マンガ

魯迅「藤野先生」

リモート読書会で魯迅の「藤野先生」を読む。 めちゃくちゃ短い小説である。 阿Q正伝・藤野先生 (講談社文芸文庫 ロB 1) 作者:魯迅 講談社 Amazon 魯迅の自伝的な短編小説で、彼が日本に留学した時に出会った藤野厳九郎という解剖学の教師の思い出をもとに描…

瀧波ユカリ『わたしたちは無痛恋愛がしたい』5・6

組織にとって自分はどういう人間だと思われていたのか、本当のところはよくわからない。 だけれども、「都合のよい人間」だと思われていたんじゃないかと思う。 別のところですでに書いたことだからここでも書くけど、額面で月20万円台の給料で50代まで甘ん…

佐原実波『ガクサン』9

高校2年になる娘の勉強量は相対的に増えているなあと思う。居間で問題を解いている姿*1や、ぼくと一緒に英語の文法書や長文を読んだりする姿*2をよく見るようになったのだが、いかんせん絶対量が少ないなとも思う。ネットやスマホやってる時間が長いのであ…

瀬戸めぐむ『いっそあなたがトドメを刺して』

遊んでいる*1男ってクズですか。 いや、ぼくは遊んでいるわけではないが。 ステディがいない状況で遊んでいるとしても、それはそいつの生き方じゃないのか。 何が悪いんだ。 そして、そこに一人の女が現れて「自分のことを好きになってほしい」と言ったとし…

『南Q太傑作短編集 ぼくの友だち』

ぼく自身はこれまで外国で生活してみたいと思ったことはない。なんとなく「逃げ出す」みたいな、今の人生に負けたみたいな、そんなイメージがあったからであるが、どう考えても偏見である。そもそもつれあいは外国で暮らしていたが、何かから逃避するために…

坂井恵理『逃げるA』

セックスに責任があるだろうか。*1 避妊していても失敗する危険性はあって、そのリスクは女性が負うんだから、それで子どもができれば責任が生じるだろ。 じゃあもし挿入しないセックス(性行為)を楽しんでいたら、それは責任がないってことだろうか。 AとB…

藤原道長『御堂関白記』

吉田戦車のエッセイコミック『出かけ親』を読んでいたら、こういうシーンがあって、うむ、我が家と同じではないかと思った。 吉田戦車「出かけ親」/小学館「ビッグコミックオリジナル」 2024年11号より 「虎に翼」と「光る君へ」をどちらも一家で見ているが…

天沢アキ『ハマる男に蹴りたい女』

ぼくが職場をクビになって放り出されたことを、ネットニュースで、しかも自分が作った会社の後継社長経由で知らされた父が、びっくりしてぼくに電話をかけてきた。 電話で簡単に経過を説明すると、「そうか。わかった。お前のやることだから信じてる」と言っ…

小池定路『キラキラしても、しなくても』

親しい人が死んだ直後、その親しい人が自分の生活圏や労働圏の中にいて突然いなくなったような場合は、そこに生々しい残り香のようなものがある。言葉通りに「香り」であることもあれば、記憶や思い出のような何らかの痕跡を象徴的にそう呼ぶ場合もある。 上…

カズオ・イシグロ『日の名残』

オンライン読書会で読むことに。 日の名残り (ハヤカワepi文庫) 作者:カズオ・イシグロ,土屋 政雄 早川書房 Amazon カズオ・イシグロを読んだのはこれが初めてである。 1956年のイギリスが舞台。主人公はダーリントン卿の屋敷であったダーリントンホールの執…

宇仁田ゆみ『縁もゆかりも』

公益財団日本財団が「こども1万人意識調査」という10歳から18歳までの子どもを対象にした国内最大規模の意識調査を2023年9月に報告書として発表している。 その中で「学校で不安・不満に感じる点」のトップが「ランドセル・カバンが重い(持っていく荷物が重…

桐野夏生『燕は戻ってこない』

本作はオンライン読書会で読んだ。 燕は戻ってこない (集英社文庫) 作者:桐野夏生 集英社 Amazon NHKでテレビドラマにもなっている。やっていることは知っていたが、読書会が終わった後で、一度だけ観た。 www.nhk.jp 桐野夏生の原作についての感想をここで…

矢寺圭太『ずっと青春ぽいですよ』

こりゃあいい。 最近本作を何度も見返してしまっている。 高校のアイドル研究会に集うさえない3人の男子生徒(山田・杉森・河野)が、ギャル2人(渡辺・鯖戸)をアイドルとしてプロデュースさせてくれないかと頼み込むところから唐突に物語は始まる。 もち…

『室外機室 ちょめ短編集』『人はどう死ぬか』

タイトルの通り、著者ちょめの短編集である。初出を見ると5編のうち「個人出版物」が4編だから、ほとんど同人誌からのものであろう。 室外機室 ちょめ短編集 (アクションコミックス) 作者:ちょめ 双葉社 Amazon 軽い気持ちで読む。 2つ目の短編「21gの冒…

KUJIRA『ハグ キス ハグ』

既婚者との不倫に始末をつけた木原蓉子が、同じマンションに住む(そしてかつて同じ職場で働いたことがある)年下の男性・藤原広海と新しい恋愛をはじめる話である。 ハグ キス ハグ(1) (BE LOVE KC) 作者:KUJIRA 講談社 Amazon KUJIRAはさあ、『ホンノウス…

