱（応仁・文明の乱）では西軍を率いた。
乱後は衰えたが、戦国時代には因幡国と但馬国の戦国大名となった。
最後は羽柴秀吉（豊臣秀吉）に攻められ、織田信長に従った。

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京極氏（きょうごくし）
近江国の佐々木氏の一族。
宇多源氏。
鎌倉時代には六波羅探題の御家人で、京都の京極高辻に住まいがあったことから名字とした。
室町幕府では四職として侍所所司を何人も出した。
近江北部に勢力を持つ守護大名となり、同じ佐々木氏から分かれた六角氏が近江南部を支配する守護大名となった。
南北朝時代には佐々木高氏（佐々木道誉）が足利尊氏に従い、多くの国の守護となって惣領だった六角氏を上回った。
応仁の乱（応仁・文明の乱）で衰え、戦国時代には出雲国で一族の尼子氏に、近江国北部で浅井氏に実権を奪われた。
京極高次が豊臣秀吉に仕えて大名として再興し、江戸時代にも外様大名として続いた。

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政所（まんどころ）（室町幕府）
室町幕府で財政などを司った機関。
別当は置かれず、執事が長官だった。
政所執事は二階堂氏、次いで伊勢氏がなった。
土地や貸借の訴訟、酒屋や土倉の統制なども担当した。

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伊勢氏（いせし）
桓武平氏の流れの武家。
鎌倉時代に伊勢守になり、伊勢氏を称したという。
室町幕府で二階堂氏に続いて政所執事となって世襲した。
8代将軍足利義政のときには伊勢貞親が権勢を振るったが、1466年に失脚した。
政治は混乱し、翌年からの応仁の乱（応仁・文明の乱）に発展した。
武家の故実である伊勢流を伝えた。
また一族からは伊勢宗瑞（伊勢盛時 、北条早雲）が出て戦国大名となり、子孫は北条氏（後北条氏）を称した。

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問注所（もんちゅうじょ）（室町幕府）
室町幕府で記録や文書の保管などを司った機関。
長官は執事で、三善氏の一族が世襲した。
鎌倉幕府の問注所と異なり、訴訟の取り扱いはしなくなっていった。

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奉行人（ぶぎょうにん）
室町幕府などで実務を行なった者。
政務や訴訟など担当がわかれていた。
3代将軍足利義満から6代将軍足利義教のころまでに官僚として整備されていった。

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奉公衆（ほうこうしゅう）
室町幕府の直轄軍。
足利氏や守護大名の一族、古くから足利氏に仕えていた者などがなった。
平時は将軍の近くに仕えた。
6代将軍足利義教のころまでに確立し、応仁の乱後の明応の政変で衰えた。
守護大名を牽制することとなった。

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御料所（ごりょうしょ）
直轄領のこと。
特定の費用（料）にあてるための所領を料所といい、天皇などのものを御料所といった。
室町幕府や江戸幕府、大名の直轄領を御料所というようになった。
室町幕府では奉公衆に預けられるなどした。

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鎌倉府（かまくらふ）、関東府（かんとうふ）
室町幕府の東国を管轄した地方機関。
鎌倉に置かれた。
長官は鎌倉公方（関東公方）で、関東管領が補佐した。
関東8ヶ国と甲斐国、伊豆国を管轄し、信濃国を含むこと、東北地方の陸奥国、出羽国を含むこともあった。
機構は中央の幕府と同様のものが整備され、独立性が高かった。
15世紀には幕府との対立や鎌倉公方と関東管領の対立があり、永享の乱や享徳の乱が起こった。
鎌倉公方が鎌倉を追われて古河に移り（古河公方）、関東管領の上杉氏に内紛が起こるなど機能しなくなっていった。

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