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背伸びして滅びし世あり豆桜

2019/11/30 Sat

    昨夜の雪樹海あまねく寂光土

        (よべのゆき じゅかいあまねくじゃっこうど)





    トンネルを出づるや雪の浄土果つ /むく

        (とんねるをいずるや ゆきのじょうどはつ)





 よべの雪 (2019.11.29 山中湖村:山梨県南都留郡)


 冬タイヤ

 昨日も少し遠出。
 朝起きて外に出てみると、やはり雪が凍っていた。
 幸い道は乾きが早く、無事に帰ってこられてホッと。
 今日はタイヤを履き替えよう。
 朝の気温はマイナス3~4℃。
 いよいよ富士山が一年でもっとも美しい氷点下の日々。





 ミヤマホオジロ (2019.11.25 山中湖村:山梨県南都留郡)


 ミヤマホオジロ

 ミヤマホオジロに遇ったのは初めて。
 ガンコちゃんは何度か見ているようだ。
 目に黄色が飛び込んできたので、カワラヒワかな、と思ったが、ファインダーを覗くと♪
 冬枯れた林の茂みに、少なくとも5羽以上の群で潜んでいた。
 また遇いたい。

 (2019年11月30日 山中湖にて)


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雪 / 初雪 / 秋

2019/11/29 Fri

    トンネルの電光表示「出口雪」

        (とんねるのでんこうひょうじ でぐちゆき)





    初雪の舞ひしとメール故山より

        (はつゆきのまいしとめーる こざんより)





 Where the treetops glisten and children listen (2019.11.29 山中湖村:山梨県南都留郡)



 故山仙都 (2019.09.29 仙台城址:宮城県仙台市)



    城址秋あれが故山の七ツ森 /むく

        (じょうしあき あれがこざんのななつもり)




 初雪
 雨ではあったが、所用で少し遠出した昨日。
 籠坂峠を越えた御殿場あたりから先は彩なす紅葉。
 冬から秋にUターン。

 帰路は須走あたりから雪に。
 峠越えは避け、有料の東富士五湖道路を。

 今朝もまた出かけなくてはならないが、まだ冬タイヤに履き替えていない。
 道が凍結していなければよいが…。
 無論、峠越えはせず東富士五湖道路を行く。

 タイヤ交換、急がねば。



 コガラ (2019.11.04 山中湖村:山梨県南都留郡)






        山初雪やどりぎの毬白くしぬ /山口青邨


 (2019年11月29日 山中湖にて)


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時雨 / 狐狸(こり) / 柿

2019/11/28 Thu

    目交ひに富士あるはずの時雨の出湯

        (まなかいにふじあるはずの しぐれのゆ)





    われは狐狸つむに木の葉を載する出湯ぞ /むく

        (われはこり つむにこのはをのするゆぞ)





 冬初め (2019.11.16 山中湖村:山梨県南都留郡)


 投句箱

 よく行く村営の日帰り温泉「紅富士の湯」。
 外国人旅行客も多い。
 中国の人たちにも欧米の人たちにも、日本の温泉は好評のようだ。
 時雨れて富士山が見えない日などは、お手軽な日帰り温泉で温まって、のんびり過ごすのも賢明かも。

 「俳句の里」山中湖村には投句箱が何ヶ所かに設けられている。
 正確にどことどこに設置されているか定かではないが、「紅富士の湯」にも置かれている。
 昨日も湯上りに一句詠んで入れてきた。
 入選者には山梨県産のワインがプレゼントされる、と以前に村の教育委員会の方からお聞きした。
 一句と言わず何句でも、山中湖にお出でになられたら投句されてみては。



 ヤマガラ (2019.11.20 山中湖村:山梨県南都留郡)


 疵柿

 「紅富士の湯」には売店がある。
 いわゆるお土産品がいろいろと置かれているが、私が気に入っているのは地の野菜。
 昨日は先週に続いて疵柿ひと袋、それと鳴沢村の里芋ひと袋を買い求めた。

 疵柿とは、実の表面に疵があって出荷出来なかったもの。
 疵のない柿に比べて大幅に値段が安いが、味に変わりはない。
 自分で食べる分には十分だ。
 柿は糖質が多いので、買うのは今回限りとするが。

