国土強靭化計画の正体
〈佐藤信秋参議院議員のパーティー券について、九州各県が50万円で足並みを揃えることを報告した。本県は各地区協会と建産連(宮崎県建設産業団体連合会)加入団体に1万円宛(ずつ)、購入の協力を依頼することが了承された〉
会報二〇一二年十一月号でこう知らせを受けた宮崎県建設業協会の会員たちは、自民党政権復活への期待に胸を膨らませた。彼らはそこから、今年七月の参院選を睨んで動き出していた。
のちに詳しく触れるが、佐藤信秋は国土交通省の事務次官から政界に転身し、参議院議員になった。道路局長や技監を歴任した元大物官僚だ。目下、自民党国土強靱化総合調査会の副会長を務めている。宮崎県の建設業界は、その佐藤の改選に当たる参院選に向け、全面的なバックアップを決めた。県の建設業協会の会報で、そう報告しているのである。
そんな佐藤に対する建設業界の支援は、宮崎県に限った話ではない。機関誌では九州全体で足並みを揃えると書いてあるが、その支援体制は全国に行きわたっている。会報はこう続く。
〈また、全国の建設業協会会長が、同議員の後援会副会長に就任することが併せて報告された〉
建設業界あげてここまで熱を入れている理由は、言うまでもない。佐藤が今度の国土強靱化計画において中心的な役割を担っているからだ。さる五月二十日、その指針となる「防災・減災等に資する国土強靱化基本法案」が国会に提出された。連立を組む自民、公明両党の建設族議員が中核となってプロジェクトチームを組み、まとめられた議員立法である。
国土強靱化計画は、アベノミクスにおける三本の矢の一つ、「機動的な財政政策」に位置付けられてきた。自民党の重要政策である。昨年来、十年で二百兆円の事業規模を打ち出し、とかく話題になってきた。
民主党政権時代の三年三カ月をはじめ、この十年来、日本の公共事業が急速に減ってきただけに、建設業界の期待は想像以上に大きい。半面、二百兆円という事業規模の話題が先行する割に、具体的なプロジェクトのイメージは、湧かない。
また、自民党国土強靱化総合調査会が打ちあげたこの大きな花火には、バラマキ批判というアレルギーも少なくない。従来型のバラマキ公共工事なのか、そこに無駄はないのか、あるいはどこにそんな財政の余裕があるのか、といった不安も聞こえる。
危うさも見え隠れします。