東京の別の貌「TOKYO異形」
都心の秘境、奇怪な東京、異空間TOKYOをうつした写真集。
「えっ!ここホントに都心?」と疑ったり、ありふれた街がアングルひとつで奇妙な場に変化したり、ページをめくるたびに驚きが並んでいる。けれどもどれも、東京だ。2008年10月から100回にわたり、東京新聞の夕刊に連載した「東京Oh!」を写真集にしたもの。
たとえば「秘境」。東京タワーや高層ビルが目前の干潟に、無数のカニがうごめいているショット。生態系保護のため立入禁止となっている、葛西海浜公園の東なぎさだそうな。六本木ヒルズとカニの大群の組合わせ、ぶっちゃけありえない。「多摩川のヘドロ」が公害の象徴のように教えられた世代のわたしにとっては、目を疑う光景。そういや、通勤途中で東京湾に渡り鳥(?)の群れが羽根を休めているのを目にする。わたしの知らないところで、"自然"が戻ってきているのだろうか?
あるいは、「富士見坂」。都心で「富士見坂」という名の坂は16ヶ所あるが、建物に遮られ、実際に富士山が見える場所は、ただ一つになったという(荒川区西日暮里)。何てことないこの坂を、年二回だけ、人並みが埋めるそうな。それは、富士山頂に夕陽が沈みこむ際の輝き(ダイヤモンドダスト富士)をカメラにおさめるため。その「人群」を撮っているナイスな一景ナリ。後姿から察するに、ご年配のカメラ爺ばかりで笑える。景色を撮るのではなく、「景色を撮るために群がる人」を撮る発想は面白い。美しい富士を撮るための、醜いポジション争いがあるようだ。
けっこうシュールなやつもある。どれも特別な許可を要せず撮れるところがミソ。新幹線車両基地がいい。整然と並んでいる様子を真上から見ると、新幹線ぽくなく、まるでエンピツのようで妙な気になる。大井ふ頭から陸橋が横切るようにあるので、普通でない新幹線を撮り鉄するのに絶好ナリ。あるいは、「築地の雪山」。セリの後の発泡スチロールが雪山のように積みあがっており、人がまるで雪山登山しているようだ。大量消費+リサイクル時代が生んだ山やね。
短い言葉で本質を捉えたタイトルも秀逸だ。見たことのない東京の断面を発見すべし。
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