 このところほぼ毎日一個、疵のある平柿を食べている。
 大方は種なしだが、しっかりと種がある柿も混じっている。

 子供の頃に食べた甘柿は大抵が種ありだった。
 まだ種なしの甘柿が世になかったのかどうかは分からない。
 が、初めて種のない甘柿を口にしたのは上京してからのことだったと記憶している。
 以来五十有余年、甘柿といえば種なしが当たり前のように思って食べてきた。
 
 その間、いつも心に引っ掛かってきたことが一つある。
 それは、種なし甘柿は種ありほど甘くないという感想である。
 同じ一袋に混じった種なしと種ありの両方の平柿を食べ比べてみて、改めてそう感じた。
 本当のところはどうなのか、確証はないが。



        柿を食ふ君の音またこりこりと /山口誓子


 柿を食っているのは、作者の前にいる「君」という人間でも作者自身でもなく、鼠だと解したい。正月三元日の鼠を忌み言葉で「嫁が君」と云う。その「君」であろう。だとすると、柿は生の柿ではなく干し柿か、と想像が膨らむ。かつて、町暮らしの人の許には、正月前に郷里などから干し柿が送り届けられたりした。柔らかなあんぽ柿ではなく、軒端でしっかり干された硬い干し柿だった。「こりこり」は鼠が箱に入った干し柿を荒らしている音。違うかもしれないが鑑賞は人それぞれで、自由であってよかろう。子年の来年が近づいてきた。

 (2019年11月28日 山中湖にて)


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からまつ落葉 / 濡れ落葉 / 朴落葉 / 落葉掻 / 落葉掃く / 落葉籠 / 落葉踏む

2019/11/27 Wed

    村ぢゅうの道のからまつ落葉かな

        (むらじゅうのみちの からまつおちばかな)





    濡れ落葉からまつ殊に掃きにくし

        (ぬれおちば からまつことにはきにくし)





    庭掃の何かぶつぶつ朴落葉

        (にわはきのなにかぶつぶつ ほおおちば)





    ブロワーの唸る山家の落葉掻

        (ぶろわーのうなる やまがのおちばかき)





    ブロワーの夫と落葉を掃く妻と

        (ぶろわーのつまと おちばをはくつまと)





    落葉籠テニスコートの片隅に

        (おちばかご てにすこーとのかたすみに)





    落葉踏む鳥に知られぬこと難く

        (おちばふむ とりにしられぬことかたく)





    落葉踏む音にスコリア踏む音も

        (おちばふむおとに すこりあふむおとも)





    颯々と老いゆく音の落葉踏む /むく

        (さつさつとおいゆくおとの おちばふむ)





 からまつ落葉の道 (2019.11.12 山中湖村:山梨県南都留郡)


 落葉

    落葉楽しこれで私も山ガール /むく(旧詠)

 数年前に詠んだ句。
 ひと昔もふた昔も前のような気が…。

 


 カケス (2019.11.19 山中湖村:山梨県南都留郡)



        朴落葉拾ひて聖ごころかな /木内彰志


 朴の花は木に咲く蓮のように神々しい。その花が散ることを「朴散華」とも形容する。そんな神聖さを感じさせる花を咲かせる朴の木の大きな落葉を恭しく拾った。清浄とした気持になったという。吟行会での挨拶句ではなかろうか。それなら場を和ませる笑いも起きたことだろうから。いろいろな俳句がある。いろいろな詠み方がある。俳句は楽しい言葉遊びでもある。生真面目に鑑賞し過ぎては面白さの分からない句もある。

 (2019年11月27日 山中湖にて)


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大根炊く / 大根洗う

2019/11/26 Tue

    疎ほどの大根を炊く畑仕舞 /むく

        (おろほどのだいこんをたく はたじまい)



 冬初め (2019.11.20 山中湖村:山梨県南都留郡)


 畑仕舞

 まばらなった一畝の冬菜を残して貸農園の畑仕舞。
 菜園には付いてゆくだけで、作業はガンコちゃん任せにすることが多かった今年。
 最後ぐらいは…と、ちょっと頑張った。
 労働の汗(大げさ)を「紅富士の湯」で洗い落した。



