2008-01-01から1年間の記事一覧

『資本論 まんがで読破』

一読してなんだこれはと本をたたきつけたくなった。こんなものは『資本論』でも何でもない、ただのお話ではないか、と。 資本論 (まんがで読破) 作者:マルクス,バラエティ・アートワークス Teamバンミカス Amazon 『蟹工船』などで有名になったイースト・プ…

4つの『蟹工船』漫画を読む

2008年の新語・流行語大賞のトップテンに『蟹工船』が入った。今さらそのブームぶりについてくどくど言うまでもないだろう。 これだけ話題になったから『蟹工船』自体を知らないという人はいないと思うが、その中身については知らないという人もいるだろう。…

東村アキコ『ママはテンパリスト』 ――佐田静『いっとけ! 育児』にもふれて

東村「仕事の方が子育てより1000倍楽」 最近、明らかにこのサイトの更新頻度が落ちている。 仕事の内容が変わったこともあるが、それはどちらかというとささいなことで、子育てにエネルギーを吸い取られるからである。 保育園に子どもを迎えにいくのはもっぱ…

田辺真由美『見合いへGO!』

お見合いというシステムについては10代くらいまでは軽蔑をもってこれを見ていた。すなわち「お見合いするやつは甲斐性のない、モテないやつ」。20代半ばくらいまでは嫌悪をもってこれをとらえていた。すなわち「恋愛もせず、相手のこともよくしらずに、家畜…

逢坂みえこ『育児なし日記vs育児され日記』

ぼくの娘はすでに立って歩くようになり、言葉も「マンマ」だけでなく「ばーば(祖母的な意味とバナナを指すときとがある)」「わんわん(犬だけでなく毛深いもの全般)」「こっこ(ニワトリ的な鳥)」「かぅわ(川)」「てってったー(行っちゃった。状況が…

山名沢湖『つぶらら』

「夕やけニャンニャン」が放送されていたときは、ぼくはテレビそのものを軽蔑し、ましてやそのような素人アイドル誕生的なバラエティなど地獄に堕ちろと思っていた時代だったので、まったく見ていなかった。「おニャン子クラブ」とか風紀を乱してけしからん…

渡辺ペコ『キナコタイフーン』1巻

なんかこの作品、ブログの評価が悪いなあ。 もちろんホメているのもあるけども、概して悪い。 キナコタイフーン 1 (1) (Fx COMICS) 作者:渡辺 ペコ 太田出版 Amazon この漫画は、「東京フィルムフェスティバル」という「ぴあフィルムフェスティバル」をもじ…

羽柴麻央『イロドリミドリ』

※ネタバレがあります 久々に少女漫画を読んで静かな感動を味わう。 中学2年生の少女・朝倉玉緒が図書館で常々見かけていたすてきな男の子に声をかけて友だちになり、二人の静謐で濃厚な図書館生活がはじまる。 イロドリミドリ (マーガレットコミックス) 作…

藤野美奈子『明日ひらめけ!』『ぷちやまい』

社会人になってすぐのころ、藤野美奈子の『友子の場合』が「ビッグコミック・スピリッツ」誌で連載されていた。妄想を爆発させたり、考えの突き詰め方がおかしな女子高生の物語だ。藤野についていえば、ぼくはその時からどちらかといえば掲載を楽しみにして…

高世えり子『理系クン』

「理系男子に恋をした!」というオビからわかるとおり、理系研究者である自分のパートナーについてのエッセイコミックである。 理系クン (文春文庫) 作者:高世えり子 文藝春秋 Amazon ——相手の反応かまわず、自分の専門の話に暴走。——やたら事務的に女性の要…

よしながふみ『フラワー・オブ・ライフ』

無条件で自分を受け入れてくれる居場所 雨宮処凛・萱野稔人『「生きづらさ」について』の評を書いたとき、精神的な「生きづらさ」の根源の一つに、たえず高度なコミュニケーションによって自分の居場所を構築し、そのなかで自分の価値を証明せねばならず、そ…

