2025-05-10

卵子冷凍四半世紀』

彼女初潮を迎える前に、卵子はすでに冷凍されていた。言っておくが、これはその手の陰謀論人権派弁護士が好んで噛みつくような話ではない。いや、もっとずっと先の、制度倫理技術ビジネスが見事に結託した、光り輝く未来の話なのだ

彼女は七歳だった。乳歯がまだ二本、ぐらぐらしていた時期だ。自治体生殖工学企業提携した「未来母体プログラム」のモデルケースに選ばれ、彼女の卵巣からは未成熟の原始卵胞が摘出され、培養成熟処理されたのち、液体窒素に沈められた。あのとき医師彼女に語りかけたという。「おめでとう、これで人生設計自由が一つ増えたね」と。

それから十数年。彼女は25歳、性格は粗いが有能な企業戦士になっていた。上司パワハラにも同期のメンタル崩壊にも目もくれず、彼女成果主義荒野を突き進む。生理はもう五年以上止めてある。ホルモン制御薬の進化で、排卵情緒もきれいさっぱりオフにできる。急な海外出張? 喜んで。月経痛もPMSも、妊娠リスクも、何もないからだ。

恋人はいない。いや、必要なかった。なぜなら彼女には、15歳のとき大学の後輩で色狂いだった男の精子が、すでに確保されていたかである

男は淫乱だった。性に飢えていた。卒業後には梅毒だのクラミジアだの、保健所データベースを賑わせるような生活突入していったが、高校二年のとき、彼もまた、将来の自由のために自らの新鮮な精子を凍結していた。そう、性病蹂躙されようが、冷凍庫の中の彼は純粋無垢精子のままだったのだ。けけけけけけけけけけけけけけけけ。

そしてある朝、彼女は言った。「使うわ、今日。」

それはコーヒーを淹れるようなテンションだった。彼女タブレットで「精子バンクNo.4869(当時17歳感染)」を選び、「卵子ファイル#A-07(7歳時摘出分)」を指定し、マッチング後はAI培養技師確認を経て、都内の出生ファクトリーへ送信。人工子宮ユニット#11での培養が始まった。

出産予定日は230日後。だが彼女にとって、出産とはイベントではなかった。人生計画における「フェーズB-2」にすぎない。赤ん坊は高機能チャイルドケアシステムに預けられ、乳児からビジネス・ブレークスルー大学付属保育アカデミー英才教育を受ける。母親産後休暇も育休も取らずに出社。労働繁殖がついに完全に分離された瞬間であった。

自分身体で産むなんて、原始的すぎて無理だわ」と彼女は言った。誰も反論しない。もはやそれは自由意思ではなく、デフォルトなのだ

かつて「結婚とは家族を築くための契約」だった。しかしいまや、家族とはプロジェクト一種である。繰り返し可能で、アップデート可能子どもを持ちたくなければ持たない選択肢も、持っても育てない選択肢も、持った子を一時中断して再開する選択肢さえも、全てが「選べる」のである

男は後に言った。「俺の精子、使われたって知って、ちょっとしかったよ」

それを聞いて彼女は目を細めた。「ああ、あなたね。ありがと。でも別に会う気はないわ」

子どもはすくすく育ち、画面の向こうでにこにこと笑っていた。母子関係デジタルクラウド上で管理され、週に一度AI感情フィードバックを送り続けてくれる。

彼女は次の海外出張の予定を確認し、タブレットを閉じた。

すでに次の「フェーズC-1」が始まろうとしていた。

入院中にチャチャッとGPTに作ってもらいました。

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