        洗ふ娘にまたも大根車著く /舘野翔鶴


 小流れで少女が大根を洗っている。収穫の手伝いだ。少女の傍にはまっ白に洗い上げられた大根が山と積まれてゆく。少女は懸命に手伝っているのだが、泥だらけの大根がこれでもかこれでもかというように次々に運ばれて来る。少女に向ける作者の視線が温かい。「著く」は「着く」の古語。

 (2019年11月26日 山中湖にて)


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一の酉 / 酉の市 / 三の酉

2019/11/25 Mon

    一の酉やげん堀とは粋な苞

        (いちのとり やげんぼりとはいきなつと)


    「酒の市」かと貼紙の酉の市 /むく

        (さけのいちかと はりがみのとりのいち)



 やげん堀の七味唐辛子 (2019.11.23 山中湖村:山梨県南都留郡)


 手みやげ

 「やげん堀!
 ありがとうございます。
 大好きなんです。」

 「よかった。
 この前お会いした時に、浅草のほうに住んでいらしたと仰っていたので。
 大辛(おおから)です。」

 あったあった、大辛、中辛、小辛。
 客の好みに応じて目の前で調合してくれることで昔から人気のやげん堀の七味唐がらし。
 本店も賑やかだが、縁日にはその屋台にも人だかりが出来る。
 香具師さながらに楽しい売り子の口上と鮮やかな手捌き。
 懐かしい…。

 蔵前にお住まいのFさん。
 初対面で交わした下町の四方山話を、こんな風に覚えていて下さったとは。
 むかし下町小町の粋な気遣い。

 きれいな個装と小さな手提げ袋。
 ― そうか、Fさんはお酉様に行って来られたのに違いない。
 きっと、鷲(おおとり)神社からの帰りに仲見世のやげん堀本店に立ち寄られたのだろう。 -
 そう思い至ったのは、Fさんと別れてからの帰り途。
 頂戴した時に直ぐに思い浮かべば、「お酉様にいらっしゃったんですか」と言えたのに…。

 近々またお会いするFさん。
 お返し選びには悩むことになりそうだぞ。




        手みやげの芋やうかんも三の酉 /百合山羽公


 (2019年11月25日 山中湖にて)


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綿虫(わたむし) / 雪蛍(ゆきほたる)

2019/11/24 Sun

    綿虫のちから失せをり掌

        (わたむしのちからうせおり たなごころ)


    雪ほたる風あるごとく無きごとく /むく

        (ゆきほたる かぜあるごとくなきごとく)



 冬晴 (2019.11.21 山中湖村:山梨県南都留郡)


 綿虫

 綿虫、雪虫、雪蛍 白ばんばなど、呼び名はいろいろ。
 今年の山中湖には、その綿虫の数がとても多い…ような気がしている。
 気のせいだろうか。
 それとも、年によって多かったり少なかったりするのだろうか?
 ときどき眼に飛び込むこともある。
 「目が大き過ぎるからじゃない?」とガンコちゃん。

 あのぉ、「仔牛のようにつぶらで大きな目をしているから」とか言ってくれない?



 ホオジロ (2019.10.21 山中湖村:山梨県南都留郡)



        綿虫やむらさき澄める仔牛の眼 /水原秋櫻子


 (2019年11月24日 山中湖にて)


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冬木の芽 / 黄落期

2019/11/23 Sat

    冬木の芽素直になりて見ゆるもの

        (ふゆきのめ すなおになりてみゆるもの)



 冬木の芽 (2019.11.16 山中湖村:山梨県南都留郡)


 探鳥

 体調が勝れないでいた夏の間も、散歩は努めてするよう心掛けた。
 何も持たず、まったく手ぶらでの散歩が多かった。

 カメラを手にして散歩するようになったのは、秋になって体調が上向き、陽気もおだやかになってから。
 近頃は以前のようにカメラに重い望遠レンズを着け、野鳥も撮るようになった。
 山登りまではまだだが、復調いちじるしい(自画自賛)。



    鳥を観る恍惚の日々黄落期

        (とりをみるこうこつのひび こうらくき)