雨宮処凛・萱野稔人『「生きづらさ」について』

この前、サヨのあつまりがあった。若いサヨと年配のサヨが「懇談」をするというのである。若い人の気持ちとか実態とか知らんといかん、ということで。 冒頭にネットカフェ難民について報道した映像を観たのだが、そのあとの懇談で年配、というと怒られるので…

杉本亜未『ファンタジウム』

「主人公に弱点をもたせると個性が出る」というキャラクター作りのイロハがある。才能を輝かせる主人公を描くとき、その秀才・天才ぶりを描くだけでは平板になってしまうので、弱点を何か加味することで途端に愛らしい、共感がもてる存在になる、というわけ…

戸田誠二『美咲ヶ丘ite』1巻

※ネタバレがありますが、まあ、あまり支障がないのでは。 歌手になる夢を追う20代の女性の話、なんていうのは、ふるえあがるほどに手あかがつきそうなモチーフだ。まあ、長編ならいい。いくらでも加工のしようがあるだろう。一条ゆかり『プライド』だってあ…

山崎紗也夏『シマシマ』1巻

作者の山崎は今回ペンネームだけでなく絵柄を変えた、という。ぼく的にはあまり変わっていないように感じるのだが、作者がそういうんだから変わったに違いない(笑)。すでに連載時に山崎のブログには「山崎先生、なぜ急に絵柄が変わってしまったのでしょう…

『マンガ「名ゼリフ」大全』でコメントしました

タイトルのとおりの本だ。「本書に収録したマンガのセリフは、一般アンケート500人と著名人アンケート32人をもとにして選出されています」だそうである。「コメンテーター」の32人にはなぜか「芸人」「格闘家」「グラビアアイドル」などばかりで、ぼくの「マ…

こうの史代『この世界の片隅に』上・中

下巻で完結するまで言及しない方がいい、と自戒していたのだが、またもや書いてしまう。「またもや」というのは上巻が出た段階でがまんしきれずに「赤旗」の連載で紹介してしまったからだ(そのあと連載は終わってしまったので、赤旗読者には紹介できる最後…

きらたかし『赤灯えれじい』 花沢健吾『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 朔ユキ蔵『ハクバノ王子サマ』

好きな漫画、気にしていた漫画がいろいろ終わったなあ。いや、連載はもっと早くに終わっているんだけど、単行本の形で次々終了したんだわさ。 きらたかし『赤灯えれじい』。 花沢健吾『ボーイズ・オン・ザ・ラン』。 朔ユキ蔵『ハクバノ王子サマ』。 チーコ…

松田道雄『定本 育児の百科』

育休が今月いっぱいでおわります 電車に乗っていたら初々しい高校生カップルが! その初々しさがたまらんなーと思って見ていたのだが、後でつれあいに話すと、「そんなふうに見てたら、絶対にあやしいと思われたんじゃないの?」。 ふふふ、さにあらず。 な…

山本直樹『レッド』1巻

『ビリーバーズ』で果たせなかったもの 最初にちょっとおさらい。 【合本版】ビリーバーズ (ビッグコミックス) 作者:山本直樹 小学館 Amazon すでに山本の『ビリーバーズ』についての感想のところで書いたとおり、山本はオウム事件に際して、「一連のオウム…

山本直樹『ビリーバーズ』

『ビリーバーズ』はオウム事件を描いたものか 新興宗教っぽい団体に入っている男2人、女1人の計3人が孤島で独特の修行をする顛末を描いた物語である。 評論家の呉智英は山本直樹『レッド』の書評で「テーマは連合赤軍事件である。既に七年前の『ビリーバ…

稲井雄人『京大M1物語』

溺れる犬を叩くという言葉があるが、いまさらこの漫画を「叩く」のは忍びない。しかし、言わせてほしい。 ものすごい失敗作だ、と。 「ものすごい失敗作」というのは、これほど料理しがいのある素材を使いながら、ここまでモノにできなかった漫画というのは…