2022-01-01から1年間の記事一覧

 『このマンガがすごい! 2023』で回答しました

『このマンガがすごい! 2023』(宝島社)で今年も「総勢45名 各界のマンガ好きが選ぶ このマンガがすごい! オンナ編」に回答させていただきました。 このマンガがすごい! 2023 宝島社 Amazon 去年はぼくが選んだ5作品は1つとして20位にランクインしませ…

エーリッヒ・フロム『愛するということ』

リモート読書会でエーリッヒ・フロム『愛するということ』を読む。 愛するということ 作者:エーリッヒ・フロム 紀伊國屋書店 Amazon 知らない人は、さてこれは一体どういう本なのだ、と思うかもしれない。 何を求める人が読む本で、それは端的にどういう内容…

『ブルーピリオド』に影響されて個展を観にいって「すずめの戸締まり」も観る

知り合いに、絵の個展に誘われた。 本当にその日は用事があったので行けなかったが、後日一人で見にいった。 個展なぞというものに行ったことはない。だから通常では「行きません」と言うか、いろいろ口実をつけて行かないはずのものである。 なぜ行ったのか…

『現代思想』2022年12月号に寄稿しました

『現代思想』2022年12月号の「特集=就職氷河期世代/ロスジェネの現在」で「変容期の新たな生き方を模索しようとした実験性――『ロスジェネ』マンガのスケッチ」を寄稿しました。 www.seidosha.co.jp 現代思想 2022年12月号 特集=就職氷河期世代/ロスジェ…

山口つばさ『ブルーピリオド』13

いやあ、どうなっちゃうんだろうねと思いながら読み始めた13巻だった。 ブルーピリオド(13) (アフタヌーンコミックス) 作者:山口つばさ 講談社 Amazon そんでフジキリオにアジられて、まんまと買っちゃっただろ、『美術の物語』…。9350円もしたわ。 美術…

クリハラタカシ『名前のチカラ』

月刊「たくさんのふしぎ」2022年12月号は、クリハラタカシ『名前のチカラ』である。 名前のチカラ(たくさんのふしぎ2022年12月号) 作者:クリハラタカシ,三土たつお 福音館書店 Amazon 「たくさんのふしぎ」は子ども向けに定期刊行されている月刊絵本だ。とは…

アキヤマヒデキ『ボクらはみんな生きてゆく!』4。

川でウナギをとる話が興味深かった。 ウナギは絶滅危惧種ではないのか、という問題があるが、その問題はちょっとおいておく。ぼくが興味を持ったのは、筆者(アキヤマヒデキ)の知識と実践力についてなのだ。 『ボクらはみんな生きてゆく!』は都会から田舎…

「日本とコリア」に福岡市長選について書きました

日本コリア協会・福岡の機関紙「日本とコリア」第265号(2022年11月1日号)に「ここがロドスだ! ここで跳べ!」という一文を寄稿しました。福岡市長選挙でどのような「合成力」によって市民と野党の共闘が実現したのかを間近で「観察」していた者として書き…

水谷緑『私だけ年を取っているみたいだ。』

サブタイトルにあるように「ヤングケアラーの再生日記」である。 私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記 (文春e-book) 作者:水谷 緑 文藝春秋 Amazon ヤングケアラーをご存じない人はもう少ないとは思うが一応定義しておけば、 介護や病…

浅尾大輔「立春大吉」第1部第1章・第2章

浅尾大輔「立春大吉」は、奥三河の山村で透析・入院・救急医療を守ろうとする住民運動を描いた「しんぶん赤旗」日刊紙の連載小説である。 これは期待。「しんぶん赤旗」の次の連載小説は浅尾大輔「立春大吉」。「愛知の小さな町に暮らす高齢者らが、入院・透…

松田舞『ひかるイン・ザ・ライト!』4

『ひかるイン・ザ・ライト!』が終わってしまった! なんということだろう。 いやー、すばらしいマンガだった。手放しで絶賛したい。 ひかるイン・ザ・ライト! : 4 (アクションコミックス) 作者:松田舞 双葉社 Amazon マンガとして何が素晴らしかったのか…

学校における「国葬」半旗の掲揚と「表現の自由」

前にも書いたとおり、ぼくは自分の娘が通う中学校と、市教育委員会に対して安倍元首相の「国葬」にあたって半旗の掲揚など弔意の事実上の強制をしないように請願を出した。 kamiyakenkyujo.hatenablog.com そうして「国葬」の日は、半旗の掲揚をはじめ、弔意…

『マクニール世界史講義』

リモートでの読書会は、今回は『マクニール世界史講義』である。 歴史学がタコツボ化する中で世界全体の歴史法則を明らかにする。 マクニール世界史講義 (ちくま学芸文庫) 作者:ウィリアム・H. マクニール 筑摩書房 Amazon ジャレド・ダイアモンド『銃・病原…

永井愛・上西充子『言葉を手がかりに』

「ご飯論法」の可視化で有名な上西充子と、劇作家・永井愛との対談である。 言葉を手がかりに 見ること、伝えること、考えること 作者:永井 愛,上西 充子 集英社クリエイティブ Amazon 答えを持たずに読む 本書の巻末に著者の一人である上西充子が本書の意図…

岡田索雲『ようきなやつら』

短編集である。 ようきなやつら (webアクションコミックス) 作者:岡田索雲 双葉社 Amazon この中の『追燈』は、関東大震災における朝鮮人虐殺を描いた短編だ。 「あとがき」で岡田自身が 関東大震災の発生から今年で99年になりますが、その際、起きた朝鮮人…