    赤げらに青げら小げら黄落期 /むく

        (あかげらにあおげらこげら こうらくき)



 アカゲラ (2019.11.14 山中湖村:山梨県南都留郡)



 アカゲラ (2019.11.14 山中湖村:山梨県南都留郡)


 (2019年11月23日 山中湖にて)


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冬に入る / 冬

2019/11/22 Fri

    からまつにからまつの風冬に入る

        (からまつにからまつのかぜ ふゆにいる)


    あたらしき鹿の疵増え森冬に

        (あたらしきしかのきずふえ もりふゆに)


    手づくりのヤーコン茶尽き山廬冬 /むく


        (てづくりのやーこんちゃつき さんろふゆ)



 冬に入る (2019.11.16 山中湖村:山梨県南都留郡)


 冬に

 今日から冬の句に。


 カシラダカ (2019.10.31 山中湖村:山梨県南都留郡)


 ズッキーニとヤーコン

 五月連休のころ、「十坪農園」の隅に一本のズッキーニを植えた。
 去年、他の人が植えているのを見て、この土地に適しているらしいと思ったからだ。
 ズッキーニは初心者でも栽培が簡単、というより、ほとんど手間の要らない野菜だ。

 ズッキーニは盛夏のころから収穫できるようになった。
 捥いでも捥いでも毎日のように新しい実が摘み頃に肥る。
 トマトと大豆の朝のスープ、オムレツ、ガスパチョと、いろいろな食べ方を試みた。

 ズッキーニそのものはあまり味がない。
 はじめは馴染みの薄い野菜だったが、不思議なことに毎日食べても飽きが来ない。
 癖がないからとも言える。
 調理するガンコちゃんが食傷気味になっても、私は一向に飽きなかった。
 トマト味が好きなので、飽きなかったのはそのせいもあったか思うが、何よりガンコちゃんの腕がいいからである。(ヨイショ。)
 どのガスパチョ料理にも、粗びき胡椒とバジリコを欠かさない。

 そのズッキーニは驚くほど豊富にカリウムを含む野菜だと知った。
 カリウムは体内からナトリウムを追い出してくれるので、カリウムの豊富なズッキーニには抜群の減塩効果があるようだ。

 「十坪農園」のあるお仲間の畑に、名前を知らない黄色の花が咲いていた。
 背の高い雑草のように生い茂る植物。
 その畑を耕している人に訊ねたところ、雑草ではなくヤーコンだと言う。
 ヤーコンは糖尿病に効果があると教えていただいた。
 ヤーコン茶にして飲むのが一番摂取しやすいと言う。
 「好きなだけぞうぞ」というご厚意に、ガンコちゃんが飛びついた。
 
 いただいて来たヤーコンの葉を寓居のリビングに広げ、数日のあいだ室内乾燥した。
 それから焙煎…といってもIHヒーターなので「焙煎もどき」を行った。

 ほうじ茶や玄米茶が苦手な私は、ヤーコンを紅茶に混ぜて飲むようになった。
 好きではないが、健康のため…と目をつぶって。

 ある日、膝から足の指までの下肢が象の脚のように膨れ上がる感染症にかかった。
 (全治したことは先日の記事に書いた通り。)
 その時の血液検査の結果を見て、私は愕然とした。

 血小板数が正常範囲の下限値を大きく下回っているのは相変わらずで、体質的なものだ。
 白血球が明らかに増加していた。
 白血球の増加は感染症にかかりやすい状態であることを示している。

 糖尿病患者は感染症にかかりやすいと言う。
 血糖値が高くなることで、白血球や免疫に関わる細胞の機能が低下するからだそうだ。
 つまり、病原菌と十分に戦えない状態になる、ということらしい。

 血液検査の結果を見て驚いたのは、そのことではない。
 カリウムの値が大幅に増え、ナトリウムが明らかに減っていたのだ。

 カリウム値が信じられないほど高かったので、先生にお訊ねした。
 「毎日ズッキーニを食べているんですが、そのせいですかね?」
 「いや、そんなことでこんなに高くなることはない。
 血液の検査法によるから、これはそのバイアスだね。」
 簡易検査であるためのバイアスということらしい。

