2016-05-01から1ヶ月間の記事一覧

吉野朔実『ぼくだけが知っている』

子どもが持つ矛盾についての物語である。 小学4年生、すなわち10歳になる夏目礼智とそのクラスメイトたちの物語だ。 「子供の頃から大人だった。」という印象的なモノローグではじまる。 夏目礼智は、すでに小さな子ども時代から自分の行為の意味するところ…

伊藤野枝『無政府の事実』精読

前のエントリで書いた伊藤野枝であるが、いくつか彼女の書いたものを読む。読みやすくて面白い。被差別部落出身者の運命の悲惨さ、そこに蓄積される(負の)エネルギーを身も蓋もなく描いた小説「火つけ彦七」もよかった。その中の一つで短い論説である「無…

栗原康『村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝』

新しく引っ越したところの町内会の堅牢さにほとほとまいっている。別に今何か役を押し付けられたわけでもないけども、ピラミッド状のがっちりした組織が、引き受けなくてもいいような行政仕事を請け負って、その負担の重さに悲鳴をあげている様子が、総会の…