若者の挑戦は、なぜ中止に追い込まれたのか。10月下旬、沖縄県波照間島から北海道稚内市まで約3カ月かけ徒歩で縦断するという沖縄県在住の男性について地元紙が報じたところ、ネット交流サービス(SNS)を中心に「危険。死にに行くようなもの」「なぜ周囲は止めないのか」といった批判や中止を求める声が殺到し、男性は5日後に自身のインスタグラムで旅の中止を発表した。確かに真冬に厳寒地を歩く計画に無謀な点はあったが、識者は一連の騒動を「若者の無謀さを許容できない、現代社会の余裕のなさの表れ」と指摘する。【山下智恵/デジタル報道センター】
半年以上かけ準備、5日で中止に
男性のインスタグラムによると、10月22日に日本最南端の有人島、波照間島を出発し3カ月半をかけ稚内市に到達する計画だった。「本当の強さを見せる旅」「周囲の人たちに多くの勇気と感動を与えたい」と訴え、半年以上かけて準備。旅費はクラウドファンディング(CF)でも集め、約10万円の支援が集まっていた。
この挑戦を22日昼に地元の琉球新報が「沖縄の18歳が日本縦断2800キロを徒歩で挑む理由 きょう日本最南端の波照間島を出発」と報じると、ツイッターやインスタグラムには批判する書き込みが相次いだ。
批判の多くは厳冬期の東北・北海道、そのなかでも積雪の多い日本海側を歩く無謀さを指摘するものだ。特に北海道の暮らしを知る人からは、住人でも死亡することもある低温や地吹雪の激しさ、長距離で民家も宿泊施設も存在しないこと、ヒグマなどの獣害といった具体的な危険性を挙げ、中止を求める声が多かった。
<ばかだと思わざるを得ない>
<なぜ周りは止めないのか>
<消防や警察や自治体職員の仕事を増やさないでください>
<勝手にチャレンジして勝手にくたばって死ぬのもいいかもしれないですけど周りに迷惑です。私の地元で倒れて帰らぬ人になったらこっちの地域にも風評被害があるんですよ>
また、CFで資金を得たことや、旅の目的への批判もあった。
<なぜ人の金で旅をするのか>
<無名の人に歩かれても勇気も元気ももらえない。勘違いをするな>
批判を受け、男性は27日、インスタグラムに旅の中止を知らせる文書をアップした。そこには…
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