 しかし、その時の検査のカリウム値の異常な高さはバイアスだったにしても、以前と比べてカリウム値が増加、ナトリウム値が低下という傾向は、その後の血液検査でも続いている。
 書くことも語ることもおぞましいほど高かった血糖値は、直近の検査ではほぼ正常範囲の上限値まで下がった。
 ちょっと油断をすれば元に戻ってしまうことは明白だが、こんなに見事な改善は稀有なことではあるまいか。

 全粒粉のパン、玄米粥、蕎麦食などによる低GI食生活化に加え、ズッキーニとヤーコン茶を取り入れたことも効果があったのではないか、と思っている。
 食生活の改善とともに、よく運動することが基本であることは無論である。

 そのズッキーニもヤーコン茶も底を突いた。
 冬の健康メニューを思案中である。


 
 ヤーコンの花(左)とヤーコン摘み(右) (2019.08.31 山中湖村:山梨県南都留郡)


 (2019年11月22日 山中湖にて)


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「雛」掲載句(2019年)

2019/11/21 Thu

   掲載句・掲載記事 (2019年)



※ 『雛』2019年7月号、8月号の掲載句を追加更新しました。


  『雛』 2019年8月号


        輝きつ羽ばたく十字揚ひばり

        (かがやきつはばたくじゅうじ あげひばり)
        2019年8月号 福神規子選



        鈴虫草なども見つけて森涼し

        (すずむしそうなどもみつけて もりすずし)
        2019年8月号 福神規子選



        郭公や妻は左を吾は右を

        (かっこうや つまはひだりをあはみぎを)
        2019年8月号 福神規子選



東京吟行会 (2019年6月13日) 福神規子先生選


       枇杷実る路地を曲がれば信誠寺

        (びわみのるろじをまがれば しんじょうじ)


心に残る一冊 (『雛』2019年8月号掲載)

 『剛力伝』 新田次郎著

 新天皇陛下は、皇太子時代のご趣味の一つが登山で新田次郎のファンでもあったと聞き知って親しみを覚えた。健全な精神を養う努力を惜しまない姿勢が感じられたからである。
 『強力伝』は新田次郎(本名藤原寛人)が気象庁に務める傍ら昭和三十年に発表した短編小説である。氏の処女作と言われるこの作品は、洗練された文章ではないにも係わらず、過去にない斬新な内容と評価されて直木賞を受賞した。
 ― 富士山の強力である小宮には、自分は坂田金太郎の再来という秘かな自負があった。小宮は白馬山頂に風景指示盤の石を人力で運び上げるという新聞社の企画に応じて、それに挑んだ。指示盤は何個かの石の組立構造で最も重い石の重量は五十貫(百八十七・五㎏)あった。小宮は五十貫の石を背負って山頂へ担ぎ上げたが、その無理が祟って世を去る ― というのが小説の粗筋である。
 『強力伝』の後書に作者はこう記している ― この小説の主人公は当時富士山観測所(後富士山測候所と改名)の強力をしていた小見山正君をモデルとして書いたものである。作中の風景指示盤は白馬山頂に現存する ―
 映画化されたものも少なくない新田作品にあって、一人の男の不条理な行動を描いたこの短編は未だに映画化されていない。その理由の一つは、不条理を正鵠にメッセージすることの難しさにあるのではないか。そもそも、作者はなぜこの小説を書いたのか、いや、書かずにはいられなかったのか。それを窺い知るヒントが、新田次郎という人の経歴の中に潜んでいるように思う。
 昭和七年、中央気象台(現気象庁)入庁、富士山測候所に配属。昭和十四年、両角てい(後藤原てい=作家)と結婚。昭和十八年、満州国観象所(中央気象台)に転職。昭和二十年、三児の父となり敗戦、ソ連軍の捕虜となり、中国共産党軍にて一年間抑留生活。昭和二十一年、帰国、中央気象台に復職。昭和二十四年、妻ていが満州引揚体験を基に書いた小説『星の流れに生きている』が評判になる。
 新田次郎は妻の成功に動かされて『強力伝』を書いたと言われるが、その希求の根源はやはり抑留・引揚体験だったのではないか。公僕藤原寛人としては妻のように自由に物を書くことに制約もあっただろう。『強力伝』は、その制約の中で、新田が戦争というもう一つの不条理を背負って書いた作品である。




