根拠欠けるUSスチール買収阻止 背景に「強い製造業」への幻影

USスチールの製鉄所=米中西部ミシガン州で2024年4月4日、大久保渉撮影
USスチールの製鉄所=米中西部ミシガン州で2024年4月4日、大久保渉撮影

 バイデン米大統領が日本製鉄によるUSスチール買収を阻止した表向きの理由は「国家安全保障上のリスク」だった。しかし、相手は同盟国である日本の企業。根拠に欠ける判断の裏に見え隠れするのは「強い製造業」という過去にしがみつく米政治の現状と、虎視眈々(たんたん)と破談後の買収を狙うライバル企業の存在だ。

 「米国の国家安全保障を守るため、大統領として発動できるあらゆる権限を活用する。国の安全や強じんなサプライチェーンを守るため、私はためらうことなく行動する」。バイデン氏は3日の声明で、買収阻止の意義を強調した。

 鉄鋼業は国家安全保障上、重要な産業であり、外国企業による買収に対米外国投資委員会(CFIUS)が慎重な審査をするのは自然な流れだ。

米政府内でも「買収にリスク」は少数意見

 しかし、USスチール買収の相手国は同盟関係にある日本。2024年4月に岸田文雄前首相がバイデン氏と会談した際、共同声明に「日米同盟は前例のない高みに到達した」と明記したことからすると、バイデン氏の説明は強引さが否めない。

 米メディアによると、CFIUS内でも財務省や国務省など多くの政府高官が「問題ない」との判断を示しており「リスクがある」と主張したのは米通商代表部(USTR)など少数に限られていた。

 日鉄はバイデン氏の最終判断を目前にした12月下旬、最終手段としてUSスチールの生産能力の削減を行う場合には、米政府に「拒否権」を付与すると提案。経営の重荷になるのもいとわず、国家安全保障への配慮を尽くす異例の対策を示した。

「中国メーカーへの対抗」計画むなしく

 それでもバイデン氏が買収を認めなかった背景には、米製造業を代表する名門企業が外国企業に買収され…

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