池辺葵『ブランチライン』6巻

共産党の志位和夫は、社会主義——生産手段の社会化によって労働(賃労働)の性格は変わるという話をマルクスを引いて語っている。 労働の性格も大きく変わるでしょう。マルクスは、1864年に、労働者の国際団体――国際労働者協会(インタナショナル)を創立…

伊集院静『海峡』

原爆の写真を子どもに見せるべきかどうかについての話題。 digital.asahi.com ジョージア駐日大使のティムラズ・レジャバさん(36)は2月末、家族で広島平和記念資料館(広島市)を訪れました。原爆で黒く焼け焦げた弁当箱を見つめる長女(当時4)の写真を、…

『明日、私は誰かのカノジョ』と『青にふれる』の主人公の母親

をのひなお『明日、私は誰かのカノジョ』が完結した。 本作はテレビドラマにもなったが、自分なりのコンプレックスを抱えている女性(あるいは男性)が登場し、パパ活、美容、ホスト狂い、スピリチュアルなどにハマりそれと格闘する、オムニバス形式の物語だ…

Central Japan Railwayと『テツぼん』

英語の勉強…というほどではないが、毎週水曜日の日経の夕刊に載る「Step up English」の経済記事をわりと楽しみに読む。経済ニュースってあまり読まないので英語を読みがてらその種の話題を知ることになり、「へえ、そんなことが流行ってんの」とか素直に感…

志村貴子『おとなになっても』1-10巻

志村貴子『おとなになっても』が完結した。 おとなになっても(10) (Kissコミックス) 作者:志村貴子 講談社 Amazon 休職に追い込まれて家にいる間よく読んでいた。 たまたま飲みに入ったお店で知り合った平山朱里と大久保綾乃は一夜で恋に落ちてしま…

石井遼介『心理的安全性のつくりかた』

リモート読書会の次のテキスト。ぼくはファシリテーターである。 心理的安全性のつくりかた 「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える 作者:石井遼介 日本能率協会マネジメントセンター Amazon ハラスメントは、それをやってしまったら人権侵害にな…

『ねじ式 紅い花 漫画アクション版 つげ義春カラー作品集』

奥付には「2024年2月24日」発行とある。 ねじ式 紅い花 漫画アクション版 つげ義春カラー作品集 作者:つげ 義春 双葉社 Amazon 本書は、1969年に刊行された「漫画アクション」誌に加え、「ゲンセンカン主人」(アクションコミックス)「ガロ増刊号・つげ義春…

おづまりこ『ゆるりより道ひとり旅』

40代女性のコミックエッセイである。表題の通りだ。 本作では、京阪神の各所に出かけて食べ歩きをしている。 ゆるり より道ひとり旅 (文春e-book) 作者:おづまりこ 文藝春秋 Amazon この作者については、つれあいの方がよく知っていた。彼女がネットでよく見…

水島みき・あやか『独身アラサーOLあやかのぼっち宿泊記』

昨日の記事を書いた後、粋なホテル・宿じゃなくて、ビジホに泊まるようなマンガはないだろうかと思って探したら、ちゃんとある。 独身アラサーOLあやかのぼっち宿泊記 (コミックエッセイ) 作者:水島 みき KADOKAWA Amazon ただしビジホといっても、本当に超…

マキヒロチ・まろ『おひとりさまホテル』

ホテルに泊まるのは好きだ。 別に旅先でなくてもいい。 家から近くにあるホテル(・旅館)であっても泊まりたい。まだそういうことをやったことはないけど。 我が家(マンション)の中に、快適に寝そべって、しかも独りで静かに(静謐に)いられる空間が、微…

『このマンガがすごい! 2024』でアンケート回答しました

『このマンガがすごい! 2024』の「オンナ編」選者としてアンケートで回答しました。 このマンガがすごい! 2024 宝島社 Amazon ぼくが選ぼうかどうか迷って結局選ばなかった作品の一つを挙げておくと『いつか死ぬなら絵を売ってから』。 これがオンナ編18位…

ストレイチー『ナイティンゲール伝』 茨木保『ナイチンゲール伝』

佐原実波『ガクサン』で予備校講師参考書の面白さが主人公の一人から語られる。 そこで世界史で「ざっくり歴史を要約してくれる」ような面白い講義があるのではないかと本屋でいろいろ立ち読みしてみると、『青木裕司 世界史B講義の実況中継3』が実にぼくの…

埜納タオ『保健師がきた』1

以前、全日本民主医療機関連合会(民医連)にかかわるところで、職員の方にお話をさせてもらったことがある。 そのときに、自分の講演をする前に、職員のみなさんのがグループごとに分かれて、いわゆる困難事例についてディスカッションをしているのを聞かせ…

瀧波ユカリ『わたしたちは無痛恋愛がしたい』4

瀧波ユカリ『わたしたちは無痛恋愛がしたい』はサブタイトルが「鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん」であるように、鍵垢で自分のホンネをつぶやく女性の主人公(鍵垢女子)、その主人公を都合のいいときにヤレる相手としてのみ見て、見栄えや体裁だけを気…

花輪和一『刑務所の中』

リモート読書会で花輪和一『刑務所の中』を読む。 刑務所の中 作者:花輪和一 講談社 Amazon ぼくがファシリテーターを務めたので、最初に報告した一文を紹介しておく。 なお、ぼくは花輪についてほとんど詳しくはない。なので、最初は、花輪について書かれた…