  『雛』 2019年7月号


        犬ふぐり老師の恙案じゐて

        (いぬふぐり ろうしのつつがあんじいて)
        2019年7月号 福神規子選



        花満ちて吉祥天の空かとも

        (はなみちて きちじょうてんのそらかとも)
        2019年7月号 福神規子選


東京吟行会 (2019年5月9日) 福神規子先生選


       花は葉に四十九日を目前に

        (はなははに しじゅうくにちをもくぜんに)


春 秋 箋 (『雛』2019年7月号掲載)

  「惜春」入会の思い出
 「主人は変っておりまして、マスコミの取材も全部断ってしまいます。もう新しい弟子も取らないと申しています。」そう仰りながら喜子奥様は言葉を続けた。「惜春」に入会したいと、風人子先生のご自宅にお電話を申し上げた時のことである。八月も終りの頃だった。「主人のどんな句が気に入りましたか?」思いがけない質問に面食らったが、咄嗟に「嫌はれてしまへば自由油虫」の句が思い浮かんだ。しかし、この句が好きですとは言いにくく、もう一つ思い出した「前世は竜でありしと蚯蚓言ふ」の句が好きですとお答えした。「それはまた変わった句を…」と奥様。先生のご自宅からは雑木山一つ隔てた吉井に住んでいますとお伝えしたことが功を奏したか、「惜春」の見本誌をお送りいただけることになった。宅配便で届いた小さな段ボールには、横須賀吟行会の連絡先が載っている見本誌と共に、先生の句集『惜春譜』、『明易し』と『一言多言集』が同梱されていた。先生に初めてお目にかかったのは翌九月の横須賀吟行会。集合場所の横須賀中央駅のYデッキに、杖を手にしてエスカレータで上がって来られるや、「渡邊むくさんはいますか?」。初めてお聞きした先生のお声に、早世して久しい父に会ったような懐かしさを覚えた。




  『雛』 2019年6月号


        松毟鳥しらびその枝に雪残り

        (まつむしり しらびそのえにゆきのこり)
        2019年6月号 福神規子選



        花ミモザボンボニエールに収めたき

        (はなみもざ ぼんぼにえーるにおさめたき)
        2019年6月号 福神規子選

選評(秀句鑑賞): ボンボニエールとは砂糖菓子を入れる小さな丸みを帯びた菓子器で、日本では皇室のお祝い事に贈られる品として知られている。その器にミモザの花を入れたいとの遊び心はお洒落だ。


        頬白の声に背筋を意識して

        (ほおじろのこえに せすじをいしきして)
        2019年6月号 福神規子選




  『雛』 2019年5月号


        枯葎あやふく撃たれさうになる

        (かれむぐら あやうくうたれそうになる)
        2019年5月号 福神規子選



        紅梅のわけても好きなをのこ吾

        (こうばいのわけてもすきなおのこ われ)
        2019年5月号 福神則子選



        宿木に連雀の来て山湖春

        (やどりぎにれんじゃくのきて さんこはる)
        2019年5月号 福神規子選


東京吟行会 (2018年3月14日) 福神規子先生選


       苗札やハイウェイローズとはどんな

        (なえふだや はいうぇいろーずとはどんな)


春 秋 箋 (『雛』2019年5月号掲載)

 海抜千メートルの山中湖村は山梨県内の全市町村でもっとも寒いとされている。蠟梅も梅も育たず、柿も渋柿しか実らない。そんな寒冷地の冬にも鳥たちは元気。四十雀・小雀・日雀・山雀・柄長・河原鶸・赤啄木鳥・青啄木鳥・小啄木鳥・掛巣・鵙・鴲・鷽・菊戴・瑠璃鶲などの留鳥、尉鶲・鶫・花鶏などの渡り鳥である。湖畔の高木には毬のような宿木が実をたわわに実らせて、この村の春告鳥である黄連雀や緋連雀が来る日を待っている。



