秀句鑑賞-夏の季語: 夜濯(よすすぎ)
2013/10/29 Tue
蔵本聖子
季語は夜濯で夏。去る七月に横浜で行われた、高田風人子先生が主宰する『惜春』の創刊三百号記念大会での詠。温かく送り出してくれる家族への感謝と気遣いが手に取るように伝わってきて、きっと遠方からお出でになられたんだろうなぁ…と、互選の時に胸が熱くなった挨拶句である。が、そのような具体的状況を知らずに観賞しても、きりのない家事に後ろ髪を引かれながらも心待ちにしていた旅に決然と出立する、主婦である作者の心情が彷彿として余韻の深い秀句、と言えるのではないだろうか。旅行中は何度も留守家族の心配をしていたかも知れない。(渡邊むく)
【蔵本聖子:『惜春』会員。福岡県在住。『惜春』2013年10月号より。】
テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術