電動車いすで2駅先へ 障害者の女性が無人駅避ける理由 「普通の社会生活送れない」
駅員が終日不在となる「無人駅」の割合が地方ほど高い傾向が明らかになった。こうした無人化の影響を最も受けるのが、体に障害がある人たちだ。列車の乗り降りに介助が必要な車いす利用者からは「普通の社会生活が送れない」と悲痛な声が上がる。【五十嵐朋子、山本佳孝】
障害者「転落したら…」と不安
東京駅から北へ約80キロのJR山前駅(栃木県足利市)。11月のある日の午前、1時間に1本の列車がホームに滑り込んできた。4、5人の乗客が乗り込んで出発したが、列車を見送る駅員の姿はない。両毛線が走るこの駅は2019年3月に無人化され、窓口はシャッターが下りたままになっている。
市内に住む全盲のパソコン講師、富岡宜喜(のぶき)さん(47)は通勤で週3日ほど、最寄りの山前駅を使う。誘導する駅員がいないため、列車に乗る時はドアが開いた音を頼りに乗り口を探すが、足を踏み外したりドアに挟まれたりする危険は常につきまとう。駅にはホームドアもない。「転落したら、引き上げてくれる人がいない」と不安を募らせる。
脳出血の後遺症で体にまひがあり、電動車いすを利用する金澤弘美さん(50)=茨城県常陸太田市=は、最寄りのJR河合駅が無人駅のため、同じ水郡線の2駅先の有人駅を使っている。駅まではバスで行くが、本数が少ないため電動車いすで30~40分かけて行くこともある。しかも、その駅も駅員がいるのは午後5時半まで。帰宅時に間に合わなければ、さらに離れた3駅先の有人駅で列車を降り、タクシーで3500円かけて帰らざるを得ない。自分で車を長距離運転するのは難しい。夫や娘がおり、PTAの役員もしていた金澤さんにはたびたび外出する用事があり、列車は必要不可欠な移動手段だ。
金澤さんは、無人駅でも乗り降りの介助をしてほしいとJRに問い合わせたが、「3日くらい前までに予約をして」と言われたという。「急用では列車に乗れないということですよね。駅員を配置できないのなら、乗務員がスロープを出してほしい。せめて午後7時くらいまでは列車が使えないと、普通の社会生活が送れない」と訴える。
アンケで寄せられる不満…
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