松竹梅を買い占めた父

お盆で帰省したとき、父(84歳)の昔話を意識的に聞くようにしている。というか、録音している。 父の語りは「植木・盆栽の卸の成功譚」という体裁を持っていて、めっぽう面白い。アジテーターなのであろう。 十八番は、「1988年末の松竹梅の相場を立てた」…

髙井章博『“イヤな”議員になる/育てる!』

2022年に刊行された髙井章博『“イヤな”議員になる/育てる!』(公職研)を読む。 “イヤな”議員になる/育てる!: 選挙のカネの話から、自治体議会改革まで 作者:髙井章博 公職研 Amazon 選挙勝利から議員になり、議員としてどう仕事をするかまでを、市議会議…

松田舞『ひかるイン・ザ・ライト!』3

中学生がオーディションを受けアイドルをめざす物語、松田舞『ひかるイン・ザ・ライト!』は、ぼくの最近のお気に入りである。 なんども見返す。 それは好きなコマが多いからである。 主人公と同じ地元で年上の友人であり、かつアイドル経験者でもある西川蘭…

いしいひさいち『ROCA』

ネットで話題になっている、いしいひさいち『ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ』を読む。朝日新聞を購読していたときにごく一部を読んだ記憶がある。 高校生だった吉川ロカがポルトガルの国民歌謡「ファド」の歌い手として、世界に発見されていくまでを、いし…

「社会科学の文献」とは

ぼくのこのツイートについての雑感を書く。 「社会科学の文献」である以上、何者であろうと当該文献を徹底して自由に討議し、タブーなくラディカルに批判することを認める義務を持つ。マルクスも「この先に踏み入るのをためらう気持ちはこの場でぜんぶ捨てろ…

齋藤孝『図解 資本論 未来へのヒント』と『資本論』学習の支援

最近出た『資本論』入門を紹介するシリーズの3冊目。 齋藤孝『図解 資本論 未来へのヒント』だ。 図解 資本論 未来へのヒント 作者:齋藤孝 ウェッジ Amazon これが一番正統な「入門書」だろう。『資本論』第1部の順番にだいたいそって、内容を紹介し、解説…

『マルクス「資本論」に脱成長のヒントを学ぶ』

最近でた『資本論』入門書シリーズの2つ目。 斎藤幸平+NHK「100分de名著」制作班監修『マンガでわかる! 100分de名著 マルクス「資本論」に脱成長のヒントを学ぶ』(宝島社)である。 マンガは前山三都里。「編集協力」は山神次郎、「取材・文」は乙野隆彦…

的場昭弘監修『マンガでわかる資本論』

ある出版社の出している『資本論』を手に入れようと大手書店の経済書のコーナーに立ち入ったら、しばらく見ないうちにずいぶんいろんな『資本論』入門書が出ているじゃないか…!? というわけでその中から3冊ほど感想を書いてみたい。 最初は的場昭弘監修『マ…

故安倍晋三氏への弔意表明に関する請願

次のような請願を教育長と自分の子どもが通う中学校の校長宛に出した。 そこに書いたように内心の自由・表現の自由にかかわる問題であるからだ。 〇〇市教育長 〇〇殿 〇〇市立〇〇中学校校長〇〇殿 故安倍晋三氏への弔意表明に関する請願 2022年7月○日 〇〇…

性風俗事業者への給付金についての共産党の態度から考える

コロナ禍での持続化給付金などの対象から性風俗事業者を排除したのは、憲法違反だとして、デリヘルの事業者(会社)が国などに支払いを求めた裁判の件。東京地裁は合憲判決を出した。 www.tokyo-np.co.jp 訴状・書面、そして判決文は、以下にある。 \東京地…

マンガの表現について共産党は2022年参院選でどういう政策を打ち出したか

2021年の総選挙で共産党のマンガ・アニメの表現に関する政策が話題になった。 その際に、ぼくも記事を書いた。 kamiyakenkyujo.hatenablog.com ぼくは「カジを切っていない」とは結論づけた。しかし叙述が乱暴すぎる、と批判した。 この記事を書いた他に、共…

『じゅうぶん豊かで、貧しい社会』

唐鎌直義が紹介していたので読んでみた。 じゅうぶん豊かで、貧しい社会 ――理念なき資本主義の末路 (ちくま学芸文庫) 作者:ロバート・スキデルスキー,エドワード・スキデルスキー 筑摩書房 Amazon サブタイトルが「理念なき資本主義の末路」であることからも…

川崎昌平『売れないマンガ家の貧しくない生活』、木村イマ『シュガーレス・シュガー』1

ネットで川崎昌平『売れないマンガ家の貧しくない生活』を読んでいるつれあいは、マンガ家の妻の視点でマンガ家自身がマンガ家のことを描くというこの作品の奇妙さを口にしていた。 売れないマンガ家の貧しくない生活 (コミックエッセイ) 作者:川崎 昌平 KAD…

「週刊ポスト」6月24日号でコメントしました

「週刊ポスト」2022年6月24日号で「夫婦で『やめる』と幸せになる111の秘訣」特集のうち「ほんとに面倒な人間関係10と『距離を取る』『縁を切る』これが正解!」の章(すごいタイトル…)で、『“町内会”は義務ですか?』の著者としてコメントしました。 週刊…

唐鎌直義「高齢者の貧困と社会保障緊縮政策」

「前衛」2022年7月号の唐鎌直義「高齢者の貧困と社会保障緊縮政策」を読む。 前衛 2022年 07 月号 [雑誌] 日本共産党中央委員会 Amazon 何と言ってもこの表である。 「前衛」2022.7より 高齢者の全体の貧困率が26%で、日本全体では15%くらいだから、トンデモ…