秀句鑑賞:ひやむぎ
2022/07/17 Sun

ひやむぎのなんと気楽や箸の国 /みなと
概して、フォークとナイフを使っての外食は気を遣う。その点、箸を使っての内食は気楽。
涼しい朝のうちにと、菜園の草むしりなどをして汗を掻いた作者。今日は独り居。昼食はさっと作れてささっと食べられる冷麦にした。
収穫したトマトと玉子焼がつけ合わせ。冷麦もトマトも玉子焼も箸で食べられる。ふと日本に生まれて良かったと思う。独り居の時の主婦の昼餉…と共感できる句。勝手に想像を膨らませるのは句を鑑賞する者の特権。
「俳句ポスト365」の特選句で、選者は夏井いつきさん。作者は北海道在住の俳人。自由闊達な句を詠み、八十歳を迎えられた今も全国級の俳句大会で常連の受賞者。
掲句から、かつて私のブログの「秀句鑑賞」でも紹介したことのある河野輝明氏の一句を思い出した。
雑煮食うも骨をひろうも箸の国 /河野 輝明
平成二十五年の現代俳句全国大会で最高賞に輝き、内閣府のホームページに今も紹介されている。
みなとさんの「ひやむぎ」の季題に対してこちらは「雑煮」。片や「気楽」な夏の昼餉で片やは火葬場で「骨をひろう」景。心の軽さと重さが対照的な箸である。後者も句が重いということではない。ともに肯定的な人生観を感じさせるな句であり、芭蕉の説いた軽(かろ)みがある句、と私は思う。(渡邊むく)
【みなと】 代表的な俳号は三泊みなとで、長く住んでおられた留萌の三泊港に因む。現在は旭川市在住。
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