  『雛』 2019年4月号


        寒暁の紅富士色の鷽の胸

        (かんぎょうのべにふじいろのうそのむね)
        2019年4月号 福神規子選



        左義長やここにも富士の浅間社

        (さぎちょうや ここにもふじのせんげんしゃ)
        2019年4月号 福神規子選



        双子よとよろこぶ妻や寒玉子

        (ふたごよとよろこぶつまや かんたまご)
        2019年4月号 福神規子選

選評(秀句鑑賞): 割ってみるとまん丸い黄味が二つ並んでいた。思わぬ嬉しさを素直に喜ぶ妻や愛し。寒玉子の「寒」が効いている。




  『雛』 2019年3月号


        さ牡鹿の目のやさしさを悲しめり

        (さおしかのめのやさしさを かなしめり)
        2019年3月号 福神規子選



        日の昇り山湖しばらく冬の霧

        (ひののぼり さんこしばらくふゆのきり)
        2019年3月号 福神規子選

 ※ 原句「日昇りて山湖しばらく冬の霧」添削(規子先生):「添削によって言葉に余裕が生まれる分余韻が増す。」




  『雛』 2019年2月号


        日本のもみぢを描く子カナダの子

        (にっぽんのもみじをかくこ かなだのこ)
        2019年2月号 福神規子選



        妻の着くバスを待ちゐて冬ぬくし

        (つまのつくばすをまちいて ふゆぬくし)
        2019年2月号 福神規子選

選評(秀句鑑賞): 作者がむくさんと分かれば山中湖での作品か。一日早くやって来た作者は妻が乗っているはずのバスを楽しみに待っておられるのだろう。冬日に包まれながら…。



        実のはぜて真弓いよいよ真くれなゐ

        (みのはぜて まゆみいよいよまくれない)
        2019年2月号 福神規子選


東京吟行会 (2018年12月13日) 福神規子先生選


       師いく度通ひ来し道冬もみぢ

        (しいくたびかよいきしみち ふゆもみじ)

 ※ 規子先生のご指摘に基づき後日「師いく度通はれし道冬もみぢ」と推敲。


       激論を交せしあとの燗熱う

        (げきろんをかわせしあとの かんあつう)
        席題:熱燗


        冬薔薇一病を得て人やさし

        (ふゆそうび いちびょうをえてひとやさし)


春 秋 箋 (『雛』2019年2月号掲載)

 山中湖の名物のような霧。秋になって朝晩冷え込むようになるにつれ、夜が明けると湖面から霧が立ちあがる日が多くなる。湖の霧の上に浮かぶように聳える富岳は幻想的ですらある。冠雪の富士は曙光が差すとともに山頂から次第にうす紅を注してゆく。夏の赤富士に対し、これを紅富士と呼んだりもする。週末ともなると、富士山絶景ポイントでは厳寒にも負けないカメラマンが徹夜で紅富士を待っている。



  『雛』 2019年1月号


        塔頭の塀より高き紫苑かな

        (たっちゅうのへいよりたかき しおんかな)
        2019年1月号 福神規子選



        富士澄めりコスモスの色日々に濃く

        (ふじすめり こすもすのいろひびにこく)
        2019年1月号 福神規子選




 カテゴリーの“「雛」掲載句”をクリックすると、過去の全掲載句を一覧することが出来ます。


                月刊「雛」: 編集・発行人 福神規子
                発行所:   〒155-0033 東京都世田谷区代田6-9-10 雛発行所
                誌代:    月900円(年間10,800円)。

 ※ 「雛」の見本誌をご希望の方は上記発行所にご請求ください。
    (または、当ブログのコメント欄にその旨をお書き込みくだされば取次いたします。)
 ※ 「雛」は、長年高濱虚子、星野立子に師事し、ホトトギス本流の諷詠の道一筋に歩んで来られた先師高田風人子先生主宰の「惜春」の後継誌として発足した、福神規子先生を主宰とする句誌です。)




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テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術

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Muku Watanabe-渡邊むく

Author:Muku Watanabe-渡邊むく
英語通訳業はほぼ自主引退。愛妻と二人で神奈川県秦野市でスローライフしています。山中湖の別宅で野鳥観察三昧に耽ったり。俳句のことに限らず、お気軽にコメントをくださると励みになります。

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