秀句鑑賞-春の季語: 暖か(あたたか)
2013/12/30 Mon
December 30 2013
伊藤通明
世の隅といふあたたかきところかな
人は時に来し方を振り返って自分が今いる場所を確かめる。その時、これまでもそして今も、人生は「あたたか」だと肯定できることは幸せ。物質偏重の思考からは辿り着けない価値観である。俳句の社会的な意義の一つは、エスカレートする一方のマテリアリズムに対して警鐘を鳴らす役目を担っていることだと言えよう。勝ち組だの負け組だのと人間を色分けする考え方は、物質的な豊かさだけで人間の価値を判断しようとする、いわば現代病である。俳句は感情に発して心の豊かさを追求する人間讃歌の文芸。自分のいる場所を「世の隅」と言う作者の庶民的な認識もまた、その心の豊かさを示すものに他ならない。俳句は呪文でもある。平明で忘れられなくなりそうな秀句。(渡邊むく)
【伊藤通明(いとう・みちあき):昭和10年(1935年)福岡県生まれ。『白桃』主宰。『月刊俳句界』2014年1月号より。】
伊藤通明
世の隅といふあたたかきところかな
人は時に来し方を振り返って自分が今いる場所を確かめる。その時、これまでもそして今も、人生は「あたたか」だと肯定できることは幸せ。物質偏重の思考からは辿り着けない価値観である。俳句の社会的な意義の一つは、エスカレートする一方のマテリアリズムに対して警鐘を鳴らす役目を担っていることだと言えよう。勝ち組だの負け組だのと人間を色分けする考え方は、物質的な豊かさだけで人間の価値を判断しようとする、いわば現代病である。俳句は感情に発して心の豊かさを追求する人間讃歌の文芸。自分のいる場所を「世の隅」と言う作者の庶民的な認識もまた、その心の豊かさを示すものに他ならない。俳句は呪文でもある。平明で忘れられなくなりそうな秀句。(渡邊むく)
【伊藤通明(いとう・みちあき):昭和10年(1935年)福岡県生まれ。『白桃』主宰。『月刊俳句界』2014年1月号より。】
テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術