医薬品ネット販売解禁にひと言
案の定といえばそれまでだが、いっときあれだけ勢いのあった安倍晋三政権に陰りが見え始めている。アベノミクス三本の矢の最後、成長戦略の素案について6月5日、東京都内でご本人が鼻を膨らませて講演している最中、株式相場が急落。ようやく世間が、中身のない経済政策の正体に気付き始めている。
本欄で書いてきた通り、今度の成長戦略は、ほとんどが小泉政権時代の焼き直しだ。が、実はここへ来てそれすらも後退。成長戦略の素案では、参院選を気にして農業への株式会社参入や医療分野の混同診療などのテーマを先送りした。
ゆえに限りなく具体性の乏しい政策に落ち着いているわけだが、その中でも数少ない具体策が市販医薬品のインターネット販売だ。ここだけは、「すべての販売を解禁する」と威勢がいい。
この薬のネット販売におけるキーマンが、楽天社長の三木谷浩史である。安倍が頼りにする有識者で構成された3つの諮問会議「経済財政諮問会議」「規制改革会議」とともに設置された「産業競争力会議」の中核メンバーだ。
三木谷率いる楽天にとって、従来禁止されてきた医薬品のネット販売は新たなビジネスチャンスになる。まるでそれを狙ったかのような〝我田引水政策〟だという指摘が絶えない。いまや新たな政商として、注目されているのが、楽天の三木谷浩史なのである。
今回の成長戦略では、副作用のリスクの高い25の薬品をネット販売品目に加えるかどうか、これから厚生労働省の検討会で判断をするという。が、その25品目は風邪薬や胃薬など、市販薬全体のわずか1%にも満たない。検討会でそれらが医師の処方箋が必要な薬局扱いとなり市販薬から除外される可能性も高いが、となれば市販薬はネットと店頭販売の垣根がなくなる。
わが意を得たりの楽天三木谷、税金を使ったインターネットのインフラ整備を言い出す始末だ。
もともと多くの医薬品は緊急時に必要だから、ネット販売にそぐわないと思います。