はてなキーワード: Bioinformaticsとは
新卒一括採用は、総合職として採用されることが多いため、特殊な専門を持つ人材では、以下の問題をかかえている。
そんな時、稀なケースではあるが、キャリア採用の枠を新卒で受ける道を検討してみるのも良いかもしれない。
ぼく自身、そのルートで現在の会社に入社して、そこそこ幸せにやってる。やりがいと、給与面や余暇のバランスがとれたいい塩梅の仕事で、結果的にふつうに就活するよりは良かったなと感じた。
なので「レアケース」な就活の一例として、似たような境遇の誰かのために、ぼくがたどってきた変な道のりを記しておく。
ぼくはこれまで、バイオインフォマティックスという分野で研究を続けてきた。
Bioinformaticsの字のごとく、情報と生命系の融合分野である。そこで学んだことはたくさんあるけど、ニッチだ。例えばヒトの遺伝子情報ってFastqっていう謎の拡張子で表現されて、数Gバイトのテキストで収まる、とか。
学部時代は、研究室でヘルスケア系のデータ分析のアルバイトをしていた。そこでデータサイエンスの基礎は築けていたと思う。
あとは、Erlangという関数型言語で分散処理のフレームワークを作るベンチャーでのアルバイト経験もあったっけな。これは、マチアプで知り合った女の子が留学したいというので、留学経験のある先輩Aに会わせたところ、その友人Bを介して紹介されたという不思議な縁だった。
恋は実らなかったけれど、面白い巡り合わせだった。ちなみに、その言語はもう全く書けない、、
学歴としては、W大学を卒業後、某国立大学の修士課程を修了している。
就職活動では、競技プログラミングで水色にぎり届かないくらいの緑になったり、応用情報技術者試験を取得したりと、武器は整えたつもりだった。
しかし、「就活はお見合いだ」という本質を見落としていたためか、正直なところ最初は苦戦した。
データサイエンティストやエンジニアとして就活を進めてみる。技術の質問に答えても、生物系の研究を話すと「さすがにもっと違うところあるんじゃない?」と面接官から遠慮されてしまい、ことごとく有名な企業とはマッチしなかった。
一方で製薬系の企業に行くと、エンジニア的な部分がどうも仕事内容とマッチしなかった。バイオの知識はある程度あったが、研究は薬に直接関連しているようなものではなかったし。
つまり、中途半端にどちらもできてしまうが故に、どちらからもフラれるという悲しい状況に陥ってしまったのだ。
「じゃあ、両方必要としているところがあればいいじゃないか」——そう考え、会社ではなく「仕事内容」で探し始めた。LinkedInで、自分の研究分野に関係がありそうなキーワードを片っ端から打ち込んで検索する日々。
すると、とある会社でSNP(一塩基多型)に関連したプロジェクトの募集を見つけた。大学院卒以上が条件で、求められるスキルはアルバイトや研究でほぼ身につけていたため、「これはいけるかも?」と直感。かなり興味があったので、フラれることを前提にダメ元でアタックしてみることに。
コーディングテストはなんとかクリア。一次面接を経て、あとは通常とは異なる採用経路だったり、面接が英語だったりして大変だったが、気がついたら内定を掴むことができた。
そのプロジェクトにアサインされ、半年ほど業務に携わった後、取引先の内部でのイザコザに巻き込まれて、プロジェクトはなんと消滅してしまった。そのために会社を選んだのにもかかわらず!笑
コロナ禍だったし、ひとりぼっちの在宅勤務で「俺は……クビか?」と強い不安に襲われて、ベッドでうなされていたっけ。
ぼくは別のプロジェクトにアサインされることになった。それは、「強化学習を使った推薦アルゴリズム」のチーム。学んだことがない領域だったけど、いいことも沢山あった。
新卒でほぼ一人でプロジェクトを抱えていたピン芸人みたいだった時期と比べ、指導してくれるテックリードもいたし、社内ではそのプロジェクトの重要度が高かった。それは本当によかった。いい位置にいれている、ということのよさを、ぼくは数年働いたうちに何度も痛感したから。
その後、メンターをはじめとする様々な人が入れ替わったが、結局その分野の仕事に約5年間携わることになった。
もう、バイオインフォマティックスを研究としてやっていた期間とほぼ同じくらいの長さだ。この分野に転向してからも、小さな論文をなんとか書くことができ、キャリア的にはもうそちらが専門になってしまった。
全く後悔がないと言えば嘘になるが、人生とはそんなものだろうと割り切っているつもりだ。学生時代の専門をそのまま続けている人など、ごく稀だろう。半分くらいは専門が繋がっているのだから、きっとまだ幸せなのだろう、と自分に言い聞かせている。
自分がいきたい方向に突き進むんじゃなくて、風にまかせてみるのも、また人生の選択のひとつなのかもしれない。乗っていくうちに、風に乗るのが好きになっていくこともある。
今振り返ると、ぼくが応募した年にしか、その部署でバイオ関連の募集はなかった。一年遅くても、早くてもだめ。巡り合わせがよかった。
そんな幸運を掴めたのも、思い切ってLinkedInの募集を眺めてみる、という蛮行を起こせたからだと思う。
だからこそ、ニッチな専門性を持つ人には、一般的な新卒としての就職活動に加えて、思い切って「ヘンな就活」をしてみるのも良いのかもしれない、と伝えたい。