経済産業省は17日、国の中長期のエネルギー政策の方針となる「エネルギー基本計画」の改定案を公表した。2011年の東京電力福島第1原発事故以降掲げてきた「原発依存度を可能な限り低減する」との表現を削除し、原発の建て替えを認める方針に転換。原発回帰の姿勢を鮮明にした。
同日あった経産相の諮問機関である有識者会議、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会で示した。改定案では、原発も含めた脱炭素電源を「最大限活用する」と明記。従来通り、再生可能エネルギーを「主力電源」としつつ、「最優先で取り組む」との文言を削除し、「特定の電源に過度に依存しないバランスのとれた電源構成を目指す」方針も新たに盛り込んだ。
改定案と合わせて総発電量に占める各電源の割合を表す「電源構成」の40年度の暫定値も公表した。再生可能エネルギーは30年度36~38%としていたのを4~5割に引き上げた。太陽光が22~29%、風力は4~8%とした。火力は従来の41%から、脱炭素化を進めつつ電力の安定供給のため液化天然ガス(LNG)の活用は必要だとして、3~4割とした。原発は2割を維持した。
総発電量は30年度で9340億キロワット時だったのが、40年度の見通しでは1・1兆~1・2兆キロワット時に増加すると見込んだ。これまでは省エネや人口減少により将来的に下がる想定だったが、半導体工場やデータセンターの増設の影響などを考慮した。この想定で原発比率2割を達成するためには、現時点で未完成の原発も含めて、廃炉が決まっていない全36基を動かす必要があるが、老朽化した原発も多い。
このため、21年に策定した基本計画では見送られた原発の「次世代革新炉の開発・設置」と「建て替え」方針も新たに盛り込まれた。23年2月に閣議決定された「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」では、原発の建て替えは廃炉を決めた原発敷地内に限定して認めたが、今回は、同じ電力会社が保有する別の原発敷地内でも「建て替え」として新たに建設することを認めた。
それでも、原発は安全対策費の高騰などから電力会社にとって新設のハードルは高くなっている。このため、今回の改定案では、事業者の投資を促すため「制度措置や市場環境を整備する」とした上で「民間金融機関が取り切れないリスクについて、政府の信用力を活用した融資」などの方策を検討するとして、政府が前面に立って後押しする姿勢も示した。【高田奈実】