劇団☆新感線 演出家が「看板女優にガッツリ芝居してもらう」意図
「うちの女優にガッツリ芝居をさせたい」。劇団☆新感線の主宰で演出家、いのうえひでのりが、今回の公演に込めた意図はシンプルだ。新型コロナウイルス禍にあえぐ演劇界にあって、高い動員力を保ち続ける人気劇団。久々に挑むセリフ主体の劇で、なぜ女性に光を当てるのか。旗揚げから43周年を迎える老舗劇団の行く先も聞いた。
「奇跡の43歳と55歳」
「43歳と55歳。奇跡同士の対決を見てください」。トレードマークのキャップをかぶり、楽しそうに笑う。
「奇跡の43歳」とは、今なおアイドルの雰囲気を漂わせる三宅健。今作「ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~」で主人公を演じる。
対する55歳とは、今作で悪役を演じる高田聖子(しょうこ)のこと。「うち(新感線)以外で芝居するのを見ると、やっぱりうまいと思う」と絶賛する、劇団の看板女優だ。
ただ、「うち以外」という言葉がひっかかる。
いのうえが演出する新感線の舞台は、エンターテインメント性の高さからよく「ド派手」と評される。今作はひと味違う。基本はセリフの人間ドラマだ。
1950年代、ヤクザがしのぎを削る関西の港町。ある組の幹部、亜牟蘭(あむら)オセロ(三宅)は、町医者の娘モナ(松井玲奈)と恋に落ち、組を抜けようとする。亡き先代組長の妻アイ子(高田)は怒りが収まらず、策略を巡らせて、モナが不義を働いているとオセロに信じ込ませる――。
原作は、シェークスピアの4大悲劇の一つ「オセロー」。元のあらすじでは、軍人オセロと妻デズデモーナが、オセロの部下イアーゴの陰謀で破滅の道へと突き進む。新感線は2011年、青木豪の書き下ろしで今作を初演し、橋本じゅんがオセロ、田中哲司がイアーゴにあたる役を演じた。
今回の再演の大きな変更は、イアーゴを女性に置き換えたことだ。狙いはどこにあるのか。
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